医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

タミフルの副作用

2005年11月22日 | 感染症
インフルエンザ治療薬タミフルを服用した日本の子供の死亡や精神神経症状の報告が、米国などと比べ突出して多いと分かった問題で、製造元のスイス・ロシュ社は18日、

1、日本でのタミフル流通量の多さなどに加え、

2、標準服用期間(5日)より短い2~4日の投与が一般的な、日本の薬の使い方も影響した可能性があると指摘した。

諮問委は、子供の死亡とタミフル服用の因果関係について、FDAと同様に「証拠がない」と否定的な見解を発表。FDAは諮問委の勧告を受け、タミフルの副作用監視を継続すると決めた。FDAの集計では、タミフル承認以降、日本の16歳以下の服用者の死亡例は計12人で米国はゼロ。幻覚などの精神・神経症状は日本が31人、米国が1人だった。ロシュはこの日、FDA調べより1人多い計13人の死亡例(全員日本)を諮問委に報告した。

FDAは日本の異常報告が多い理由について

3、子供への使用例が多い。

4、インフルエンザ脳症など神経症状への関心が高く報告が増えた、

などの可能性が高いと分析。一方ロシュは、流通量の多さなどに加え、

5、日本では熱が下がるまでを治療期間とするケースが多く、薬を止めた後にインフルエンザ症状がぶりかえし、それが異常として報告された可能性もあるとの見方を報告した。

同社によると、過去5年間に日本で約2400万人がタミフルの処方を受け、処方量は世界の75%を占めた。このうち子供は約1200万人で、使用量は米国の約13倍に上った。以上引用(共同通信社)

精神障害はタミフルの副作用ではないと思っていましたので内容自体に目新しさはなかったのですが、日本だけで世界のタミフルの75%を使用している事に驚きました。

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もう一つのブレイキング・ニュース

2005年11月18日 | 循環器
もう一つ日本からEPA製剤に関する大規模臨床試験の結果がありました。EPA製剤とはイコサペント酸エチルとよばれ、イワシのエキスと同じ成分です。この調査は前向き無作為化非盲検化比較試験で、追跡期間は最大5年間です。

総計18,645例の患者さんが無作為にEPA+スタチン群9,326例と,スタチン単独(対照)群9,319例に割り付けられました。全例にプラバスタチン10~20mg/日またはシンバスタチン5~10mg/日を投与し、EPA群にはそれに加え1,800mg/日(食後600mg×3回/日)のEPA製剤を併用投与しました。

突然心臓死、致死性および非致死性心筋梗塞、虚血性イベントによる入院を含む不安定狭心症、心血管再建術(ステント,冠動脈バイパス術,風船治療)の発生率、心血管死亡率、総死亡率が5年間調査されました。

登録症例のうち、1次予防(今まで虚血性心疾患を発症したことがなく最初の発症を予防するという意味)の患者は14,981例で,2次予防(過去に虚血性心疾患を発症しており次の発症を予防するという意味)の患者は3,664例でした。

結果は、動脈硬化性心臓病の発症率はEPA群で2.8%、対照群で3.5%と、EPA群が対照群に比べて有意に低く(P=0.011)(差がたったの0.7%です)、非致死性冠動脈イベント発生率はEPA群で2.6%、対照群で3.2%とEPA群が対照群に比べて有意に低かったそうです(P=0.015)。2次予防の患者においてはEPA群では対照群に比べて主要冠動脈イベントの発生が有意に抑制されましたが(P=0.048)1 次予防の患者では有意差は認められなかったそうです(イベント発生率:1.4%対1.7%,P=0.132)。総死亡については,両群間に大きな差は見られませんでした。

