医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動のカテーテル治療成功後に血液さらさら療法が必要な患者とは

2024年01月07日 | 循環器
心房細動という脈の乱れに対するカテーテル治療の成功後に血液さらさら療法を継続することの有効性や安全性はこれまで明らかになっていませんでした。

最近、この未解決問題に客観的な結論が出されました。
この研究は日本で施行された大変素晴らしい研究です。

Oral anticoagulation after atrial fibrillation catheter ablation: benefits and risks.
Eur Heart J. 2024;45:522.


【方法】
2014年~2021年に心房細動に対するカテーテル治療が行われた患者のデータをレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から抽出し、後ろ向きに解析されまた。

カテーテル治療後、心房細動の再発がない患者23万1,374例を対象として、カテーテル治療後6ヵ月時点の抗凝固薬の継続の有無で2群に分類されました。

さらにCHADS2スコアで3群(1点以下、2点、3点以上)に分類し、抗凝固薬の継続の有無と血栓塞栓症、大出血の発生の関連が検討されました。

【結果】
CHADS2スコア別に血栓塞栓症リスクを検討した結果、CHADS2スコア3点以上の患者では抗凝固薬の継続により有意に血栓塞栓症リスクが低下しましたが、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では低下しませんでした。

CHADS2スコア別に大出血リスクを検討した結果、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では抗凝固薬の継続により有意に大出血リスクが上昇しましたが、CHADS2スコア3点以上の患者では上昇しませんでした。

【結論】
つまり、CHADS2スコア2点以下の患者では、カテーテル治療成功後に血液さらさら療法を継続するのはよくないことが判明しました。


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無症状・短時間の心房細動の65歳以上にDOACを投与するのは出血を増やして有害

2024年01月02日 | 循環器
以前、 DOAC(新しい直接抗凝固薬)の5年予後はワーファリンと同じであることをお伝えしました。

DOACは製薬会社から宣伝されているほどワーファリンより優れているわけではありません。

通常の心電図で心房細動が捕らえられていないぐらい短時間の心房細動に対して、DOACによる抗凝固療法が有用なのかどうかはこれまで明らかでありませんでした。
そのことに関して、最近、New England Journal of Medicineでこんな結果が報告されました。

Anticoagulation with Edoxaban in Patients with Atrial High-Rate Episodes
N Eng J Med Sep 28;389(13):1167-1179.


ペースメーカーなどの植え込み型心臓デバイスで検出された心房性頻拍エピソード(AHRE)を伴う2,536例が対象とされました。

対象は6分~24時間の心房性頻拍エピソードが記録された65歳以上で脳梗塞の危険因子(CHADS2スコアーの慢性心不全、高血圧症、糖尿病)が1つ以上ある患者です。

本来アスピリンは心房細動の血栓予防に効果はありませんが、心房細動に何も投与しないのは倫理的に問題があるためか(アスピリン投与でも倫理的問題はありますが、計画当時の欧米のガイドラインには低リスク心房細動患者に対しアスピリンが推奨されていたそうです)、アスピリン81mg/日投与群とエドキサバン適量投与群にランダムに割り当てられました。

心房細動の持続時間の中央値は2.8時間でした。

このNOAH-AFNET 6試験では、DOACエドキサバン(商品名:リクシアナ)が主要有効性評価項目(心血管死または脳卒中または全身性塞栓症)を有意に抑制できず(ハザード比0.81、95%CI 0.60~1.08、P=0.15)、安全性主要評価項目の「全ての理由による死亡」または「大出血」が有意に増加(ハザード比1.31、1.02~1.67、P=0.03)したため、有益性がないことは明かであるとして試験は早期に終了され、このような患者への抗凝固療法施行が否定されました。

脳梗塞の発症率は両群共に約1%/年でした。

著者らは「対象集団にDOACを投与する前に、ガイドライン委員会により脳卒中抑制のベネフィットと出血リスクのバランスや、治療必要数(NNT)対有害必要数(NNH)などを検討する必要がある」との見解を示しました。

やはり、心房細動が少しでもあれば何でもかんでもDOACによる抗凝固療法を開始するのは良くないですね。

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DOAC(新しい直接抗凝固薬)の5年予後はワーファリンと同じ

2022年09月21日 | 循環器
私は以前から、DOAC(direct oral anticoagulant)(ワーファリンより新しい抗凝固薬で値段は10倍)の臨床研究は、医療後進国を意図的に研究に入れて、ワーファリンの結果を意図的に悪くした結果であるということをお伝えしています。

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)

外国の結果を参考にするのではなく、「日本という医療先進国」における両薬剤の比較は、前向きに調査してどうだったのかを結論付けた素晴らしい論文が順天堂大学を中心とするグループから最近発表されましたのでご紹介します。

Trends of anticoagulant use and outcomes of patients with non-valvular atrial fibrillation: Findings from the RAFFINE registry
J Cardiol 2022 Jul;80(1):41-48


2013年から2015年の間に追跡を初めて、非弁膜症性心房細動の3706人が最低3年間から5年間前向きに調査されました。

この研究はどちらの群になるか無作為に割り付けたものではなく、担当医の判断によって治療が決められました。

結果的に、ワーファリンを内服したのが42.5%、DOACを内服したのが44.7%、どちらも内服しなかったのが12.8%でした。どちらも内服しなかった患者は、CHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が0点だった(軽かった)のでしょう。

