医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

運動前後のストレッチングには筋肉痛・ケガ予防の効果がない

2022年05月03日 | 整形外科
コロナ感染に対する行動制限も緩和され、今後屋外で身体を動かす機会が増えてくると思います。私も最近、積極的に登山するようにしています。

昔は、運動前には準備体操をしなさいと言われてきました。本当に準備体操は効果があるのかを検証した論文があります。

Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review.
BMJ. 2002;325:468.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この論文はこれまでの8つの論文をまとめたレビューです。基準に該当する研究結果を集め、再解析する方法では信頼性が高い根拠が得られます。そしてこのBritish Medical Journalというのはとても信頼性の高い医学雑誌です。

対象人数が最大のものは17~35歳の兵役でのトレーニング生1,538人、同じく1,093人のものが含まれています。

調査では毎日のトレーニング前後に5~10分の準備運動(ストレッチング)をする群としない群に分け、80日間のトレーニング期間の筋肉痛、ケガの状態が評価されました。

筋肉痛は0から10までの11段階で評価されました。ケガは捻挫、疲労骨折、骨膜炎、アキレス腱炎、前脛骨区画症候群(前脛骨筋、長指伸筋、長母指伸筋とそれぞれの筋膜および前脛骨区画に関与する神経と血管に、何らかの原因によって障害が生じ、そのために組織内圧が亢進し、前脛骨区画内の循環系に不全が起こり、筋・腱・神経組織に機能障害や壊死が生じるものである)を対象とされました。

結果ですが、筋肉痛のスコアは両群で同じでした。上の図は80日間のトレーニング期間にケガをしなかった者の割合で、赤は1998年の調査でのストレッチング施行群、青は非施行群、水色は2000年の調査でのストレッチング施行群、オレンジは非施行群です。1998年、2000年の調査とも両群でケガが起きる割合は同じでした。

他の6つの調査でもほぼ同様の結果がでています。

運動前に準備運動(ストレッチング)をしても筋肉痛やケガを防ぐことはできません。筋肉痛になるときはなる、ならないときはならない、ケガをするときはする、しないときはしないのです。私たちが小学校の時から運動前には準備体操をしなさいと言われてきたのはなんだったのでしょうね。思い込みというのは恐ろしいものです。

ただし、この結果の解釈に対して注意するべきことは、対象年齢が17~40歳と若く高齢者に関しては不明である点、準備運動(ストレッチング)がその後の運動能力を向上させるかは調査されていないという点です。


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グルコサミン摂取は変形性膝関節症の発症に効果がない

2012年12月25日 | 整形外科
11月に開催された米国リウマチ学会で発表された内容です。
この医学研究はグルコサミンに関する初めての無作為化比較試験です。

50歳~60歳の6691人の女性を臨床医50人が診断し、BMIが27以上(割合としては、身長160センチで体重が69キロ以上)(肥満は変形性膝関節症の危険因子です)、臨床的な変形性膝関節症ではない(ACR分類基準を満たさない)、MRI撮影が可能、関節リウマチ疾患がない、最近のグルコサミン摂取がない―というすべての基準を満たした407人(平均年齢は55.7歳、68%は閉経)が対象とされました。407人は、グルコサミン硫酸塩1500mg内服群と偽薬内服群に分けられ、さらにダイエット&運動プログラムをする群としない群の2群に分かれました。

2.5年の観察期間で、副作用の発生は偽薬服用群で合計53人(26%)(偽薬群でも副作用は発生します。病は気からです)、グルコサミン服用群で合計65人(32%)。2群間で有意差はなく、症状は腸不快感、高血圧、疲労、胃痛などでした。

ダイエット&運動プログラムをしない群(204人)とした群(203人)に分けた分析で、

ダイエット&運動プログラムをしない群の変形性膝関節症の発症率はグルコサミン群(102人)13%、偽薬内服群(102人)19%で、両群間に有意差はありませんでした。

ダイエット&運動プログラムをした群の変形性膝関節症の発症率はグルコサミン内服群(102人)20%、偽薬内服群(101人)15%で、やはり両群間に有意差はありませんでした。

