医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

70~74歳の窓口負担が1割から2割へ増えても健康状態は悪化しない

2020年05月06日 | 総合
昔、日本医師会は自分たちの収益に影響するため、「外来受診時の患者の窓口負担が増えると、受診が抑制されて国民の健康状態が悪くなる」という理論にすり替えて、窓口負担を増やすことに盛んに反対していました。

本当に健康状態が悪くなったのかを明らかにした、素晴らしいデータが本日の日本経済新聞で発表されましたので、お伝えします。

以下は日本経済新聞からの引用です。
窓口負担増の影響を明らかにするには、窓口負担「のみ」が異なるグループを見つけて、受診行動などを比較する必要がある。分析手法については、重岡仁・カナダ・サイモンフレーザー大准教授の論文などを参考にしている。

まず70~74歳の窓口負担の軽減措置見直しで、44年4月以降に生まれた人は2割負担となったのに対し、同年3月以前に生まれた人は1割負担に据え置かれている。このため両グループの窓口負担割合は異なる。次に両グループは、年齢がほぼ一緒であるため、健康状態や就業状態が平均的にはほぼ変わらないとみられる。つまり両グループでは窓口負担「のみ」が異なると考えてよさそうだ。従って、もし両グループを比較して受診行動や健康状態が異なっていれば、それは窓口負担が1割から2割に引き上げられた影響であると結論付けられる。

図1は、人口当たりの外来患者数の対数(縦軸)を1947年3月生まれから41年4月生まれまでの生年月(横軸)に対してプロットしたものだ。生年月が早い、すなわち年齢が高いと外来患者数が増えるという右上がりの関係になるのは自然なことだ。だが点線の前後、すなわち1割負担の44年3月生まれに比べて、2割負担の同年4月生まれの外来患者数が急に減っていることがみてとれる。この減少分が、窓口負担の1割から2割への引き上げの影響を表している。

次に健康状態への影響はどうだろうか。分析には主に厚労省の2016年「国民生活基礎調査」と17年「人口動態調査」を用いた。窓口負担増からそれぞれ約2年2カ月後、最大約3年8カ月後の影響をみている。死亡率や現在の健康状態に関する自己評価など、できるだけ幅広い健康状態に関連する指標を用いて分析した結果、いずれの指標でも影響は確認されなかった。
以上、日本経済新聞より引用

窓口の負担の増加額が適切であると、高齢者はそれだけ健康に留意するためか、もともと健康維持には関係がない受診が多かったのか、理由は色々とあるだろうが、医療機関の窓口での患者の負担額が増加して受診数が減少しても、健康状態は悪化しないのです。

科学的に分析すると(感情的に分析してもダメですよ)日本医師会の以前の主張は誤りでした。


私は個人的には、日本の医療の持続可能性のためにも、将来の日本を担う若者のために財源を少しでも残す意味でも、70歳~74歳の医療費の負担は3割に引き上げて欲しいです。またそれは、医療機関の過剰な医療を抑制する意味でもあります。

受診数では相関の切片と傾きを比較し、健康状態では相関関係を二次関数でフィットさせるという手法でした。
別所俊一郎先生(東京大学准教授)、古村典洋先生(京都大学特定准教授)、素晴らしい分析をありがとうございました。


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牛乳有害説に農林議員困惑 正確な情報発信求める

2014年11月01日 | 総合
論文を7編同時に投稿していると、1編が終わった頃に別の論文の修正要求があったり、ダメだった場合にはランクを落とした別の医学雑誌に再投稿したり、そうしていると論文の審査の依頼や日本の医学商業誌の原稿の依頼があり、時間的にキリがありません。睡眠時間を削って対応していますが、ブログの更新が遅れてしまって申し訳ありません。 さて、

以下、日本農業新聞より引用
「牛乳の飲み過ぎが健康に悪い」とするスウェーデンの研究結果に対し、自民党農林議員が困惑している。研究チーム自らが「偶然の可能性も排除できない」としているにもかかわらず、インターネットなどで大きく報じられたため。過去にも「牛乳は有害」という誤った情報が流布され、消費の減少につながったことがあり、「正確な情報を発信すべきだ」との声が上がる。

問題の「牛乳有害説」は10月29日付の英医学誌に掲載された調査結果。スウェーデンの研究チームによる同国人の調査で「牛乳摂取量の多い人は、少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増える」との結果が示されたという。AFP通信などが伝え、日本ではヤフーをはじめとするインターネットのニュースサイトが大きく取り上げた。

ただ同通信によると、この結果は「牛乳を1日に3杯以上飲む人」という、やや極端な例。また当の研究チーム自体が、牛乳の摂取量と死亡率や骨折との関連性については「偶然の可能性も排除できない」としているという。

消費者に誤解を与えかねないこうした情報に対し、10月30日の自民党畜産・酪農対策小委員会でも懸念の声が上がった。

江藤拓前農水副大臣は「生産者に迷惑をかける」と指摘。かつても日本の著名な医師が牛乳有害説を唱え、牛乳の消費に悪影響を与えた経緯を踏まえ、農水省に「何か反論はできないか」と正確な情報を発信するよう求めた。
以上、日本農業新聞より引用

さらにAFP通信は
ただ研究チームは、今回出た結果が、異なった乳糖(ラクトース)耐性を持つ別の民族グループには当てはまらない可能性を指摘している。また、牛乳の栄養レベルは、栄養価の強化や、乳牛の飼料などによっても違いが生まれる。

また、研究結果は、「因果関係の逆転」と呼ばれる現象でも説明できる可能性がある。骨折の恐れが高くなる骨粗しょう症を患う人が、牛乳の摂取量を増やし、骨折が起きた際にその原因が牛乳にあるとされてしまう可能性だ。

研究の欠点を指摘する専門家もいる。研究では、食生活の研究でありがちな欠点として、牛乳摂取量の記録を自己申告に頼っている他、対象となった男女の身体活動の種類(骨が強化される体重負荷運動であるか否か)を特定していない。
以上、AFP通信より引用

私はこの件について、4年ほど前にアマゾンで以下の本のレビューを書きました(今でも一番上に載せていただいています)ので、今回の論文の原文を読んでみました。

なぜ「牛乳」は体に悪いのか ―医学界の権威が明かす、牛乳の健康被害 (プレミア健康選書)
私のレビューにも7つのコメントがありますが、こういう事に科学的に反論すると、いつも決まって「集団ヒステリー」が起きます。「福島の原発事故でガンは増えない科学的分析」の時と同様です。

その反対に、一番最近の「ちゃんりんしゃん」さんのレビューが的確に本質を指摘しています。この「ちゃんりんしゃん」さんの他のレビューを拝見すると「従軍慰安婦」とか「被ばくリスク」に関する本に対しても的確なレビューを行っていますので素晴らしいです。

↓さて、これが報道された論文です。
Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies.
BMJ. 2014 Oct 28;349:g6015. doi: 10.1136/bmj.g6015.

