医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

食後5分間の歯磨きが老人の肺炎を減らす

2006年01月30日 | 感染症
衰弱した高齢者の場合、誤嚥性肺炎といって食べ物が気道の中に入り肺炎を起こすことがあります。食べ物が気道の中に入る事は減らせないとしても、口腔内を清潔に保てば肺炎が減るのではないかという仮説のもとに行われた研究があります。日本で行われた研究です。

Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes.
Journal of American Geriatric Society. 2002;50:430.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

11の老人保健施設の入所者417人(平均年齢82歳)を対象に、毎食後5分間の歯磨き(歯がない場合は口腔ケア)と一月に一度のヨード(テレビでも宣伝されているイソジンです)による口腔ケアを施行する群と施行しない群を設け、肺炎の発症率、肺炎による死亡率が前向きに2年間調査されました。

2年間に肺炎を発症したのは口腔ケア施行群11%、非施行群19%で、口腔ケア施行群のほうが有意に減少していました。肺炎による死亡も口腔ケア施行群7%、非施行群16%で、口腔ケア施行群のほうが有意に減少していました。

Mini Mental State Examinationとよばれる知的機能を評価する指標も口腔ケア施行群で1.5ポイント減少、非施行群3.0ポイント減少と口腔ケア施行群で有意に知的機能の低下が予防できました。

同様に、日常生活動作の減退も軽度に留まっていました。

高齢者では歯磨きが肺炎の死亡率を9%も減少させ知的機能や日常生活動作の低下を抑制するなんて、虫歯予防以外にも歯磨きの重要性を再認識させられる報告です。

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外傷は急性心筋梗塞のリスクを増大させる

2006年01月28日 | 循環器
外傷と急性心筋梗塞という一見関連のない状態が、じつは関連していたというユニークな報告です。

Trauma associated with acute myocardial infarction in a multi-state hospitalized population.
International Journal of Cardiology. 2005;105:141.
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

1997年の米国19州の入院データが後ろ向き(過去を調べる)に調査されました。調査対象は1,780万人の入院のうち外傷で入院した105万人です。

外傷は心臓に対する鈍的外傷、胸部外傷、腹部外傷、骨盤外傷、背部外傷、脊椎外傷に分類されました。心臓に対する鈍的外傷と心筋梗塞は胸痛という共通した症状を呈するために、急性心筋梗塞の診断は心臓の血管造影で直接診断されました。

外傷で入院した患者105万人のうち0.26%が心臓に対する鈍的外傷でした。105万人のうち32,616人(なんと3.1%)が急性心筋梗塞を発症しました。

急性心筋梗塞を発症した患者全体では転落による外傷が49.1%と最も多く、46歳以上では転落による外傷が58%、次に交通事故が22%でした。45歳以下では交通事故が31%と一番の原因でした。

46歳以上では、心臓に対する鈍的外傷を受傷した患者の急性心筋梗塞の発症率はそうでない場合の8.38倍で、45歳以下では31.4倍でした。骨盤外傷と腹部外傷を受傷した場合、発症率は46歳以上で1.65倍、45歳以下では1.93倍でした。

心臓に対する鈍的外傷では、もともと心臓の血管にあったコレステロールの塊の破裂を促進させること、骨盤外症は出血による循環血液量の減少、腹部外傷では腹部圧迫による心臓の血管内のずれる圧力の増加が原因として考えられると結論しています。

糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、喫煙歴のある方は、心筋梗塞の予防のために外傷にも気をつけないといけないという示唆に富んだ報告でした。

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高血圧治療薬・ブロプレスの徹底検証(その2)

2006年01月25日 | 循環器
前回までは慢性心不全患者に対するブロプレスの効果でした。今回は心不全が軽度の患者さんに対する効果はどうかという報告です。

この論文の中では、心不全が軽いという事を心臓の超音波検査や左室造影検査の「左室駆出率」という指標で判断しています。左室駆出率は心臓のポンプとしての働きを反映し、正常では60%程度ですが、心不全にともない低下します。