ハイリスクとされる肥満の中年女性を対象とした無作為化比較試験を行った結果、2.5年間で変形性膝関節症の発症に対してグルコサミン摂取の有意な効果は見られませんでした。

↓この宣伝どーなの?
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世田谷自然食品

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コンドロイチンは膝の関節痛に効果なし

2012年12月21日 | 整形外科
コンドロイチン(コンドロイチン硫酸ナトリウム)は軟骨の成分の1つでもあり、コンビニや通信販売でサプリメントとして売られたり、医薬品としても関節痛などに使用されたりしています。

しかし、コンドロイチンは膝関節や股関節の痛みに全く効果がないという結果の総説が発表されています。

Meta-analysis: Chondroitin for osteoarthritis of the knee or hip.
Annals of Internal Medicine. 2007;146:580.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

1990年代の前半頃には、コンドロイチンが関節痛に有効であるという報告がかなりありました。この総説の著者は、それらの論文や最近の論文あわせて20編を注意深く分析しました。

その結果、コンドロイチンが関節痛に有効であると報告した論文では、研究の対象者が多くても100名以下(中には研究の対象が36人や17人という論文もありました)であり、特に大きな問題点として、薬剤の投与が盲検化されていない、すなわち研究に参加した患者自身がコンドロイチンの実薬を投与される群に割り付けられたのか、あるいは偽薬を投与される群に割り付けられたのかを知ることができてしまう研究デザインであることが判明しました。

効果の判定は痛みの程度を数値化することで行われるのですが、痛みの程度というのは患者のみが判断することであり客観性に乏しいため、コンドロイチンの実薬を投与された患者はなんとなく効いた気になっていたのです。

これは、大規模の二重盲検研究(医者も患者もどの患者がどちらの群に割り付けられたか知ることができない研究)で、コンドロイチン投与群と偽薬投与群で、関節痛の改善のスコアーに差がなかったことからも分かります。
Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis.
N Engl J Med. 2006;354:795.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★☆)

「痛みの程度のスコアー」などという客観性のない数値を研究に用いる場合、必ず盲検化しなければならないことは科学者として常識です。

さらにコンドロイチンが関節痛に有効であると報告した論文には別の問題点もありました。Intention-to-Treat Analysis、すなわち研究に参加する時点でコンドロイチン投与とされた群の結果は最後までコンドロイチン投与群のものとして最後まで反映しなければいけないということがなされていませんでした。

つまり、ある患者がコンドロイチン投与群に割り付けられ、効果がないために関節痛が改善せず、研究への参加を続けることができなくなり別の鎮痛剤を内服し研究から脱落した場合、脱落としてその結果を解析から除いてしまうと、コンドロイチンの投与でも痛みが改善されないという証拠が結果に反映されなくなるということです。

これも少し考えてみたら当たり前のことです。1980年代の後半までは、解析方法に疑問が残るこのような研究がかなりあり、その結果が今でも正しいとして一人歩きしている場合が多くあります。

この総説の著者は、16ページにも及ぶ論文の最後で、そのような偽りの情報が一人歩きしていることに怒りを行間ににじませる感じで、「大規模で方法的に正しい研究の結果から、コンドロイチンを膝関節や股関節の痛みの改善のために日常的に使用するのは全く勧められない」と結論づけています。

上の図で、丸が下の方にプロットされていればコンドロイチンが有効という意味ですが、正しい方法でなされた研究である右の4つの黒丸は中央の線上、つまりコンドロイチンの有効性は認められないということを示しています。残りの16の研究は正しい方法で行われていませんでした。(黒丸は研究対象者が200人以上、白丸は200人未満の研究)

↓大々的に宣伝しているので参考にさせていただきました。
ゼリア新薬

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サプリメントでビタミンEを取りすぎると骨粗しょう症になる

2012年03月05日 | 整形外科
トコフェロールを与えられたマウスの骨(右)は、与えられていないマウス(左)と比べて黒色に染まっている骨の量が少ないです。


マウスやラットにビタミンE(トコフェロール)を過剰に摂取させる実験を行ったところ、骨が減ってもろくなる骨粗しょう症になったことが明らかになりました。

Vitamin E decreases bone mass by stimulating osteoclast fusion
Nature Medicine 2012 DOI:doi:10.1038/nm.2659
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数☆☆☆☆☆)

厚生労働省の食事摂取基準ではビタミンEの大人の上限は1日800ミリグラムのため、その量をマウスやラットの体重に合わせて換算し、毎日餌に混ぜて2カ月間与えました。その結果、骨は破壊と形成を繰り返して維持されましたが、2カ月後には骨を壊す破骨細胞が大きくなって骨量が減り、骨粗しょう症になりました。

ビタミンEはマーガリン・アーモンドなどに多く含まれますが、通常の食生活で過剰摂取になることはないです。厚生労働省の食事摂取基準では目安は1日7ミリグラム程度です。しかし、細胞レベルの抗酸化作用が知られ、美容や老化防止に役立つとして人気が高いサプリメントを多く使用している人ではどうなのか、今後、骨の量に影響がないか調べる必要があるということです。


ビタミンEの通販サイト

670ミリグラムってギリギリじゃないですか!

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グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

2011年02月03日 | 整形外科
論文に掲載されている図です。折れ線グラフが0より下になれば有効ということですが、上下に伸びる95%信頼区間が0以下に留まることは24か月に渡ってありません。

巷で宣伝されているグルコサミンとコンドロイチンのサプリメントですが、医学的には効果がないことが証明されています。昨年発表されたメタ解析よりご紹介します。
Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis.
BMJ. 2010 Sep 16;341:c4675. doi: 10.1136/bmj.c4675
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

グルコサミンとコンドロイチンが関節痛と関節の間が狭くなってしまうことを予防する効果について過去に行われた10試験の3,803例が解析されました。

主要評価項目は疼痛強度、二次的評価項目は関節腔狭小化とし、製剤とプラセボとの臨床的に意義ある差異を示す最小値は、10cmビジュアル・アナログ・スケールで-0.9cmと事前に特定されました。

結果は、偽薬と比較して疼痛強度の差異は、グルコサミン群は-0.4cm(95%信頼区間:-0.7~-0.1 cm)、コンドロイチン群は-0.3cm(同:-0.7~0.0 cm)、2種類の併用群は-0.5cm(同:-0.9~0.0 cm)でした。95%信頼区間値が、臨床的に効果的であることを示す最小値(-0.9)を越えたものはありませんでした。

企業から資金提供を受けて行われた試験結果に比べて、医者が独立して行った試験では、効果量はより少なくなっていました(相互作用のP=0.02)。

著者らは、グルコサミンもコンドロイチンも、またそれらの併用も関節痛と関節腔狭小化の改善に効果的でないと結論づけています。

「コンドロイチンとグルコサミンの効果ランキング」

効果ランキングって・・効果はないんだってば!

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カルシウム摂取量が多い人は消化器系ガンの発症リスクが低い

2009年06月24日 | 整形外科
Dairy food, calcium, and risk of cancer in the NIH-AARP Diet and Health Study.
Arch Intern Med. 2009;169:391.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

米国の男性293,907人、女性198,903人を対象として、1995年~1996年の研究登録時にアンケートで、乳製品などの摂取量と頻度、サプリメント摂取量が調査されました。その記録を州のガン登録と照合して、2003年までの新規ガン発症と関連が解析されました。

7年間の追跡調査で、新規ガン発症は男性で12.6%、女性で8.3%でした。男女ともにカルシウム摂取量が多いほど消化器系ガンの発症は少なくなりました。乳製品などからカルシウムを平均1,530mg/日摂取している男性は、平均526mg/日摂取している男性と比べて、消化器系ガンの発症は16%低くなりました。平均1,881mg/日摂取している女性は、平均494mg/日摂取している女性と比べて、消化器系ガンの発症は23%低くなりました。リスクの低下は結腸直腸ガンで著明でした。

カルシウム摂取量と消化器系以外のガン発症率とは関係がありませんでした。

米国医学研究所は50歳以上の成人に1日1,200mg以上のカルシウム摂取を推奨しています。また、2005年の米国人向け食事ガイドラインでは1日3杯の低脂肪あるいは無脂肪乳製品の摂取を推奨しています。


