医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

慢性被ばくでガンの発症が減る(その3)

2011年08月26日 | 
被ばくにより発ガン率が減少すること「放射線ホルミシス」を耳にした方は多いと思いますが、そのデータがどの医学雑誌の何ページに記載されているか知っている方は多くないと思いますので、お伝えするシリーズです。

Background radiation and cancer incidence in Kerala, India-Karunagappally Cohort Study.
Nair RRK, Rajan B, Akiba A, et al.
Health Phys 2009;96:55.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この論文は入手するのに苦労しました。

インドのケララ地方は、トリウムという放射性金属を含む鉱石が多く存在し自然界からの被ばくが多いことで有名です。住民は皆、年間平均70ミリシーベルトの被ばくをしています。

この調査は1990年から始められ、173,067人(30~84歳)の住民の被ばく量を訪問による聞き取り調査と住所によって推測し、2005年まで1人につき平均10.5年調査されました。

データは、性別、年齢、教育レベル、職業、タバコの使用(この地方では通常のタバコは高価であまり使用されず、噛みタバコだそうです)の有無により補正されました。

上の表7に示されているように、調査期間の被ばく量合計は0~49ミリシーベルトの年間調査のべ人数211,968人から、500ミリシーベルト以上の6,355人までさまざまでしたが、合計被ばく量が0~49ミリシーベルトの人のガンによる死亡率を1とした場合、500ミリシーベルト以上まで差はなく、被ばくによるガン(白血病の場合も)による死亡のリスクは合計被ばく量500ミリシーベルト以上でも上昇しませんでした。

すでにお気づきのように、以前お伝えした下記の調査では被ばくにより「ガンによる死亡」は減っていましたが、この調査では減っていませんでした。

慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

その理由の1つとして、私個人の推測ですが、インドの医療水準がアメリカや台湾ほど高くないことが挙げられると思います。本当にガンによる死亡なのかが明らかでないケースがあり、その検出力の弱さも、結果に影響したのだと考えられます。この論文では「ガンによる死亡」が調査されていますが、実際は「明らかにガンを原因としない死亡を除く死亡数」と表現したほうが正しいのかもしれません。

いずれにしても、生涯の慢性全身被ばく量が500ミリシーベルトではガンによる死亡は増えないことは明らかです。

従って、成人の場合被ばくが年間5ミリシーベルトだ、10ミリシーベルトだと騒ぐのはあまり的を射ていないと言えます。

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コメント (1)
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