この研究では左室駆出率が40%以上を軽度心不全としています。60%が40%に低下しているということは、車でいえば2000ccのエンジンが1300ccぐらいまで低下していることと考えればわかりやすいかもしれません。

Effects of candesartan in patients with chronic heart failure and preserved left-ventricular ejection fraction: the CHARM-Preserved trial.
Lancet. 2003;362:777.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は左室駆出率が40%以上の軽度心不全患者3,025人で、ブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(1,514人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(1,509人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。

突然死、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。

3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち心不全による入院(18.3%を15.9%に、P=0.072)の1項目だけでした。NNT(患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数)は41人ですから、41人が内服した場合、「心不全による入院(非致死性)」を予防する恩恵を受けるのは、その中の1人です。

つまり、左室駆出率が40%以上ある(元気な)患者さんにとって、ブロプレスには生命予後改善効果はほとんどなく、唯一の効果である1人の心不全による入院(非致死性)を予防するのにも薬剤費が889万円かかります。これはちょっと高すぎませんか。

誤解を恐れずいうならば、889万円あれば実際に心不全で入院している多くの患者さんの治療費を捻出することができます。

薬剤選択は医師の裁量にまかされています。製薬会社はデータの一部だけを医者に提示して、全ての条件で効果があるような印象を与えてしまいがちですが、論文の元を読んでみると、製薬会社が示すデータの中で伝えられていない論文内容がある事もわかります。

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高血圧治療薬・ブロプレスの徹底検証(その1)

2006年01月23日 | 循環器
昨日お伝えした調査は、3つの報告のメタアナリシスで、いろいろな状況の患者さんが対象となっていました。それぞれの状況に合った効果判定はどうなのかということで、今回はそのなかの1つに絞ってご紹介したいと思います。

Effect of candesartan in patients with chronic heart failure and reduced left-vebtricular systolic function intolerant to angiotensin-converting-enzyme inhibitors: th CHARM-Alternative trial.. Lancet. 2003;362:772.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

心不全に効果があると報告されている高血圧の薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)には咳という副作用がかなりの頻度で出現し、咳のために内服の継続が困難な場合があります。今回調査対象となったのは咳などの副作用で、ACE阻害剤が内服できなくなった慢性心不全患者です。

慢性心不全患者2,028人がブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(1,013人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(1,015人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。

対象となった患者さんで、ACE阻害剤の副作用の内訳は、咳が72%、低血圧が13%、腎障害が12%でした。

突然死、心不全の進行による入院、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。

3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち心血管病による死亡(24.1%を21.6%に、P=0.02)、心不全の進行による入院(28.2%を20.4%に、P<0.0001)の2項目でした。 効果があった2項目と合わせて、「心血管病による死亡、心不全の進行による入院、心筋梗塞による入院、脳梗塞による入院の合計」などという項目で改善があったと報告していますが、それなら「心筋梗塞による入院」単独や「脳梗塞による入院」単独で解析するべきです。それが示されていないのは、それら単独では改善が認められていなかったからでしょう。

ともあれ、ブロプレスは慢性心不全患者1人の心血管病による死亡を854万円で予防し、1人の心不全の進行による入院を273万円で予防します。

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高血圧の薬ブロプレスが効果を示す疾患と示さない疾患

2006年01月22日 | 循環器
12月23日の記事の中で高血圧の薬の中でなにが一番よいかという事をお伝えしました。今回は高血圧の薬の中で、ブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の有用性の検討の報告をお伝えします。

Effect of candesartan on cause-specific mortality in heart failure patients. The candesartan in heart failure assessment of reduction in mortality and morbidity (CHARM) program.
Circulation. 2004;110:2180.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

慢性心不全患者7,599人がブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(3,803人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(3,796人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。