(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

39~74歳の女性6万1000人を対象にして約20年調査した結果、女性の10年間の死亡率は1000人当たり126人だったが、牛乳を1日3杯以上飲む人では1000人当たり180人だった。でも、1日に飲む牛乳の量が1杯以下の人では、この割合は1000人当たり110人だったそうです。

よく読んでみると、新聞記事が記載しているように、この研究は毎日牛乳を3杯以上飲む人の結果です。それに牛乳の摂取量と死亡率の2つの因子を比べる際に、自分は骨が弱いと思っている度合いの因子が組み込まれていませんでした。骨が弱いと自分で思っているから牛乳の摂取量を意図的に増やした現象(これを交絡因子といいます)が否定できません、というかこれが原因でしょう。

この研究の欠点は、「自分は骨が弱いと思っているか?」という問いに5段階とか10段階でアンケートをとった結果をCox regression 解析の因子として加え、多変量で解析していないことです。

以下が原文の結論ですが、
Given the observational study designs with the inherent possibility of residual confounding and reverse causation phenomena, a cautious interpretation of the results is recommended.

論文の著者自身も、「交絡因子と因果関係の逆転現象の可能性があり、この研究の結果には注意深い解釈が勧められる」、と述べています。


「江藤拓前農水副大臣は「生産者に迷惑をかける」と指摘。かつても日本の著名な医師が牛乳有害説を唱え、牛乳の消費に悪影響を与えた経緯を踏まえ、農水省に「何か反論はできないか」とし正確な情報を発信するよう求めた。

農林水産省の皆さん、日本人約9万人を調査した10月に発表されたばかりの最新の結果がありますよ。1988年から2009年まで調べた最新の研究です。平均19年間調査されています。牛乳を摂取している人は摂取していない人に比べて、全ての原因の死亡率、動脈硬化性心臓病による死亡率、ガンによる死亡率が、多変量解析で補正しても低いです。女性は男性ほど効果がないようです。右上のJ-STAGEから無料でダウンロードできますからどうでしょうか?

Milk Drinking and Mortality: Findings From the Japan Collaborative Cohort Study.
J Epidemiol. 2014 Oct 18. [Epub ahead of print]


この報道に触発されたのか、私がレビューした本に以下のように金之助さんから8つめのコメントが来ていますが、このコメンテーターは上の研究結果のことを知りませんね。こういうコメントはいつも感情的です。残念です。

「結局、動物性タンパク質は少量にしとけってことだよな。それを牛乳は栄養食材のチャンピオンみたいに言って毎日飲ませようとする牛乳屋の商業主義に騙されるなってことだ。野菜や果物を多く取って肉や牛乳はちょぴっとにしとけばいい。トマトジュースやリンゴジュースの大量摂取で癌になるなんて聞いたことねえもんな。www 」


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やはり、「狭心症による入院」というエンドポイントはダメでしょう

2014年03月26日 | 総合
前回、奇妙な発症曲線の臨床研究についてお伝えしました。

先日、日本循環器学会学術集会が開催され、こんなセッションがあったそうです。

(以下m3より引用)
3月21日、東京都内で開催された、第78回日本循環器学会学術集会のプレナリーセッションで、高血圧関連の論文不正問題が相次ぐ中、「循環器診療ガイドラインと日本のEBM~信頼を取り戻すために~」をテーマに議論された。

今回のディオバン問題に関連して発言したのは、滋賀医科大学公衆衛生学教授の上島弘嗣氏。Kyoto Heart StudyやJikei Heart Study(JHS)などで用いられたProbe法に言及、これらの論文の共著者でもあるスウェーデンの医師、ビヨン・ダーロフ氏が「Probe法について、メリットを強調するなど、誤った見解を広めたのではないか」と問題視。

例えば、Probe法では、RCTとは異なり、あらかじめ投与する薬剤が分かるため、医師と患者の協力が得られやすいものの、症例を分析する委員会への報告内容に「情報バイアス」がかかりやすいなどの指摘がある。

特に、狭心症や心不全による「入院」というソフトエンドポイントを用いた場合、医師の主観で判定が揺らぎかねないとした。上島氏は、2006年の国際高血圧学会でJHSが発表された時点で、自身が「(ディオバン投与群が)非致死性のイベントのみ有効である点は、二重盲検でないことによる情報のバイアスの可能性がある」と指摘していたことも紹介。

今後、日本で臨床研究を進めるには、臨床医だけで実施するには限界があり、生物統計や疫学の専門家と連携するほか、臨床研究や研究者の支援を行う組織として、ARO(Academic Clinical Research Organization)を整備する必要性も、複数の演者が指摘した。
(以上m3より引用)


私が、奇妙な発症曲線の臨床研究で書いたことと同じことが議論されています。

やはり誰でも感じることは同じですね。

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腎動脈ステントは特定の患者に効果なし

2013年11月22日 | 総合
学会で発表するためにテキサス州ダラスに来ています。

今回の学会では、「ある治療をしても、結果はその治療をしない場合と同じ」という研究結果が多く発表されました。少し専門的になるのですが、そういう研究結果をご紹介したいと思います。

腎臓につながる動脈は腎動脈と呼ばれて、動脈硬化が原因で細くなると、腎臓は血圧が低いと勘違いして血圧を上げるホルモンを余計に分泌したり、腎臓そのものが悪くなったりします。

その腎動脈が細くなった場合に、そこをステントで広げると、患者の予後がよくなるかどうかという研究です。

↓論文は発表と同時にNew England Journal of Medicineに掲載され、ココから無料でダウンロードできます。
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1310753

ステージ3以上の腎機能障害(ここが肝心です)で、高血圧症を伴っていて、腎動脈に60%以上100%未満(平均67%)の狭窄がある患者947人が、ステント治療する群としない群に、無作為に分けられました。腎機能はeGFRという指標で平均58、平均年齢69歳です。

心臓病や腎臓病による死亡、心不全、脳卒中、腎機能障害の進行、腎移植への進展が、その後5年間調査されました。

ステージ3以上の腎機能障害に陥っている患者では、ステント治療してもしなくても、「心臓病や腎臓病による死亡、心不全、脳卒中、腎機能障害の進行、腎移植への進展」に関して、5年間の予後は同じでした。(上図)

