医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

従軍慰安婦

2014年08月26日 | 雑感
さて、今月上旬に、とうとうというかやっとというか朝日新聞が従軍慰安婦の記事がウソであったことを認めたのは皆さんもご存じだと思います。これで従軍慰安婦は朝日新聞が作り上げたウソだったことが証明されました。そこで思い出したのですが、10年前、まだAmazonのレビュー制度が一般に広がっていなかった頃だと思いますが、「従軍慰安婦」という本に1つのレビューもなかったので、その本を読んで私は一番最初にレビューを書きました。

その「従軍慰安婦」は出鱈目な本で、証拠もないのに従軍慰安婦を存在したものとして切々と批判しているのです。

私が10年前に書いたレビューはこれです。一番最初ですから一番下に記載されています。10年前に書いたのは、その日付が証拠となっています。その後合計29のレビューが掲載されていることがわかると思います。

「従軍慰安婦」

私自身も何を書いたかあまり覚えていませんが、私は約10年前の2005年1月26日
「虚実性の決着はついている感がある「従軍慰安婦」問題だが、世間は再び騒がしいので、もう一度原点に帰ろうと本書を手にした。本書には、1993年に河野洋平が慰安婦強制連行を裏付ける証拠が全くないにもかかわらず、韓国内の反発を和らげるために政治的に認めてしまった事に関する資料が書かれている。しかし、本書の資料を読んでみるとその根拠が見いだせない。吉田清治発言は今日嘘だと判明し、本人も嘘だと認めている。官房副長官だった石原信雄氏は後日、それを認めた背景に元慰安婦とその支援者や韓国側から強い圧力があったと述べ、強制性の認定について「日韓両国間での妥協の産物」と明言し、暗にその圧力に屈したことを認めている。たしかに慰安婦問題は貧困と悪徳業者による悲劇だった。買春をする男性、売春をする女性を無くし、さらに強姦のない社会を望み、それに厳罰を処したい気持ちは誰でも同じだ。しかし、その心理を悪用して自らの意志での商行為を「強制」だとするのはいかがなものか。」
と書いています。

10年以上前から、従軍慰安婦がえん罪であることが認識されていたのは明らかであったのです。
しかし、この私のレビューに4つのコメントがなされ(私自身も今回初めて気がつきました)
「>官房副長官だった石原信雄氏は後日、それを認めた背景に元慰安婦とその支援者や韓国側から強い圧力があったと述べ、強制性の認定について「日韓両国間での妥協の産物」と明言し、暗にその圧力に屈したことを認めている。
否定しがたい事実を突きつけられから、屈服せざるをえなかったのだろう。
もし事実でないと思うのなら堂々と証拠を挙げて反論すればいいだけのこと。それを「圧力」だなんとか言って日本の否定派にリップサービスするおこがましさが露呈されていますな。実に情けない話だね・・・」


と、私がレビューした内容を「情けない」と批判しています。
その後の2つのコメントは、このコメントを逆に批判しています。4つめはあまりに過激なコメントだったのかAmazon側から削除されています。

この本が出鱈目であったことが10年後の今、朝日新聞が先日ゲロを吐いたことで、やっと証明されました。そうすると、「従軍慰安婦」は存在したということを主張しているこの本に賛成しているレビューは見当違いであることが分かります。

皆さんもレビューを興味深く読んでみてください。白黒がはっきりした今これらのレビューを読むと、ある意味面白いと思います。的を射たレビューや見当違いのレビューなど、自分がまるで予言者になったような感じで読めるのではないでしょうか。

レビュアーたちが他のどういう書籍でどういうレビューを書いているかを見ても興味深いと思います。

おそらく本書に賛成派のレビューは今後削除してくると思いますので、読むなら今のうちです。現在29のレビューがあります。
星5つ 14
星4つ 1
星3つ 2
星2つ 2
星1つ 10 です。

この出鱈目な本に対して
「ネットウヨク系のレビューを支持するネットウヨクが多いだけの話だと思う」
「ここまでむごいことをやっておきながら、韓国に全くといっていいほど賠償しない我が国の神経を疑う。日本人であることを恥ずかしく思う」「日本人であることを恥ずかしく思う」←これは日本人でない在日が日本人のふりをして書く常套文句です。
などというレビューがあるのがお分かりいただけると思いますが、これらのレビューは、朝日新聞が先日ゲロを吐いた今からみると内容は間違いです(個人的意見は自由です)。

