医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

レーシックがうまくいくためには

2010年03月11日 | 眼科
レーシックを施行しているクリニック自体が体験記を載せている「レーシック体験記ブログ」をよくみかけますね。

商魂たくましいというか、それほどレーシックって儲かるの?と感じてしまいます。
という事でレーシックの話題にしてみました。

レーシックがうまくいくために何が大切かという事でJournal of Refractive Surgery 2005;20:790.からの報告です。
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

対象は233人に施された421回のレーシックで、後ろ向き(過去を調べる)に調査されました。レーシックは特殊な器械で角膜の表面を薄く切ってそれをめくり、レーザーを照射して角膜を蒸散させ、再び角膜の表面を元に戻すというものという事は以前お伝えしました。

この研究では、薄く切る角膜(フラップ)の厚みが重要であるという仮説のもとに、厚みを0.1mm以下、0.1~0.13mm、0.13mm以上の群に分けました。手術1カ月後では、非矯正視力20/20(これは分数視力とよばれるもので、一般に使われている少数視力では1.0に相当します)を達成できたのは、それぞれの群で76%、56%、61%で、20/25(0.8に相当)を達成できたのはそれぞれ88%、76%、76%で、0.1mm以下群で統計学上有意に良好な結果が得られました(P=0.015)。しかし6カ月後ではその差は認められませんでした。合併症の割合も差はありませんでした。

フラップを薄くしても成績に違いはないようです。でもフラップを薄くしたいのには訳があります。実はレーシックは4人に1人が受けることはできず、一番多い問題は角膜が薄い事です。日本人の角膜の厚みは0.5mm~0.55mmで、術後に眼内圧に負けない角膜の厚みが0.25mmと言われていますので、(0.5mm 引く0.25mm引くフラップの厚み)がレーザーで蒸散させる事ができる最大の厚みという事になります。そして0.09mm削る事が-6ディオプター(D)の矯正に相当します。

もっと強く矯正するためには削る厚みを増やさなければなりません。結論をいえば、近視が強い方で角膜が薄い場合はレーシックができないのです。フラップを薄くする事ができれば角膜が薄い方でも強く矯正できるのためフラップを薄くしたいのです。

ちなみに、若手の眼科医も結構メガネをしているのって気になりませんか?眼科医はレーシックをしないのかな?と思って、私の施設の眼科医に聞いてみました。

理由は

(1)50歳になれば老眼でいずれ眼鏡が必要となるから。

(2)合併症の確率が1%であっても、自分がその1%に当たってしまえば結構大変である事を知っているから。

(3)自分が眼科の知識を持っていると、将来加齢により発症する白内障の手術が必要になった時、角膜が濁る可能性が1%ではすまないだろうと推測できるから。

(4)眼鏡やコンタクトレンズでも困っていないから。

だそうです。


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コンタクトレンズの検査料

2006年04月17日 | 眼科
皆さんはコンタクトレンズを購入する際の検査料が眼科によって差があることに気がついたことはありませんか。コンタクトレンズを購入する際には精密眼底検査などの検査を受ける必要があるのですが、どの検査をするかは眼科医の裁量に委ねられていました。

この4月からコンタクトレンズを購入する際の眼科での検査料は、どんな検査をしても一定にされ、さらにその検査料も引き下げられました。理由は、不必要な検査を繰り返して行うという不正請求による保険診療報酬が、併設コンタクトレンズ販売店の廉価販売による欠損補填に、コンサルタント料として流用されている現状を是正することを目的とするものだそうです。

ただし、それでもまだ検査料の格差は存在します。受診に来た人のうち、コンタクトレンズの処方箋を求めに来た人の割合が70%未満の眼科では検査料は初診で3,870円、再診で1,120円ですが、70%以上の眼科では初診で1,930円、再診で560円になります。コンタクトレンズに関する検査が主な業務としている眼科は、コンタクトレンズに対する処方箋を発行することで利益を得ているので、医療費削減のため検査料が低く設定されることになりました。

