医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

急性心筋梗塞の時、別の部位が50%以上狭くなっていれば同時に治療したほうがよい

2013年09月13日 | 循環器
心臓の血管が完全に詰まってしまう急性心筋梗塞になった時、風船治療(およびステント治療)で詰まったところを広げて血液が流れるようにします。その際、その血管の詰まった以外の場所に50%以上狭くなった箇所(直径が4mmなら2mm以下に細くなったという意味です)があれば、同時に風船治療(およびステント治療)をしておくのがいいか、しなくてもいいかを調べた研究です。

50%以上狭くなった箇所といっても、心臓の筋肉に血液不足が証明できなければ、今の健康保険ではその治療は認められていません。

Randomized Trial of Preventive Angioplasty in Myocardial Infarction
New Eng J Med. September 1, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1305520
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)

このPRAMI研究では、急性心筋梗塞になった465人が、同時に風船治療(ステント治療)する群としない群に割り当てられ、その後3年間の心臓病による死亡、心筋梗塞の発症、狭心症の再発が調べられました。

結果は上の図のごとく、「心臓病による死亡」、「心筋梗塞の発症」、「狭心症の再発」を3つ合わせると同時に風船治療(およびステント治療)しておく群で21人、しない群で53人と、治療しておく群でその後の患者の予後は改善されました。

「心臓病による死亡」だけを単独にみると、両群で差はありませんでした。

死亡は予防できませんが、この方法で心筋梗塞の発症、狭心症の再発率が改善されるのであれば、今後、この同時治療が健康保険で認められるようになるかもしれないということです。

患者の皆さんに誤解があるといけないのでもう少し説明しますと、これは「心臓の血管に細いところがあると予想されるので何月何日に検査して狭いところがあれば風船治療しましょう」という予定手術のことではありません。「急性心筋梗塞で緊急入院」して緊急に風船治療(ステント治療)したという場合です。

従って、今後逆にこの研究の結果を拡大解釈して、「予定手術」の時に医者から「ほかの部位にも50%細くなっているところがありますから治療しておきましょう」などと言われたら、それは誤りです。

↓なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと、応援よろしくお願いいたします!
今は何位かな?「ブログランキング」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新しい糖尿病治療薬DPP-4阻害剤ネシーナを追加しても動脈硬化性疾患は減少しない

2013年09月03日 | 循環器
学会で発表するためにアムステルダムに来ています。
本日も新しい画期的な研究の結果が発表されました。

最近、新しい糖尿病治療薬でDPP-4阻害剤という薬が使用できるようになりました。その薬が動脈硬化性疾患に効果があるかという結果です。この研究では武田薬品のネシーナが使用されました。

このEXAMINE研究では、急性心筋梗塞になってから15日~90日の糖尿病患者5380人を従来の糖尿病治療にDPP-4阻害剤を追加する群としない群に振り分け、その後平均1年半、最大3年間の心臓病による死亡、心筋梗塞、脳梗塞の発症を比較しました。

結果は、DPP-4阻害剤を追加した群で、糖尿病の重症度を表すHbA1cは0.5%余計に改善しましたが、DPP-4阻害剤を追加した群でも心臓病による死亡、心筋梗塞、脳梗塞の発症は低下しませんでした。

DPP-4阻害剤は期待されていたほど動脈硬化性疾患に効果がないということです。

HbA1cが余計に改善されても、糖尿病の治療は主に動脈硬化性疾患を予防するために行っているので、特別にネシーナを投与しなくても、もっと安い糖尿病薬でHbA1cを下げればよいということになります。また武田薬品の薬ですね。DPP-4阻害剤は他の製薬会社からもイッパイ発売されています。

この結果は、先ほどの発表と同時にNew England Journal of Medicineに掲載・発表されました。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305889?query=featured_home

↓なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと、応援よろしくお願いいたします!
今は何位かな?「ブログランキング」
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

急性心筋梗塞では別の部位が半分以上狭くなっていれば同時に治療したほうがよい

2013年09月02日 | 循環器
学会で発表するためにアムステルダムに来ています。
さきほど驚くべき研究結果が発表されました。

心臓の血管が完全に詰まってしまう急性心筋梗塞になった時、風船治療(およびステント治療)で詰まったところを広げて血液が流れるようにします。その際、その血管の詰まった以外の場所に半分以上狭くなった箇所があれば(例えば、血管の直径が4mmの場合、2mm以下に細くなっているという意味です)、同時にその個所を風船治療(ステント治療)をしておくのがいいか、しなくてもいいかを調べた研究です。

半分以上狭くなった箇所といっても、その筋肉の部位に血液不足が証明されなければ、現行の健康保険ではその治療は認められていません。

このPRAMI 研究では、急性心筋梗塞になった465人が、同時に風船治療(ステント治療)する群としない群に割り当てられ、その後3年間の死亡、心筋梗塞の発症、狭心症の再発が調べられました。

両群であまりにも差がついたので、倫理的な問題により途中で早く研究が打ち切られたそうです。

結果は、上の写真のように(前の聴衆の頭でスライドの下のほうが見えないのはスクリーンの設置のミスです)、急性心筋梗塞の時に、血管の詰まった以外の場所に半分以上狭くなった箇所があれば、同時に風船治療しておく群で21人、しない群で53人と、しておく群でその後の患者の予後は改善されました。

患者の皆様に誤解があるといけないのでもう少し説明しますと、これは心臓の血管に細いところがあると予想されるので何月何日に検査して狭いところがあれば風船治療しましょうという予定手術のことではありません。急性心筋梗塞で緊急入院して緊急に風船治療(ステント治療)したという場合です。

この方法で、患者の予後が改善されるのであれば、今後、この同時治療が健康保険で認められるようになるということです。

この結果は、先ほどの発表と同時にNew England Journal of Medicineに掲載・発表されました。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305520?query=featured_home

素晴らしい研究でした。今までの医療行為の適応を根本から変えてしまう結果です。2000人以上の聴衆は、結果が発表されると一斉にザワメキ始めました。

改善されたのが、死亡、心筋梗塞の発症、狭心症の再発のうち、狭心症の再発だけなら、「なんだ~それぐらの改善?死亡は減少させないの?」ということになりますので、原文が手に入りましたら、詳しいことは再度お伝えします。

↓なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと、応援よろしくお願いいたします!
今は何位かな?「ブログランキング」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする