医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

東京電力から東大に多額の寄付金

2011年03月30日 | 雑感
以下はINSIGHT NOWの記事より引用

なんと5億円!寄付講座だけでも、これほどの大金が、東京電力から東京大学大学院の工学研究科にジャブジャブと流し込まれている。これは、東大の全86寄付講座の中でも、単独企業としてあまりに突出した金額だ。東大だけではない。東工大や慶応義塾大学など、全国のあちこちの大学の大学院に、東京電力は現ナマをばらまいている。これらの東京電力のカネの黒い本性は、2002年の長崎大学大学院で暴露された。そもそも東京電力が、自分の管区とはほど遠い長崎大学に手を伸ばしたことからも、手口の異様さがわかるだろう。

長崎大学医学部は、戦前の官立六医大の一つという伝統を誇り、その大学院医学研究科を2002年4月から医歯薬学総合研究科へと発展させることになった。ここに突然、東京電力が、9000万円で講座を寄付したい、と言い出した。テーマは、低線量放射線の人体影響。そのうえ、その趣意書からして、原発推進とも受け取れる表現が踊っていた。これに対し、当時の学長、池田高良(まさに被曝腫瘍が専門)は、趣意書の書き直しのみで、カネの受け入れを強行しようとした。

このため、学内外から猛烈な反対論が沸き起こり、夏には混乱の学長選となった。おりしも、東京電力は、福島第一原発三号機で、炉心隔壁のひび割れの事実を伏せたまま、97年にむりに交換し、二千人近い作業員にかなりの被曝をさせ、その後もこの事実を隠蔽し続けていたことが、ようやく発覚した。もはや、なぜ東電が被曝後遺症を扱う池田学長に唐突に大金の話を申し出たのかは明白だ。かくして、代わって斎藤寛(公害問題が専門)が学長に当選。長崎大学は、9月に臨時教授会を開き、東京電力の寄付講座受け入れを取りやめ、すでに大学側に振り込まれていたカネ全額を東京電力に突き返した。

1956年に水俣病が発見された際、地元の熊本大学は、ただちに現地調査を行い、有機水銀が原因であることを特定し、チッソに排水停止を求めた。ところが、日本化学工業協会は、東大教授たちに水俣病研究懇談会、通称「田宮委員会」を作らせ、連中が腐った魚を喰ったせいだ、などという腐敗アミン説をでっち上げ、当時のマスコミも、この東大教授たちの権威を悪用した世論操作に乗せられて、その後も被害を拡大し続けてしまった。
(以上引用)

↓東大が公に閲覧できないようにしてしまうかもしれないので、お早めに閲覧下さい。
(資料)東大の寄付講座への寄付金額

なるほど、だから東大の教授は今回の原発事故に関してテレビで東電の不利になることを言えないのか。さらに、東京電力の幹部に東大出身の者がいて、東京電力→(研究寄付金)→東京大学→(低被ばくは安全というような研究データを出す)→東京電力→(研究寄付金)→・・というサイクルが出来ているのだ。


東京電力は事故直後のアメリカの技術支援の申し出を断っています。アメリカの技術者に原発内に入られて知られるとまずいこと(ずさんな管理体制など)があったのでしょう。最近やっとフランスの技術者を受け入れたのは、今はもう原発の中がバラバラで、知られるとまずい証拠が隠滅できたからと考えるのが妥当です。
世の中インチキだらけだから、注意が必要です。


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早期胃ガン発症後のヘリコバクター・ピロリ除菌の有用性

2011年03月28日 | 消化器
以前、8年間の調査で、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープ、潰瘍はないけれど「もたれ」「不快」「胸焼け」などの消化障害を認めるヘリコバクター・ピロリ保菌者の2.9%が胃ガンを発症しましたが、非保菌者からは胃ガンは発症しなかったことをお伝えしました。

また、別の調査では5年間でピロリ菌保菌者の胃ガン発症率は3.8%、除菌に成功した者の発症率は1.2%であったとお伝えしました。

それでは一度早期胃ガンに罹患した場合、再発率の差はどうなのかということで、論文を調べてみました。超一流誌に日本人の研究が載っていました。素晴らしいです。


Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial.
Lancet 2008;372:392.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★☆)