さて、何が言いたいかといいますと、先日
「奇妙な発症曲線の臨床研究」という記事を書いたら、
「思い込みだけでそこまで書かなくてもいいと思うのですが。失礼ですが、辻褄合わせに奔走しているようにしか見えません。
中間結果が漏れた「かもしれない」。
我にかえった「かもしれない」
何ですか、これ。論文の結果の捏造以上に酷い妄想です。」
といコメントをいただきました。

このブログは「批判を恐れないブログ」ですからどんなコメントも歓迎ですが、この記事は可能性を示唆しているだけですから、この記事に不快感を示すのはおそらくこの研究の当事者だと思います(個人的意見です)。

「従軍慰安婦」に対するレビューと比較した意味をもうお分かりいただけたと思いますが、このコメントは「従軍慰安婦」の書籍に対して記載した「今では誤りとはっきりした」10年前のコメントと同じ次元であると感じないでしょうか。

私が、私の意見は99%正しいと思っていても、10年前(この場合現在)では、それに対する反対のコメントに対して100% 誤りと証明できないのです。

この研究は10年後には(もう少しかかるかもしれませんが)神の目で見て誤りであったと証明されるかもしれないのです。

刑事コロンボでは、自殺と断定された死亡者が読みかけの本に栞を挟んでいるのを見つけて、「これから自殺をしようとする者が、明日また読もうと次のページに栞を挟むだろうか?」と推測する場面があります。「数学的帰納法」はそのようにして進んでいくのだと思うのです。

ネット上のコメントというのは、よほど気合いを入れて行わなければ、「そうだ」「いや、そうではない」などと水掛け論になってしまう不毛のものです。そして批判のコメントというのは、最低でも400字以上で言葉を尽くしてその根拠を述べていただけなければコメントされたほう(あるいはその著者)に失礼ですね。私はAmazonのレビューではそのように心がけていますよ。

そして「従軍慰安婦」の著者、吉見義明 (1970年東京大学文学部卒業)、残念な人に成り下がってしまいましたね。
あれ、また東大卒でしたね。

「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂 (講談社+α新書)
これでも私はレビューを書いています。上から3つめに載せていただいています。

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ビタミンのサプリメントは動脈硬化性心臓病に効果ない

2014年08月19日 | 生活習慣病
前回、来年度から、これまであいまいにしか書けなかった健康食品の宣伝文句が、企業の責任で体にどう機能するか明確に表示できるようになる見通しであることをお伝えしました。この制度は消費者が商品を選びやすくすることで、市場を拡大させるのがねらいです。しかし新たな制度によって、問題のある商品がこれまで以上に増えるのではないかという指摘もあります。

先日もNHKのクローズアップ現代でこの問題が取り扱われていました。
↓今でもNHKのサイトに載っていますので、まず動画をご覧下さい。
健康食品が変わる 規制改革の波紋

以前から、ビタミンEに関してはいろいろと研究が進んでいますが、ビタミンEが動脈硬化による心臓病に効いたというCHAOSという大規模試験があります。しかし、大規模試験でビタミンEが効いたと結論づけているのはこの研究だけです。そこで、どうしてその大規模試験だけが「効いた」のか調べてみることにしました。

これまでにビタミンEの心臓病の予防に対する効果を調べた無作為大規模臨床試験は以下の4つありました。

European Heart Journal. 2004;25:1171.
Effect of alpha-tocopherol and carotene supplementation on coronary heart disease during the 6-year post-trial follow-uo in the ATBC study.
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)
この研究では喫煙者29,133人がビタミンE(50mg/dl/日)摂取群(6,820人)とベータカロチン(20mg/dl/日)摂取群(6,821人)、両者の摂取群(6,781人)、非摂取群(6,849人)に分けられて調査されました。6年間の調査で、狭心症や心筋梗塞で風船治療や手術を必要としたのはビタミンE群で520人、ベータカロチン群で548人、両者摂取群で511、非摂取群で534人と効果がない事が判明しました。死亡にまで至らない心筋梗塞や心筋梗塞による死亡に対しても同様に効果はありませんでした。
この研究の対象者は喫煙者で、一次予防といってまだ狭心症や脳梗塞や心筋梗塞に一度もかかっていない人です。

Lancet. 2000;355:253.
Effects of ramipril on cardiovascular and microvascular outcomes in people with diabetes meritus: results of the HOPE study and MICRO-HOPE substudy. Heart Outcomes Prevention Evaluation Study Investigators.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
この調査では3,577人の既に狭心症や脳梗塞や心筋梗塞にかかったことがある糖尿病の患者さんがramiprilというACE阻害剤(高血圧の薬、日本では未発売)投与群とビタミンE投与群と非投与群に分けられ5年間調査されました。ramiprilは全ての原因による死亡、心筋梗塞による死亡、脳梗塞の発症、心筋梗塞の発症予防に効果があったのですが、ビタミンEにはその効果は全く認められませんでした。
この研究の対象者は糖尿病の患者で、二次予防といって既に狭心症や脳梗塞や心筋梗塞にかかったことがある人です。