結論では「EPAとスタチンを併用することで,主要冠動脈イベントの発生を抑制することが明らかとなった」と述べられていますが、NNTがあまりにも高いから、恣意的に表に出していません。ですから私が計算してみました。非致死性の動脈硬化性心臓病の発症で167、非致死性狭心症の発生で200です。つまり死なない狭心症を1人予防するのに200人がこの薬を飲まされるのです。しかも初めての発病を予防する1次予防には全く効果がないし、突然死、致死性心筋梗塞、冠動脈疾患による死亡、冠動脈バイパス術や風船治療になってしまう率、全ての原因による死亡のいずれにも効果がないのです。

以下は「お薬110番」に載っているEPA製剤の効能です。
「血液中の中性脂肪を減らす作用があります。このお薬で脂肪分を低下させていれば、将来起こるかもしれない心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が期待できます」
そもそも、スタチンの動脈硬化に対する有用性が確立されたあとで、それに併用してもさらなる効果はほとんど期待できないのに、この薬が売られていていいのでしょうか。

この薬の600mgは現在103.7円(1日分311.1円)ですから、5年間で、死なない狭心症を1人予防するのに103.7 x 3 x 365日 x 5年 x 200人= 113,551,500円。
なんと約1億1千万円かかるのです。

スタチンの動脈硬化に対する有用性が確立されている現在、二次予防にスタチンを投与せずにEPAだけを投与するシチュエーションはなくなったのですから、このような宝くじのような薬をスタチンに併用して処方するのはどうかと思います。

薬の商品名をあげておきました、みなさんご自分でチェックしてみて下さい。

先発品「エパデール」
後発品「アテロバン」「アルファトン」「EPAエチル」「イコサエート」「イコペント」「イワペント」「エナゼック」「エパキャップソフト」「エパデールS」「エパフィール」「エパラ」「エパンド」「エメラドール」「エルモダン」「クレスエパ」「シーレーン」「シスレコン」「ソルミラン」「ナサチーム」「ノンソル」「パージェリー」「ビオエパン」「ピナデール」「ペオナール」「メタパス」「メルブラール」「ヤトリップ」「リポネス」「リリット」

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ブレイキング・ニュース

2005年11月17日 | 循環器
ダラスで開催されている米国心臓病学会に来ています。学会も最終日になりました。

今回は、12時間前に発表されたばかりの情報です。その時の写真を撮りました。

この学会には「Late-Breaking Clinical Trial」というものがあります。これは治療に関わる重要な最新情報が発表されるもので、採択数が少ないため、競争率が非常に高くなっています。ここに選ばれるためにはエビデンスレベルの高い臨床研究でなければなりません。ここで発表される内容は、従来の治療法に進歩をもたらすほど重要なものになっています。

今回は日本からMAGA studyの結果が発表されました。日本では主にアメリカで行われた研究の結果を参考に医療がなされています。これは日本では「倫理的な問題」「医療に対する国民の協力・理解の違い」「マスコミによる間違った認識の植え込み」から臨床研究が生体実験のように考えられ、大規模臨床試験が行いにくい状況があつたからです。これを打ち破り、日本初の二重盲検・無作為比較試験が行われたのです。アメリカの研究を日本人に当てはめるには人種の違いを考慮する場合があるため、日本でも大規模臨床試験を行う必要性が以前から指摘されていました。

この試験は8,009人において、プラバスタチン「メバロチン」を1日10mg~20mg内服する群と内服しない群を5年間比較調査したものです。結果は非内服群で全死亡率が約2.7%、内服群で約1.8%(約としたのはスライドのグラフから読み取っただけだからです。後日数字が発表されたら詳しくお伝えします)と0.9%改善されました。また、動脈硬化性の心臓病の死亡率は非内服群で約4.5%、内服群で約3.5%と約1%改善されました。

NNTはそれぞれ119と91です。すなわち全ての理由の死亡を減らすのに119人がこの薬を内服してはじめてその中の1人が薬の恩恵を受けるし、動脈硬化性の心臓病の死亡を減らすのに91人がこの薬を内服してはじめてその中の1人が薬の恩恵を受けるという事です。