突然死、心不全の進行、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。

3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち突然死(9.1%を7.9%に、P=0.036)、心不全の進行(2.4%を1.9%に、P=0.008)、全ての心臓血管病による死亡(20.3%を18.2%に、P=0.037)の3項目でした。

他の項目に関しては効果が認められませんでしたし、ガンによる死亡を(1.5%を2.3%に、P=0.012)上昇させていました。しかしガンに関しては、突然死や全ての心臓血管病による死亡が減少したためにガンにさらされる期間が増えたとも解釈できます。

コストですが、平均投与量を8mg/日と仮定した場合、ブロプレス8mgが195円ですから、突然死を一人予防するのに1,778万円、心不全の進行を一人予防するのに4,270万円、全ての心臓血管病による死亡を一人予防するのに1,015万円です。

心不全の進行を一人予防するのに4,270万円もかかっていますが、これはブロプレスを3年間投与しても1000人に5人しか(つまりNNTは200)心不全の進行を予防できなかった事が原因です。同様に突然死に関しても3年間で1000人に12人(つまりNNTは83)です。これを効いていると言っていいのか、私には疑問です。

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アスピリンとペルサンチンは脳梗塞の再発率を下げる

2006年01月19日 | 循環器
ジピリダモール(商品名ペルサンチン)という薬にも血小板凝集を抑制する作用があり、狭心症や心筋梗塞の予防に使用されています。また、腎臓の組織内での凝集を予防し、蛋白尿を減少させる目的でも使われています。

今回はペルサンチンが脳梗塞の再発の予防にどれだけ有効かという報告です。
European Stroke Prevention Study 2. Dipyridamole and acetylsalicylic acid in the secondary prevention of stroke.
Journal of the Neurological Science. 1996;143:1.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

3カ月以内に脳梗塞または一過性脳虚血発作を生じた18歳以上の患者さんが、アスピリン50mg/日内服群(1,649人)とペルサンチン400mg/日内服群(1,650人)、アスピリン50mg/日+ペルサンチン400mg/日内服群(1,650人)、プラセボ群(1,649人)に無作為に割り当てられ、2年間前向きに調査されました。

脳梗塞の再発率はプラセボで15.1%に対して、アスピリン単独で12.5%、ペルサンチン単独で12.7%、併用で9.5%、とアスピリンやペルサンチンの使用が有意に発症を抑制していました。

脳梗塞の再発率と全ての原因による死亡をあわせた場合でも、プラセボで22.9%に対して、アスピリン単独で20.0%、ペルサンチン単独で19.4%、併用で17.3%、とアスピリンやペルサンチンの使用が有意に発症を抑制していました。

頭痛が最も頻度の高い副作用で、ペルサンチン投与群で多く認められました。

さて、コストベネフィットですが、アスピリン50mgという錠剤はないので100mgの錠剤を用いるとして、ペルサンチン100mgは29.5円、アスピリン100mgは6.4円ですから、どちらか単独で投与するならば、脳梗塞の再発1人予防するのにアスピリンでは18万円、ペルサンチンでは359万円で、アスピリンを使用する方がコストは安くなります。併用の場合は162万円です。

総合的に考えると、脳梗塞の再発1人予防するのに162万円が安いと考えられる場合は併用、高いと考えられる場合はアスピリン単独ということになります。

ただし、日本でのペルサンチンの使用量は、狭心症や心筋梗塞で75mg、蛋白尿減少させる目的で最高300mg、心臓の人工弁置換術後の血栓形成予防で400mgですから、この量で同様の効果が期待できるかは不明です。


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パナルジンは脳梗塞の再発率を下げる

2006年01月17日 | 循環器
10月25日、アスピリンという血小板の凝集を防ぐ薬は女性の脳梗塞の発症率と男性の心筋梗塞の発症率を下げることをお伝えしました。アスピリン以外にもパナルジンという血小板の凝集を防ぐ薬があります。

今回はこの薬が脳梗塞の予防にどれだけ有効かという報告です。

The Canadian American Ticlopidine Study (CATS) in thromboembolic stroke.
Lancet. 1989;1:1215.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

脳梗塞を発症した1,072人をパナルジン500mg/日投与群と非投与群に無作為に分け3年間調査しました。パナルジン投与群では投与は脳梗塞の発症1週間から4カ月後でした。

結果は、パナルジン非投与群では脳梗塞と心筋梗塞の発症と動脈硬化による死亡は年間15.3%でしたが、投与群では10.8%と有意に減少しました。効果は男性でも女性でも同じでした。副作用として1%に重篤な白血球減少が認められ、2%に薬疹が認められました。副作用は内服を中止することで改善されました。

一度脳梗塞を発症した患者さんでは、パナルジンを投与することによって、脳梗塞の再発と心筋梗塞の発症と動脈硬化による死亡が4.5%予防できるということです。一方、重篤な副作用も100人に1人認められるので、投与開始時期には定期的な血液検査が必要です。

副作用には、その他血栓性血小板減少性紫斑や肝障害があり、日本でそれぞれ5~6人の死亡例が認められています。しかしこれらの副作用は投与開始時の血液検査で重症化を防ぐことができますので、厚生労働省はパナルジン投与開始から2ヶ月間は2週間ごとの血液検査の徹底を警告しています。

以前お伝えしたアスピリンの場合は、一度も脳梗塞を発症していない方も含めて調査されていましたので、10年間に脳梗塞を発症したのがアスピリン投与群0.8%、非投与群1.1%と発症率は低いのですが、一度脳梗塞を発症した患者さんを対象にすると再発率はかなり高いことがわかります。

パナルジンは日本では1日200mgが常用量ですが、この報告のように1日500mgを使用すると、100mgが現在円ですから、1人の脳梗塞の再発と心筋梗塞の発症と動脈硬化による死亡を予防するのに815万円かかります。


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子宮頚部ガンの原因にたいするワクチン

2006年01月13日 | 
子宮頚ガンの全ては、性交渉で感染の機会が増えるとヒトパピローマウイルスによる炎症から進展します。健常女性においても10~30%にヒトパピローマウイルスが検出されますが、大部分の例でウイルス感染は陰性化するといわれており、感染が持続し異形成と呼ばれる前癌病変が発生するのはその一部です。異形成は軽度、中等度、高度の3段階に分けられますが、自然に消えてしまうものや長期間にわたる観察においても変化のないものも多くあります。しかし、軽度異形成の約5%、中等度異形成の10%、高度異形成の20~25%が次の段階に進展します。

子宮頚ガンの原因がウイルス感染であれば、そのワクチンを使い初期の感染を予防すれば子宮頚ガンが予防できるのではないかという発想から、今月次のような論文が報告されました。

Obstetrics & Gynocology. 2006;18:18.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

Efficacy of humanpapillomavirus-16 vaccine tp prevent cervial intraepithelial neoplasia: A randomized controlled trial.

16歳から23歳の女性2,391人がヒトパピローマウイルスのワクチン接種群と単なる生理食塩水接種群に二重盲検(注射をした者もされた者もどちらの群か知らない)で分けられ、6カ月ごとに48カ月間、ウイルス抗体価が測定されました。不正出血など、臨床症状が認められた場合や、調査期間の最後に、子宮頚部内視鏡と子宮頚部の細胞の検査が施行されました。

結果は、期間中750人のワクチン非接種群のうち111人(14.8%)にヒトパピローマウイルスの感染が認められましたが、ワクチン接種群では7人(0.9%)で感染は接種群の方で有意に減少していました。ワクチン非接種群のうち12人(1.6%)にヒトパピローマウイルスが原因と考えられる細胞異形成が認められましたが、ワクチン接種群には1人も認められませんでした。接種後7カ月で抗体価が最高になり、18カ月で減少し、少なくとも3年半後まで抗体陽性が持続することがわかりました。

アメリカではこの結果をうけて、思春期の女性の希望者にヒトパピローマウイルスワクチンを接種しようとする動きもあります。いかにもアメリカならではの対処法だと思いますが、日本にとっても他人事ではありません。