やってもやらなくても効果が同じである治療は、やってはいけません。当たり前のことです。

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60歳以上の人の4年後の死亡率がわかる

2012年07月08日 | 総合
ガンに罹患した場合、5年生存率などという言葉はよく耳にします。それではガン以外の場合はどうなのか。そんなことに関するユニークな論文が発あります。

Development and validation of a prognostic index for 4-year mortality in older adults.
Journal of American Medical Association. 2006;295:801.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

まず、60歳以上の11,701人に関して、現在の健康状態などをアンケートしてその後の生存状況を4年間調査しました。その結果明らかになった死亡を予測する因子に関して、別の8,009人でその予測がどれくらい正しいかが評価されました。

11,701人の調査の結果、次のようなリスク評価表が完成しました。

1、 年齢(60-64: 1 point、65-69: 2 point、70-74: 3 point、75-79: 4 point、80-84: 5 point、85>: 7 point)
2、 性別(男性は2 point、女性は0 point)
3、 Body mass index、すなわち体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25以下なら1 point
4、 糖尿病か血糖が高いと言われたことがあるか、yesは2 point
5、 ガンと言われたことがあるか、yesは2 point
6、 慢性肺疾患と言われたことがあるか、yesは2 point
7、 心不全と言われたことがあるか、yesは2 point
8、 喫煙しているか、yesは2 point
9、 入浴に困難をともなうか、yesは2 point
10、 記憶の問題で金銭の扱いに問題があるか、yesは2 point
11、 健康の問題で数百メートル歩くのに困難があるか、yesは2 point
12、 運動能力の問題で椅子など移動させることに困難があるか、yesは1 point

以上の12項目です。該当があればその項目のポイントを加算していきます。ちなみに人種、高校以下の学歴などは死亡のリスクと関係がありませんでした。ユニークなところでは電話が使えなくなった方の死亡率はそうでない方の7.3倍であるとか、食事の用意ができない方の死亡率はそうでない方の4.9倍などという結果です。

こうして計算されたスコアーを別の8,009人で評価して、どれだけ正しいかが調査されました。上の図はその結果で、年齢別にスコアーがいくつであれば今後4年間の死亡率はどれくらいになるかが示されています。まあ当たり前の質問と言えばそうですが、このままでいくとあなたが死亡する確率は何パーセントですと言われれば現実味があり、喫煙なども止められるかもしれません。

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「不適切な治療」として医療訴訟が発生する割合が増加した

2012年05月11日 | 総合
1990年代と2000年代の消化器診療が関係した民事訴訟事例における患者側の主張内容について比較検討した結果が学会で発表されました。

資料として、第一法規法情報総合データベースと裁判所ホームページ判例検索が用いられました。1990年代(1990年から1999年)と2000年代(2000年から2009年)の間に判決が出された消化器診療が関係した民事訴訟事例が検索されました。

該当する医療訴訟は、1990年代に26事例、2000年代に73事例認められました。両年代を比較すると、「不適切な治療」の割合が4%から23%と有意に増加していました(p=0.04)。

「不適切な治療」として医療訴訟が発生する割合が増加した理由は以下の3つが考えられるそうです。

1、1990年代に比べて2000年代では、医療の進歩により治療法の選択肢が増加した。

2、治療経過が思わしくなかった時、患者側は他の選択肢の方が良かったのではないかと考え、病院側の責任を問うために訴訟という手段を選ぶようになった。

3、インターネットの普及により、医療情報や専門家の意見が入手可能となり、患者側も該当疾患の診断や治療法などを学び専門的な内容に関して問題が指摘できるようになった。



病院側の敗訴率はここ数年減少傾向にあるそうですが、医者はこれらの結果を肝に銘じて、常に最新の医療情報に耳を傾け、診療ガイドラインを遵守して適切な医療を行うとともに、十分に患者とコミュニケーションをとり、患者が納得する医療を提供する必要があります。

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パキシルの陰に「うつ病患者百万人」、販売高の後に患者数増加

2011年12月16日 | 総合
前回、それは病気だ!と煽って異常だと思わせる人を増やせば、それだけ薬の処方が増えて製薬会社が儲かるということをお伝えしました。
今回は、その典型的な例をもう一つご紹介したいと思います。以前、以下のような新聞記事がありました。

(これより読売新聞より引用、一部省略)
うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2.4倍に急増している。不況などの影響はもちろんだが、新規抗うつ薬の登場との関係を指摘する声も強い。安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。

国の調査では、うつ病など気分障害の患者は、2000年代に入り急激に増えており、一概に不況だけの影響とは言えそうにない。患者急増との関係が指摘されているのが、新規抗うつ薬「SSRI」だ。年間販売高が170億円台だった抗うつ薬市場は、1999年にSSRIが登場してから急伸。2007年には900億円を超えた。

パナソニック健康保険組合予防医療部の冨高辰一郎部長(精神科医)によると、欧米でも、この薬が発売された80年代後半から90年代初めにかけ、患者の増加がみられた。冨高部長は「SSRIが発売されたのに伴い、製薬企業による医師向けの講演会やインターネット、テレビCMなどのうつ病啓発キャンペーンが盛んになった。

精神科受診の抵抗感が減った一方、一時的な気分の落ち込みまで、『病気ではないか』と思う人が増えた」と話す。田島治・杏林大教授が、学生にテレビCMを見せた研究では、見なかった学生の倍の6割が「気分の落ち込みが続いたら積極的な治療が必要」と答え、CMの影響をうかがわせた。

検査数値で測れる身体疾患と違い、うつ病の診断は難しい。このため、「抑うつ気分」などの症状が一定数以上あれば要件を満たす診断基準が普及した。田島教授が行った精神科診療所の医師に対する調査では、約8割の医師が、うつ病の診断が広がり過ぎていることに懸念を示した。

安易な投薬を懸念する声もある。抗うつ薬は、うつ病治療の柱とされているが、宮岡等・北里大教授は「薬なしでも自然に回復するうつ病も多い」と話す。

海外では、軽症には薬物療法ではなく、カウンセリングや運動などを最初に勧める治療指針も多い。渡辺衡一郎・慶応大専任講師は「日本でも、まず抗うつ薬ありきという認識を見直す時期に来た」と話す
(ここまで引用)

その製薬会社がやっている宣伝のサイト

http://utsu.jp/
あれ~、このサイトを監修している教授は、ゼチーアで同じ事をやっていた教授と同じ大学だぞ~

通常は、病気が増えてから薬の処方が増えますが、図をみると1999年、2000年とうつ病治療薬「パキシル」の処方が増えた後で、うつ病の数が増えています。それに本来なら、有効な薬の普及が進めばその病気は減少しないといけないのでは?