Lancet. 1999;354:447.
Dietary supplementation with n-3 polyunsaturated fatty acids and vitamin E after myocardial infarction: results of the GISSI-Prevenzione trial.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
この研究では、心筋梗塞にかかって3カ月以内の患者さんがビタミンE投与群(2,830人)と非投与群(2,828人)に分けられ3.5年間調査されました。ビタミンEには心筋梗塞による死亡、脳梗塞の発症、心筋梗塞の発症予防効果は全く認められませんでした。
この研究の対象者は心筋梗塞にかかっている患者です。もちろん二次予防になります。

さて、ビタミンEが効いたというCHAOSという大規模試験です。
Lancet. 1996;347:781.
Randomised control trial of vitamin E in patients with coronary disease: Cambrige Heart Antioxidant Study (CHAOS).
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
この研究では、心臓カテーテル検査で心臓の血管に治療しないといけないほど狭いところがある患者がビタミンE800IU/日投与群(546人)とビタミンE400IU/日投与群(489人)と非投与群(967人)に分けられ約2年間調査されました。

死亡に至らない心筋梗塞になった人数
投与群 1,035人中14人、非投与群 967人中41人と、約1,000に27人減りました。これは統計学的にも「効果あり」です。

心筋梗塞による死亡
投与群 1,035人中23人、非投与群 967人中27人と、約1,000に4人減りました。これは効果なしです。

全ての原因による死亡
投与群 1,035人中36人、非投与群 967人中27人と、約1,000に9人増やしました。これは効果なしです。

これでわかりました。ビタミンEは心臓カテーテル検査で心臓の血管に治療しないといけないほど狭いところがあるのだけれど、風船治療や手術をしないでいる患者さんには、死亡に至らない心筋梗塞を1,000分の27の確率で予防するということです。

これらの結果を総合すると、ビタミンEはまだ狭心症や脳梗塞や心筋梗塞に一度もかかっていない人や心筋梗塞にかかってしまった人には心筋梗塞による死亡や心筋梗塞や狭心症の発症予防に全く効果がないのだけれど、心臓カテーテル検査で心臓の血管に治療しないといけないほど狭いところがあるのだけれど、風船治療や手術をしないでいるごく限られた方(たぶんこういう方は医師から風船治療や手術を勧められていると思います)に有効ということでした。

しかし、現在の医療水準において、心臓の血管に治療しないといけないほど狭いところがあるのだけれど、風船治療や手術をしないでいる患者などほとんどいません。

こういう特殊な結果を一般に当てはめて、一般の人(心臓カテーテル検査で心臓の血管に治療しないといけないほど狭いところがない人)に「ビタミンEは心臓病の予防に効果がある」とアピールするのは不適切ですから、今後は取り締まられなければいけません。

さて、ビタミンの動脈硬化による心臓病に対する予防効果について最近興味深い総括が発表されました。

Efficacy of vitamin and antioxidant supplements in prevention of cardiovascular disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ. 2013 Jan 18;346:f10
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

この総括では、ビタミン剤は動脈硬化による心臓病に効き目がないと結論づけています。

50の大規模臨床試験の結果をまとめたものですが、上の図にあるように、製薬会社からプロバイドされたものではない研究では、ビタミンは効果がありません(上の4つですが、真ん中の1倍という縦軸を横軸が交差している場合は効果がありません)。

しかし一方で、製薬会社からプロバイドされた下の8つの研究では効果有り(横軸が真ん中の1倍という縦軸より左に偏っている)となっています。特に今回ご紹介したCHAOSという大規模試験は他の7つより飛び抜けて左に偏っていますね。
製薬会社は、先日のノバルティス・ファーマ社の事件のように、医学研究の結果を変えてしまうほどの凄い力を持っているということです。私たち医者は、そのように講演料を一杯もらってブタが木に登らないように気をつけないといけません。

新しい制度で健康食品の宣伝文句が体にどう機能するか明確に表示できるようになるのは良いけれど、例えば今回ご紹介したように、私たち消費者は研究の信頼性をどのように知ることができるのでしょうか。

とにかく、ビタミン剤は動脈硬化による心臓病に効き目がないことは事実です。

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