70%未満の眼科であると認められるためには地方の社会保険事務所に届けないといけないことになっています。しかし、患者さんの割合は眼科医による申告制で、コンタクトレンズ専門店に併設している眼科が「70%未満の眼科」として届けられている場合があります。最近そのような事が問題視されています。

自分の診察の前後ほとんどがコンタクトレンズを購入している人なのに、高い方の検査料を請求されたら説明を求めましょう。

不必要な検査を繰り返して不正請求した保険診療報酬を併設コンタクトレンズ販売店の廉価販売による欠損補填に充ててはいけませんね。


コンタクトレンズ購入者の割合が70%以上の眼科
             診察料   検査料   合計
初診           2,700円  1,930円  4,630円
再診           710円   560円   1,270円
眼科的に再診だが   710円   1,930円  2,640円
コンタクトレンズ検査は
初めて
既にコンタクトレンズを
使用していて初診の場合 2,700円   560円   3,260円


コンタクトレンズ購入者の割合が70%未満の眼科
             診察料    検査料   合計
初診           2,700円   3,870円   6,570円
再診           710円    1,120円   1,830円
眼科的に再診だが   710円    3,870円   4,580円
コンタクトレンズ検査は
初めて
既にコンタクトレンズを
使用していて初診の場合 2,700円   1,120円   3,820円


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シリコンハイドロゲル・ソフトコンタクトレンズは30日間装用しても感染は増えない

2006年02月08日 | 眼科
シリコンハイドロゲル・ソフトコンタクトレンズといって30日間装用できるレンズがありますが、そのレンズを装着していると、1日で取り替え型のレンズに比べて角膜感染が増えるかどうかを調査した論文が最近発表されました。

The incidence of microbial keratitis among wearers of a 30-day silicone hydrogel extended-wear contact lens.
Ophythalmology. 2005;112:2172.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

30日間用のソフトレンズを装着した6,245人が調査の対象になり、そのうち4,999人が12カ月まで調査できました。

結果は30日間用のソフトレンズを装着した群では視力低下を伴う角膜感染の発症率は1年間で1万人に換算して3.6人で、視力低下を伴わない角膜感染の発症率は1年間で1万人に換算して14.4人でした。これは従来報告されている1日で取り替え型のソフトレンズの感染率と同等で、夜間装用日数が増えても感染リスクは増大しないようでした。

しかし、厳密に発症率からみれば、角膜感染リスクがもっとも低いのは、1日装用型の酸素透過性ハードレンズで、次は1日装用型のソフトレンズで、次は30日間装用型のソフトレンズでした。

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近視治療レーシックの合併症の割合

2005年10月20日 | 眼科
レーシックによる合併症の割合を調べてみました。Ophthalmology 1999;106:1461.からの報告です。(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

1996年から1998年に施行された2,142回のレーシックが後ろ向き(過去を調べる)に検討されました。調査期間は6カ月です。この中には両眼を同時に行ったものと、片眼ずつ行った場合が含まれています。合併症は角膜の表面を正確に薄く切る事で少なくなってきますので、使用する機器の性能が大きく結果を左右します。従って、論文には必ず使用した器械が記載されています。ここではエキシマレーザーにはNidek EC-5000、角膜表面を薄く剥がす器械にはChiron Automated Corneal ShaperとBausch & Lomb Hansatomeが使用されました。論文が少し古いので最初の世代の機器だと思われます。

2,142回のうち1,853回は対側の眼球にも施す予定で、まず一側から施行されました。そのうち28回(1.5%)に術中か術後の合併症が認められ11患者が対側の施行はキャンセルしました。一側の治療が終わり、対側に施行した結果は1,842回のうち13回(0.7%)に術中か術後の合併症が認められました。

この報告では合併症の割合は1.5%~0.7%で、安全かつ有用と結論づけています。


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レーシック(エキシマレーザー屈折矯正手術)について

2005年10月19日 | 眼科
レーシック(LASIK)とは、Laser in situ Keratomileusisの略で、特殊な器械で角膜の表面を薄く切ってめくり、レーザーを角膜に照射し一部を蒸散させ、再び角膜の表面を元に戻すというものです。主に近視の治療に使われています。