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小児期・青年期の牛乳の摂取は成人してからの骨密度を増し、骨粗鬆症性の骨折を予防する

2009年06月19日 | 整形外科
今日、他科から相談のあった患者(70歳代女性)ですが、第12番目の胸椎がぐしゃりと完全に潰れています。自宅玄関前で転倒し、下半身が完全に麻痺してしまいました。こういう写真を目の当たりにすると、エビデンスって大切だなぁと思います。



American Journal of Clinical Nutrition 2003;77:257からの報告です(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)。

骨粗鬆症という病名はよくご存じだと思います。これは骨の密度が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。日本では約1,000万人の患者さんがいるといわれており、高齢者人口の増加に伴ってその数は増える傾向にあります。女性が男性の8倍で、閉経後のエストロゲンという女性ホルモンの減少が原因の一つです。

本研究の対象は20歳以上の白人女性3,251人です。研究対象者にアンケートで小児期(5歳~12歳)と青年期(13歳~17歳)の牛乳の摂取量を答えていただき、その結果を現在の骨折の状況と比較しました。

骨密度は骨盤部で測定されました。骨盤部・脊椎・腕の骨折は、過剰な力による骨折と骨粗鬆症性の骨折(50歳以後の、過剰な力によるものでない日常生活での骨折)に分類されました。

結果ですが、20歳~49歳では小児期の牛乳摂取が1週間に1杯以下の女性は1杯以上の女性と比べて統計学的に有意に骨密度が低く(5.6%)、青年期の牛乳摂取が1週間1杯以下の女性は1杯以上の女性と比べて3.0%骨密度が低かったそうです。50歳以上では小児期と青年期の牛乳の摂取量が骨密度と比例していました。

さて、問題の骨粗鬆症による骨折率ですが、小児期の牛乳摂取が1週間に1杯以下の女性は1杯以上の女性と比べて、50歳以降の骨折率が2倍でした。

小児期と青年期の牛乳摂取量が加齢後の骨折にまで影響します。

牛乳はカルシウム以外にビタミンD、リボフラビンを豊富に含む優良食品です。

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高齢者の男性では女性ホルモンが低いと骨折しやすい

2006年08月08日 | 整形外科
エストラジオールは主に胎盤、卵胞、副腎皮質で合成・分泌されているステロイドホルモンの一種で、女性では多くの重要な役割を果たしている女性ホルモンです。しかし、女性ホルモンだからといって男性にはないわけではありません。

正常値は
男性: 10~60 pg/ml
女性(閉経前): 30~400 pg/ml
女性(閉経後): 5~18 pg/ml (pg/ml = ミリリットル単位当たりピコグラム)

で、閉経後の女性では男性の正常値より低くなる事があります。この女性ホルモンが低いと骨の密度が低いという事は以前からわかっていましたが、骨折、特に罹患すると高齢者ではその後の生活に重大な影響を与える大腿骨頚部骨折の発生頻度との関係はわかっていませんでした。最近、これらの関係に関する研究の結果が発表されました。

Esrtadiol, Testosterone, and the risk for hip fracture in elderly men from the Framingham study.
The American Journal of Medicine. 2006;119:426.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★☆)

研究の対象は1981年から1983年の間に、血液中のエストラジオールを測定した793人の男性(平均年齢71歳)で、血液中のエストラジオールの値により低値群(2.0~18.1 pg/ml)、中間群(18.2~34.2 pg/ml)、高値群(34.3 pg/ml以上)に分けられ、1999年まで重傷の外傷が原因以外の大腿骨頸部骨折の発生率が調査されました。

結果は、1,000人あたり低値群で11人、中間群で3.4人、高値群で3.9人の大腿骨頸部骨折の発生がありました。年齢や喫煙状況、身長、肥満度を考慮して調整した発症率は、低値群では高値群の3.1倍でした。

