医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心原性脳塞栓症予防の最前線 広がる誤った情報

2016年05月22日 | 雑感
臨床診療に加えて原稿・査読の依頼、論文の執筆などで多忙をきわめ、ブログの更新がまたしても遅れてしまい申し訳ありません。

忙しいけれど、今日は頑張って日本内科学会 生涯教育講演会Aセッションを聴きに東京国際フォーラムに行ってきました。最新の情報を聴くことができますので2,200人の参加者は皆真剣です。

日本内科学会 生涯教育講演会Aセッション

全て素晴らしい講演でしたが、その中で少し気になったことがありました。

前回まで私は根拠を明確に示して、「プラザキサ、イグザレルト、エリキュースなどの新薬はワーファリンより脳出血が少ないと宣伝されているが、それは誤りである」とお伝えしてきました。「これらの臨床試験のワーファリン群の脳出血が日本の実情より多すぎる」からです。

それなのに、本日の講演では「プラザキサ、イグザレルト、エリキュースはワーファリンより脳出血が少ない」と紹介されていました。

紹介していた講師は循環器内科医ではなく神経内科医でしたので、この辺の情報に詳しくないのだと思います。でも、詳しくないのなら2,200人も集まった知的好奇心旺盛な医師達の前で間違ったことを言ってはいけませんね。これでは他の分野の医師達は「プラザキサ、イグザレルト、エリキュースはワーファリンより脳出血が少ない」と信じてしまいます。

このように講演の内容に間違っていた部分があったので、ある正義感ある循環器内科医が質疑応答の時間に「先生はプラザキサ、イグザレルト、エリキュースはワーファリンより脳出血が少ないとおっしゃっていましたが、あれは外国のデータですよね。日本のデータはあるとしてもJ-ROCKET studyだけですよね。それなら「日本のデータはあるとしてもJ-ROCKET studyだけ」と明確に区別してお話いただけたら親切でした」と核心をついていました。本当は私がブログで紹介していたことと同じ事を指摘したかったのだけど、オブラートに包んで指摘したのだと感じました。

また別の質問で「ワーファリンを投与する場合、PT-INR(血液さらさらの程度)はどれくらいの頻度で測定すれば良いのでしょうか」という開業医の先生からの質問に、「ワーファリンは不安定ですから2週間に一度は測定した方がよい」と答えていましたが、その答えを聞いたとき私は「あぁ、この講師は神経内科医だから、あまり実際に自分でワーファリンを患者に投与したことがないのだなぁ」と感じました。ワーファリンはそんなに不安定ではありません。安定している患者ではPT-INR(血液さらさらの程度)の測定は1~2か月に1回でいいです。

「間違ったことはこうして広がっていくのだなぁ」と感じた一日でした。

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コメント (3)
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