医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

EBM(Evidence Based Medicine)のお話(基本的用語その1)

2005年04月29日 | はじめての皆様へのメッセージ
いきなり私事で恐縮ですが、私は一級小型船舶免許を持っています。最近は制度が改正され、一級も取得しやすくなっているようですが、昔は「エンジンの構造」や「天文航法」など、やたらと難しかったのを覚えています。これから述べる「観天望気」も内容の一つでした。

外洋では悪天候は命取りになりかねません。そんな中、大昔の船乗りたちは「太陽や月に傘がかかったら雨」「夕やけは晴れ、朝やけは雨」といった経験の蓄積で天気を予想していました。これを「観天望気」と言います。それでは現代の船乗りがそれをしないのはなぜでしょうか。それは地上の観測所や人工衛星が気圧の変化や雲の動きを正確に分析した「気象予報」を人工衛星などから得ることができるからです。「観天望気」は経験の蓄積に照らした天候の判断、人工衛星などから情報を得た「気象予報」は科学的な根拠とデータに基づく天候の判断ということができます。

医療でも同じ事が言えます。EBM(Evidence Based Medicine: 根拠に基づいた医療)は、この「データに基づいた気象予報」に相応し、明らかにされている研究成果や実証的、実用的な根拠を用いた医療と言えます。逆に、「医者のさじ加減」などといわれる医師の経験に基づく治療は「観天望気」に相当します。医療には糸を結ぶ感触、痛みを訴える患者さんの様子など言葉にできない事も多くあり、その点では医師の経験に基づく治療も蔑ろにはできません。EBMをサイエンスと呼ぶ事ができるならば、医師の経験に基づく治療はアートと呼ぶ事ができるかもしれません。

しかし、医師の経験に左右される治療はその方法が的を射ているのであればよいのですが、しばしば根拠がなく個人的な経験のみに基づいて行われている事があるために、患者さん個人に不利益になったり医療費の高騰や社会資源の無駄を招いたりすることもあります。EBMは効果的で質の高い患者さん中心の医療を実践するための事前ならびに事後評価の手段であります。よい医師とは臨床的経験と科学的根拠の両方をうまく用いることができ、患者さん本人のために危険を避けるように努力している者と言えます。

天気予報では降水確率などと称した方法で未来の事象を報告しています。不確定な未来を報告するのですから、その方法以外には適切な科学的報告はできないのですが、逆にたとえ「降水確率50%」が、雨が降るとも降らないともとれる意味であれ、私たちはそれを知る事により、未来の事象をイメージする事ができます。これは医学でも同様です。これらの数値の積み重ねを知る事により、治療選択をイメージする事ができるようになるのではないでしょうか。

数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活―病院や裁判で統計にだまされないために
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セカンド・オピニオンを知る

2005年04月27日 | はじめての皆様へのメッセージ
最近、医療過誤・事故が問題になる事が多くなってきました。おそらく、皆さんは病院・診療所が施す医療になんらかの不安を抱いているのではないでしょうか。その原因の一つとして、正確な医療情報が医者から患者へと伝わっていないことが挙げられます。私たちがもう少し診断や治療に関する情報を把握できたら、そんな不安を減らす事ができるだろうし、医者と患者の知識の溝もなくなっていくのではないでしょうか。

それでは、どうやって診断や治療に関する情報を身につけたらいいのか?私たちは病気になった時、医者を頼らなければなりません。しかし、患者側にとって医療情報は理解するのが難しく、医師の説明を理解しインフォームド・コンセントのもとに適切な選択をしていくのは易しいことではありません。さらに医者側も、多忙な業務の中で大切な情報を十分にインフォームできているとは限りません。

そこで、この問題を少しでも解決するべく、最新の医療情報を誰にでもわかりやすく解説する事を目的に本ブログを開設しました。ブログのフットワークの良さを利用して、できるだけ最新の治療成績・治療情報を掲載いたします。さらに、皆様からのご意見を参考にさせていただきながら、情報を増やしていきたいと思っています。

また、高騰する医療費とその自己負担額の点から、あまり明らかにされないコストの問題にも焦点をあてていきたいと思います。
コメント (6)
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