この研究における参加者の協力は並大抵のものではないと思います。自分がワクチン非接種群に入る可能性もあり、調査の最後に子宮頚部内視鏡と子宮頚部の細胞の検査があるにもかかわらず2,391人もの女性が参加しているのです。ワクチンの有効性の有無を明らかにしたいという欧米の国民の意識は賞賛に値すると思います。


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ガンの危険因子に関する最大のメタアナリシス

2006年01月11日 | 
これまでも様々なガンの危険因子が報告されていますが、それぞれの危険因子を同じ解析方法で評価したメタアナリシスはありませんでした。このほど、この膨大な手間を惜しまずまとめられた論文が発表されました。

Lancet. 2005;366:1784.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

Cause of cancer in the world: comparative risk assessment of nine behavioural and environmental risk factors.

調査は2001年に全世界で生じたガンによる死亡が対象になされました。ガンの危険因子はこれまで因果関係が確立していて、全世界規模の解析が可能なデータ量が揃っている9つに関して調査され、同様にガンの種類は12部位が選択されました。

結果は、1年間に全世界で生じた702万人のガンによる死亡の35%(243万人)が9つの危険因子によって起因すると推計されました。因子ごとでは喫煙が21%のガン死亡に関係があり、次に野菜果物の低摂取が5%のガン死亡に関係していました。

詳細は先進国と発展途上国に二分して解析がなされているので、先進国に関して具体的に示します。

口腔咽頭ガン  飲酒(33%)(口腔咽頭ガンの33%が飲酒を原因としていたという意味です)
        喫煙(71%)
食道ガン    飲酒(41%)、喫煙(71%)、野菜果物低摂取(12%)
胃ガン     喫煙(25%)、野菜果物低摂取(12%)
大腸・直腸ガン 肥満(14%)、運動不足(14%)、野菜果物低摂取(1%)
肝臓ガン     喫煙(29%)、飲酒(32%)、医療従事者の針刺し事故(3%)
膵臓ガン    喫煙(30%)
肺ガン     喫煙(86%)、野菜果物低摂取(8%)、大気汚染(3%)
乳ガン     飲酒(9%)、肥満(13%)、運動不足(9%)
子宮頚ガン   喫煙(11%)、危険な性交渉(100%)
子宮体ガン   肥満(43%)
膀胱ガン    喫煙(41%)
白血病     喫煙(17%)
その他     喫煙(8%)

ほとんどのガンが喫煙を危険因子にしていることは注目すべきことだと思います。


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ジェネリック薬品

2006年01月09日 | 薬・総合
(日本経済新聞)
厚生労働省は公的医療保険が支払う医薬品の公定価格(薬価)の制度を見直す。先に販売された先発薬より安い後発薬の販売が始まると、先発薬の公定価格も後発薬の値段に連動して下がる新しい方式を導入する。先発薬の値下げを速めることで年間1,500億円の薬剤費削減を見込む。年内に固まる医療制度改革にあわせ、来年度から順次導入する。新薬価制度は同省が医療制度改革試案に盛り込んだ後発品の普及促進を中心とする薬剤費削減策の柱。中央社会保険医療協議会(中医協)、与党などとの調整を経て年内に大枠を正式に決め、来年度の薬価改定で導入する方向だ。
(以上引用)


「後発品」とは、最初に開発された薬品(新薬)の特許期間(20年)が切れてから、開発した会社以外でも同じ成分を使って製造発売できるもので、ジェネリック薬品ともよばれています。かつては、新薬の特許が切れた直後にゾロゾロ出てくるので、「ゾロ」または「ゾロ薬」などと侮蔑的表現が用いられていました。この背景には、主成分以外の添加物の品質に対する不安や、メーカーの多くが多品種少量生産であり、在庫が不十分なことによる安定供給の確保に問題があったことなどが挙げられています。