上の図の左は全ての理由による死亡の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。一見するとワーファリン群の方が死亡が多いように見えますが、これはカプランマイヤー法で単に死亡数を現した単解析のもので、各患者の背景の違いを考慮したものではありません、生存時間解析での多変量解析はCox比例ハザードモデルですから、Cox比例ハザードモデルで示すべきでした。

論文の中に記載されているように、各患者の背景を多変量解析で補正したら両群の差は認められませんでした。原文は以下のごとくです。
The Kaplan–Meier analysis revealed that the incidences of all-cause death, cardiovascular death, and major bleeding were significantly lower in the DOAC group than in the warfarin group. However, there were no differences between the two groups after adjusting for baseline characteristics.

それはどういうことかというと、ワーファリン群の方がCHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が悪く、HAS-BLEDスコアーという出血のリスクを示す指標も悪かったからです。担当医は、やはり背景が悪い患者には意識的なのか結果的なのかワーファリンを処方していたということです。原文ではこんなふうに書かれています。
At baseline, the warfarin group had higher CHADS2 and HAS-BLED scores than the DOAC group, which may have contributed to these findings.

上の図の右は脳梗塞と出血性疾患の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。
やはり両群で差は認められませんでした。

ワーファリンで量を調節するのが不安定な患者だからDOACにした、あるいは患者が納豆を食べたいと言うからDOACにしたというのなら分かりますが、少なくとも以前の臨床研究で参加していた国々よりは「繊細で優秀な日本人医師」(日本の循環器専門医は0.25mg単位で調節しますが、外国では1mg単位、酷い国では2mg単位で増減しています)がワーファリンを上手に調節している日本では、DOACもワーファリンも効果が同じということです。

結論でこんなふうに書かれています。
After adjusting for risk factors, the rates of death, ischemic stroke, SE, and major bleeding did not differ between the warfarin and DOAC groups.

効果が同じなのに値段が10倍のDOACを飲まされていては、患者が納豆を食べたい!と言うのでなければ患者に対して経済的に不利益になりますね。私ならワーファリンを選びます、DOACは、どれだけ効いているか(弱いのか強いのか?)指標がないですからね。

そしてこの素晴らしい論文は、素晴らしい知見も示しています。

担当医がワーファリンもDOACも投与しなくて良いと判断した患者でも、その5年間の予後はワーファリンやDOACを投与された患者の予後と同じです。

これは何を示しているかというと、担当医が投与しなくて良いと判断したその判断は間違っていないということ、CHADS2スコアーが低い患者には、やはり投与しなくていいんだ、と言うことです。

素晴らしい論文です。

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あのロシアが臨床試験に組み込まれている

2022年02月27日 | 循環器
ロシア(プーチン)って恐ろしい国ですね。

体内で血栓ができるのを予防する薬は以前からワーファリンというのがありましたが、ワーファリンの10倍の値段の薬が、ワーファリンより良いのだと製薬会社が宣伝して久しいです。でもそれは「操作された」臨床研究の陰謀です。

薬は、プラザキサ(日本ベーリンガーインゲルハイム) 、イグザレルト(バイエル)、エリキュース(ファイザー)、リクシアナ(第一三共)の4種類です。

ワーファリンという薬を使う場合、血液検査のPT-INRという血液のサラサラ度を示す値を見ながら錠数を調節します。70歳未満では2.0~3.0、70歳以上では1.6~2.6を目標としています。そして例えば月に1回血液検査して、合計10回のうち6回がその目標範囲ならTTRという指標(time in therapeutic range)は60%とされます。

このTTRと言うのをわかりやすく説明します。
私は熱帯魚を飼っていますが、熱帯魚の好む水のpHは6.5~7.5です。水道水のpHは8.0前後とアルカリ性に傾いていますので、テトラ (Tetra) PH/KHマイナス 250ml (淡水用) 水質調整剤 ペーハーという液体で少しpHを下げないといけないのです。水のpHは市販されているテトラ (Tetra) pHトロピカル試薬 (5.0-10.0)で、アルカリ性は青、中性は緑、酸性は黄色となり測定することができます。私の経験では、10Lの水に「ペーハーマイナス」を1mL入れるとpHを約0.5下げることができます。pHを一度に1.0変えてしまうと、熱帯魚は「pHショック」を起こして寿命を縮めてしまいます。水槽の水は古くなるとだんだん酸性に傾いてきますので、古くなって6.5になった100Lの水を半分変えて7.0に戻すには、50LのpH8.0の水道水に「ペーハーマイナス」を5mL入れてpHを7.5にして水替えすると水槽の水のpHは目標の7.0になります。慣れてくると市販されている試薬でpHを測定しなくても管理できるようになります。試薬で10回測定したとき、何回pHが6.5~7.5になっているかというのが医療でのTTRの説明になると思います。

慣れてくると適正な数値にできる確率が上がってくるという感覚が分かっていただけたかと思います。

すでに2016年に書いているように
心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

上の図の左から7番目のように、「あの」ロシアのTTRは60%です。日本の循環器内科医が管理すれば、平均で80%ぐらいは達成できます。それでは、なぜそんな「うまくできない」ロシアを臨床研究に参加させたのでしょうか?

