医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果

2013年03月08日 | 小児科
以前、「日本チェルノブイリ連帯基金」のコメントの誤りをお伝えしました。

最近、こんな報道がありました。

(朝日新聞デジタルより引用)
環境省は3月8日、長崎や山梨、青森の子ども約4300人を対象に行った甲状腺検査で、6割に袋状の嚢胞(のうほう)やしこりが見つかったと発表した。東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)の影響を探るために、福島県が進める子どもの甲状腺検査結果と比較するのを目的に調べていた。福島では4割に嚢胞などが見つかっている。

福島県は事故当時18歳以下の子ども約36万人を対象に、甲状腺の超音波検査を行っている。1月までに約13万3千人が検査を受け、41・2%に2センチ以下の嚢胞や5ミリ以下のしこり(結節)が見つかった。

子どもの甲状腺をこれほど高性能の超音波機器で網羅的に調べた前例がなく、4割という割合が大きいのか、被曝(ひばく)の影響があるのか判断が難しい。このため、環境省は福島県外の長崎市と甲府市、青森県弘前市の3~18歳の子ども4365人を対象に、同じ性能の超音波機械を使い、同じ判定基準で検査をした。

この結果、2センチ以下の嚢胞や5ミリ以下の結節のあった子どもが56・6%、それ以上の大きさの嚢胞などがあった子は1%(福島は0・6%)いた。環境省の桐生康生放射線健康管理担当参事官は「福島も他県もほぼ同様の結果と考えている」と話す。

福島県では、事故の影響が出るか調べるため、約36万人の子どもを対象に生涯、検査を行う計画だ。

嚢胞などのある子が県外が福島より多い理由について、検査を受けた年齢構成などを詳細に分析して月内に公表するという。

長瀧重信・長崎大名誉教授は「超音波検査の性能が上がり、嚢胞などが見つかりやすくなった。福島が異常な状態ではないとわかった。ただし今回の調査では、被曝の影響の有無は判断できず、福島で生涯、検査を続けることが必要だ。地域性もあるため、福島県で事故後に生まれた子への検査との比較が必要だ」と話す。


比較することは重要です。でも前回お伝えしたGale教授は
「私見として、小児に対する甲状腺ガンのスクリーニングは不要と考える。理由は、上述のようにチェルノブイリに比較してリスクが非常に低いこと、一般的に予後良好で進行がきわめて緩徐な甲状腺ガンを早期に検出することが予後を改善するというデータはなく、精神的なダメージやむしろ無用な医療被ばくの影響の懸念があるためである。」


と述べていました。私も同感です。

↓なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと、応援よろしくお願いいたします!
今は何位かな?「ブログランキング」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2歳未満の子供に対する2回以上の全身麻酔はその後の学習障害を増加させる

2012年06月04日 | 小児科
じゅんさんからコメントをいただきましたので、さらに詳しく調べてみました。

研究・調査は2011年に公表されました。2009年に公表された結果Anesthesiology. 2009;110:703の続報です。

Cognitive and behavioral outcomes after early exposure to anesthesia and surgery
Pediatrics. 2011;128:e1053.
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

米国のミネソタ州で、1976年から1982年に生まれた8548人を調査対象として、出生児体重、妊娠期間、母親の学歴などの情報が明らかである5357人が追跡調査されました。

その子供たちの中で、2歳になるまでに全身麻酔を受けた子供は350人いました。その350人と出生時体重、妊娠期間、母親の学歴、正常分娩かどうか、などが一致するように選ばれた全身麻酔を受けなかった子供700人と比較されました。

結果は、上の図にあるように、2歳になるまでの全身麻酔が1回では、全身麻酔を受けなかった子供と学習障害の率は同じでしたが、2歳までに2回以上の全身麻酔を受けた子供は有意にその後の学習障害が増えました。ハザードレシオ(危険上昇率)は2.12倍でした。なお、学習障害かどうかが判明してくるのは少なくとも5歳以降なので、図は5歳からの結果になります。

アメリカ合衆国の学習障害の定義は以下のようにあいまいなのですが、
The term “specific learning disability” means a disorder in one or more of the psychological processes involved in understanding or in using language, spoken or written, which may manifest itself in an imperfect ability to listen, speak, read, write, spell, or to do mathematical calculations. The term does not include children who have LD which are primarily the result of visual, hearing, or motor handicaps, or mental retardation, or emotional disturbance, or of environmental, cultural, or economic disadvantage.
上の図を見ると12歳の学習障害が全身麻酔なし・1回では18%なのに対して、全身麻酔2回以上では34%にも達しています。


その差は歴然としています。コレステロールの薬を飲めば0.3%心筋梗塞が減るとか、そういうレベルの話ではないですね。私自身、調べていて驚きました。

ただ、
The effect of general anesthesia and strabiamus surgery on the intellectual abilities of children: a pilot study.
Am J Ophthalmol 2012:153:609.
には、5歳~10歳の全身麻酔では差はなかったなどという報告もありますので、子供の年齢によるのだと思います。

Pediatrics. 2011;128:e2868.の総説には、「学習障害」の判定に偏りや交絡因子が入り込む限界や、無作為割り付け試験が不可能である限界を認めながらも、小児科医と麻酔科医は常にこの問題を意識する必要性と、後ろ向き試験でもいいから調査・研究を続ける重要性が示されています。

じゅんさん、10ヶ月の息子さんの4ヶ月の間隔で3・4回の全身麻酔という太田母斑の手術は遅らせた方がいいのではないでしょうか。それに男の子だし。
私の息子なら10歳以降まで手術しないと思います。


なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児期の全身麻酔で学習障害リスクの可能性がある

2009年08月07日 | 小児科
二編の医学雑誌の原稿書き、二編の医学論文の提出、三編の医学論文の審査のために更新が遅れていました。

ところで、論文の審査をしていると、「よくもこんな論理回路で医者をやっているなぁ」という論文を時々見かけます。セカンドオーサーの先生も同類のことがありますので、ラストオーサーの上司の先生は、ちゃんとチェックしてあげて下さいね。(でも、ラストオーサーは論文の内容をあまり知らないかもしれませんね)




麻酔薬は幼若動物の脳に異常をもたらすことが、複数の研究で示されています。
ヒトではどうかという研究の結果がこのほど発表されました。

Early exposure to anesthesia and learning disabilities in a population-based birth cohort.
Anesthesiology. 2009;110:703
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)


対象は1976年~1982年にミネソタ州で生まれた5,357人で、4歳までの全身麻酔の詳細と学習障害の有無が後ろ向きに調査されました。

593人が4歳までに1回以上全身麻酔を受けていました。母親の出産年齢、小児の性別、出生児体重によって補正した後の解析では、1回の全身麻酔では学習障害に影響はありませんでしたが、2回全身麻酔を受けた小児(100人)では1.59倍の学習障害のリスク、3回以上全身麻酔を受けた小児(44人)では2.60倍の学習障害のリスクが認められました。

また、学習障害のリスクは、麻酔時間の合計とも関連がありました。

使用されていた麻酔薬は、亜酸化窒素とハロタン(商品名:フローセン、武田薬品)でした。

著者らは、麻酔薬そのものが学習障害に影響を与えているのか、手術自体が精神的に影響しているのか、小児期に手術を受けなければならない小児は、もともとなんらかのリスクを抱えているのかは明らかでないが、迅速な徹底解明が必要だと述べています。


科学的な事実の解明は「なんか変だな?」という疑問から始まるのですから、こういう前置き的な研究はとても重要です。

今は何位かな?ぽちっとクリック、お願いします

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児科医は自分の子供のワクチンをどうしているか

2009年05月18日 | 小児科
小児に対するインフルエンザワクチンの話ですが、有効という結論ではありますが、接種しても2%はインフルエンザにかかり、接種しなくても85%がかからないのですから「Real World」つまり現実社会としてはどうなのかという事が気になります。それでは実際の小児科医は自分の子供に対してどうしているかというPediatrics. 2005;116:623.からのユニークな報告です。
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

How do physiciams immunize their own chilren? Differences among pediatricians and nonpediatricians.

調査に関するアンケートがスイスの医師2,070人に送られ、1,017人から有効な回答が得られました。90%の医師に1人以上の子供がいました。そのうち24%は5歳以下、50%は5歳から15歳、52%は15歳以上(重複あり)でした。1,017人のうち458人が小児科医で、559人は小児科以外の専門でした。

スイスで推奨されているワクチンを自分の子供にどれだけ接種していたかを小児科医と小児科医以外にわけて調査した結果です。

小児科医、小児科医以外の順です。
ジフテリア、100%、99%
破傷風、100%、99%
百日咳、99%、97%
ポリオ、99%、99%
麻疹、97%、95%
水痘、95%、93%
風疹、96%、95%
B型肝炎、68%、65%

麻疹、水痘、B型肝炎で有意に小児科医の方が多かったのですが、差はわずかでした。

スイスで生後2カ月から6カ月の間に接種を推奨されているジフテリア、破傷風、ポリオの三種混合を生後2カ月から6カ月の間に接種したのは、小児科医で97%、小児科医以外では91%で小児科医の方が多かったようです。逆に小児科以外では5%が生後6カ月から12カ月に先送りしていました。

同様に、生後12カ月から24カ月の間に接種を推奨されている麻疹、風疹、水痘の三種混合を生後12カ月から24カ月の間に接種したのは、小児科医で94%、小児科医以外では86%で小児科医の方が多かったようです。逆に小児科以外では5%が接種させていませんでした。

さて、問題のインフルエンザワクチンですが、小児科医で13%、小児科医以外では14%で両者に差はありませんでした。あくまでもスイスでの話ですが、驚くほど低い数字です。