ヘリコバクター・ピロリ保菌者で早期胃ガンと診断され、内視鏡手術で治療された544人を、ヘリコバクター・ピロリ除菌群(272人)と非除菌群(272人)に分けて(この研究は除菌が胃ガンの発症率を減少させることがまだ確立されていなかった頃のものです)、その後の胃ガンの発症を内視鏡で定期的に注意深く検査されました。

除菌群では203人が除菌に成功し、非除菌群と比較されました。一度早期胃ガンに罹患した患者の3年間の胃ガンの再発率は、除菌群で4.4%非除菌群で8.8%でした。



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地震で思うこと、セカンドオピニオン

2011年03月21日 | 雑感
                     阪神淡路大震災の時の復興費用の出所

「100%電気に頼った生活から脱却できるかが課題だ」などという、ありきたりな意見はこのブログの趣旨に合いません。このブログの趣旨は「セカンドオピニオン」です。今回の地震で感じたことを誤解や批判を恐れず、ななめ後ろから感じた「セカンドオピニオン」をお伝えしたいと思います。

考えるヒント 小林秀雄(文春文庫)

●在日外国人の国外待避について
ご存じのように、原発事故による被ばくのリスクから逃れようと、在日韓国人や在日中国人が韓国や中国へ待避しています。自分たちにリスクがさし迫った時に、このように日本国外に脱出する人たちには、やはり「参政権など与えられない」と改めて思いました。リスクがさし迫った時に脱出する人たちの政策への考え方は、被災した人々に心を寄せて皆で協力し合おうという日本国民の気構えとずれが生じ、的確でなくなってくるのは明らかです。ああいう人たちから政治献金をもらっていた現首相や前外務大臣を私たちは厳しく評価しないといけないです。民主党には在日韓国人に関係が深い人たちが本当に多いです

●寝たきり認知症高齢者の看護について
「震災を認識できないほどの認知症の高齢者がストレスを募らせ精神的に不安定になっているため介護スタッフはほぼ無休で働き続けて限界に達している」などという報道があります。しかし「死=悪、命至上主義」という認識を強くして「震災を認識できない認知症の高齢者」を助けようとするために、若いご自分の命をかけるほどの事ではないと思います。それらの「高齢者」の方々は今回やっと天国に召され、亡くなった後は残された者たちが亡き人を大切に弔い、いつも心を寄せてあげられれば、天国で幸せな日々を送れると思うのです。命は平等と言われますが、命には時間的な限りがあります。「震災を認識できないほどの認知症の高齢者も自分の若い命をかけてでも助ける」などというと、自分自身に対してあるいは世間に対して心地よいかもしれませんが、若い命の方々は、これからの日本のことも考える必要があるのではないでしょうか。やはりご自分は生き残るべきです。

群馬大学の教授が、以前から岩手県の小中学生たちに津波時学校からの避難方法を何度も現地に赴いて指導し、そのおかげでそこの子どもたち全員が難を逃れたと報道されていましたが、この素晴らしい話は「震災を認識できない認知症の高齢者」の話の対極にあると感じました。その教授がなぜ小中学生を選んだか、ここで申し上げるまでもありません。

医者の中にも「死=悪、命至上主義」で少しずれてしまっている方を時々見かけます。

●放射線被ばく量と割りばし事件について
今回のことで、放射線被ばく量に関することが理解できた方は多いと思います。大人は年間100ミリ・シーベルト(年間6回ぐらいまでのCT検査)以上で問題が生じてきます。しかし、妊娠の可能性のある女性や妊娠中の女性には、1回のCT検査の被ばく量(15ミリ・シーベルト)で問題が生じ始めます。従って、そのような状態の女性にはCT検査による有用性が、リスクを上回るかどうか慎重に検討してCT検査の決定がなされます。小児の場合も同様にCT検査にはリスクが伴います。医者なら誰でも小児にCT検査をすることに関して慎重になります。東京消防庁の隊員たちの作業中の被ばく量が合計30ミリ・シーベルト以上になったら隊員たちは脱出しなければならなかったという報道もあったぐらいです。放射線量のスケールはこちらです