そういえば以前、この薬の説明会で製薬会社は「内科医でも処方しやすい薬です」と言っていて、はぁ~と思った覚えがあります。精神科医でも確定診断に難渋するというのに、内科医が診断していいの?と。

170億円台だった市場が今や900億円とは凄い。製薬会社の陰謀も、やり過ぎでシッポが出てしまったという感じです。

国民に不利益になる(効果のない薬を買わされる)コメントが間違って公言されることがあれば、それは大問題だと思いますし(公共性)(公益性)、その証拠はしっかりと残したいものです。

お勧め(Amazon)→なぜうつ病の人が増えたのか

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病気腎移植の執刀者自身からの論文

2011年01月08日 | 総合
新年明けましておめでとうございます昨年末に二編の医学論文の審査を頼まれて、やっと終わりました。(なんと12月28日にです。正月休み返上でやれということでしょうか)今は新聞に載せていただける原稿と格闘中です

左図は生体腎移植の保険診療費です。それぞれの保険診療はこのように厳密に設定されています。下の論文が発表された当時の生体腎移植のいわゆる技術料は40,000点つまり40万円(免疫抑制剤などの薬剤費などは別会計)ですが、現在は60万円です。

さて、「生体腎を移植する場合においては、日本移植学会が作成した「生体腎移植ガイドライン」を遵守している場合に限り算定する」と書かれていますが、つまり「生体腎移植ガイドライン」を遵守していないと、保険診療として60万円を公費から支払いませんという意味です。

病気腎移植は今のところ「生体腎移植ガイドライン」を遵守していませんので、保険診療からは出費できません。患者の自費かどこからかの寄付によってなされることになります。

→関連ブログ

今回は病気腎移植について執刀者自身から発表されたとても重要な論文についてです。右図はその論文の図3より引用して一部の英語に解説を付けました。

論文の原文はこちらです

「投稿時に、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)の有無、倫理委員会を経ていないこと、レシピエント(移植を受ける人)の選択が日本臓器移植ネットワークを通さずに行われたこと、ドナー(臓器提供者)となった患者さんの疾患の詳細、検証のために各病院に調査委員会が設けられたことなどを伝え、同誌からの質問状に答えました。にもかかわらず、掲載が決まりました」という論文だそうです。

その前に
生体腎移植・・親とか子どもとか、あの人になら腎臓を1つあげてもいいよというように、生きている人から腎臓を移植すること
死体腎移植・・交通事故などで亡くなった人から腎臓を移植すること
病気腎移植・・例えばガンを患った腎臓を摘出し、ガンの部分を切り取って移植すること

Last resort for renal transplant recipients, 'restored kidneys' from living donors/patients
Am J Transplant. 2008;8:811-818.
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

1991年から2006年に施行された病気腎移植42例に関して、その後の10年間の予後が調査されました。

結果は(著者らの意見では)病気腎移植はドナーの年齢が高い割に死体腎移植と生存率という点でひけをとらない(comparable)と書かれています。(著者らの意見ではというのは、統計学的な客観的解析がなされていないからです)

つまり、右図を見て、一番下のラインの傾き(病気腎移植)は一番上(生体腎移植)と真ん中(死体腎移植)のラインの傾きと比較して、ひけをとらないという人もいるだろうし、ひけをとっているではないかという人もいるということです。

↓この論文の著者にお勧めします
医学的研究のデザイン -研究の質を高める疫学的アプローチ- 第3版

この論文のイントロダクションの最後の部分に、コメントはgladly welcomeと書かれているので、私がこの論文のレフリーだったら、どのようにコメントするか考えてみました。

(1) カプランマイヤー(生存率や死亡率を時間の経過とともに表したもの)で検討したと書かれているが、本論文ではその統計値p値が記載されておらず、死体腎移植群と病気腎移植の生存率に違いがないかどうかが、統計学的に明らかでない。
(通常、カプランマイヤーを使用する場合、安定狭心症に風船治療・ステント治療を行っても薬物療法だけの場合と成果は同じのように、それぞれの群で違いがあるのか統計処理がなされてp値(これが0.05以下であれば違いがあるといえる)が表記される。

(2) 同様に、各群の年齢に統計学的な差がどれだけあるのかが、統計処理でp値が求められていない。

(3) 本論文に示されている治療法は保険では認められていないので、保険診療で行われたとは思われないが、治療費の出資元が論文内に明らかに示されていない。
(通常の論文では研究費の出資元に有利になるようなバイアス(偏り)がかからないように、研究費の出資元とその利益相反が明らかにされている)

(4) 本論文に示されている治療法が有用であるかどうかを示すためには、同じような状態の患者を無作為に(ランダムに)病気腎移植群と生体腎移植群に分け、その後の経過を調べカプランマイヤー法で分析する必要があり、それにより病気腎移植の生存率が生体腎移植群より同等以上であれば本法の有用性が示されるのであるが、それが示されていない。こういうことは一施設だけ調査することは困難であり、移植学会が中心となり研究を遂行し結論を出さなければならないことである。こういう本研究での限界を「study limitation」というセクションを設けて記載する必要がある。

(5) 繰り返しになるが、病気腎移植はドナーの年齢が高い割に死体腎移植と生存率という点でひけをとらない(comparable)という結論であるが、統計処理がなされていないので、本論文の結果だけからは本論文の結論が導き出せない。統計処理を施す必要がある。


移植学会の調査委員が「新しい医療をする場合には倫理委員会を通すことが必要。倫理委員会もなかったのは問題」とコメントしているのに対して著者らは、

「今後はそうすべきと思う。しかし、自分にとって、新しい医療という認識はなかった。8例についても○○の腎臓病学会でも発表していた。周りの人も特別の認識はなく、「面白い」といった程度だった。私は患者にとって一番良いと思う治療をしてきたので、特別新しいことをしたとは思っていない。」とコメントしていますが、

倫理委員会の重要性を痛感している私としては、この病院がこの治療法を支援しているのであるから、

治療をした→結果が良かった→でも学会に倫理的な部分でも反対された→調査委員会を設ける→この論文のようにレフリーのいる論文にデータを掲載する→有効性をアピールする
という順序よりも

病院内で倫理委員会の承認を得る→治療を開始する→この論文のようにレフリーのいる論文にデータを掲載する→有効性をアピールする→学会に承認を求める
という順序の方が良かったのではないかと思われます。


そもそも「医療の倫理」というのは、結果が良ければいいのですが、結果が悪かった場合にその方法でも仕方がなかったという承諾であり、結果は誰にも分からないのですから・・後になって結果が良かったから、それで良かったのだという論理は認められないのです。

公平な立場から別のケースも考えると、生体腎移植や死体腎移植でも患者が腎臓を得られないというケースに、10年後の生存率が低くてもよいので人工透析のままよりは病気腎移植を選ぶという選択肢も考えられます。しかし、「人工透析のまま」と「病気腎移植」の10年後の生存率を比較したデータはまだありません。また、10年後の生存率が低くてもよいので、週3回透析に通う煩わしさから解放されたいという選択肢もあり得ます。



↓そこでアンケートです。ほかの人の意見がわかります。大変重要なアンケートです。是非参加下さい。
病気腎移植は有用と思いますか?