テストステロンという男性ホルモンの値でも同様な調査を行いましたが、値の違いによる差は認められませんでしたが、エストラジオールとテストステロンが両方とも低い場合はそうでない場合と比べて発症率は6.5倍でした。

この結果は臨床的に非常に有用です。健康保険の適応のことは別にして、高齢者の男性ではエストラジオールとテストステロンを測定して、低い場合には骨密度を上げるような投薬を施しておくことが可能となると思います。


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前十字靱帯再建術

2006年04月04日 | 整形外科
前十字靱帯損傷に関しての情報をリクエストいただきましたので、調べてみました。

前十字靱帯は膝関節の中央部、大腿骨のくぼみにあり、激しく膝をねじったり過度に膝が伸びたりして無理な力(約200kg以上の力)がかかると切れます。周囲に損傷部の治癒を促す血管が少ないため、自然に治癒することが困難という特徴があり、前十字靭帯損傷に対する治療は手術治療になります。もともと強い牽引力がかかる所であり、切れると縫い合わせることは出来ませんので、手術では自分の腱を使って靱帯を作ります。移植する腱はハムストリングス(膝を曲げる筋肉の腱の一部)、骨付き膝蓋靱帯(膝のお皿の骨と脛の骨の一部が付いた状態の膝蓋靱帯)の2つがスタンダードです。日本やヨーロッパの一部で行われている人工靱帯は、アメリカでは手術成績が悪いことから承認されていません。

ハムストリングスにするか骨付き膝蓋靱帯にするか、こんな論文がありました。

A meta-analysis of stability after anterior cruciate ligament reconstruction as a function of hamstring versus patella tendon graft and fixation type.
Arthroscopy. 2005;10:1202.
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

この論文は最近、前十字靱帯再建術に関して報告された論文をまとめて解析したメタアナリシスです。4本の腱を編んだ腱を移植した24人と、2本の腱を編んだ腱を移植した8人と、骨付き膝蓋靱帯を移植した32人が術後の膝の安定性などが比較されました。

結果は、4本の腱を編んだ腱群は骨付き膝蓋靱帯群に比較して有意に安定性が良く(77% vs. 66%)、低安定性の率が有意に低かったそうです(4.4% vs. 5.9%)。

また、術式としては、EndoButtonという器具を使い4本の腱を編んだ腱を使った場合の安定性が一番良く(80%)、不安定性は一番低かったそうです(1.7%)。


メタアナリシスといっても発症率の高い心筋梗塞などの論文に比較して人数が少ないですね。

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変形性膝関節症の症状の改善には塩酸グルコサミンではなくセレコキシブを

2006年03月07日 | 整形外科
変形性膝関節症に対してもさまざまなサプリメントが売られています。今回はそれらに関する論文です。

Glucosamine, Chondroitin Sulfate, and the Two in Combination for Painful Knee Osteoarthritis
New England Jounal of Medicine. 2006;354:795
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

膝関節症状のある変形性関節症患者1,583例(軽症1,229例、中等症から重症354例)を対象にし、塩酸グルコサミン1,500 mgを毎日、硫酸コンドロイチン1,200 mgを毎日、塩酸グルコサミンと硫酸コンドロイチンを毎日、セレコキシブ200 mgを毎日、プラセボのいずれかにランダムに割り付け、6ヶ月間調査しました。頓用の鎮痛薬として1日4,000 mgまでのアセトアミノフェンの使用も許可されました。

結果は、膝関節痛が試験開始時に比べて20%減少した割合はプラセボ群で60.1%、塩酸グルコサミン群は64.0%、硫酸コンドロイチン群は65.4%、併用群は66.6%、セレコキシブ群は70.1%で、セレコキシブ群だけで差があったと解析されました(P=0.008)。副作用は軽症かつ稀であり、発生率には群間で差がありませんでした。

中等症から重症の膝関節痛だった患者群に限れば、塩酸グルコサミンと硫酸コンドロイチンの併用治療による反応率が、プラセボに比べて有意に高かった(79.2%対54.3%、P=0.002)。

