医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

便潜血検査は大腸・直腸ガンによる死亡を減らせる

2012年10月22日 | 消化器
秋の健康診断の季節ですので、前回、大腸ポリープが見つかった場合のその後の経過についてお伝えしました。
便潜血検査の有用性に関しては、以下のような否定的な意見もありますが、
http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/gan048.htm
今ではその有用性は確立しています。

その根拠となる論文のうちの1編をご紹介します。

Randomised controlled trial of faecal-occult-blood screening for colorectal cancer
Lancet 1996;348:1472
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

1981年から1991年まで、イギリスのノッティンガム地方の45歳~74歳の住民のうち研究への参加を同意した約15万人が、隔年で便潜血検査を受ける群と、便潜血検査を全く受けない群に分けられ、平均約8年間追跡調査されました。

結果は、上の右図のように、全ての理由による死亡は両群で12,624人対12,515人と差がなかったのに、大腸・直腸ガンによる死亡は、便潜血検査を受けた群で360人、受けなかった群で420人と、便潜血検査を受けた群で有意に少なくなりました。その比は0.85(95%信頼区間:0.74~0.98)でした。

左の図は便潜血検査を受けないコントロール群と検査を受けたスクリーニング群の経時変化による死亡率のグラフです。便潜血検査を受けた群では15年間で大腸・直腸ガンによる死亡は1000人あたり約4.5人(約0.45%)で、受けない群では約5.5人(約0.55%)ですから、便潜血検査は15年で大腸・直腸ガンによる死亡を1000人に1人減らすことになります。

便潜血検査のコストが1000円と仮定すると、2年に1回1000円がかかるので、15年で1人8000円、8000円x1000人=80万円で1人の大腸・直腸ガンによる死亡を減らせることができます。

便潜血検査のコストを2000円としても、160万円で1人の大腸・直腸ガンによる死亡を減らせることができます。悪玉コレステロールを低下させる薬では数千万円かけないと1人の心筋梗塞の発症を減らせないのに比べ、低い費用で効果があることがわかります。

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大腸ポリープの予後

2012年10月15日 | 消化器
秋の健康診断の季節です。

大腸ガン検診では、まず便潜血といって便に血液が混ざっていないかが調べられます。血液が混ざっていた場合、つぎに大腸ファイバーやバリウムを浣腸してレントゲン写真を撮ることになります。

現在、大腸ポリープが見つかった場合の次の大腸ファイバーまでの間隔は1年がいいのか3年がいいのか、日本で大規模試験が行われ、2012年に完了する予定です。

大腸ポリープのその後の経過はどうなのか。私はこのブログの副題のように、外来ではできるだけ具体的な確率を患者に伝えるように心がけていますが、大腸ポリープに関して、後ろ向きの調査ではありますが、以下の日本人における大規模臨床研究の結果を参考にして患者にお伝えしています。

Five–year incidence of advanced neoplasia after initial colonoscopy in Japan: A multicenter retrospective cohort study.
Jpn J Clin Oncol 2009;39:435.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

調査の対象は40歳以上の、初回の大腸ファイバー検査を受けた5,309人で、大腸ポリープの有無や大きさにより以下のように群分けされ、10mm以上のポリープや粘膜下まで浸潤したガンと進行ガンの発生が、後ろ向きに(過去にさかのぼって)平均5年間、最長10年間調べられました。

A群:ポリープを認めない
B群:大きさが6mm未満のガン細胞を伴わないポリープ
C群:大きさが6mm以上のガン細胞を伴わないポリープ
D群:粘膜の表面に留まっているガン細胞

結果は、上の図にあるように、A+B群では粘膜下まで浸潤したガンと進行ガンの発生は9年後までは10%に留まっているのに対して、C+D群では約50%まで上昇しています。

私は、大きさが6mm以上のポリープが発見された患者には上の図を見ていただき、その後の経過観察・治療の方針をイメージしていただくようにしています。

ただし、A+B群でも2年後ぐらいから、黒色の矢印、すなわち進行ガンも発見されています。

6mm以上のポリープが見つかったら、その後注意深く、観察・治療することが必要である根拠となっている論文ですし、A+B群でも2年以内にもう一度大腸ファイバーを施行したほうがいいのか、3年に1回でよいのか、研究が始まった基になった論文でもあります。

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