想像してみて下さい。皆さんがこの臨床研究の責任者で、この臨床研究を成功裏に遂行することが任務なら、医者ぐるみでドーピングして開き直っている「あの」ロシアのような国を臨床研究に組み込みますか?という話です。

つまり、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加させられたのは、意図的にワーファリン投与群の成績を低くしたかったからだと、かなりこの推測が正しい可能性を持って推理できます。(この辺は私がいつも例えている、刑事コロンボの推理、これから自殺しようとしている人が本を読み終わって明日からまた読み始めるために本に栞をはさむだろうか、というような推理です)。

心原性脳塞栓予防の最前線 広がる誤った情報
では、「ただただWF信者、患者が哀れだ」というコメントをもらいましたが、彼はこういう薬の広告塔なのでしょう。

恐るべし、ロシア
恐るべし、製薬会社
恐るべし、広告塔の医者


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脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い

2021年09月27日 | 循環器
前回、「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い」という根拠をお伝えしました。
今回はその続きです。

2021年5月22日、日本経済新聞は次の報道をしました。
大往生、医療費抑える モデルは神奈川・愛知・和歌山: 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本経済新聞は47都道府県、全市区町村について75歳以上の1人当たり医療費(年齢調整済み)、死因別の死亡数、健康や医療・介護に関わる約400項目のデータを分析しました。医療費が最も低い岩手県は74万6千円、最も高い高知県は113万7千円で約40万円の開きがありました。

「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」などという製薬会社の主張は誤りなのは当初から明らかです。

そもそも、「ある種の疾患が克服できたら医療費は抑制できる」などと言っている人は、残念ながら「頭が悪い」のだと思います。


近年、ある種のガンは治癒・寛解・抑制できるようになってきましたが、それで医療費が下がったかを考えれば答えは明らかです。ガンが治り生き延びた人は、次に一定の確率で認知症になり、高価な薬を使用されるからです。また一定の確率で脳卒中になり、医療費がかかり、そこで生還したとしても次の病気にかかるからです。つまり医療費を抑制するには、「最近まで血圧の薬を飲んでいたぐらいで元気だった人が、急死した」といういわゆる「ピンピン コロリ」が増える必要があるのです。

また、国家全体の医療費というのは「医療で利益を上げたいと考える人々の熱意の合計で決定される」のです。ある種のガンを根治させる薬はとんでもなく高いし(開発者は高く売りたいでしょう)、多種のガンを血液検査で発見できるキットの開発者は、その技術をなるべく高く売りたいでしょう。

上の図は2つの因子の関連を調べるという単解析ですから、未知の交絡因子の存在は否定できません。例えば、「医療費が低い都道府県は、もともと高価な医療技術や予防技術を持っておらず、それが脳卒中の増加の原因となった」などといういわゆる「因果関係の逆転」です。しかし、今の日本で都道府県ごとに医療レベルが異なることなどありえません。どの都道府県でも、脳卒中の治療ガイドラインに沿って治療されます。

脳卒中治療ガイドライン

皆さんもお分かりですよね。上の図を見れば、老衰と脳卒中の多い都道府県は75歳以上の人の一年間の医療費は81万円なのに対して、老衰と脳卒中の少ない都道府県は、なんと20パーセントも高い103万円もかかっています。

日経新聞は炎上するのを恐れて、「老衰が多く脳卒中が少ないのが目指すべきモデル」などと言っていますが、脳卒中で人が死ぬのは自然なことです。「死=悪」ではありません。

今後、研究会などで、「この薬は脳卒中を減らします。だから医療費を削減することができとても有用です」などと、製薬会社の広告塔になって講演している医者には、生卵を投げつけてやって下さい。

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老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い

2021年09月02日 | 循環器


以前、製薬会社は「新しい抗凝固薬(薬価は従来の10倍)を使用すれば従来の抗凝固薬よりも脳梗塞はさらに減り、合併症の脳出血はさらに減る。脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる。」と言っていていましたが、私は以前、前者の説明は誤りであることを、エビデンスを示して証明しました。

製薬会社の金儲け手法の勝利


今回、「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」という主張も、誤りであることを証明したいと思います。

2021年5月21日、日本経済新聞は次の報道をしました。

大往生、医療費抑える モデルは神奈川・愛知・和歌山: 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本経済新聞は47都道府県、全市区町村について75歳以上の1人当たり医療費(年齢調整済み)、死因別の死亡数、健康や医療・介護に関わる約400項目のデータを分析しました。医療費が最も低い岩手県は74万6千円、最も高い高知県は113万7千円で約40万円の開きがありました。

上の図の表題には「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い傾向がある」となっていますが、X因子とY因子の相関を見ると、明らかに統計学的に有意(p<0.05)であると思え、「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い」は明らかです。日本経済新聞の人、相関係数とP値ぐらい計算して下さい。

そもそも、上述の「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」などという製薬会社の主張は誤りなのは当初から明らかです。その主張に乗っかかっている医者たちは恥ずかしいです。

近年、ある種のガンは治癒・寛解・抑制できるようになってきましたが、それで医療費が下がったかを考えれば答えは明らかです。

ガンが治り生き延びた人は、次に一定の確率で認知症になり、高価な薬を使用されるからです。また一定の確率で脳卒中になり、医療費がかかり、そこで生還したとしてもまた次の病気にかかるからです。こういうことが分からない医者は頭が悪いのだと思います。医者でも頭が悪い人はたくさんいます。