NNTがちょっと高すぎる気がします。みなさんも高いと思いませんか。

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鉄と亜鉛のサプリメント

2005年11月16日 | 総合
米国心臓病学会も3日目が終わりました。巨大なコンベンションセンターを使った世界最大の学会です。マイナーな存在ですが鉄と亜鉛もサプリメントとして売られています。今回はそんなサプリメントについてです。
American Journal of Clinical Nutrition. 2005;81:787.からの最新の報告です。

鉄分が不足すると鉄欠乏性の貧血になります。特に女性に多く、鉄剤の処方の対象になりますし、鉄のサプリメントも売られています。ところが、飲酒の習慣がある人は気をつけなければいけません。

55歳から69歳の閉経後の女性34,492人が鉄と亜鉛のサプリメントの摂取状況と飲酒の状況が15年間アンケートで調査されました。アルコール分を10g/日以上飲酒している群では、鉄剤を摂取している群は摂取していない群に比較して動脈硬化性の心臓病の死亡率が2.47倍高く、逆に亜鉛のサプリメントを摂取している群はそうでない群と比較して0.37倍死亡率が低かったそうです。そしてアルコール分30g/日以上飲酒している群ではさらにそれらの傾向が強くなったそうです。

つまりアルコールの摂取が多い閉経後の女性が鉄剤を摂りすぎる事は危険です。反対に亜鉛の摂取は動脈硬化性の心臓病の死亡を予防します。

理由は亜鉛が抗酸化効果を持つのと対照的に鉄は酸化作用を持ち、アルコールが鉄の代謝を抑制するからです。

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カルシウムを制限しないと尿路結石になるのか

2005年11月14日 | 生活習慣病
尿路結石は1,000人に2人の割合で発生します。激しい痛みを伴い、女性の5%と男性の10%は70歳になるまでに一度は発症するといわれています。再発することも多く、2回以上腎結石が起こった場合には再発の危険性は大きくなります。石の種類は蓚酸(しゅうさん)カルシウム、尿酸アンモニウム、リン酸カルシウムなどさまざまですが、カルシウムによる結石が最も多く、結石全体の75%から95%を占めます。男性で2倍から3倍多く、普通20歳から30歳までに現れ再発も良く起こります。カルシウムは蓚酸(最も頻度が高い)、リン酸、炭酸と結合して結石を作りますから、低カルシウム食は尿路結石を予防するという印象を受けがちです。

この「印象」というのが科学を曲げてしまう事がよくあります。

N Eng J Med. 2002;346:77(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★☆☆☆)からの報告です。

蓚酸カルシウム石の再発性の尿路結石があり高カルシウム尿症の男性患者120名が5年間無作為試験で調査されました。60名は通常のカルシウム(30mmol/日)だが動物性蛋白(52g/日)、塩分(50mmol/日)と減量された群、他の60名は伝統的低カルシウム食群(カルシウム10mmol)に分けられ比較されました。

結果は、5年で正常カルシウム・低動物性蛋白・減塩食群60名中12名、低カルシウム食群60名中23名で再発が生じました。低カルシウム食群と比較して、正常カルシウム・低動物性蛋白・減塩食群の再発の危険率は0.49 (P=0.04)と有意に低い事が判明しました。観察中、尿中カルシウムは両群とも170mg/日まで有意に減少しました。尿中の蓚酸分泌は低カルシウム食では増加しましたが、正常のカルシウム・低動物性蛋白・減塩食群では減少しました。

この論文では、再発性尿路結石の患者に対する低カルシウム食ダイエットの有効性には疑問がある。尿路結石の患者には低カルシウム食ダイエットよりも低動物性蛋白・減塩食ダイエットが重要であると結論づけています。