以前、お子さんが割りばしを口にくわえて転び、その割りばしが脳に達して亡くなった「割りばし事件」がありました。裁判所は「気付いて直ちに脳神経外科医に引き継いだとしても、救えた可能性は極めて低かった」と判断して担当医を当然無罪とする一方で、裁判官は医者に慎重な診察を要求しましたが、子供にガンの発症のリスクの増大を負わせてCT検査が必要かどうかは誰にも判断できないのではないかと思います。

以前「FNNスーパーニュース」(フジテレビ系)のキャスターだった黒岩氏は、怒りを込めて次のようにコメントしました。「どうしてドクターはCTスキャンなどしなかったんでしょうね。信じられませんね。そういう基本的なことさえキチンとしていればこんなことにはならなかった。ご遺族の気持ちを思うといたたまれないですね」。しかし、その後以下のコメントを発表して反省しておられました。「我々は割り箸が脳に刺さっていたという結果を知った上で判断していた。だからこそ医師の対応に「信じられない」という言葉を軽々しく使えたのだ。医師が4歳児への問診の中でどこまで類推しうるものなのか? そういう想像力を私も働かせず、素人判断でコメントしていたのである。その危うさに気づいていなかった私自身、「知的な劣化」といわれても仕方がない」と。

「あと知恵バイアス」や「後出しジャンケン」で出来事を評価するのはアンフェアーです。

●津波被災とライフベストについて
ライフベストをご存じでしょうか。浮力のあるスポンジのようなものがベスト型になっていて身につけるものです。釣り人などが身につけているのをテレビなどで見たことがある人は多いと思います。私は学生時代に競技用ヨット(ディンギー)をやっていて、今でも一級船舶免許を更新しています(ペーパードライバーです)。ライフベストを着ていて海に投げ出されたことも何度もあります。その経験は体験した人でなければわからないと思いますが、一旦は海の奥深くに沈められますがライフベストの浮力のおかげで溺れることは全くありません。このライフベスト、昔は1万円以上しましたが今は5千円以下で手に入ると思いますし、値段が高いのは装着後の活動性(釣りとか操船とか)を低下させない工夫が施されているためで、そういうことにこだわらずに単に溺死防止のためのライフベストならもっと安く手に入れることができます。

さて、今回被災した状況を見ていてこのライフベストの話が全く出てこないのを、ずっと不思議に感じていました。津波で死亡した方々の死因の多くは溺死と長時間の冠水による低体温症でしょう。ライフベストを着る時間はほんの数秒ですから、地震を感じて津波注意報が出されたらまずライフベストを着るというような対策は取られてこなかったのだろうか、たとえ津波で流されてもとりあえず浮かんでさえいれば漂流物の上に乗って救助を待つなどの時間がかせげてもっと多くの方々が助かったのではないかと、昔、海に何度も投げ出された自分には、そのような疑問が頭から離れません。これは私の「あと知恵バイアス」なのでしょうか?

キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) シーサイドフローティングベスト2 レッド MC-2548

●自衛隊派遣について
今回の救助活動・復興における自衛隊の貢献度ははかりしれないです。以前、自衛隊の海外派遣に大反対だった政党が、今回は自衛隊を派遣して事態を収拾しています。結局、自衛隊の派遣によってそこの住民は助けられるわけだから、その混乱が戦争で起きているか天災で起きているかの違いだけで、憲法がどうのと言って派遣に反対した政党がはたしてあの時正しかったのだろうかともう一度考え直す必要があります。全ての国民は他国から仕掛けられる戦争を避けたいと思っているのであり、戦争したいと思っている日本人は一人もいないのです。

●義援金について
大学生や若手社会人などが「被災した人たちのために自分にできることから始めたい」と言って500円玉をチャリンと義援金箱に入れ、次の日には美味しいものを食べていたりするのでは偽善とかスラックティビズムと言われてもしかたがありません。「被災した人たちのために・・」というのであれば、その義援金を払うことでその社会人自身も苦しくなる金額でないといけない。それではいったい国民1人あたりいくらの復興費用が必要になるのでしょうか。資料を調べて計算してみました。