医療費を抑制するには、「最近まで血圧の薬を飲んでいたぐらいで元気だった人が、急死した」といういわゆる「ピンピン コロリ」が増える必要があるのです。

つまり、何かの疾病を免れた高齢者が、次の疾病にかかるまでに医療費を使用しないで死亡しないと、あるいはその疾病で一発で死亡しないと医療費は減らないのです。
高齢者はいつか必ず死にます。「死=悪」ではないのです。高齢者が新型コロナで死亡してもなにも悪ではありません。自然なことです。

国家全体の医療費というのは「医療で収益を得たいと考える人々(製薬会社のみならず、医者、看護師、介護士なども含まれます)の熱意の合計で決定される」のです。ある種のガンを根治させる薬はとんでもなく高いし(開発者は高く売りたいでしょう)、多種のガンを血液検査で発見できるキットの開発者は、その技術をなるべく高く売りたいでしょう。
ファイザーやモデルナやアストラゼネカは、なるべく高い値段でワクチンを各国に売りたいでしょう。そういうことです。

上の図は2つの因子の関連を調べるという単因子解析ですから、未知の交絡因子の存在は否定できません。

例えば、「医療費が低い都道府県は、もともと高価な医療技術や予防技術を持っておらず、それが脳卒中の増加の原因となった」などといういわゆる「因果関係の逆転」です。

しかし、今の日本で都道府県ごとに医療レベルが異なることなどありえません。どの都道府県でも、脳卒中の治療ガイドラインに沿って治療されます。

脳卒中治療ガイドライン

製薬会社の社員は、もう二度と「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」と言わないで下さい。
その主張は間違っています!!


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メタボ健診(特定健診)は効果がない(動脈硬化性疾患の危険因子改善に)

2020年11月29日 | 循環器
日本では2008年から、40~75歳未満の国民全員を対象として特定健診(いわゆるメタボ健診)が行われています。毎年、特定健診は約2,800万人、特定保健指導は100万人以上が受けています。
これは、日本人の死因の多くを占めている動脈硬化による血管疾患(心筋梗塞・脳梗塞)の主な原因は内臓脂肪の過剰な蓄積であるとの知見に基づき、腹囲を基準に内臓脂肪型肥満をスクリーニングして、男性では腹囲が85cm以上の場合は、生活習慣改善の特定保健指導を実施するという制度です。

これまでの研究では特定保健指導の一定の効果を示していたのですが、健康志向が高い人が特定健診を受ける割合が高く、そういう人は日頃から健康を意識しているという「交絡因子」の存在も考えられます。

そこでこの京都大学の研究では「回帰不連続デザイン」という検証方法が用いられました。

70~74歳の窓口負担が1割から2割へ増えても健康状態は悪化しない
で使用された方法と同様です。

つまり、腹囲が基準値を少し超えて指導対象になった人と、基準値を少し下回り指導対象にならなかった人の測定値の変化が比較されました。この方法により、「保健指導の対象になったかどうか」の違い以外は、「健康志向」など評価の難しい特性の影響を排除して比べることができます。その結果、保健指導を受けたかどうかだけが異なる群の比較ができるようになります。

Association of the National Health Guidance Intervention for Obesity and Cardiovascular Risks with Health Outcomes Among Japanese Men
JAMA Intern Med 2020 Oct 5;e204334. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.433

(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

メタボ健診・特定保健指導制度の課題を提言 -エビデンスに基づく制度改善に期待- — 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)

「保健指導を受けた群」と「保健指導を受けなかった群」で調査を始めて1年から4年後までの各測定値が比較されました。1年後まで調査できたのが39161人、2年後まで調査できたのが34293人、3年後まで調査できたのが31400人、4年後まで調査できたのが28975人でした。

結果は、上の図にあるように、糖尿病の数値、悪玉コレステロール値、血圧は「保健指導を受けた群」と「保健指導を受けなかった群」で差がなく、「特定健診やその後の保健指導」の効果は認められませんでした。(縦棒は95%信頼区間です)

体重だけは改善しましたが、これも1年間だけで、その後は差が認められませんでした。

今回の研究で著者らは、「保健指導制度は肥満の軽度改善にはつながったものの、血圧・血糖・脂質の改善は認められず、国民の健康状態を改善させるためには科学的な根拠(エビデンス)に基づき制度を見直し、必要に応じて改善し、より効果的なものにする必要がある」と結論付けています。

「特定健診」には公費が投入されています。効果がないものに費用をかけてほしくありません。
自分の今の数値を知りたいという目的なら仕方がありませんが、私は動脈硬化による血管疾患のリスクを軽減するという意味では患者に特定健診を勧めていません。

東京大学では製薬会社の広告塔になった科学的リテラシーの高くない主張が少なくないのに対して、さすが、京都大学は科学的リテラシーの高い主張が多いです。ディオバン事件を告発したのも京都大学でした。

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冠動脈カテーテル治療時のHbA1cは7.0%~7.5%が一番良い

2020年05月02日 | 循環器
冠動脈カテーテル治療時の糖尿病コントロールとその後の死亡率との関連に関して、日本国内から興味深く、素晴らしい論文が発表されました。