今は何位かな?ぽちっとクリック、お願いします
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アトピー性疾患の発生に影響を及ぼす乳児期の栄養に関するガイドライン

2008年02月12日 | 小児科
先月、米国小児科学会は、これまでのエビデンスの見直しにより乳児期におけるアトピー性疾患(アトピー性の皮膚炎、喘息、食物アレルギー)の発生に関連する食品に関する最新の方針を発表しました。

Effects of early nutritional interventions on the development of atopic disease in infants and children: the role of maternal dietary restriction, breastfeeding, timing of introduction of complementary foods, and hydrolyzed formulas.
Pediatrics. 2008;121:183-191
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)


アトピー性疾患の発生を予防または遅延させる可能性のある栄養介入の有効性が証明されているのは主に、アレルギー発生のリスクが高い乳児、すなわちアレルギー性疾患のある親または兄弟姉妹が1名以上いる乳児に限られています。

現在のところ、妊娠中の母親の食事制限が乳児におけるアトピー性疾患予防に重要な役割を果たしていることを示すエビデンスはない。どうみても得られているデータは乏しいが、おそらくアトピー湿疹を除き、授乳期間中に抗原を避けてもアトピー性疾患は予防できないものとみられる。

授乳期間中における母親の食事制限の大きな役割は裏付けられていない。しかし、無処理の牛乳蛋白から作られた調乳の授乳に比べて、最低4カ月間の母乳の授乳は、生後2年間におけるアトピー性皮膚炎および牛乳アレルギー、喘鳴の発生を予防または遅延させる。しかし、アトピー性疾患を発生するリスクのある乳児では、母乳のみの授乳が6歳以降の小児のアレルギー性喘息を予防することは確認されていない。

アトピーのリスクが高く、かつ4-6カ月の間に与えられたのが母乳のみではない乳児の研究では、加水分解乳は無処理の牛乳蛋白質から作られた調乳に比べてアトピー性疾患の発生を遅延または予防する可能性がある。しかし、比較研究によれば、すべての加水分解乳に同程度の予防効果があるわけではない。

現在、アトピー性疾患の発生について、生後4-6カ月以降の食事介入の予防効果を証明するデータは十分ではなく、補助食品の導入の時期を生後4-6カ月以降に遅らせればアトピー性疾患の発生が予防できるということを示すエビデンスもほとんどない。

現在のところ、妊娠中の母親の食事制限が乳児におけるアトピー性疾患予防に重要な役割を果たしていることを示すエビデンスはない。

固形食は生後4-6カ月以前に導入すべきではない。しかし、乳児に与えられたのが牛乳蛋白調乳か母乳かに関わらず、固形食の導入をこの時期以降に遅らせることがアトピー性疾患発生の予防に有意に役立つということは、現在得られているエビデンスからは確認されない。この勧告は、魚、卵、ピーナッツ蛋白質含有食品などの高アレルギーと考えられる食品にも適用される。


まとめると、
アレルギー性疾患のある親または兄弟姉妹が1名以上いる乳児においては、

1,妊娠中あるいは授乳期間中における母親の食事はアトピー性疾患の発生に関連がない。

2,生後最低4カ月間は母乳を授乳した方がよい。

3,生後4-6カ月にどうしても調乳を与える必要があるなら加水分解乳がよい。

4,しかし、母乳のみの授乳が6歳以降の小児のアレルギー性喘息を予防することは確認されていない。

5,固形食は生後4-6カ月以前に導入すべきではない、

6,しかし固形食の導入の時期を生後4-6カ月以降に遅らせればアトピー性疾患の発生が予防できるということを示すエビデンスもほとんどない。



これからお母さんになる方は、迷信にとらわれずにこれだけを守って下さいね。



なるほどと思われた皆さん!それではここをぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子供のカルシウム摂取ガイドライン

2007年12月05日 | 小児科
先日このようなニュースがあったのをご存じですか。

若い女性 骨粗しょう症の心配 (NHKニュースから引用)
この骨密度の調査は、農林水産省や日本酪農乳業協会などが去年とおととし全国で行ったもので、このうち20歳から89歳までの女性2万5000人について、女子栄養大学の上西一弘教授のグループが分析しました。その結果、同じ年代の平均より骨密度が15%以上低い人の割合は、20歳から39歳までの若い女性では5.1%で、60歳以上の女性の2.6%に比べて2倍近くに上り、将来、骨粗しょう症になるリスクが高いとみられることがわかりました。

また、小・中学校のときに牛乳をどのくらい飲んだかで4つのグループに分けて比べたところ、60歳未満の成人女性では飲んだ量が多いほど骨密度が高くなっていました。さらに、子どものころ運動をしていた人ほど密度が高かったということで、研究グループでは、骨が形づくられる小・中学校のときの生活習慣がその後の骨密度に大きく影響すると結論づけています