復興費用は、阪神淡路大震災の時が10兆円だったことから算出して20兆円規模、加えて経済損失が16~17兆円と見積もられています。合計36~37兆円のうち、政府は保有する米国長期国債などを売却することによって復興費用を確保しようとします。上の図は阪神淡路大震災の時の復興費用の出所ですが、個人の割合は10%です。36兆円の10%である3兆6千億円を日本の人口で割ると、義援金は1人約3万円必要ということになります。四人家族なら12万円です。これは平均値ですから、平均年収の世帯で1人3万円、それより高い年収の世帯ではさらに必要な義援金・寄付金は高くなります。

民主党は「復興増税」を考えているようですが、これでは政府は痛みを感じませんし消費も冷やしてしまいます。確定申告をしている方は、コンビニの募金箱や街頭での募金箱ではなく、必ず日本赤十字社や報道機関等に対する義援金等で「領収書」の出る形で寄付を行ってください。寄付金を寄付金控除や損金算入できます。そうすると寄付できる余地が実質的に上がります(国という単位でみれば国の税収が減るので国の苦労は同じなのですが)。そう考えると、街頭で楽器を演奏して募金を集めている人たちが、集まった募金を日本赤十字社に渡す際に得る「領収書」で、その方が儲けになってしまうことはないのかという疑問が湧いてきます。そうすると、義援金は募金箱に入れるより、確定申告しない人も「領収書」が発行されるかたちで募金して、その領収書がなんらかの形で活用できる方がいいでしょう。

政府も国民も痛みを分かち合うという意味では「今年は確定申告しない人でも」震災復興の寄付金を税控除や損金算入できるシステムの導入がベストだと思います。私は確定申告をしていますので日本赤十字社に20万円寄付しました。苦しいです。そして今後、民主党が「復興増税」をするならそれにも甘んじなければならないです。

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被ばく量について、悪意に満ちたNHKの報道

2011年03月16日 | 
今日は福島市で1時間に21.4マイクロ・シーベルト(ミリ・シーベルトではありません)の放射線量が観測されたとNHKで報道されていました。北茨城市では1時間に15.8マイクロ・シーベルトだそうです。

上の画像のように、1回の胸部レントゲン検査が50マイクロ・シーベルトなので、福島市の放射線量はそれ以下で全く心配ないと報道しています。しかし、ここでも昨日お伝えした「時間」の概念が全くありません。昨日の私のブログの記事を理解された方なら、もうこの報道の間違いにお気づきだと思います。アホか!と言いたいです

1時間に21.4マイクロ・シーベルトということは、このままの状態が今後も続くならば、1か月間に福島市で被ばくする量は21.4 x 24時間 x 30日 = 15408マイクロ・シーベルト、すなわち15.4ミリ・シーベルトです。1回の胸部レントゲン検査は、あくまでも1回のものなのです。胸部レントゲン検査を連続で何千枚と撮り続ける状況などまったくあり得ません。しかし、福島市の住民は、まさそういう状況に置かれる可能性があるのです。

6か月この状態が続けば、15.4 x 6 = 92.4ミリ・シーベルト(6か月間)の被ばく量となり、ガンの可能性が増えてくる100ミリ・シーベルトに近づいてきます。

少なくとも、この辺の妊婦さんと子供は疎開するべきではないでしょうか?
全身被ばくと局所被ばくでは状況は異なりますが、

妊娠可能な女子の腹部には3カ月で13ミリ・シーベルト以下にしなさいと医療法施行規則第30条の27(許容線量)で規定されています。
また妊娠中の女子の腹部に対して妊娠と診断された日から出産までの間に対しては10ミリ・シーベルト以下と規定されています。
これは10ミリ・シーベルトの被ばくで遺伝に対する障害が1万分の1の確率で発生するようになるからです。


NHKのスタッフは、1回の胸部レントゲン検査と比べただけで本当に心配ないと思っているのでしょうか。そうだとしたら、NHKのスタッフの頭脳は小学生並みだと言わざるを得ないし、時間の概念をごまかしていることを知っているにもかかわらず恣意的にゆがめた報道だとすれば大問題です。NHKや政府や東京電力が、国民に対して「正確な情報を知らせないで、まかせるだけにさせておいたほうがよい」と考えているなら、バカにするなと言いたいです。

今回の原発事故でも、最悪の事態を想定してこなかったからこうなってしまったということが教訓になっていないような気がします。

「サリドマイド」「水俣病」「ゆとり教育」など、「全体責任は無責任」だという姿勢で、後になってあの時対策をとっていたらこんなことにはならなかったなどとならないように祈るばかりです。ちなみに、これを異論も挟まず報道していたのは大越健介氏と青山祐子氏です。