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アルコールチェッカー

2010年04月11日 | 総合
以前、交通死亡事故は、飲酒運転の者が起こすより、しらふの人が「しらふ」であるが故に「スピードの出し過ぎ」や「信号無視」で起こす方が圧倒的に多いのに、行政(警察)は「感情論」で飲酒運転だけを厳罰化していることをお伝えしました。

スピードの出し過ぎが交通死亡事故の主たる原因であるから、行政は飲酒運転を厳罰化する前にトヨタや日産やホンダに働きかけて、一般道路では速度が60km/h以上、高速道路では80km/hや100km/hで燃料供給バルブが閉じてそれ以上スピードが出せないように、法定速度に合わせて無線信号システムで制御する車を作るようにすればいいのです。現在の技術力ならそんなことは簡単なはずです。

このようなことをしていないのを見ても、飲酒運転だけを厳罰化しているのは「感情論」以外のなにものでもないことは自明です。

さて、ここでもう一つ飲酒運転厳罰化について「つっこみ」を入れてみます。

↓最近は、家庭でも簡単に呼気中アルコール濃度が測定できるアルコールチェッカーが技術革新により2,500円で手に入ります。

TANITA アルコールセンサー シルバー HC-206-SV

それぞれの人が、どれくらい飲めば飲酒運転になるのかを簡単にチェックできるようになったのです。

一体どれくらい飲めば飲酒運転になるのか、アルコールチェッカーを購入して私自身が実験してみました。その前に飲酒運転についての復習です。

平成14年5月末まで、呼気中アルコール濃度0.25 mg/L以上で飲酒運転の違反点数6点となっていましたが、平成14年6月以降は、0.15 mg/L以上で飲酒運転となり違反点数6点、0.25 mg/L以上で違反点数13点、さらに平成21年6月以降は、0.15 mg/L以上で違反点数13点、0.25 mg/L以上で違反点数25点、と、年々、著しく重い処分が課されるようになりました。呼気の場合における 0.25 mg/L、0.15 mg/Lは、それぞれ法令上、0.5 mg/dL、0.3 mg/dL の血液中アルコール濃度に対応するとなっています。

上の図を見て下さい。黒丸は男性の適正アルコール摂取量であるエタノール換算30g/日(女性は20g/日です)を私が空腹で飲んだ時の呼気中アルコール濃度の推移の5回分の平均値を表したものです。エタノール換算は、例えば5%のビールを500mL飲めば500 x 0.05=25gと計算できます。エタノールの比重を考慮してさらに0.8を乗することもあります。毎日エタノール換算30g/日を摂取している人は一番長生きしています(酒を飲まない人よりもです)。

飲酒後30分で呼気中アルコール濃度は急激に上昇して0.5mg/Lになります。そして3時間後に0.15mg/Lに低下しています。

白丸は、つまみを食べながらエタノール換算30gの飲酒をした場合です。吸収は抑制され2時間後に0.15mg/Lに低下しています。0.15mg/Lとは(私にとっては)通常の作業が通常通りできるほど、酔っていないレベルです。

135mlの小さな缶ビールがありますね。四角はその缶ビール(5%)を空腹で飲酒したときの呼気中アルコール濃度の推移です。呼気中アルコール濃度は最初から0.15mg/Lに達していません。

さて、ここでお気づきだと思いますが、このように家庭で簡単に呼気中アルコール濃度が測定できるようになると、「飲酒」=「飲酒運転」ではないということになります。呼気中アルコール濃度が0.15mg/Lに達しない限り道路交通法でいうところの飲酒運転ではないのですから、135mlの小さな缶ビールは運転前でも許されることになります。

運転前に飲酒を幇助した者も違反になりますから、ラーメン屋などではビールを注文した時に運転の有無を尋ねられるかもしれません。しかし、このアルコールチェッカーがあれば、0.15mg/L未満(0.10mg/L以下:このアルコールチェッカーは0.05mg/Lきざみです)だから大丈夫だと言える余地が出てきたのです。

ビールを1滴でも飲んだら、鬼の首を取ったように「飲んだら乗るな」と批判することは間違っていることになります。行政があくまでも社会を「一定の基準」で取り締まる限り、実際は「135mlの小さな缶ビールは運転前でも飲んでもよい」ということになります。あるいは、つまみを食べながらであれば30gの飲酒をしても2時間半後には運転が可能になります。

行政は、このような私の意見がシャクに触るのであれば、飲酒運転を0.01mg/L以上と基準を下げればいいのだし、なによりもまず100km/時以上(追い越しが必要な場合があるから120km/時でもいいが)スピードがでない車を作るべきです。(少なくとも一般道路では80km/時以上は必要ないでしょう、道路交通法違反なのですから)

飲酒運転の厳罰化・・・いろいろな矛盾がありますね。

皆さん、何事も科学的にいきましょう!


↓このアルコールチェッカー 本当にお勧めです
TANITA アルコールセンサー シルバー HC-206-SV

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診療報酬改定

2010年04月01日 | 総合
ニューヨークから帰国して、時差ぼけも治りました。天気悪かったなぁ~
海外学会発表に行くと、このように論文執筆時間をかなりロスしますので私はあまり好きではありませんが、エスノセントリズムとの戦いでもありますから仕方がありません。


今日から新年度、診療報酬も改訂されました。患者の皆さんはあまり意識しないかもしれませんが、今日から再診料が変わります。昨年度までは病床数200未満の病院の再診料は600円で、病床を持たない診療所・クリニックの再診料は710円でした。患者から見れば、いや誰から見ても、病院の規模で再診料が違うなんておかしな話です。

それが今年度から、病床数200未満の病院の再診料は600円から690円に引き上げられ、病床を持たない診療所・クリニックの再診料は710円から690円に下げられました。つまりやっと同じ料金になったのです。

さらにその前は病床数200床以上の病院は570円、200未満の病院は700円、病床を持たない診療所・クリニックは710円でした!