上西教授は「昔に比べて生活が便利になり、日常生活の中で体を動かす機会が子どものころから少ないことが、若い女性に骨密度が低い人が多い原因の一つではないか。自分の骨密度を知って、ライフスタイルを変えるきっかけにしてほしい」と話しています。



このような調査はアメリカで既に行われていて、高齢者の骨量は小児期までに摂取したカルシウム量により決定されるとして私のブログで以前お伝えしています。

小児期と青年期に十分なカルシウムを摂取すれば高い骨量を維持することができ、その後の骨折や骨粗鬆症を予防できます。

米国小児科学会は2006年に骨強化を目的として子供のカルシウム摂取ガイドラインを発表しています。

Optimizing bone health and calcium intakes of infants, children, and adolescents
Pediatrics. 2006;117:578.

詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。

このガイドラインでは以下の簡単な質問票用いてカルシウム摂取量を定期的に評価することを勧めています。同時にビタミンD摂取も重要であるとしています。


牛乳または乳製品を1日に何回飲みますか
チーズ、ヨーグルト、ヨーグルト飲料などの乳製品を1日に何回食べますか
ソフトドリンク、くだものジュースなどを1日に何回飲みますか
カルシウムを添加したジュース、シリアル、パンなどを摂っていますか
ブロッコリー、豆類、加熱した緑色野菜や豆腐を食べていますか
ビタミンとカルシウム配合剤などを摂っていますか
重量負荷のかかる激しい運動を週に何回行っていますか
家族に骨粗鬆症の人はいますか
子供は早産でしたか

ガイドラインでは子供のカルシウム摂取不足は家庭の問題とみなし、保護者が十分なカルシウムを摂っていない場合、子供も推薦量を摂取していない可能性が高く、医者は十分なカルシウムを摂取すれば骨折や骨粗鬆症が予防できることを保護者と話し合うべきだとしています。また、青少年では牛乳の代わりにソフトドリンクや果物ジュースを飲むためカルシウム摂取量が不足するため、同様に注意をはらうべきとしています。

また、乳児については「1歳までの全乳の摂取は推奨されないが、ヨーグルトとチーズは6か月齢から食べさせてよい。スキムミルクや低脂肪ヨーグルトなどの低脂肪乳製品も優れたカルシウム源である。」としています。

乳糖不耐症については、「25ml以下の牛乳しか飲めない不耐症は小児ではほとんど見られず、少量の乳糖含有食品を食事に加えると乳糖不耐症が緩和することもある。チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品を摂取してもよく、市販されている無乳糖製品や低乳糖製品を利用してもよい。乳製品以外の一部の野菜やカルシウム強化食品もよいカルシウム源となりえる」としています。

推奨される年齢別のカルシウム量は
0~6か月 210mg/日
7~12か月 270mg/日
1~3歳 500mg/日
4~8歳 800mg/日
9~18歳 1,300mg/日
19~50歳 1,000mg/日
50~70歳以上 1,200mg/日

食品別のカルシウム含有量は
牛乳(250ml) 250mg
ヨーグルト(170g) 250mg
チーズ(28g) 200mg
豆類(250g) 127mg
シリアル(30g) 100mg
です。



牛乳には危険がいっぱい?
この本どう思いますか?私は以前Entropyという名前でレビューを書いたのですが、これでもいまだに牛乳摂取に反対のレビューがあるのに驚きます。一般的にいって牛乳は骨粗鬆症の予防に有効であると科学が証明しているのに、牛乳の摂取で不利益を被っている人たちは、感情で他人が摂取することも否定しています。


牛乳は特定の人を除いては健康のために良いと考えた方はこちらをぽちっと

牛乳は有害と思う方はこちらをぽちっと


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妊娠中の勧告以上の魚介類摂取量は小児の精神発達を阻害しない

2007年08月20日 | 小児科
以前、妊娠中のビタミンDの摂取の有用性についてお伝えしたことがあります。

今回は、以前厚生労働省が勧告した「妊娠中の魚介類の摂取は胎児に有害」というのは本当だろうかという研究の結果が今年の2月に発表されていますのでお伝えします。魚介類は適切な精神発達に必須のω3脂肪酸の主要供給源です。


Maternal seafood consumption in pregnancy and neurodevelopmental outcomes in childhood (ALSPAC study): an observational cohort study.
Lancet. 2007;369:578
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

アメリカでは魚介類中のメチル水銀中毒を避けるため、妊娠中の魚介類の摂取量は週340g以下に制限されています。

魚介類摂取量に関するアンケートに回答した妊娠32週目の女性11,875人を対象に、社会的立場、日頃の食事内容、妊娠の状態など交絡因子など28項目を調査して、魚介類非摂取群、勧告内の量の摂取群(340g/週未満)、勧告された量以上の摂取群(340g/週以上)の3群に分け、生まれた児の6カ月から8歳時における発達、行動、認知能力に関する評価値と比較しました。