Increased Risk of Cardiovascular Mortality by Strict Glycemic Control (Pre-Procedural HbA1c 6.5%) in Japanese Medically-Treated Diabetic Patients Following Percutaneous Coronary Intervention: A 10-year Follow-Up Study
Cardiovasc Diabetol 2020;19:21

(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

研究対象となったのは冠動脈カテーテル治療を行った糖尿病患者4542人で、糖尿病の重症度を示すHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値と心臓血管病による死亡、突然死との関係がその後約6年間(中央値)調査されました。

結果は上の図にありますように、HbA1cを6.5%以下に厳格に治療されている患者では、心臓血管病による死亡、突然死が増えてしまうというものでした。

HbA1cは貧血の程度を表すヘモグロビンの値からも影響をうけますので、多変量解析も行われています。交絡因子として、年齢、性別、病変数、血圧値、コレステロール値、血糖値、糖尿病罹患年数を考慮したModel 1でも同様の結果でした。また、年齢、性別、血圧値、血糖値、ヘモグロビン値、βブロッカーの使用の有無、腎機能(eGFRなんですが、eGFRを算出するのに年齢や性別が使用されるので、二重に補正されてしまっていると、個人的には思います)、糖尿病罹患年数、インスリン使用年数を交絡因子として多変量解析したModel 2でも同様の結果でした。

結果はHbA1c7.0~7.5%を最良とするUカーブになりました。

著者らが述べているように、この研究は2000年~2016年の冠動脈カテーテル治療を対象としているので、最近登場し心臓疾患の予後を改善するとされているSGLT2阻害薬が治療薬として含まれていないという限界があります。

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薬物治療で十分に治療されていればカテーテル治療は不要

2019年12月26日 | 循環器
先月の米国心臓病学会でISCHEMIA(イスケミア)研究の結果が発表されました。

International study of comparative health effectiveness with medical and invasive approaches (ISCHEMIA trial)

以前私は、一定の条件に合致する患者に対して、心臓の血管のステントを入れる治療とバイパス手術を行った場合その3年後までの予後がどちらが良いかという臨床研究の結果を報告しました。

心臓バイパス手術 vs ステント治療 CREDO-Kyoto

こういう比較研究を私は長年見続けてきましたが、結局、調査の対象にする患者の条件をどうするかによって結果は異なるし、時によって調査を行う研究者がある特定の結果を狙って条件を設定することもあります。

結果の前にお伝えしておきますが、この結果は以前から私の頭の中では当たり前のことでした。これまでカテーテル治療に使用するステントや風船を売る欧米の企業が資金を出して条件をカテーテル治療に有利になるように設定して、バイパス術や薬による治療だけよりもカテーテル治療が良いという研究をたくさん行ってきました。

最近、治療が必要かどうかを判断するための圧測定ワイヤーが風船カテーテルと同等の値段で発売されるようになり、企業はカテーテル治療を推進しなくてもこの診断ワイヤーで利益をあげることが可能になってきました。ISCHEMIA研究の内容の最後の方を読みますと、これらのワイヤーや心筋梗塞のリスクを減らす薬を売る企業が軒並み資金と道具を提供してバックアップしています。ちなみにその会社はアボット、メドトロニック、セントジュード・メディカル、フィリップス、オムロン、アムジェン、アストラゼネカなどです。

さて、本題に戻ります。この研究は中等度~重症の冠動脈疾患の患者を対象にして行われました。

中等度~重症の患者の定義は
冠動脈CTの結果、心臓の主な血管に50%以上の狭窄があり、負荷心筋シンチグラム検査で心臓の筋肉全体の10%以上の範囲で血液不足が認められる患者
冠動脈CTの結果、心臓の主な血管に70%以上の狭窄があり、運動負荷心電図で心臓の筋肉の血液不足が証明された患者

調査から除外する患者の基準は
左室駆出率といって心臓のポンプ機能を表す指標が35%以下と低下した患者
過去1年間に心臓バイパス術やカテーテル治療を受けた患者
過去2ヶ月間に心筋梗塞や不安定狭心症になった患者
心不全の指標であるNYHAが3,4と、心不全が重症の患者
左の血管の根本に50%以上の狭窄がある患者

これらの患者に十分に適切な薬物治療を施したうえでランダムに心臓カテーテル治療を行う群2588人と、行わずに薬物治療だけの群2591人に振り分けてその後4年間の予後(心臓病による死亡、心臓病による入院)を比較しました。結果はどちらの群も予後は同じでした。結局、このような患者には冠動脈カテーテル治療は必要ないということです。

このような臨床研究は小規模ですが日本でも行われています。

Percutaneous coronary intervention plus medical therapy reduces the incidence of acute coronary syndrome more effectively than initial medical therapy only among patients with low-risk coronary artery disease a randomized, comparative, multicenter study.
JACC Cardiovasc Interv. 2008;5:469-79