しかし、いまだに尿路結石に対して低カルシウム食を促しているお医者さんも少なからずいます。

さて、明日からダラスで開かれる学会に行ってきます。ネットが繋がる環境でしたらアップしたいと思います。

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グレープフルーツが影響を及ぼす薬剤

2005年11月13日 | 総合
グレープフルーツは飲用でも食用でも多くの薬物の代謝に大きな影響を及ぼしますから常用薬がある方は注意しなければいけません。

それは、グレープフルーツには肝臓に存在するシトクロムP450(CYP)の酵素活性を低下させる特異的なフラボノイドが含まれているためです。このため、CYP酵素系によって代謝される薬物の分解が阻害され、最高薬物血中濃度が高まります。他の柑橘類にはこのような作用は認められていません。

グレープフルーツが影響を及ぼす薬剤を以下に示します。

シンバスタチン(商品名リポバス)高脂血症の薬
フェロジピン(商品名スプレンジール)高血圧・狭心症の薬、カルシウムブロッカー
ニフェジピン(商品名アダラート、セパミット)高血圧・狭心症の薬、カルシウムブロッカー
サキナビル(商品名インビラーゼ)エイズの薬
タクロリムス(商品名プログラフ)免疫抑制剤・アトピー性皮膚炎の薬
シクロスポリン(商品名サンディミュン)免疫抑制剤
エリスロマイシン(商品名エリスロシン)抗生物質
カルバマゼピン(商品名テグラトール)てんかん・三叉神経痛の薬
アミオダロン(商品名アンカロン)抗不整脈剤
ベンゾジアゼピン系(商品名ハルシオン、ドルミカム、リスミー、ネルボン、ユーロジン、ロヒプノール、ドラールなどの睡眠薬)

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薬局の請求書の不思議

2005年11月10日 | 薬・総合
2003年度の国民医療費約32兆円のうち保険薬局に支払われた費用は3兆9千億円で、医薬分業が行われた結果1兆円増えてしまいました。これは厚労省が薬局の経営に配慮した結果、病院内の調剤報酬より院外薬局の調剤報酬の方が高く設定されたためです。

みなさんはいつも同じ薬を処方してもらっているのに支払う料金が違うことを経験したことはありませんか。今回は薬局で支払う料金についてお伝えします。

まず薬局で支払う基本的な料金を見てみます。
調剤基本料  490円
調剤料 例えば300円
薬剤服用歴管理・指導料 170円
特別指導加算 280円
薬剤情報提供料 170円
そして薬自体の料金 **円

調剤基本料は薬局が扱う処方箋量と特定の医療機関からの処方箋が全体に占める割合(集中率)によって異なっており、1カ月に扱う処方箋量が4,000回以下、集中率が70%以下の薬局では490円、それを越える薬局の場合は210円です。つまり大きな病院の周りにある薬局に行く方が安くなります。

調剤料は薬の量や種類によって定められます。

薬剤服用歴管理・指導料は「患者の服用歴に基づいた指導、記録管理などをする場合」に求められます。これはいつもと同じ薬を処方する場合も自動的に加算されている場合が多く、「服用歴」ですからいつも同じ薬局に処方箋を持って行く場合に加算されやすいものです。逆にいつもと違う薬局で過去の記録もないのに求められている場合は「指導など受けていない」と主張できると思います。

特別指導加算は「患者や家族と対話して情報収集し、服薬指導した場合」に求められます。薬剤師と対話し情報収集しなければ請求できませんが、この理屈では「お変わりありませんか?」「はい」「いつも通り飲んで下さいね」という会話で特別指導加算が成立してしまいます。

薬剤情報提供料は「薬の説明書の配布、糖尿病手帳など、各種手帳への記載」によって生じるものです。「この薬は咳のお薬です」といった説明書きが配布されると思いますが、いつもと同じ薬の場合は必要ない場合が多いと思います。必要ないなら説明書の配布を断り「薬剤情報提供料は加算しないでほしい」と主張しましょう。

みなさんも、既に病院で説明されているのに「この薬は食後すぐに内服して下さい」といわれ余分な請求をされた経験はありませんか。患者が既に知っている内容を伝えることは指導とはいえません。それでも日本の診療報酬は出来高払いなので、薬剤師が指導したと申告すれば薬剤師に報酬が支払われます。