病床数200床以上の病院の場合は以前の570円が→690円!一つ一つの差額は小さいかもしれませんが、その増収で開業医と比較して少ない勤務医の給料を少しでも引き上げられれば、勤務医不足も少しだけ解消されるかもしれません(期待はしていませんが)。

これは、以前政権を取っていた自民党と開業医を中心とする医師会との間に、「票を集めてもらう代わりに医師会を優遇する」というギブ・アンド・テイクが成立していたからです。患者の立場を無視した価格設定でした。裏返せば、病院に勤める勤務医の組織力不足とも言えました。

民主党の政策にも賛否両論がありますが、評価されるべき改革だと思います。

さて、さらに今日から病院でもらう領収書には医療行為の明細が記載されます。これまでは、注射料、再診料、検査料というおおまかな表示でしたが、これからは注射薬の銘柄とその価格、検査項目なども記載されることになります。

この制度には医師会(開業医が中心となっています)から多くの反対意見がありました。その理由と、私なりに考えた意見を述べたいと思います。

まず、「注射薬の銘柄を表示しても一般の人には分からない」
これは本当にお馬鹿な反論ですね。私は車の専門家ではないのですが、車を車検に出すとその明細書には、意味がわからない私にも、タイヤアライメント調整##円、ミッションオイル交換##円などと詳細な領収書がもらえます。まさに、「依らしむべし、知らしむべからず」の発想です。

次ぎに、「忙しい医師に明細書を発行させると、それに時間が取られ医療が崩壊してしまう」
これも企業努力不足と言わざるを得ません。車検業者は潰れないようにやらざるを得ないのですから。

しかし、「注射薬の銘柄や腫瘍マーカー検査などが本人に分かってしまえば、ガンの場合、自分がガンだと分かってしまう」

これは、もし自分の親に50%ガンの可能性があると判明したとき、息子の自分としては、「ガンでなければ後から半分ガンの可能性があったけれどガンじゃなかったよと笑い話にできる。本当にガンであった場合に本人に状況を考えて告知しよう」という「知らされない権利」を剥奪する行為ともいえます。

一部の専門家からは、本当のことが分からないと不安と不満が募るという意見がありますが、本当の事を知った方が不安と不満が募る場合もあるのです。

これは国による強制告知制度と受け止めるべきです。ガン患者が「悪性腫瘍管理料」とかで、告知前の心のケアの前に自分がガンだと知って自殺したら国が責任を持つべきです。


こういうような事に対する抑止力にはなりますが・・
ミサワホーム九州、売上げ前倒し計上

ともあれ、領収書明細発行制度が今日スタートします。


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うつ病治療薬、パキシルの効果

2010年01月16日 | 総合
前回、うつ病治療薬パキシルの販売戦略のために、うつ病と診断される人が増加し、無駄な処方も増えてしまったことをお伝えしました。

しかもパキシルに関しては、効果がないということが証明された論文がたくさんあります。

Effectiveness of paroxetine in the treatment of acute major depression in adults: a systematic re-examination of published and unpublished data from randomized trials
CMAJ 2008;178:296
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

この報告は、2006年12月までにパキシルの効果について研究された40の論文について、結果を総合的に再解析したメタアナリシスよばれるものです。

中等度以上のうつ病に対して、パキシルを投与された3,704名と偽薬を投与された2,687名に関して効果が調査されました。

上の図でいうと、中心の横線より縦線が下にあるものはパキシルが効果があると結論された研究です。中心の横線より縦線が上にあるものは偽薬の方が効果があった研究で、中心の横線と縦線が交差しているのはどちらともいえないという結論を出した研究です。

パキシルが効果があると結論された研究はほとんどありません。

この論文の著者たちは、パキシルは中等度から重度のうつ病に対して、偽薬と比較して効果があるといえないと結論づけています。

(原文↓)
Among adults with moderate to severe major depression in the clinical trials we reviewed, paroxetine was not superior to placebo in terms of overall treatment effectiveness and acceptability. These results were not biased by selective inclusion of published studies.

パキシルの添付文書には
「海外で7~18際の大うつ病を対象としたプラセボ対照試験において、有効性が確認できなかったという報告がある。24歳以上の患者で自殺念慮や自殺企図の発現のリスクが投与群でプラセボ群と比較して高かった」と書かれてあります。

どうしてこんな薬が900億円も市場があるのでしょうか?

↓原文はこちらからどーぞ
http://www.cmaj.ca/cgi/reprint/178/3/296

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昨年の検索用語ランキング

2010年01月03日 | 総合
明けましておめでとうございます。
ところで、このブログは定期的にトップページをご覧いただく方以外にも、YahooやGoogleなどに検索用語を入力し偶然たどりつき見てくださる場合が半分あります。そこで、今回は昨年1年間にどんな用語でこのブログが検索されたことが多かったのかを調べてみました。

第3位は、「歯科医 年収」、および「歯医者 年収」でした。

歯科医の5分の2が年収900万円以下
意外にも医療情報と異なるところで検索されていたようです。

私は「歯科医 年収」って、誰が何の理由で調べているのだろうと不思議に感じます。これから歯科医を目指している高校生や、歯学部に入学した大学生、他の歯科医の収入が気になる歯科医ならわかりますが、全てがそうだと思えないのです。

ここで私は、「相対性」という言葉を思い出しました。例えば、私たちは1万円の万年筆が30分先の店で7千円で売られていると、その店まで30分かけて行きますが、10万円のスーツが30分先の店で9万7千円で売られていてもその店までは行きません。個人にとって30分で3,000円という価値は同じであるにもかかわらず、人は相対的に状況を判断してしまいます。10万円余分に支払って愛車のシートを革張りにすることはできても、10万円で自宅に革張りのソファーを買うことには躊躇してしまう場合も同じです。これが「相対性」という人間の習性です。

「もっとも幸福な人々」が住んでいるのは個人所得が最も高い国ではないことは、これまでの研究で繰り返し証明されていますし、給料の多さと幸福感との間には、私たちが思っているほど強い関連がない(むしろ弱い)こともわかっています。それなのに、他人の年収を積極的に検索して、それが高かった場合に落胆するのは、自分で自分の首をしめてしまうことにならないでしょうか。