このJ-SAP試験では心臓の血管に75%以上の狭窄がある患者が対象となったのですが死亡率は両群で同じで、死亡+心筋梗塞や不安定狭心症の発症率が心臓カテーテル治療を行う群で少なかったです。心筋梗塞や不安定狭心症は、たとえ軽度や中等度の狭窄であっても心臓の血管の不安定な動脈硬化部の破裂から生じますので悪玉コレステロールや血圧を低くしておくことが重要であり、それが不十分であると心臓カテーテル治療を行う方が良いという結果です。しかし、このJ-SAP試験ではカテーテル治療した部位以外の軽度や中等度の狭窄の不安定な動脈硬化部の破裂から生じた不安定狭心症はカテーテル治療した群であっても防ぐことはできませんでした。

このJ-SAP研究と今回のISCHEMIA研究ではなぜ結果に違いが生じたかということですが、J-SAP研究では左室駆出率が30%以下が除外基準ですので30%~35%の比較的心不全の悪い患者が含まれています。左室駆出率は生命予後に関係することはこれまでの研究で十分に明らかになっており、血流を回復させると左室駆出率は回復する傾向がありますので、カテーテル治療でそれらの患者が救われたことが挙げられます。

また、J-SAP試験では悪玉コレステロールが125~106mg/dlですが、ISCHEMIA試験では83mg/dlであり、十分に下げられていたのでカテーテル治療の有無よりもこの因子が良い影響を与えたことも挙げられます。同様にJ-SAP試験では血圧が約140/70mmHgですが、ISCHEMIA試験では130/77mmHgであり、十分に下げられていました。

極めつけは、J-SAP試験は日本というカテーテル治療が上手な医者が多い国(医療先進国)だけの結果ですが、ISCHEMIA試験はブラジル・ロシア・インドなど、とうてい医療先進国とはいえない国を含んだ試験です。インドでは主婦は0.5回/日、井戸水を汲みに行くという結果が出た場合、あなたは日本の隣の奥さんも2日に1回は井戸水を汲みに行っていると思いますか??という例えが分かりやすいと思います。
医学の臨床研究では、世界の平均としての結果は日本人には当てはまらないことの方が多いです。

医療後進国を組み込んで、意図的に別の結果を狙うというのは、私が以前ご紹介したとおりです。

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その8)

このように、研究の対象とする患者の基準をどうするかで、研究の結果は変わります。さらに研究者は研究の対象とする患者の基準をどうするかで結果を自分たちの狙いに近づけることが出来ますし、実際、資金を企業が出している研究では大にしてそのようなことが行われます。

企業が資金を出すとろくなことになりません。その反面、資金がないと研究もできないので悩ましいのですが、やはり研究資金は公共機関が捻出するべきです。製薬企業は講演料と称して自分の企業の広告塔になってくれる医者を捜し、その医者に講演料をつぎ込み自分の企業に有利な講演をしてもらう。私もこれまで何度も製薬会社から広告塔として目を付けられましたが、講演自体を断るか、講演料と交通費の受け取りを断って真実を講演してきました。心臓カテーテル治療の学会に行くと参加者の半数以上が企業の社員です。これはもう「学会」ではありません。「製品展示会」です。

ともあれ、薬物治療で十分に治療され、悪玉コレステロールは80mg/dl、血圧は130/80mmHgにコントロールされていれば、心臓の血管のカテーテル治療を行っても予後は変わらない(施行する必要がない)ということが言えます。私たちはこういう患者に、外来でカテーテル治療を詳細に説明して勧めなくてすむので、随分楽になります。

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コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?(その2)

2017年11月24日 | 循環器
前回のREAL-CAD試験(コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?)の続きです。

上の図はインターネットでダウンロードできるものですが、リバロは1mgよりも4mg投与すると、一番割合が高いのはLDLコレステロールすなわち悪玉コレステロールの低下ですが、HDLコレステロールすなわち善玉コレステロールも1~2%上がって良い効果が認められています。さらに割合は低いですがCRPといって炎症を示すマーカーも有意に改善されています。

この臨床研究の効果は悪玉コレステロールが低下したためなのか、善玉コレステロールが上昇したためなのか、炎症が改善したためなのか、今回発表された結果からだけでは解析することができません。将来サブ解析の結果が発表されるでしょうから、それを待たねばなりません。

約4年間で「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」の発症率が1%低下したわけですから、1年間のnumber needed to treat(NNT)は400、すなわちこのような二次予防(一度心筋梗塞や狭心症を発症した人)は、リバロを1年間、1mg/日ではなくて4mg/日内服すると400人に1人の割合で恩恵が得られるということです。恩恵が得られる人の割合は大きくありません。

さて、今回発表されたサブ解析の結果ですが、上の右の図にあるように、65歳以上ではリバロを1mg/日ではなくて4mg/日内服する効果は得られていません。同様に「BMIが25以上の太った人」には効果がありますが、25未満の方には効果はありませんでした。「糖尿病のある方」には効果がありましたが、「糖尿病のない方」には効果がありませんでした。「男性」では効果がありましたが「女性」には効果がありませんでした。

それでは、「糖尿病のない方」で「BMIが25以上の太った」「男性」はどうか?などとさらなる細分化の結果はまだ発表されていませんが、ここから見えてきたのは、「太った男性で65歳未満の糖尿病患者」にはリバロを1mg/日ではなくて4mg/日内服するのがよいだろうということです。

そして、他のコレステロール低下薬には善玉コレステロールを改善させる効果はありませんので、今回の結果がリバロ以外の悪玉コレステロール低下薬に応用できるとは限りません。

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二次予防にコレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?