魚介類を週340g以上摂取した妊婦から生まれた児と比較して、全く摂取しなかった妊婦、週340g以下摂取した妊婦から生まれた児は統計学的に有意に言語性知能指数(IQ)が低く、他の神経・認知・運動などのスコアも低値でした。

また、魚介類を週340g以下摂取した妊婦から生まれた児は、社会的行動、細かい運動機能、意思疎通能力、社会的発達スコアに関して最適な発達を遂げられませんでした。


日本人はアメリカ人よりも、メチル水銀の含有量が多いタイやマグロを多く摂取しますし、摂取する遠洋魚や近海魚の割合(食物連鎖や生物濃縮の差)も違うかもしれません。

こういう研究では国の特色が反映されるので、この結果をそのまま日本に当てはめることはできませんが、厚生労働省の勧告を鵜呑みにして妊娠中に極端に魚介類の摂取を避けると、生まれる児に重要な影響をもたらすことは間違いのない事実だと思います。

日本でもこういう調査がなされるといいのですが、国の勧告を無視してそれ以上に摂取している妊婦さんを対象に集めるのって、理論的にも難しいと思いますし、倫理的にも大丈夫なのだろうかと思います。アメリカのように「おおらか」な国だからこそできた研究ですね。


皆さん!ここをぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!


↓こちらもぽちっとよろしく

なかのひと


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

母乳で育児しても子どもの思考能力は上がらない

2007年05月16日 | 小児科
最近こんな議論があったのは記憶に新しいところです

政府の教育再生会議は11日、子育てに関する保護者向けの緊急提言の取りまとめを見送った。子供を持つ保護者に対し、赤ちゃんに母乳をあげることやPTAに父親も参加することなどを求める提言の内容が4月末に報じられると、「母乳が出ない人など、したくてもできない人への配慮が欠けている」とする批判が野党などから一斉に上がった。政府内でも「母乳による育児の推進は正しいが、『母乳が出ない人はどうすればいい』と聞かれると答えられない。アピールの内容が中途半端だ」と懸念が広がった。8日、提言の内容を説明するために文部科学省を訪れた山谷氏に、伊吹文科相も「人を見下した訓示のようなものをするのは、あまり適当ではない」と苦言を呈した。提言を扱う第2分科会では、保護者の意識向上を目指す内容から、「親学」と呼んで検討していた。しかし、文科相らの指摘を受け、母乳による育児の推奨では「母乳が出なくても抱きしめる」という内容を加え、「親学」という言葉も使わないようにした。「2日間で10回以上、文章を書き換えた」が、11日の合同分科会では了承が得られなかった。合同分科会後、第2分科会の委員ではない渡辺美樹氏は、「悪いことは書いていないが、再生会議はこんなことまでする会議なのか。素朴な疑問だ」と首をかしげた。首相官邸でも、「予定されていた提言は家庭生活に踏み込むような印象を与え、感情的な反発をまねく危険性が高い。参院選を前に、国民から反発を受けるのは避けるべきだ」と、見送りはやむを得ないという受け止め方が出ている。
(読売新聞より引用)

確かに、できれば母乳で育てなさい、母乳が出なくても抱きしめなさい、なんて国から言われる筋合いのものでもありませんね。

赤ちゃんに母乳を与えてスキンシップをとることは、赤ちゃんの情緒の安定や免疫力を高めることに有益であると思われますが、「母乳で育児しても子どもの思考能力は上がらない」という論文が発表されましたのでご紹介いたします。

これまで「母乳による育児は子どもの思考能力を上げる」という論文が数編発表されていましたが、今回の論文を理解するにあたり、交絡(confounding)ということを理解しなければなりません。

例えば、大勢を母集団として年齢と血圧の関係を調べた場合、年齢が高くなれば血圧も高くなるという結論が導きだされます。また年齢と給料の関係を調べると年齢が高くなれば給料も高くなるという結論も導きだされます。従って血圧と給料の関係を調べると、血圧が高い人ほど給料も高いという結論が導きだされます。しかしこれでは物事を正しくとらえているとはいえません。「年齢」と「血圧」、「年齢」と「給料」がある一定の母集団の中で相関がある場合、見かけ上「血圧」と「給料」が相関しているように見えます。これが交絡です。

Effect of breast feeding on intelligence in children: prospective study, sibling pairs analysis, and meta-analysis
BMJ. 2006;333:945.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

母親の方は1979年から調査されているデータベースの中から登録開始時に14歳から22歳であった女性6,283人が対象とされました。子どもの方は、それらの女性が1986年以降に出産した5,475人が対象とされました。低体重児や未熟児は対象から除外されました。

数学力、読解力、理解力について、母親はArmed Forces Quantification Test (AFQT)で、子どもはPeabody Individual Achievement Test (PIAT)で評価されました。