反対に、現場で命がけで対策を施している東電・東京消防庁の職員の皆さまには本当に頭が下がる思いです。

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被ばく量について

2011年03月15日 | 
慢性被ばくでガンの発症が減る(その1)

慢性被ばくでガンの発症が減る(その2)

上の図は、下の論文からの引用で、1回のCT検査で負うガンのリスクです。年齢・性別で異なります。実線が女性、点線が男性です。
JAMA. 2007;298:317.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

被ばく量を理解するためには、「量(強さ)」の概念と「時間」の概念を理解する必要があります。

基本中の基本として、私たちは日常生活でも宇宙から宇宙線を浴びて1年間で2.4ミリ・シーベルト(地球平均)の被ばくをしていますが、これは「1年間」で「2.4ミリ・シーベルト」という意味です。

東京~NY間を飛行機で1回往復すると0.2ミリ・シーベルトといわれています。これでは時間の概念が省略されていますが、それはすなわち飛行時間、東京~NY間でしたら「12~13時間」に0.2ミリ・シーベルト被ばくするという意味です。時間の概念は非常に重要です。

1年間で東京~NY間往復を10回すると0.2ミリ・シーベルトx10=2ミリ・シーベルトの被ばく、そこに日常生活での宇宙からの2.4ミリ・シーベルトが加わるので、合計年間4.4ミリ・シーベルト、というような計算ができることがまず必要です。

1回の胸部CTスキャンで浴びる量は6.9ミリ・シーベルトと報道されていますが、最近のCT検査では詳しいことまでわかろうと努力して施行されますので、1回のCT検査で10~15ミリ・シーベルトの被ばくと考えた方が妥当です。ただし、ここでも時間の概念が省略されています。1回のCT検査に1分かかるとすれば、それは「1分間」で「10~15ミリ・シーベルト」ということです。現実にはありえませんが、CT検査を1時間受けると、10~15ミリ・シーベルトx60=600~900ミリ・シーベルトの被ばくを受けます。

さて、「福島第1原発3号機正門で400ミリ・シーベルト、4号機で100ミリ・シーベルトの放射線が測定された」と報道されましたが、「えっ?何時間の間に?」という疑問がうまれれば、ここまでの説明が理解できたということです。マスゴミの報道には、この「時間」の概念がないものがありますので、注意が必要です。

別の報道では「1時間あたり、400ミリ・シーベルト」と言っていましたので、これが真実かどうかは別として、さきほどのCT検査と比較します。仮にCT検査を1時間受けると、600~900ミリ・シーベルトの被ばくを受けますので、「1時間あたり、400ミリ・シーベルト」というのは、単位時間あたりの被ばく量はCT検査と比較して強さ自体は半分と計算できます。

しかし実際は、福島第1原発3号機正門に1分だけいてあとは全く被ばくを受けないというCT検査のような状況ではないので、福島第1原発3号機の正門に防護服なしで30分でもいることは危険なことです。

上の図は、1回(1分ぐらい)の胸部CT検査(10~15ミリ・シーベルト)で被ばくをうけると、約1000分の1の確率で被ばくによる乳ガン、肺ガンのリスクを背負うということを以前お伝えしたものです。ただし、CT検査では曝露する範囲が限定されているので、ある臓器の平均吸収線量=全体平均吸収線量とみなすと被ばく量によるリスクを過大評価してしまいます。

その他、医学的には
100ミリ・シーベルトでガンになる確率が増加し始める。
(日本人男性は一生涯で半分がガンに罹患しますので、50%が51%とか52%に上昇してくるという意味です)
500ミリ・シーベルトで、末梢血中のリンパ球が減少、嘔吐、脱毛
3000~5000ミリ・シーベルトで60日以内に半数の人が死亡するといわれています。


なお、マイクロ・シーベルトはミリ・シーベルトの1000分の1の単位ですので混同しないように注意が必要です。


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えっ!想定していない?地震で思うこと

2011年03月13日 | 雑感
                             岩手県沿岸の防波堤

昨日は大学入試後期日程があり、試験監督をしていました。地震による公共交通機関の乱れで、開始が1時間繰り下がりました。京都大学での事件が影響して、今年から携帯電話の持ち込みは禁止になりました。しかし、試験監督は基本的に受験生が試験に集中できるように配慮しないといけないので、頻回に教室を見回るということは遠慮するようなスタンスになっています。