「患者が自分の症状の管理に食品サプリメントを選択した場合には、塩酸グルコサミンではなく硫酸グルコサミンを使うように指示する必要がある。また疼痛が重症の患者には、硫酸グルコサミンと硫酸コンドロイチンを併用させればより高い効果が得られると思われる。3カ月間も治療すれば効果を評価することができる。もし、臨床的に意義のある症状の改善がそれまでに見られなければ、そのサプリメントの使用は中止すべきだ。また、健康な者や膝関節痛はあるがレントゲン所見は正常である者において変形性関節症の予防にこれらの薬剤の効果があるという証拠はない」と結論づけられています。

「グルコサミン」「コンドロイチン」をネットで検索すると多くの通信販売のサイトがあることがわかります。しかし、それぞれを単独で内服していても効果がないことが明らかになりました。また、併用の場合も、「グルコサミン」は塩酸グルコサミンではなく硫酸グルコサミンであることの確認が必要です。「セレコキシブ」は欧米では商品名「セレブレックス」として病院で処方されますが、日本では発売申請中です。


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運動は変形性膝関節症の程度を改善する

2006年03月03日 | 整形外科
高齢化社会の到来とともに変形性膝関節症の患者さんが増えています。街中でも杖をついて歩いている人を多く見かけるようになってきました。

最近、変形性膝関節症の程度はMRIという磁気共鳴画像で軟骨の強度と柔軟性をもたらすグリコサミノグリカン(GAG)値が測定できるようになり運動が変形性膝関節症の程度をある程度改善できるかという調査が可能となりました。。

Positive effects of moderate exercise on glycosaminoglycan content in knee cartilage: a four-month, randomized, controlled trial in patients at risk of osteoarthritis.
Arthritis & Rheumatism. 2005;52:3507.
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

膝の半月板切除術を受けた変形性膝関節症の患者さん45人を対象にして、1回1時間、週3回の有酸素運動と膝の運動負荷を4ヶ月続ける群と、そうでない群に分けました。調査を完了できたのは運動群で16人、対照群で14人でした。

結果は、運動群の多くでは対照群と比較して、身体運動能力検査の結果が優れていました。また呼吸機能検査と体力検査も優れていました。

MRIによる検査ではGAG値が運動群で有意に多くなり、このGAG値は運動量と強い関連(r =0.70)があることが分かりました。

この論文では、対象が半月板切除術を受けた患者さんにかぎられており短期的な結果のみですが、膝関節の軟骨の強度と柔軟性は運動で改善することが初めて証明されました。こういう調査が可能となったのもMRI画像技術の進歩のおかげです。


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カルシウムとビタミンDを一緒に摂っても7年間では股関節骨折を減少させることはできない

2006年02月21日 | 整形外科
Calcium plus vitamin D supplementation and the risk of fractures.
New England Journal of Medicine. 2006;354:669.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

Women's Health Initiativeというデータベースに登録している50歳から79歳までの閉経女性36,282名を対象として、毎日、カルシウム1,000 mg分の炭酸カルシウムと400 IUのビタミンD3を投与する群と、プラセボ群に無作為に振り分けました。追跡期間は7年間で骨折の確認と骨密度測定が行われました。

カルシウム+ビタミンD群の股関節の骨密度は、プラセボ群よりも1.06%高く(P<0.01)、股関節骨折の発症率に関しては、投与群は非投与群の0.88倍であり、痛みの症状がある脊椎骨折については0.90倍で、総骨折については0.96倍でしたが、カルシウム+ビタミンDが統計学的にこれらの骨折を減少させたとはいえませんでした。

一方、カルシウム+ビタミンD群では腎結石のリスクが1.17倍と増大しました。

ただ、この研究では決められた内服を順守しなかった被験者が相当数いて、これらのデータを除外すると、股関節骨折の発症率は0.71倍に低下しました。

また、従来から言われている「カルシウムとビタミンDの摂取量が高いと、結腸直腸癌のリスクとポリープ再発率が減少すること」に関して、投与群の結腸直腸癌のリスクは1.08倍と改善は認められませんでした。

この研究の限界として、カルシウム+ビタミンDに加えて他の複合ビタミン剤の使用を特定の量まで両群ともに許したことと7年という短い調査期間があげられています。

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