医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

魚の油 EPAの製剤、宣伝されている割には効果がない

2024年06月23日 | 生活習慣病
今からちょうど10年前、魚の油 EPAの製剤エパデールに関して以下の記事を書きました。

エパデールの効果 JELIS study、やはり、「狭心症による入院」というエンドポイントはダメでしょう

エパデールの効果、二次予防に対するJELISサブ解析

これらに関して、興味深い論文が先月発表されました。

Regular use of fish oil supplements and course of cardiovascular diseases: prospective cohort study
BMJ Med . 2024 May 21;3(1):e000451.


【方法】
対象は、英国で2006〜10年に実施された英国バイオバンクの参加者41万5,737人(平均年齢55.9歳、男性45%)です。

タッチパネル方式で魚の油 EPAの製剤を内服しているかどうかを含め、各項目がアンケートにて(平均12年間)調査されました。

健康な状態から心房細動(推移A)、
健康な状態から心血管疾患(推移B)、
健康な状態から死亡(推移C)、
心房細動の患者が心血管疾患(推移D)、
心房細動の患者が死亡(推移E)、
心血管疾患の患者が死亡(推移F)の6つの推移が調査されました。

全てのモデルで年齢、性、民族、油分の多い魚の摂取、油分の少ない魚の摂取、喫煙、飲酒、肥満、高血圧、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎不全、スタチン・糖尿病治療薬・降圧薬の使用が多変量解析で補正されました。

【結果】
健康な状態から心房細動(推移A)、1.13倍、悪化した
健康な状態から心血管疾患(推移B)、1.00倍、効果なし
健康な状態から死亡(推移C)、0.98倍、効果なし
心房細動の患者が心血管疾患(推移D)、0.92倍、改善した
心房細動の患者が死亡(推移E)、0.91倍、効果なし
心血管疾患の患者が死亡(推移F)、0.99倍、効果なし

健康な状態の人が魚の油 EPAの製剤を内服しても、心房細動が増えるという悪化作用だけでした。
心房細動の患者が内服すると、心血管疾患を8%減らせました。

41万5,737人を解析して様々な因子で補正され、前向きに調査されているので、結果にはかなりの重みと信頼性があります。

魚の油 EPAの製剤、いろいろと宣伝されている割には効果がないです。
少なくとも、健康な状態の人が内服してもお金の無駄ですね。



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新型コロナ治療薬 ラゲブリオはもはや効果がない

2024年06月02日 | 感染症
現在、論文二編の提出後 修正中で、専門医試験の書類審査も依頼され四苦八苦しておりますので、更新が遅れております。

ちなみに、四苦八苦とは、皆さんご存じの、生・老・病・死の四つの苦しみに加え、
愛別離苦あいべつりく(愛するものと別れる苦しみ)
怨憎会苦おんぞうえく(憎むものと出会う苦しみ)
求不得苦ぐふとくく(求めても得られない苦しみ)
五陰盛苦ごおんじょうく(心身の苦痛)      の八つです。

私が現在四苦八苦しているのは正確には、求不得苦ぐふとくく(求めても得られない苦しみ)でしょうね。

さて、現在新型コロナウイルス感染症の内服治療薬としてラゲブリオという薬があります。
しかしこの薬は高価で、1カプセル2,357円、1回4カプセル、1日2回、5日間内服しないといけないので、薬剤費は合計94,280円かかります。

ラゲブリオが効果があると根拠になったのは以下の論文です。
調査の対象となった条件に注意して読んでみて下さい。

Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients
N Engl J Med 2022;386(6):509-520.


【方法】
試験期間の2021年5月~11月当時は、デルタ株を中心に高病原性の変異株が流行中で入院例や死亡例が多く、また新型コロナウイルスワクチンの接種も開始されたばかりであったことから、対象はワクチン未接種で重症化リスク(高齢・肥満・担癌など)を少なくとも1つ以上持つ新型コロナウイルス感染患者とされました。
1,433人がラゲブリオ内服群と非内服群に無作為に割り当てられ、内服後29日後までの入院or死亡が調査されました。

【結果】
その結果、これら重症化リスクが高い患者ではプラセボ群(9.7%)に比べモルヌピラビル内服群(6.8%)は入院や死亡が有意に減少しました。

しかし最近は新型コロナウイルスも当時より弱毒化しワクチン接種も施行され、市民の背景も変わってきました。そこで条件を最近の状態で調査した論文が発表されました。

Molnupiravir plus usual care versus usual care alone as early treatment for adults with COVID-19 at increased risk of adverse outcomes (PANORAMIC): an open-label, platform-adaptive randomised controlled trial
Lancet 2023;401(10373):281-293.


【方法】
オミクロン株流行初期の2021年12月~22年4月に新型コロナワクチンの接種が進んでいた英国を中心に行われた試験で、登録者の94%に3回以上の接種歴がありました。
対象は50歳以上、または18歳以上で新型コロナ感染関連の危険因子あるいは併存疾患があり、市中で発症後5日以内の入院していない患者とされました。

主要評価項目は、登録時点から28日以内の入院 or 死亡とされました。26,411例が標準治療+ラゲブリオ併用群と標準治療単独群に1:1でランダムに割り付けられ、このうち併用群12,529例と標準治療群12,525例の間で主解析が行われました

【結果】
その結果、入院 or 死亡の頻度は、併用群が1%(105例)、標準治療群も1%(98例)で有意差はなく重篤な有害事象はそれぞれ0.4%、0.3%で、ラゲブリオを併用する・しないにかかわらず効果は変わらないことが示されました。


今や、効き目がなく値段も高いラゲブリオは、かなり使用対象者を絞り込まなければ使えませんね。



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