母親や子どもの背景について、年齢、学歴、AFQTでの得点(IQ)、経済力、Home Observation for Measurement of the Enviroment Scale (HOME-SF)で評価された家庭での教育環境および情緒環境、妊娠期間、妊娠期間の喫煙、出生体重、第何子目か、人種が調べられました。

結果ですが、母親の出産時の年齢が高い、高学歴、母親の高IQ、高経済力、教育環境および情緒環境が良い、兄弟間で生まれた順番が早い、出生体重が重いほど「母乳で育てられて」いました。特に母親の高IQは「子どもを母乳で育てる」ことに一番関係がありました。これらの因子は交絡因子となりえます。

さて、これらの交絡因子を補正する特別な統計学的手法で調べたところ、子どもの数学力、読解力、理解力は母親の出産時の年齢が高い、高学歴、母親の高IQ、高経済力、教育環境が良い(情緒環境は関連していませんでした)、兄弟間で生まれた順番が遅い、ほど良好でした。そして、「母乳で育てられた」かには関係がありませんでした。

子どもの数学力、読解力、理解力が母親の高IQと関連していて「母乳で育てられた」かには関係がない事に関して、例えば次のような状況も考えられると思います。

昔、交絡因子を考慮しないで「母乳による育児は子どもの思考能力を上げる」と結論がなされた論文(言い伝えなどなんでもかまいません)が当時の「TIME」誌に載ったとします。「TIME」誌を定期的に読むのは高学歴や高IQの人である傾向があったとします。高経済力の人であったという事でもかまいません。高学歴、高IQ、高経済力の人は、そうでない人よりも子どもへの教育に力を入れるとすると、子どもの数学力、読解力、理解力は高まります。一方、「TIME」誌を読んだ母親はその記事の内容を信じて子どもの能力を高めようと積極的に母乳を子どもに与えようとします。

ここに「交絡」として「子どもの数学力、読解力、理解力」と「母乳」の関係ができあがるのです。

誤解のないように申し添えますが、私は母乳反対派ではありません。赤ちゃんに母乳を与えてスキンシップをとることは、赤ちゃんの情緒の安定や免疫力を高めることに有益です。

でも、交絡因子を含んだ過去の論文の結果とは裏腹に、子どもの学力までは上げられないということです。


皆さん!ここをぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!




コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親が医師の治療計画について質問すると抗生物質の処方が増える

2006年09月19日 | 小児科
以前、小児に対して安易な抗生剤の処方はよくないとお伝えしました。
今月、親が医者に治療計画について質問すると、医者は抗生剤の処方が期待されていると考え、処方が増えるというユニークな論文が発表されました。

Ruling out the need for antibiotics: are we sending the right message?
Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine. 2006;160:945.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

この研究は、2000年から2001年の間にロサンゼルスの小児科医院27カ所において、38名の医者の風邪の症状が端緒となった外来診察522回分のやりとりをビデオテープに録画・解析し行われました。また、診察後に医者にアンケートを行い、親が抗生物質を期待しているかどうかについての自分達の受け止め方がスコア化され、不適切な抗生物質の処方についての主要な予測因子が多変量解析で決定されました。

結果は、(1) 医師が抗生物質の必要性がないと親に告げた場合に、親が医師に治療計画を質問する傾向が24.0%強くなりました(P=0.004)。また、(2) 親が医師の治療計画について質問する時に、親は抗生物質を期待していると医師が受けとめる傾向が20.2%強くなりました(P=0.004)。そして、(3) 親が抗生物質を期待していると医師が感じた場合は、医師が不適切な処方をする傾向が31.7%強くなりました(P<0.001)。 つまり、親が医師に対して治療計画について尋ねると、抗生物質が期待されていると医師が感じる傾向が強まり、親の期待を受けとめようと不適切な抗生物質の処方が増えたのでした。

研究の限界として、医師のサンプル数が少ないこと、ビデオテープ録画による影響が未知であることがあります。


医者A  「風邪ですから抗生物質は必要ないです。水分を十分に摂って安静にさせて下さい」

親B    「こんなに熱が高いのに、ばい菌で風邪がこじれたりしませんか?」

医者A   (確かに細菌感染を合併する可能性はゼロではないな~。でも予防目的で抗生物質を処方しても無意味だし~~。でも、抗生物質の予防的投与により細菌感染の合併は防げないのに、子供が細菌感染を合併したら、こういう親は医者に責任があると訴えないだろうか?割り箸事故のこともあるしな~~)
    
      「それじゃあ抗生物質も出しておきますね」

という具合でしょうか。

大切なことは、医者は患者さんに根気強く抗生物質が必要でないこと、抗生物質の予防的投与でも細菌感染の合併率は減らせないことを説明し、患者さんの方は、万が一細菌感染を合併してもそれは医者の判断が間違っていたからではないことを認めることです。