2017年11月21日 | 循環器
学会で発表するためにアメリカのアナハイムに行ってきました。
大きな学会にはレイト・ブレイキング・セッションといって、世界に先駆けて臨床研究結果が公表されるというセッションがあり、このような発表で企業の株価が左右されたりします。

今回は日本から、私が「循環器内科の良心」であると尊敬申し上げている京都大学の木村教授からREAL-CAD試験(コレステロール低下薬 リバロは1mgがいいか4mgがいいか?)の結果がついに公表されました。

私も直接拝聴いたしました。
この試験は、これまでに心筋梗塞や狭心症を起こした患者を対象にして、コレステロール低下薬 リバロを一日1mg内服する群と一日4mg内服する群に割り付けて、その後約4年間の「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」「不安定狭心症」の発症率が比較されました。

上の図はインターネットからもダウンロード出来るスライドですが、4年間で1mgで5.6%の発症、4mgで4.6%の発症と、4mgを内服した方が有意に「心臓血管死」「心筋梗塞」「脳梗塞」「不安定狭心症」の発症は低くなりました。

その他、いろいろ付随情報もたくさん発表されましたが、それに関しましては明日またお伝えします。


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心臓の血管内の血圧が測れる(FFR)ワイヤーは有用でなかった研究

2017年05月08日 | 循環器
昨年の米国の学会で発表された結果ですが、研究者たちの名前で検索してもその論文が出てこないので、ここでお伝えします。

Functional Testing Underlying Revascularization: The FUTURE trial
Rioufol G, Mewton N, Rabilloud M, et al.


上の図の左のように、最近心臓の血管に入れてその中の圧力を測定することができるワイヤーが開発されました。日常の診療でも使用できるようになりましたが、値段は13万円以上と高いです。

心臓の血管に狭いところがあるとその部分より先の方の圧力は下がります。当然のことながら狭い程度(狭窄度といいます)がきついほどその先の圧力は低下します。このワイヤーを使用した場合のその狭窄部位を治療した方がよい目安は奥の圧力が手前の圧力の80%以下であった場合とされています。

その評価方法で本当に患者の将来的な予後が評価できるか、を検証しようとした臨床研究です。

左冠動脈前下行枝の狭さが半分以上で多枝病変の安定狭心症で、1,728人の患者が研究の対象となる予定でした。1つの群はこのワイヤー(functional flow reserve ワイヤー:FFRワイヤー)を使用して、狭い所の奥の圧力が手前の圧力の80%以下であった場合ステンと治療や風船治療を行う群です。

もう1つの群では、狭さが半分以上で(通常は4分の1以下まで細くなると狭心症などの心臓の筋肉の血液不足の症状が出るとされています)「人間の目」でみて判断してステンと治療や風船治療が行われました。心筋シンチグラムなどの非侵襲的な検査はこの群には可能とされました。

結果ですが、真ん中の図のように、FFRワイヤーを使用して判断した群の方が、全ての死因による死亡が増えてしまったので、936人が研究に参加している時点で倫理委員会からこの研究への新たな患者の参加を中止するように勧告を受けました。

そして最後まで(1年後まで)経過を追われたのが797人でした。その結果上の図の右にあるように、「死亡、脳卒中、心筋梗塞、治療の再試行」は両群で同じでした。

結果が同じなら、このワイヤーを高いお金を出して使用しなくても、心筋シンチグラムや「人間の目」でみて判断して治療方針を決めれば良いということです。


このワイヤーは業者が儲かるため、数社の業者が参入して、「科学的理由」ではなく「商業的理由」で学会などで取り上げられることも多くなってきて、医者もそれらの業者の広告塔として巻き込まれています。

この研究結果を踏まえて、もう一度、考え直した方が良いと思います。

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製薬会社の金儲け手法の勝利

2017年03月03日 | 循環器
さて、私は5年前に
真実を曲げてしまう要素(その1)

を書きました。皆さんもこの記事のアンケートに、あらかじめご自分の意見を決めて参加してみて下さい。

先月のHeart Viewという、心臓の内科の分野では専門家が最新の情報を伝えてくれる参考書で、新しい抗凝固薬が特集されていました。

その中の9ページにこんな記載があります。

「つまりCHADS2-VAScスコアーが1点の例に抗凝固療法を行う場合はワルファリンではなくダビガトランはどのDOAC(新しい抗凝固薬)を選択したい」と書かれています。

しかし、私はこれまで多くの根拠を示しながら、それは誤りで、製薬会社の陰謀であることを示してきました。

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その4)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その5)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その6)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その7)

心原性脳塞栓症予防の最前線 広がる誤った情報

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その8)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その9)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その10)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その11)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬イグザレルトの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬イグザレルトの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

でも、新しい抗凝固療薬に関して、間違っているのにそれが正しいと宣伝され、参考書までが間違った事を堂々と書くようになってしまっているのです。

さて、「なので」はどうでしょうか?
「なので」という言葉は、中学生の時に結構頑張って国文法を勉強した私にとって、なんとも不思議な言葉です。

国文法で説明すると、「なので」は助動詞「だ」の連体形または形容動詞の連体形語尾「な」に、原因・理由を表す接続助詞「ので」の付いたもので、文頭に置いて接続詞としては使えない言葉です。「なので」という言葉は「明日は雨なので、傘を持っていったほうがよい」というふうに用いる言葉です。ですから、当然広辞苑には、「なので」という接続詞は載っていません。