毎回同じ薬をもらっている方は、本来ならばこれらの料金が節約できると思います。

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マルチビタミンとビタミンEは風邪・気管支炎・肺炎を悪化させる

2005年11月07日 | 生活習慣病
再び驚くべき報告です。Journal of American Medical Association. 2002;288:715.からです。(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★☆)1998年から2000年にかけて、栄養状態が正常な60歳以上の高齢者652人が通常量のマルチビタミンサプリメント群、ビタミンEサプリメント200mg群、非内服群に分けられ、看護師の訪問や電話、血液検査、喀痰検査で風邪や気管支炎や肺炎の気道感染症の発症が平均441日調査されました。これは二重盲検、無作為化試験です。

期間中、のべ1024回の気道感染症が認められました。マルチビタミンサプリメント群での気道感染症の発症率は非内服群と比較して0.95倍(P=0.58)、ビタミンE群では1.12倍(P=0.21)と違いはみられませんでした。(この場合1.12倍でも違いがないといえるのは、厳密な統計学的検討がなされているからです。例えば、2つのサイコロをそれぞれ60回振って、Aのサイコロは1の目がでたのが11回、Bのサイコロは1の目がでたのが10回だった場合、これだけの事だけからAのサイコロは1が出やすいと言えないのと同じです。)

気道感染症の程度に関しては、マルチビタミンサプリメント群では違いがありませんでしたが、ビタミンE群では罹患期間が19日対14日(P=0.02)、症状の数が6対4(P =0.03)、発熱の頻度が36.7%対25.2%(P =0.009)、日常生活の制限が52.3%対41.1%(P =0.02)と有意に重症化していました。

マルチビタミンサプリメントもビタミンEも栄養状態良好な60 歳以上の高齢者の気道感染症の改善に有用でなく、ビタミンEは有害であると結論づけられています。

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ビタミンEは動脈硬化性心臓病と脳卒中に効果なし

2005年11月05日 | 生活習慣病
前回、ベータカロチンが各種疾患による死亡率をまったく低下させていない事をお伝えしました。今回は同じ論文から、ビタミンEをサプリメントから摂って死亡率が改善するかという報告です。
Cardiovascular Drugs and Therapy. 2002;16:411.(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

ビタミンEに関しては5つの調査がまとめられました。1996年、投与人数が105人という小さな研究では、1.4年という短い観察期間であるにもかかわらず、ビタミンEの内服が動脈硬化性心臓病による死亡率と心筋梗塞の発症率と脳卒中の発症率を改善させていたという報告がなされました。

当時ビタミンEの細胞での実験上、動脈硬化に対する有用性が示唆され始め、そのような楽観的な雰囲気のなかで研究デザインの問題点の改善がなされたなかったのでしょう、その後の大規模研究で、そのような効果はまったくないことが証明されました。

無作為化が行われていないと、「状態が悪い患者さんには、まだ効果がわかっていないビタミンEを投与するには不安がある。効果がわかっている別の薬を投与しよう」と医者の心理が傾きます。10月9日にお伝えした、刃のついた風船による狭心症に対する治療が、少人数の研究では有用と示されたけれど、その後の大規模試験でことごとく否定されたのと同様です。

以前、ビタミンEを主成分とする「ユベラ」という薬の事をお伝えしました。
ここで「ユベラNソフト」の効能又は効果を見てみましょう。

高血圧症、高脂質血症に伴う随伴症状
閉塞性動脈硬化症に伴う末梢循環障害

「随伴症状」という表現もあいまいです。高血圧の患者さんが「冷え性で、最近手足の先が冷える(随伴症状?)んです」と訴え、医者が「良い薬がありますよ」というのがこの薬の処方の始まりです。

