医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

企業が支援するメタアナリシスは信頼できない

2006年12月27日 | 総合
Cochrane reviews compared with industory supported meta-analyses and other meta-analyses of the same drugs.
BMJ. 2006;333:782.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

各種薬剤の効果を調べた研究論文がまとまった数になってくると、それらの結果をまとめたメタアナリシスが書かれることが多いです。

メタアナリシスにはその薬剤を開発・販売している企業が支援して行われるものがあります。そこで、そのメタアナリシスには「手前味噌」的なことが書かれてないかを調査した論文が最近発表されました。

医学論文データベースから、2003年に発表された1,596編のメタアナリシスのうち薬剤についてではないもの(1,209編)、適切なメタアナリシスではないもの(171編)などが除外され、相互が2年以内に同じ薬剤を比較したメタアナリシス(24編)が調査対象とされました。

これら24編は企業が支援してまとめられたメタアナリシスと、大学や研究期間によって独自に行われたものに分けられました。

結果は、企業が支援してまとめられたメタアナリシスは大学や研究期間によって独自に行われたメタアナリシスに比較して

1、 薬剤に不利な結果であった研究を分析から除外した明らかな理由が示されていない。
2、薬剤の効果に不利になる患者を除外した明らかな理由が示されていない。

などにより、同じ薬剤についてそれぞれが2年以内に行われたメタアナリシスであるにもかかわらず、企業が支援してまとめられたメタアナリシスでは、薬剤の効果が同等(P=0.64)であっても躊躇なくその薬剤の有用性を推薦する結果となっていることが明らかになりました(P=0.02)。

結論として、企業が支援してまとめられたメタアナリシスには、方法における不備や限界があっても薬剤に有利な結果が示されるので、注意して解釈する必要があるとしています。


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ミサワホーム九州、売上げ前倒し計上

2006年12月18日 | 雑感
大手住宅メーカー「ミサワホームホールディングス」傘下の「ミサワホーム九州」が過去7年間にわたって住宅を顧客に引き渡す前に売り上げを前倒しで決算に計上していたことがわかり東京証券取引所では上場廃止基準に該当する可能性もあるとしてミサワ側に詳しい説明を求めています。

「ミサワホームホールディングス」は、ことし10月に、監査法人から指摘を受けて調査した結果福岡市に本社がある傘下の「ミサワホーム九州」が平成12年からことしまでの7年間に販売した住宅およそ4600棟の内の一部を完成しておらず、顧客に引き渡していないのに引き渡したことにして売り上げを前倒しで決算に計上していたことがわかったということで近く決算を訂正することにしています。

「ミサワホームホールディングス」はバブル期のリゾート開発などで多額の負債を抱えこれまでに産業再生機構などの支援を受けて経営の再建を進めていて「ミサワホーム九州」本社からの売り上げ目標達成の指示に対し各支店が強いプレッシャーを感じたことが売り上げの前倒しにつながったものとみて「法令を順守する意識が欠けていたと反省している」と話しています。
(NHKニュースから)

このニュースをパロッてみました。

ミサワハートセンター、不必要な治療で水増し計上
大手病院「独立行政法人」傘下の「ミサワハートセンター」が過去7年間にわたって、治療効果を十分判定する前に心臓の血管に対する治療を行い、その治療費を不正請求していたことがわかり社会保険機構では保険医療機関指定の取り消しに該当する可能性もあるとしてミサワハートセンター側に詳しい説明を求めています。

「独立行政法人」は、ことし10月に、社会保険機構から指摘を受けて調査した結果、傘下の「ミサワハートセンター」が平成12年からことしまでの7年間に治療した心臓の血管およそ460箇所に関して、拡張治療をしても患者の生命やその後の生活の質をなんら改善しないことを知りながら治療を施し、その治療費を不正請求していたことがわかったということで近く保険請求を訂正することにしています。