京都大学の試験監督もそういう意味で教室を頻回に見回らなかったのだろうし、電源を切ってあれば携帯電話の持ち込みを認めながら、「真剣な場であるから、まさかそんなことはしないだろう」という「性善説」で監督に臨み、そんな行為は想定していなかったのだろうと推測できます。

しかし、教室の前と後ろから目配りさえすれば、あのような不正行為は防げたかもしれません。不正行為をしようとするとき、受験生は必ず監督者がどこにいるかを把握するために監督者を見ます。目配りさえしていれば、そのような時に受験生と目があい、その後その受験生を集中して監視していれば抑止力になるはずです。つまり、京都大学の試験監督は「性善説」を信じて、目配りさえもしていなかったと考えられます。

あのような不正行為は、携帯電話の持ち込みを禁止すれば防止できます(厳密にやろうとすれば金属探知機が必要ですが)。ただ、毎年試験監督をしていて感じるのですが、現行の体制では「替え玉受験」は防止できないと思います。

もちろん、試験中に受験票の顔写真と受験生の顔を照らし合わせて確認するのですが、髪型やメガネを変えていたりする場合や、そうでなくても年頃の子供の顔は成長や表情や体重でかなり変わるため、本人だと100%確信できない場合が10人に1人ぐらいはあります。長髪で痩せていたのが、勉強に打ち込むためなのか髪を丸坊主にし、ストレスで少し太って顔が丸くなったような場合です。皆さんも鏡でみる自分の顔と運転免許証の顔写真が別人といってもおかしくない事がありませんでしたか。そんな感じです。それなら一卵性双生児で学力の高い方がもう一人の替え玉受験することも、十分に想定できるわけで、すでに行われているかもしれないということを誰が否定できるでしょうか。思考停止せず、本当に「替え玉受験」を未然に防止しようと考えるなら、生体認証設備が必要です。やはりこれは想定しないといけないことだと思います。

さて、今回の地震による津波の件ですが、先日NHKスペシャルで地震予知を研究している研究者が晴れ晴れしく研究成果を報告していましたが、今回の被害を考えると、一体その研究者は何をしていたのか、こういう被害こそ予知できないのならテレビで晴れ晴れしく言っていたことは何だったのだろうかとも思えるのです。想定外だった?想定することこそがその研究者の仕事なのでは?

原発事故に関しても、震源地として直撃したわけではないのに、一体何を想定していたの?と疑問に思わざるをえませんし、これでは今後の原発建設に懐疑的にならざるを得ません。

あの地方は、これまで何度も津波の被害を受けてきたはずです。以前、私のブログでも「人は低い確率を高く見積もり、高い確率を低く見積もるので、確率を正しく感じなければならない」という記事の中で、新型インフルエンザで騒ぐより、地震に対する対策が大切だと説いてきました。大地震の確率も今後30年で90%とお伝えしてきました。

岩手県沿岸には高さが5mの防波堤があるそうですが、それ以上の高さの津波がきた場合はどうするのか想定していたのでしょうか。防波堤をさらに高くする費用の問題で思考停止に陥っていたのかもしれません。しかし、そのためにその建設費よりも何十何百倍もの費用がかかることになってしまいました。論理的に考えると、行政はそれ以上の高さの津波がきた場合は住民に犠牲者が出ても仕方がないと考えていたともとれます。何らかのそれ以上の対策があれば、せめて避難する時間をかせげたかもしれません。

話は変わって、アメリカの原子力空母が三陸沖に到着しました。陸送が断たれているので沖からの支援は本当に助かります。自衛隊の救助機の給油や支援物資の輸送基地にするなどその価値は測り知れません。日本も空母をもつべきでしょう。空母というとすぐに左翼マスゴミが軍国主義だなどと言い出す短絡的発想は止めてほしいものです。子供手当にかかる費用の半分以下で空母ができるそうです。沖縄近辺に待機させておくと中国の潜水艦も簡単には我が国の領海を侵犯できないはずです。中国が尖閣諸島に上陸することも想定しなければいけないのではないかと思います。