幸いなことに、私たちは自分を囲む「円」の大きさを自分で調節できます。小さい円が集まっているほうに移動すれば、相対的な幸福感は大きくなります。同窓会に出席したとき、真ん中で飲み物を手にして高給を自慢している「大きい円」がいたら、あえてそこから離れて、だれかほかの人と話すのです。人は持てば持つほどさらに欲しくなります。重要なのは「相対性」の連鎖を断ち切ることなのです。

さて、第2位は、新型インフルエンザが流行した影響を受け「インフルエンザワクチン 副作用」でした。
インフルエンザワクチンの副作用による死亡率

個々の局面では正しいことであっても、全体としては悪い結果を生むことを「合成の誤謬」といいましたね。この事象は「合成の誤謬」の反対といえます。

そして、第1位は、「タミフル 異常行動」でした。
結局、タミフルと異常行動の間には関連性は認められませんでした。
タミフル:異常行動との因果関係

<タミフル>異常行動との因果関係なし 厚労省研究班

こんな記事も書きました。
新型インフルエンザ、診断確定前でも治療薬、厚労省通知


タミフルを販売する会社からの費用で「タミフルと異常行動の間には関連性は認められなかった」と研究結果を発表した教授の言うことは信用できないと決めつけて批判したマスゴミや国民を批判してこんな記事も書きました。
日本人って、批判的?感情的?

「ゆとり教育」しかり(この責任はいまだに誰もとっていません)、間違っていた過去を振り返って反省し対策を練り直すことは、日本の将来を良くするために欠かすことができません。

ここで最新の医療情報です。
昨年11月に開催された日本薬剤疫学会で発表されました。
対象は、日本医療データセンターが保有する7健康組合のレセプトデータベースから、2003~2004年、2007~2008年の各12~3月にインフルエンザの傷病名で診療を開始した全例です。

インフルエンザ診療開始日の3日以内に外傷の傷病名が同一または他の医療機関で診療科医師されたものが抽出されました。タミフル投与率のバイアスを除去するためにプロペンシティ・スコア法(プロペンシティ・スコア法とは、最初にある治療が選択される確率を『プロペンシティ・スコア』として計算し、次にこのスコアによりマッチングさせて比較する手法です)が用いられました。

インフルエンザの診療を開始した患者数は延べ14万800人で、このうち36.6%にタミフルが投与されていました。タミフル投与群での外傷発生率は4.7人/1万人と、投与されていない群の8.2人/1万人より統計学的に有意に低かったそうです。

研究者らは「タミフルを投与されていなくても、投与された群以上に外傷が発生しており、そのリスクはむしろ高い。新型インフルエンザなどで基礎疾患のある高リスク患者には10代であってもタミフルの投与を躊躇すべきではない。またタミフルを投与しなければ異常行動による外傷に関して安全と考えてはならない。異常行動による外傷に対する監視は、投与とは無関係にすべてのインフルエンザ患者に行うべきだ」と結論づけています。

やはりここでもタミフルと異常行動の間には関連性は認められませんでしたね。


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文部科学省 科学研究費

2009年11月07日 | 総合
                          (東洋経済より引用)


科学研究費補助金の申請の季節がやってきました。科学研究費補助金(科研費)は文部科学省から業務が移管された日本学術振興会が取り仕切る、日本の研究を推進させるための公的研究助成金です。

科研費は競争的に配分される資金で、研究の規模により金額が細分化され、先進性、独創性、将来性が競われます。例えば基盤研究(S)は5000万円以上~2億円程度まで、基盤研究(A)は2000万円以上~5000万円、基盤研究(B)は500万円以上~2000万円、基盤研究(C)は500万円以下で、当然金額が高いほど競争率は高くなります。採択率は以前は(C)で30%、(B)で15%ぐらいでしたが、最近は(C)で25%、(B)で25%ぐらいと(B)にシフトしています。

審査は日本学術振興会の委嘱を受けた科学研究費委員会の専門委員(審査委員)で、ほとんどが大学教授や研究所所長といった研究のエキスパートによりなされます。

申請用紙は十数ページからなり、研究の背景から遂行方法、目標が達成できた場合の有用性、申請者の業績など、かなり細かいことが審査されます。最初から申請用紙を完成させようとすると最低でも数十時間必要としますが、これは「ひやかし」の申請を予防するための措置とも考えられます。横線一本足りなくてもしっかりチェックされますし、求められる記載事項が毎年微妙に変わるので、前年度採択されなかった書類をそのままコピー&ペーストすることもできません。

このへんは「研究内容」が審査されるというより、「情熱」が審査されている点でもあります。

今年の変更点は
(1)、「研究目的」、「研究計画・方法」欄に「概要」を記入する必要があります。

(2)、「研究業績」で研究代表者には二重下線、研究分担者には一重下線、連携研究者には点線を施す必要があります。これは「新学術領域研究」で昨年度から採用されていた記載法です。

(3)、「研究費のエフォート」に本人が受け入れ自ら使用する経費を記入する必要があります。

です。

申請する皆さんは注意が必要です。でも、文部科学省の官僚の皆さん、アホみたいに毎年意味のない申請要項の変更をして楽しいですか?政権も変わったことだし、もうそろそろこんなこと止めませんか?

私もこの時期になると、論文執筆に費やす時間をこちらの申請作業にシフトせざるをえなくなります。

このような科学研究費ですが、世界を舞台にして日本の科学の推進に欠かせないものです。しかしながら、日本の大学の資金力はまだまだ世界、特にアメリカに太刀打ちできるものではありません。東京大学の資金力が年間130億円なのに対して、ハーバード大学の資金力はなんと年間3兆円、スタンフォード大学は1兆5000億円です。この中には私的な寄付金も含まれていますが、上の図に示されたように日本の科学研究費に匹敵する公的資金もアメリカに比べると全く比べものになりません。

さらに、東洋経済の10月13日号に書かれていますが、日本の場合研究費の配分がいかにも東京大学や京都大学に偏っています。優れた研究とは確率の問題であり、一定のレベルの研究者の数と、そこの配分される資金が多ければ多いほど、優れた研究成果を数多く生み出せるのに、日本の場合、上位大学に研究費が集まりすぎて10位以下の大学の研究費が少なすぎます。東洋経済の記事の中でも、研究強化という意味では10位以下の大学に配分した方が効率的と結論付けられています。

私も同感です。日本の場合、科学研究費の採用を審査する審査員の数はアメリカの100分の一であり、しかも東京大学、京都大学出身者が審査員の多くを占め、平等とは言っても審査結果が偏るのは避けられません。先日、基盤研究(S)で1億円を獲得した教授に、他大学の教授が「大型研究費を獲得する秘訣」を尋ねていましたが、その質問を横で聞いていて、私は「それは審査員や要職に就く者に、母校を同じくする先輩や後輩を多く持つこと」だとひそかに答えていました。

競争的資金を得て一段と強くなる「旧帝大」、その反面、ジリ貧の地方国立大学、国の試算をみる限り、淘汰のシナリオはすでに決まっているのかもしれません。

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女性は男性より自動車の運転が上手か?