今回この話題を取り上げたのは、最近レーシックに関するブログが増えているからです。どうしてレーシックだけ体験記みたいな形でブログが多いのか。「レーシック体験記ブログ」がこれほどあるなら、「盲腸の手術体験記ブログ」や「骨折治療体験記ブログ」がないのはどうしてだろうか。わざわざ病院名まで出してブログを開設するのは病院がスポンサーになっているか病院そのものが個人を装って開設していると推測できます(すみません私のブログでは推測は禁物でした)。もしも病院がスポンサーになっていたりすると、どうしても病院が有利なように情報が選ばれてしまいがちです。そこで今回はレーシックについて客観的に調べてみました。

2000年に日本眼科学会は「エキシマレーザー屈折矯正手術のガイドライン」を出しましたが、それに対する「社団法人 日本眼科医会記者発表会 報道用資料」の一部をご紹介します。(ここから「以上引用」まで全て引用です)

エキシマレーザーによる屈折矯正手術は、費用が一眼で20万~40万円と高額です。しかし、手術が眼科医ではなく、形成外科や内科医などによっても行われており、トラブルが発生しています。トレーニングを積んでいないのでトラブルが発生しても適切な処置をとれないところに問題があります。

屈折矯正手術は、一度手をつけたら元に戻せないのが最大の欠点です。矯正予測値が正確にいかないことがあり、人によっては像のコントラスト感度が低下するのがデメリットです。強度の近視の人ほど勧められますが、医師の説明を十分聞き、納得したうえで手術を受けることが大切です。角膜を(約0.16mm)切開してフラップを作る手術は熟練を要し、手術例の2%はうまくいかないといわれています。角膜を切る刃が角膜を突き抜けて水晶体をキズつけてしまい、白内障の手術をやらなければならなかったケースや角膜が混濁し角膜移植をしなければならなかったケースが報告されています。また、角膜の中央部が突出している円錐角膜の患者さんに手術をしてしまった例もあります。この患者さんは眼圧でさらに突出してしまいました。

屈折矯正手術は、角膜や水晶体に手を加えるものです。一度実施すると元に戻らないことを認識しなければなりません。手術を受けられるのは20~30代の若い人が多いのですが、慎重に判断してもらいたいものです。コンタクトレンズの広告と同じように、屈折矯正手術にも誇大広告が目につきます。「0.01が1.5に回復」「数時間後には別世界」「安心」「快適」……といった表現で矯正手術の効果をうたっています。また、自分の著書の宣伝という体裁で、自分の矯正手術を誇示した内容のパンフレットを配布している例もあります。一般の国民の方々にも、このような広告に惑わされることなく眼科専門医に相談してほしいと思います。体の中でも最も大切な臓器の一つの眼ですから慎重に考えて選んでください。

「屈折矯正手術についての本会の見解」
屈折矯正手術については近年、急速に改良、進歩し、また、エキシマレーザー装置が厚生省から認可され、さらに日本眼科学会がエキシマレーザー屈折矯正手術のガイドラインを作成したこともあり、今後屈折矯正手術は次第に増えてくると思われます。しかし、これらの手術はまだまだ慎重を要する手術であり、手術そのものの危険性や手術した結果が将来、肉体的、精神的にどのように影響するのか、患者さんに十分説明し、理解を得たうえで適切に行われなければなりません。(以上引用)

さらにコンタクトレンズでの問題点を取り上げています。
例えば、内服薬で10人の副作用報告があれば、現状では発売を自粛することになります。物品販売としてコンタクトレンズの購入を促進するあまり、検査・処方が軽視され、年間数万人が眼障害を起こしている実態を見過ごしている実情、眼障害が発生した場合にはユーザー側の「自己責任」とする行政の姿勢には問題があるといわざるを得ません。(以上引用)

私なりにまとめてみると、機材の進歩により合併症の率は年々減少している。しかし、眼障害が発生した場合にはユーザー側の「自己責任」とする行政の姿勢には問題があるといわざるを得ない、という事になります。

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