「ミサワハートセンター」では、最近の「根拠に基づいた医療」の広がりなどで、それまでおこなわれてきた「根拠に基づかない直感的な医療」に危機感を持ち始めており、院長からの売り上げ目標達成の指示に対し、各医師が強いプレッシャーと症例数が増えることに対する優越感を感じたことが「患者の生命やその後の生活の質をなんら改善しない治療」につながったものとみて「法令を順守する意識が欠けていたと反省している」と話しています。

(登場する名称は実在する名称となんら関係はありません)



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天国へのビザ

2006年12月16日 | 雑感
最近臨床が忙しすぎてブログの更新もままならない毎日です。

毎日運ばれる「心筋梗塞」。その半数以上が80歳以上です。それを治療するのに200万円以上の治療費を費やしています。留学から帰り、てっきり心筋梗塞の治療も「包括払い」(一定の治療費が保険から支払われ、いかに効率的に治療するかで病院の利益が生まれるもの)になったと思っていました。しかし、心筋梗塞はいまだに「出来高払い」です。つまり治療費をかければかけるほど病院が儲かるシステムです。

80歳以上にかける200万円以上の治療費。この国はいずれ滅びると思います。先日大阪大学の教授が言っていました。私たちは若いときには「生きる義務」を負っている、だけど老いてからは「死ぬ義務」もあるのだと。国民全員が100歳まで生きるとすれば、その国は滅びると・・・

この言葉。私の胸にグサリと突き刺さりました。

今、NHKで老いた神経細胞を再生させるという番組が放映されているところです。神経を再生された人が働けるのならばかまいません。寝たきりでも意識・頭脳をはっきりさせるだけの治療ならば、そんな治療は必要ないです。そんな国は滅びます。

私は疲れているのかもしれません。でもこの小説を思い出しました。


「天国へのビザ」、これは私が最近読んでとても感動した小説の題名です。

この小説は現役の女性医師が書き下ろしたものだそうで、最近読書をさぼっていた私が偶然手にして、涙が出たほど感動した小説です。是非紹介したいと思いました。

私が、このブログ「医者から詳しく聞かされない医療情報」でお伝えしたい趣旨にも合致して、医者が日頃感じる医療の矛盾を、小説の中で見事に表現しているのです。

なぜ、こんなにしてまで生きなければならないのか。死ぬことはそんなに罪悪なことなのだろうか。そしてそれにつけ込む医者たち・・・

本当にお勧めの1冊です。

天国へのビザ



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小児に対する心臓移植の成績

2006年12月10日 | 循環器
米国心臓病学会からの報告です。

日本人の子供も心臓移植を受けに渡米しています。日本では心臓移植そのものの数が少ないので、その予後が一体どれくらいかという調査は不可能です。従って、このようなアメリカでの統計の結果を待つ以外にありません。もちろん最新の情報です。

The Use of Mechanical Circulatory Support as a Bridge to Transplantation in Pediatric Patients: Excellent Long-Term Survival with Ventricular Assist Devices

本報告では心臓移植を施行された3,080例(18歳以下)を対象に、後ろ向きにその予後が調査されました。

心移植試行前に機械的循環サポートが必要でなかった2,687例では、術後合併症として、人工透析5.5%、感染症22.4%、脳梗塞2.1%、再手術7.1%でした。一方、Ventricular Assist Device (VAD:要するに人工心臓です)を使用した217例では術後合併症の発症率はそれぞれ7.4%、27.2%、3.2%、11.5%、Extracorporeal Membrane Oxygenation (ECMO:要するに人工肺です)を使用した176例では、それぞれ18.2%、47.7%、5.1%、15.3%と、機械的循環サポートが必要でなかった群およびVADを使用した群に比較して有意に高かったようです。

5年生存率は、機械的循環サポートが必要でなかった群で73.4%、VAD群で68.3%、ECMO群で55.4%であった。

手術までに人工心臓や人工肺によるサポートが必要でなかった小児でも5年生存率が73.4%というのは意外に低いですね。


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