2009年08月28日 | 総合
(日産自動車 自動車交通白書より)       (厚生労働省 人口動態統計より)

女性ドライバーの交通事故

女性運転者による交通事故

これは走行距離がわからないですけど。

自動車交通白書を見ると、どの年齢層をみても女性の自動車事故率は男性よりも少ないというグラフが載っています。(スペースの関係でこの記事には載せられませんでした)事故率というのはある年齢層の女性が起こした自動車事故の件数をその年齢層の女性の人数で割った数字でしょう。

ということは、女性の方が男性より自動車の運転が上手なのでしょうか?
これもまた、算数の得意な小学生(中学生でないと無理か?)ならすぐにわかることです。

免許を持っていて車を運転しなければ獲得できるゴールド免許を持っている人が、運転が上手とは限らない例を挙げるまでもなく、ここにはどれだけ(時間や距離)車を運転したかという情報が含まれていません。

(左図)をみると、どの年齢層でも、女性の運転する走行距離は男性の約3分の1であることがわかります。走行距離が少なければ事故が発生する確率は少なくなるのはあたりまえです。従って、運転が上手かどうかを判定するためには、事故の件数を走行距離で割り算しなくてはならないのです。

その結果が、(図中央)で、走行距離あたりの事故の件数(1億kmあたり)は、女性は男性の約1.5倍になっています。つまり男性の方が事故を起こしにくいといえます。

私はこの記事を、男性は女性より運転が上手ということが言いたくて書いているのではありません。これと同じ過ちをしている教授たちを研究会でよくみかけるのです。

悪玉コレステロールを下げる薬を販売する製薬会社の研究会に参加すると、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」などと恐怖心を煽っています。

確かに、心筋梗塞や狭心症の発症件数を時代の経過とともにグラフにすると、右方上がりとなり、発症件数は増えています。

しかし、この統計処理は意味をなしていません。上記の例のように何かが足りないのです。

もうお気づきかと思いますが、それは、調査した母集団の数で割ることです。しかも大切な条件があります。赤ちゃんは絶対心筋梗塞や狭心症を起こしませんね。10歳以下の子どもも起こしません。20歳以下の青年も起こしません。つまり年齢層別に母集団数で割って補正することが大切です。

その結果が、(右図)です。スペースがないので男性だけ示しましたが、年齢別の人口で調整すると心筋梗塞や狭心症(グラフの中では虚血性心疾患)の死亡率は減っているのです。スペースの関係でグラフをお示しできませんが、発症率も同じです。

そりゃそうでしょう。これだけ世間でメタボ撲滅、生活習慣の改善とキャンペーンがはられているのですから、これで発症率が増えたら、逆に医者は何をしているんだとお叱りを受けることとなります。

つまり、心筋梗塞や狭心症の発症件数が時代とともに増えているのは、心筋梗塞や狭心症の好発年齢である高齢者の数が増えているからで、日本人が昔と比べて心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているわけではないのです。
(厳密にいうと、福岡県の久山町研究では80歳以上の男性だけは心筋梗塞や狭心症を発症しやすい体質になっているそうです)
(日本内科学会雑誌 2009;98:234)

まだわかりにくいかもしれないので付け加えると、例えば政府の少子化対策が功を奏して、ある年に赤ちゃんの数が1.5倍になったとします。特発性発疹(知恵熱)という疾患は、ほとんどの赤ちゃんが1歳までに罹患して、しかも10歳以上で罹患することはありません。

この年か翌年には特発性発疹の発症は1.5倍になるのは当たり前のことですね。

このように原因→結果の順で考えると、とても簡単な論理なのですが、結果→原因の順で考えようとすると、上記の教授たちの間違いに騙されてしまうのです。

市民公開講座などで、「日本人の食事の欧米化にともなって、心筋梗塞や狭心症が増えています。今後ますます増えるでしょう。だから、悪玉コレステロールを下げる薬を飲みましょう」という教授はたくさんいます。要注意です。


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患者から摘出された腎臓の移植に関する調査班報告書

2009年08月15日 | 総合
沖縄に来ています。

以前「倫理委員会」について書きました。

先日、論文の審査をしていると、例のごとく、インフォームドコンセントと倫理委員会での承認の記載がありませんでした。インフォームドコンセントと倫理委員会での承認の記載がありませんよとコメントすると、次の変更でインフォームドコンセントの記載は追加されたのですが倫理委員会の記載はありませんでした。

インフォームドコンセントはあるけれど倫理委員会の記載がないということは、正直に倫理委員会からは承認されていないということを言いたいのかなぁと思いつつ、その医学雑誌の投稿規定を調べてみると倫理委員会での承認の記載が必要とはどこにも書いてありませんでした。そこで、チーフ・エディター(編集委員長みたいなものです)にあなたの雑誌は倫理委員会での承認の記載は必要としないのですか、というコメントを送っておきました。倫理委員会での承認の記載を必要とする場合、この論文の採否は微妙になってきます。


インフォームドコンセントといえば、以前、徳州会が病腎移植を行った件について論文が発表されたとお伝えしました。この論文には全ての患者からインフォームドコンセントを得たと書いてあります。

原文ではこう書いてあります。
In all recipients and donors, written consent forms with the patients signature of the operative procedure were obtained.

しかし、↓の臓器移植委員会の報告書の2ページ目をよく見ると、全ての患者からインフォームドコンセントを得ていなかったことが明らかになっています(真実性)。

↓原文はこちらです。
患者から摘出された腎臓の移植に関する調査班報告書

そうであるならば、この論文の著者たちは医学論文に嘘を書いたことになります。通常の論文の投稿規定では、フォームドコンセントと倫理委員会で承認の記載は必須事項ですから、全ての患者からインフォームドコンセントを得ていなかったとするとこの論文は医学雑誌に掲載されるに値しないことになります。

さらに、論文での記載が偽りだとすると、その論文の内容に関しても信頼性に疑問が生じてきます。そうであれば今後、病腎移植の成績が間違ったデータで行われることになり、公共の利益が失われてしまいます(公共性)(公益性)。

著者の皆さま、いかがですか? 


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