ブログランキングに参加しています。そんなもんかねぇ~と思った方、ぽちっとお願いします

ブログランキング

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乳幼児の解熱剤はなにが効果的か

2006年09月13日 | 小児科
Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine. 2006;160:197.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★☆☆☆)
38.4℃以上の発熱があった6~36カ月の乳幼児464人が登録され、以下の解熱剤が3日間投与されました。

(1)アセトアミノフェン(体重1kgあたり12.5mg)を6時間おき
(2)イブプロフェン(体重1kgあたり5mg)を8時間おき
(3)アセトアミノフェン(体重1kgあたり12.5mg)とイブプロフェン(体重1kgあたり5mg)を交互に4時間おき

被験者をこれらの3群に無作為にわけ、解熱の程度、解熱剤の総量、ストレスの程度、保育所や親の仕事を休んだ日数が調査されました。

結果として、(3)の群が他の群と比較して、いずれの項目も有意に優れていました。(3)においてどちらの薬を最初に投与するのかは効果に影響がありませんでした。

アセトアミノフェンは商品名ピリナジン、アンヒバ、アルピニー、カロナールで、イブプロフェンはブルフェン、ユニプロンです。後発品はこの限りではありません。

(3)だけ解熱剤を4時間おきに投与しているので、この論文の解釈はやや難しいのですが、1種類の薬で解熱が得られにくいからと、その薬の量を2倍にしたり投与間隔を短くしたりしても効果がなく、アセトアミノフェンとイブプロフェンという2種類の解熱剤をお互いの中間の時期に使用するというのが効果的ということです。なるほど勉強になります。
医者は通常1種類の解熱剤しか処方しませんから、この論文の結果を受けて、こういう処方の仕方も効果的なのだと認識する必要がでてきました。


「ブログランキングに参加しています。こちらから投票をよろしくお願いいたします

今は何位かな?
ブログランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妊婦の血液中ビタミンDは9歳時の子供の骨折と関連がある

2006年08月12日 | 小児科
Maternal vitamin D status during pregnancy and childhood bone mass at age 9 years: a longitudinal studyMaternal vitamin D status during pregnancy and childhood bone mass at age 9 years: a longitudinal study.
Lancet. 2006;367:36.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)

妊婦時の血液中のビタミンDの量と生まれた子供の骨の強さについて調べるために、1991年から1992年の間に対象となった妊婦198人とその後に生まれた子供が9歳になるまで調査されました。

ビタミンD量は20μ/L以上が十分、20~11μ/Lが不足、10μ/L以下が欠乏と定義されました。
妊婦の31%が妊娠後期にビタミンDが不足しており、18%では欠乏していました。妊娠後期の血液中のビタミン量が少ないと、9歳時の子供の全身の骨量と腰椎骨量が少ないという関係が認められました。

妊娠後期に浴びた紫外線量が多いと血液中のビタミンD量も増えていました。また、妊娠後期にビタミンDのサプリメントを摂取した妊婦ではビタミンD量も増えていました。

その結果、妊娠後期に浴びた紫外線が多いほど、またビタミンDのサプリメントを摂取するほど
9歳時の子供の骨量も増えるという関連が見いだされました。

このような結果が得られた理由は、妊婦の血液中のビタミンD量は臍帯を介して胎児にもたらされるカルシウムに影響を与えているからだそうです。

妊娠後期に屋内ばかりにいるのは問題がありそうだし、白い肌を維持しようと太陽の光に当たらないのも良くないようです。

ランキングに参加しています。ご協力よろしくお願いいたします

今は何位かな?
ブログランキング

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児喘息の発症率は都道府県間で異なる

2006年08月05日 | 小児科
気管支ぜんそくの症状を持つ小中学生の割合は都道府県間で異なり、最大で約2倍の差があることが厚生労働省研究班の調査で分かった。全国規模の有症率調査は初めて。地域差の理由は分からなかった。研究班は「その地域の患者にとってより効果の高い対策を考えるためにも、地域差の要因を今後の調査で解明する必要がある」としている。

05年6-7月にかけ、各都道府県の小学1、2年生6万4424人と中学2、3年生7万8人に質問票を送り、気管支ぜんそくの症状の有無や他のアレルギー疾患の症状などを聞いた。回答率は小学生85・3%、中学生73・7%で、このうち6-7歳と13-14歳の回答を分析対象とした。最近1年間にぜんそくの症状があったのは小学生13・9%(男子16・3%、女子11・5%)、中学生8・8%(男子9・0%、女子8・5%)。

都道府県別の有症率では、小学生は北海道が18・4%で最も高かった。最低は京都の9・6%だった。中学生では、長崎が13・2%で最高、最低は富山の6・1%だった。小中学生とも人口密度や気候条件などと有症率との間に明確な相関関係はなく、地域差が生じた理由は不明だった。また、ぜんそく、アレルギー性鼻結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかを持っている割合は小学生33・7%、中学生31・7%で、3人に1人が何らかのアレルギー性疾患を持っていた。