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ベータカロチンは死亡のリスクを上昇させる

2005年11月03日 | 生活習慣病
以前、ビタミンA、C、E、が各種疾患による死亡率をまったく低下させていない事をお伝えしました。今回はにんじんや緑黄色野菜に多く含まれているベータカロチンをサプリメントから摂って死亡率が改善するかという報告です。
Cardiovascular Drugs and Therapy. 2002;16:411.(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この論文では抗酸化ビタミンとしてベータカロチン、ビタミンEの両者について調査されていますが、今回はベータカロチンの内容のみお伝えします。この報告もメタアナリシスといって過去の多くの論文をまとめたものです。

1996年から1997年に実施されたATBC、CARET、PHSの3つの研究がまとめられています。ATBCでは29,133人がベータカロチン摂取(20mg/dl/日)群と非摂取群に分けられて調査されました。日本で市販されているサプリメントには6mg~30mgのベータカロチンが含まれています。6年間の調査で、癌による死亡率を改善していない事が判明しました。さらに統計学的に有意ではないのですが、肺ガンに関しては死亡率を上昇させていました。

CARETでは喫煙やアスベストにさらされた18,314人がベータカロチン摂取(30mg/dl/日)群と非摂取群に分けられて調査されました。4年間の調査で、肺ガンと動脈硬化性心臓病による死亡率を上昇させている事が判明しました(相対危険率1.17倍)。

PHSでは22,071人の内科医自らが50mg/dl/日のベータカロチンを隔日で内服する群と、そうでない群が12年間比較されました。結果は、肺ガンと動脈硬化性心臓病による死亡率は両群で違いは認められませんでした。

これらの研究はサプリメントからベータカロチンを摂取する場合で、にんじんや緑黄色野菜から少量を摂取している場合は問題がないそうです。これらの研究を見ていると、ネット上「ベータカロチン」で検索して出てくる通信販売の数々は全くの詐欺です。どうして政府はこういう事を取り締まれないのでしょうか。

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頻回の胸部レントゲン写真によるスクリーニングは逆に肺ガン発症率を増加させる

2005年11月02日 | 
健康診断では、胸部レントゲン写真は全員に必ず行われる項目の1つです。これは結核などの感染症を見つけ出す目的もありますが、主に肺ガンを見つけ出す目的で行われています。しかしそれが逆の結果をもたらしているという驚くべき報告です。
Thorax. 2003;58:784.(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この報告もメタアナリシスといって過去の7つの論文をまとめたものです。合計245,610人が3年から24年調査されています。それぞれ胸部レントゲン写真が1~2年ごとに施行されている群と4~6カ月ごとに施行されている群に分けられています。

結果ですが、肺ガンの死亡率は胸部レントゲン写真が4~6カ月ごとに施行されている群では1~2年ごとに施行されている群に比較して1.11倍、すなわち11%上昇していました(P=0.05)。つまり、頻回の胸部レントゲン写真によるスクリーニングは逆に肺ガンの発症を増やしてしまっていました。

胸部レントゲン写真が1年ごとに施行されている群と1年ごとプラス4カ月ごとの痰の検査を施行する群の比較も行われましたが、死亡率に違いは認められませんでした(P=0.11)。しかし、肺ガンの5年生存率に関して、すなわち5年までの死亡率は1年ごとプラス4カ月ごとの痰の検査を施行する群が有意に改善していました0.83倍、P=0.0003)。

この論文では、「頻回の胸部レントゲン写真の施行は肺ガンのスクリーニングに有害である。この教訓をふまえて今後新しい検査法(たとえばCT)が登場するならば、その前に有用性を十分に検討すべきだ」と結論づけています。

この報告には、無作為試験でないものも含まれています。例えば、群分けの時にヘビースモーカーだから頻回に検査がされていたという事などを補正する無作為化が行われていない試験も含まれています。この点は著者も指摘していますが、それを考慮しても、健康診断で胸部レントゲン写真を頻回に撮っても肺ガンの死亡率は改善できない事実を重く受け止めるべきだと思います。

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