医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

CTスキャンの急激な増加はガンの増加をもたらす可能性がある

2007年12月11日 | 総合
以前CTスキャンの被ばく量についてお伝えしました。CTスキャンでは従来のX線よりもはるかに多量の放射線が照射されるため、被ばくによるガン発生のリスクが懸念されていました。アメリカでは1980年当時は年間300万件にすぎなかったCTスキャンは、現在6200万件以上実施されています。そこで先月末、被ばくによるガン発生のリスクに関して論文がまとめられました。

Computed tomography--an increasing source of radiation exposure.
N Engl J Med. 2007;357:2277.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

1年2回のCTスキャンで被曝する線量は、日本の原爆投下時の爆心地から2マイル(約3.2km)離れた場所にいた生存被爆者が被曝した線量とほぼ同等であるそうです。その生存被爆者のその後のガンの発生状況を、日本人とアメリカ人のガン発生率の違いで補正したBiological Effect of Ionizing Radiation 7th Report (BEIR VII)というレポートを基にガン発生のリスクが計算されました。

現在のCTスキャン1回の被ばく量は10~20ミリシーベルトで、上の図は10ミリグレイ被ばくした時の年齢と肺ガンと大腸ガンの発生率です。横軸は年齢、縦軸は100万人あたりの発生人数です。(青線:肺ガン、赤線:大腸ガン)

グレイというのは照射側の放射線量を表わす単位で、シーベルトというのは臓器側の吸収量の単位です。同じ量の被ばくを受けても臓器により吸収量が異なるため厳密にはシーベルトとグレイは若干違ってきますが、便宜的に10ミリシーベルト=10ミリグレイとすると、40歳で10ミリシーベルトのCTスキャンを1回受けると100万分の180、すなわち1万分の1.8の確率で肺ガンが発症するリスクを負うことになります。20歳であれば100万分の250、すなわち4000分の1の確率となり、CTスキャンを受ける年齢が若いほど影響は大きいことがわかります。

論文の中で著者らは、現在のペースでCTスキャンを続けるとアメリカ合衆国の中で発生するガンの1.5~2.0%がCTスキャンを原因とする事になると、「腹痛や慢性的な頭痛で救急治療室を受診したら、医師の診察を受ける前にほぼ間違いなくCTスキャンを受けることになる」現実に警鐘を鳴らしています。

また、医師や病院が変わるたびに、同じ疾患に対して重複してCTスキャンを受ける患者も多いこともCTスキャンを増加させる原因の1つであり、このことを解決する1つの方策は、患者にCTスキャンのDVDを提供し、転院時にそれを持参させることであると述べています。

この報告は決してCTスキャンを非難するものではなく、CTスキャンが必要な場合に、怖がってCTから逃げることがないようにすることも重要で 「症状がある患者にとって、CTスキャンが素晴らしい診断ツールであることは間違いない」であり「われわれが推進していることは、CTの使用を本当に必要な状況に制限することであると結論づけています。


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子供のカルシウム摂取ガイドライン

2007年12月05日 | 小児科
先日このようなニュースがあったのをご存じですか。

若い女性 骨粗しょう症の心配 (NHKニュースから引用)
この骨密度の調査は、農林水産省や日本酪農乳業協会などが去年とおととし全国で行ったもので、このうち20歳から89歳までの女性2万5000人について、女子栄養大学の上西一弘教授のグループが分析しました。その結果、同じ年代の平均より骨密度が15%以上低い人の割合は、20歳から39歳までの若い女性では5.1%で、60歳以上の女性の2.6%に比べて2倍近くに上り、将来、骨粗しょう症になるリスクが高いとみられることがわかりました。

また、小・中学校のときに牛乳をどのくらい飲んだかで4つのグループに分けて比べたところ、60歳未満の成人女性では飲んだ量が多いほど骨密度が高くなっていました。さらに、子どものころ運動をしていた人ほど密度が高かったということで、研究グループでは、骨が形づくられる小・中学校のときの生活習慣がその後の骨密度に大きく影響すると結論づけています

上西教授は「昔に比べて生活が便利になり、日常生活の中で体を動かす機会が子どものころから少ないことが、若い女性に骨密度が低い人が多い原因の一つではないか。自分の骨密度を知って、ライフスタイルを変えるきっかけにしてほしい」と話しています。



このような調査はアメリカで既に行われていて、高齢者の骨量は小児期までに摂取したカルシウム量により決定されるとして私のブログで以前お伝えしています。

小児期と青年期に十分なカルシウムを摂取すれば高い骨量を維持することができ、その後の骨折や骨粗鬆症を予防できます。

米国小児科学会は2006年に骨強化を目的として子供のカルシウム摂取ガイドラインを発表しています。

Optimizing bone health and calcium intakes of infants, children, and adolescents
Pediatrics. 2006;117:578.

詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。

このガイドラインでは以下の簡単な質問票用いてカルシウム摂取量を定期的に評価することを勧めています。同時にビタミンD摂取も重要であるとしています。


牛乳または乳製品を1日に何回飲みますか
チーズ、ヨーグルト、ヨーグルト飲料などの乳製品を1日に何回食べますか
ソフトドリンク、くだものジュースなどを1日に何回飲みますか
カルシウムを添加したジュース、シリアル、パンなどを摂っていますか
ブロッコリー、豆類、加熱した緑色野菜や豆腐を食べていますか
ビタミンとカルシウム配合剤などを摂っていますか
重量負荷のかかる激しい運動を週に何回行っていますか
家族に骨粗鬆症の人はいますか
子供は早産でしたか

ガイドラインでは子供のカルシウム摂取不足は家庭の問題とみなし、保護者が十分なカルシウムを摂っていない場合、子供も推薦量を摂取していない可能性が高く、医者は十分なカルシウムを摂取すれば骨折や骨粗鬆症が予防できることを保護者と話し合うべきだとしています。また、青少年では牛乳の代わりにソフトドリンクや果物ジュースを飲むためカルシウム摂取量が不足するため、同様に注意をはらうべきとしています。

また、乳児については「1歳までの全乳の摂取は推奨されないが、ヨーグルトとチーズは6か月齢から食べさせてよい。スキムミルクや低脂肪ヨーグルトなどの低脂肪乳製品も優れたカルシウム源である。」としています。

乳糖不耐症については、「25ml以下の牛乳しか飲めない不耐症は小児ではほとんど見られず、少量の乳糖含有食品を食事に加えると乳糖不耐症が緩和することもある。チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品を摂取してもよく、市販されている無乳糖製品や低乳糖製品を利用してもよい。乳製品以外の一部の野菜やカルシウム強化食品もよいカルシウム源となりえる」としています。

推奨される年齢別のカルシウム量は
0~6か月 210mg/日
7~12か月 270mg/日
1~3歳 500mg/日
4~8歳 800mg/日
9~18歳 1,300mg/日
19~50歳 1,000mg/日
50~70歳以上 1,200mg/日

食品別のカルシウム含有量は
牛乳(250ml) 250mg
ヨーグルト(170g) 250mg
チーズ(28g) 200mg
豆類(250g) 127mg
シリアル(30g) 100mg
です。



牛乳には危険がいっぱい?
この本どう思いますか?私は以前Entropyという名前でレビューを書いたのですが、これでもいまだに牛乳摂取に反対のレビューがあるのに驚きます。一般的にいって牛乳は骨粗鬆症の予防に有効であると科学が証明しているのに、牛乳の摂取で不利益を被っている人たちは、感情で他人が摂取することも否定しています。


牛乳は特定の人を除いては健康のために良いと考えた方はこちらをぽちっと

牛乳は有害と思う方はこちらをぽちっと


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