しかし価格が新薬より安く、高騰する医療費の抑制を担える可能性から最近注目をあびています。例えば、三共が開発し、2002年度国内売上高ランキング第1位となった高脂血症治療薬メバロチンの1錠当たりの薬価は145円ですが、後発医薬品メーカーが販売する同じ成分の製品は、東和薬品(マイバスタン)で112円、沢井製薬(プラバチン)および業界第3位の日本医薬品工業(メバン)では88円となっています。

新薬の価格が高い理由に、新薬の開発には10年から20年、費用は100億円から200億円かかる事があげられます。後発品が市場に占める割合は欧米では50%近くありますが、日本では10%にすぎません。

「ジェネリック薬品の情報を増やすべきだ」などというジェネリック薬品を支持する質問項目を4つ、「新薬の方が安心できる」などという新薬を支持する質問項目を5つ、「医者の指示に従う」というお任せ思考的質問事項を2つ、合計11の項目の中で当てはまるものを選んでもらうという、早稲田大学ビジネススクール今泉均氏が施行した調査では、ジェネリック薬品支持が41.9%、新薬支持が56.2%、お任せが69.1%(重複回答あり)でした。薬剤の選択では医師の指示に従うもののジェネリック薬品への関心の高まりが認められました。

医療費の高騰に伴う自己負担の増加を嘆く前に、国民それぞれが医療費の抑制に向けて行動する必要性を考えるとき、ジェネリック薬品は重要な存在です。これまでの先発医薬品を継続するか、ジェネリック薬品へ切り替えるかの最終決定権は患者さんにあるのです。

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乳製品からのカルシウム、ビタミンDの摂取は乳ガンのリスクを低下させる

2006年01月07日 | 
9月7日に小児期と青年期の牛乳摂取量が多いと加齢後の骨折率が下がるという論文を紹介しました。今回は、乳製品からのカルシウム、ビタミンDの摂取量が乳ガンの発生率を下げるという前向きの調査の結果です。

Cancer Epidemiology Biomakers & Prevention. 2005;14:2898.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

1992年から1993年にかけて食事、ビタミン・ミネラルのサプリメント使用、病歴、生活習慣に関する詳細な質問票に回答したなかから、癌の既往歴のある女性と食事データが不十分な女性を除外し、閉経後女性68,567人が対象となり、2001年8月までの前向きの調査でこのうち2,855例に乳癌の発生が確認されました。

食事によるカルシウム摂取量が1,250mg/日以上と報告した女性は、同摂取量が500mg/日未満の女性より乳癌のリスクが低かったのですが、(相対リスク0.80、P=0.02)。サプリメントからのカルシウム、ビタミンDの摂取量は乳癌のリスクとは関係がありませんでした。

摂取量最高群は摂取量最低群に比べ乳ガンの発生率は、食物中のカルシウム量で67%、乳製品カルシウム量で73%、食物中ビタミン量で74%低下していました。

「食事中のカルシウムや乳製品に含まれる他の成分が閉経後乳癌のリスクをに低下させ、主に低脂肪食品によるカルシウムおよび乳製品の摂取量の多い閉経後女性は乳癌リスクが低かった」と結論づけています。

サプリメントからカルシウム、ビタミンを摂取しても乳癌の発生率は低下せず、食事中のカルシウム、ビタミンが発生率を低下させていることは興味深い結果です。


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カプセル型胃カメラ

2006年01月05日 | 消化器
医療機器はさまざまな進歩をとげています。その中にカプセル型の内視鏡があります。その名のごとく、薬のカプセルほどの大きさのカプセルの中に画像をワイヤレスで送信できるカメラを搭載して、それをそのまま飲み込み食道から大腸や直腸までの様子が観察できるというものです。価格はたしか数百ドルだったと思いますが、もちろん使い捨てで(消毒しても再利用には倫理的?精神的?な負担があります)今のところコストに問題があります。

そんなカプセル型内視鏡ですが、そんなもったいない使い方をするのではなく、これまで通常の胃カメラを使用して一部の患者さんが嚥下に辛い思いをしていた場面で、このカプセル型内視鏡に紐を付けて、食道の静脈瘤を観察するためだけに使い、使用後回収すれば(もちろん口からです)、コスト・ベネフィットと同時に汎用性が高まるのではないかという報告が最近なされました。

Jornal of American Gastroenterology. 2005;100:1065.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

Feasibility and safety of string wireless capsule endoscopy in the diagnosis of esophageal varices.