「なので・・」には柔らかい響きがあるので、女性に好まれて使われているのかもしれませんが、正しくは「だから・・」か、「ですから・・」です。
広辞苑には、
「だから」は、(接続詞)前に述べた事柄が、後に述べる事柄の原因・理由になることを表す語
「ですから」は、(接続詞)「だから」の丁寧な言い方、と書いてあります。

「なので」は国文法的に間違っているのに、今やほとんどの人が正しいと思って使っている状況を鑑みると、間違っていることも2年間ぐらい正しいと言い続ければ(思い続ければ)「正しい」こととなってしまうのかと、私はとても悲しいです。


効果がほとんど同じなのに、約10倍も高価な薬を患者に売っている。
これは、「医者の科学者としての側面」「製薬会社の金儲け手法」に敗北した瞬間でもあります。

私はこれからも製薬会社の陰謀と戦い続けます。

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心房細動に対する新しい抗凝固療薬イグザレルトの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

2016年12月28日 | 循環器
レイト・グレイキング・クリニカル・トライアルの会場は満員でした。 私は立ち見で ↑ここから聴いていました。


米国心臓協会学会で発表するためにニューオリンズに行ってきました。
レイト・グレイキング・クリニカル・トライアルの会場で以下の臨床研究の結果を聴きました。

名付けて「パイオニア AF-PCI研究」というのだそうです。

Prevention of bleeding in patients with atrial fibrillation undergoing PCI
N Engl J Med November 14, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1611594
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

これは、心臓の血管に対してステント治療や風船治療をすると動脈系のさらさら療法として2種類の抗血小板薬を内服しなければならないのですが、そんな患者が心房細動の場合、静脈系のさらさら療法として抗凝固薬を内服しなければならなくなり、合計3種類内服しなければならないけれど、このような場合でも新しい抗凝固薬であるイグザレルトの効果は従来の薬ワーファリンと比較してどうか、という臨床研究です。

結果は、ワーファリンと比較して出血性の病気が少なかったので、新しい抗凝固薬であるイグザレルトの方が良い場合がある、ということでした。

原文はこちらです。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1611594

以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)の記事で、新しい抗凝固薬であるエリキュースの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。


上の図はこの臨床研究のデザインです。レイト・グレイキング・クリニカル・トライアルの会場で表示されていました。これを見ると、「あれ~っ?」と思えるのです。それは、この臨床研究で使用されているリバーロキサバン、すなわちイグザレルトの欧米での通常容量は1日20mgです(日本では15mgです)。でもこの研究では、動脈系のさらさら療法として2種類の抗血小板薬と静脈系のさらさら療法として1種類の抗凝固薬の合計3種類内服しなければならないので、さらさらになりすぎて出血性の病気が起きるのを懸念して、イグザレルトは1日15mgに減量していることが、上の左の図を見るとわかります。

でも、なぜかワーファリン群に対してはそんな懸念がおかまいなしで、さらさらの程度を表すPT-INRという血液検査の値は従来の2.0~3.0のままであるということも、上の図からわかります。

イグザレルト群がさらさらになりすぎるのを懸念して減量するのなら、なぜワーファリン群もさらさらの指標を低くして1.6~2.6とかにしないのでしょうか?不思議ですね。科学的とは言えないです。「パイオニア研究」とは、名前負けしていませんか?

よほど、ワーファリン群の成績を悪くしたかったのでしょうね。あ~あ、という感じです。


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それでは皆様、よいお年を!
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心房細動に対する新しい抗凝固療薬イグザレルトの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

2016年12月19日 | 循環器
米国心臓協会学会で発表するためにニューオリンズに行ってきました。
レイト・ブレイキング・クリニカル・トライアルの会場で以下の臨床研究の結果を聴きました。

Prevention of bleeding in patients with atrial fibrillation undergoing PCI
N Engl J Med November 14, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1611594
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

これは、心臓の血管に対してステント治療をすると動脈系のさらさら療法として2種類の抗血小板薬を内服しなければならないのですが、そんな患者が心房細動の場合、静脈系のさらさら療法として抗凝固薬を内服しなければならなくなり、合計3種類内服しなければならないけれど、このような場合でも新しい抗凝固薬であるイグザレルトの効果は従来の薬ワーファリンと比較してどうか、という臨床研究です。

結果は、ワーファリンと比較して出血性の病気が少なかったので、新しい抗凝固薬であるイグザレルトの方が良い場合がある、ということでした。

原文はこちらです。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1611594


以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

の記事で、新しい抗凝固薬であるエリキュースの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

上の図の右側が今回の臨床試験に参加した国です。レイト・ブレイキング・クリニカル・トライアルの会場で表示されていました。

でました!国家ぐるみでドーピング、ハッキングしてもシラをきるロシアが265人も参加しています。参加人数はドイツの295人に次いで二番目です。その他、例のごとく、ルーマニア、メキシコ、ウクライナ、ブラジル、チリなんて国も参加しています。

よほど、ワーファリン群の成績を悪くしたかったのでしょうね。あ~あ、という感じです。

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