以上のように、あえて想定することの大切さを感じた1日でしたが、とりとめない話で失礼しました。

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心房細動に対する新しい抗凝固療法 プラザキサ

2011年03月01日 | 循環器
もうすぐ、直接トロンビン阻害という新規作用を持つ抗凝固薬プラザキサ(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩、日本ベーリンガーインゲルハイム)が発売されます。

以前、70歳以上の心房細動の方ではワーファリンという血液をさらさらにする薬剤を内服していないと脳梗塞の発症率は4.8%/年、ワーファリンを内服すると0.9%/年に改善されるということをお伝えしましたが、ワーファリンを内服するには効果の強さを定期的に血液検査で測定する必要があり、その結果によって内服量を変えないというように煩雑でした。

プラザキサにはそのような血液検査が必要なくなり、使用しやすくなりました。

心房細動では心房が収縮せずブルブルと微細にふるえた状態ですので、心房の内側に血液の固まりが出来やすくなり、それが脳に流れていくと脳梗塞になります。従って、血液を固まりにくくする必要があります。

プラザキサの有効性をワーファリンと比較した研究があります。
Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation
N Engl J Med 2009;361:1139.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

心房細動の患者18,113人(平均年齢71歳)が、プラザキサ110mg1日2回内服群(低容量群)と、プラザキサ150mg1日2回内服群(通常用量群)と、ワーファリン内服群に分けられ、その後30か月の脳梗塞と全身性塞栓症の発症率と副作用が調査されました。

この研究に参加した患者の、脳梗塞のなりやすさを示す指数CHADS2スコアーの平均は2.1でした。

1年間に換算した発症率は(*印は差があったところです)
110mg群 150mg群 ワーファリン群の順です。
1.53%  1.11%* 1.69% 脳梗塞と全身性塞栓症
2.71%* 3.11%  3.36% 出血性疾患
0.12%* 0.10%* 0.38% 脳出血
0.72%* 0.74%* 0.53% 心筋梗塞
2.2%*  2.1%* 0.6%  消化不良、下痢、嘔気などの消化器症状
15%*  16%*  10%  内服の継続不可能

以前の研究ではワーファリン内服での脳梗塞の発症率は1年で0.9%、この研究では1.69%ですから、今回の調査に参加した患者の脳梗塞のなりやすさは以前の研究より高い集団ということです。

まとめますと、
本来の目的である脳梗塞と全身性塞栓症を減らすことに関しては110mg群でワーファリンと同等、150mg群でワーファリンより優れていました。

目的と反対の作用として考えられる出血の程度は110mg群でワーファリンより少なくなり、150mg群でワーファリンと同等でした。

目的と反対の作用として考えられる脳出血の程度は110mg群、150mg群でワーファリンより優れていました。

その反面、110mg群、150mg群でワーファリンより心筋梗塞が多くなりました。また、110mg群、150mg群で消化不良、下痢、嘔気などの消化器症状が多くなり、そのためと思われる内服の継続不可能が増えました。
(製薬会社からはこの薬の良い面しか知らされないと思われますので、強調しました)

プラザキサの半減期は12-17時間で1日2回服用が必要ですが、内視鏡検査前の休薬期間も短くて済みます。また、2時間で最高血中濃度に達するので、再開後も抗凝固効果が速やかに得られるという利点があると思われます。

その反面、抗不整脈剤のワソラン、アミオダロン、キニジンの血液濃度を上昇させるため併用には注意が必要です。

あと、問題は薬価です。まだ公表されていませんが、1日600円ぐらいです。ワーファリンは1mg1錠で10円、1日3錠内服する場合で30円ですから、約20倍ぐらいだと思われます。3割負担の人でなんと月5,400円です。決定したら考察したいと思います。

従って、現状での私の意見として、高血圧や糖尿病などの動脈硬化危険因子がなくワーファリンの内服量の調節がほとんど必要ない安定した患者からの変更はそれほど利点がないですが、調節の不安定の患者にはワーファリンからの変更が有用と考えられます。

ただ、この研究はたった30か月の観察期間なので、長期的な有効性と安全性についてはもう少し待つ必要があります。


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