対象患者は肝硬変により食道静脈瘤が疑われた30人(平均年齢54.4歳)で、全例で紐が切れたりカプセルが消失したりする事がありませんでした。平均観察時間は5.8分で、これまでの胃カメラでその後観察した結果、正確度は96.7%で、苦痛もほとんどありませんでした。全体の83.3%の方がカプセル型内視鏡を好みました。

単純にカプセル型内視鏡に紐をつけただけですが、素晴らしいアイデアです。食道の観察に関しては、数年後にはこれが主流になっていくかもしれません。

百聞は一見にしかず↓
http://www.gihealth.com/html/test/given.html



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心臓カテーテル検査・治療の安全性

2006年01月03日 | 循環器
心臓の血管はそのままではレントゲンに映らず、造影剤という薬を血管に流しながらレントゲンを撮らないと狭心症や心筋梗塞の診断はできません。狭心症や心筋梗塞は直接命に関わりますからとても重要な検査ですが、危険性を強調しすぎると検査自体が避けられ、治療の機会をのがしたまま命を失うという事が起きます。逆に、危険性を強調しないで検査をすれば合併症が発生したときに訴訟という問題になりえますから、他の検査と同様、医者は常にジレンマに陥っているといっても過言ではないと思います。

それでは、心臓カテーテル検査・治療の安全性はどうなのか。今まで一番多くの統計が取られた調査は1991年のCathether Cardiovascular Diagnosisの報告で、総数59,972人が調査されました。

結果は
検査で死亡した確率は0.11%(約1,000人に1人)
心筋梗塞を起こした確率は0.05%
脳梗塞は0.07%

軽度の合併症として
血管損傷が0.43%
不整脈が0.38%
アレルギーが0.37%
血行動態悪化が0.26%でした。

しかし、これらは15年前の統計であり、医療機器が発達した現在はこれらの確率より少ないと考えられます。さらに最近は15年前と違い、橈骨動脈といって手首の動脈から施行できますので侵襲も少なくすみます。最近、総数は少ないものの同様の調査結果が報告されました。

Journal of Invasive Cardiology. 2005;17:651.からの報告です。
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

Safety and efficacy of the percutaneous radial artery approach for coronary angiography and angioplasty in the elderly.

この調査では850人が70歳未満の600人と、70歳以上の250人に分けられ調査されました。橈骨動脈から施行された検査・治療が対象となりました。

結果は、両群で死亡や心筋梗塞という合併症は認められませんでした。70歳未満群では1人の一過性脳虚血発作が発生し、70歳以上群では1人の脳梗塞と2人の一過性脳虚血発作が発生し、両群で発生率に違いは認められませんでした。一過性脳虚血発作とは、脳血管障害により、突然、片麻痺、失語症などの脳局所症状が出現し、24時間以内(通常10~20分以内)に回復する病態をいいます。

両群を合わせると850人で1人の脳梗塞(1,000人に約1人)と3人(1,000人に約3人)の一過性脳虚血発作が発生したという事になります。ただしこの報告では検査だけでなく風船治療などで硬いカテーテルを使用した場合を含んでいますので、検査だけの場合はこれらの確率はもう少し少なくなると思います。

前回の小児麻痺の場合と同様に、医療紛争を避けるために、どれだけ細心の注意を払いながら検査や治療をしていても一定の確率で合併症が起こるという事を、あらかじめ患者さんに伝える事はとても大切な事です。

今は何位かな?

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