赤沢医長は「寒さが厳しい北海道では気密性の高い住宅が多いなど、その地域に特徴的な室内環境が影響しているかもしれない。疫学調査がまだ不十分で、国民も協力してほしい」と話している。
(以上、毎日新聞より引用)

あまり気密性が高い室内環境は小児には良くないようです。


ランキングに参加しています。ご協力よろしくお願いいたします

今は何位かな?
ブログランキング

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005(長期管理)

2006年05月17日 | 小児科
「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005」の中で喘息発作時の治療についてお伝えしました。今回は小児喘息の普段の治療についてお伝えします。

ガイドラインでは、喘息の程度は軽い方から間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型に分けられています。

15歳までの全年齢で、間欠型に対する常用薬は使用せず、発作時のみ程度に合わせた治療が推奨されています。

軽症持続型では2歳未満では抗アレルギー薬が常用薬として使われることになります。抗アレルギー薬にかんしては以前アレルギー性鼻炎の薬でお伝えしました。2歳以上では抗アレルギー薬あるいはフルタイドなどの吸入ステロイド薬(小児喘息における吸入ステロイド薬の重要性)が推奨されています。

中等症持続型では全ての年齢で吸入ステロイド薬を日常的に用いることが推奨されています。そしてβ2刺激薬の貼布剤、気管支拡張薬テオフィリン、オノン・アコレート・シングレア・キプレスなどのロイコトルエン受容体拮抗薬の併用が推奨されています。

乳幼児期の喘息の経過は個人によって差があり、一過性で消失するタイプや乳児期に消失するタイプ、長期にわたり持続するタイプがあります。発症時には区別ができないため、一過性のタイプに長期投与にならないよう、3か月をめやすに投薬のステップダウンを行うことが推奨されています。ただし、以前お伝えしたように6歳児の小児喘息の状態はその後も10年間不変ですから、6歳時の状態からステップダウンするのは難しいと考えられます。

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン (2005)

ブログランキングに参加しています。今は何位かな?

ブログランキング

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005

2006年05月10日 | 小児科
このほど「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002」が3年ぶりに改定されました。このガイドラインを見ると、喘息のお子さんをお持ちの方にとっては、発作時に病院を受診してどういう治療が施されるかがわかりますし、逆に医者にとってはどういう治療を施すべきかがわかります。今回は急性発作時の治療についてお伝えします。

ガイドラインでは、発作は小発作、中発作、大発作、呼吸不全に分けられています。

小発作(2~15歳)
気管支を拡張させる薬であるβ2刺激薬の吸入が推奨されています。
病院で使われるβ2刺激薬の吸入薬には以下のものがあります。
アロテック、アスプール、イノリン、ベネトリン、メプチン

中発作(2~15歳)
20~30分ごとに3回までのβ2刺激薬の吸入が行われます。β2刺激薬が効いたかどうかの判定時間は15~30分後として、1回目あるいは2回目の吸入で、発作の改善を認めるが、まだ残存している状態では3回目で吸入を反復することになります。しかし、3回行わなければ次の治療に進めないというわけではありません。

3回のβ2刺激薬の吸入が無効な場合は、ステロイド薬(静注か内服)とアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)点滴静注のいずれか、あるいは両者を追加することになります。これらの追加治療によっても改善が認められない場合はさらに酸素投与などが必要となるために入院が考慮されます。


小発作(2歳未満)
気管支を拡張させる薬であるβ2刺激薬の吸入が推奨されています。

中発作(2歳未満)
20~30分ごとに3回までのβ2刺激薬の吸入が行われるのは2~15歳の場合と同じですが、2~15歳の場合と異なるのは、これらの吸入が無効である場合には、ステロイド薬(静注か内服)とアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)点滴静注のいずれかが次に考慮される前に入院が考慮されるということです。

大発作(2歳未満)(2~15歳)
この場の治療は入院により行われることになります。酸素投与に加えてアミノフィリン(気管支を拡張させる薬)とβ2刺激薬の持続点滴静注が行われます。


「なるほど、ためになった」と思われた方は、こちらから投票をお願いいたします

今は何位かな?
ブログランキング

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

6歳児の小児喘息の状態はその後も10年間不変

2006年04月29日 | 小児科
小児喘息は症状が悪くなったり良くなったりと様々ですが、このほど、どの時期のどういう事が予後を決める因子になるのかという研究成果が発表になりました。

Outcome of asthma and wheezing in the first 6 years of life
American Journal of Respiratory and Clinical Care Medicine. 2005;172:1253
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★☆)

対象は、喘息が全くない小児425人、6歳以下のときに喘息を発症し6歳以下で軽快した小児164人(早期一過型)、6歳以下のときに喘息を発症し6歳を超えても喘息であった小児113人、(持続型)6歳を超えてから喘息を発症した小児124人(晩期発症型)で、全例で6歳時、8歳時、11歳時、13歳時、16歳時の年間の喘息発作の回数と1秒間にはくことができる空気の量などで示される呼吸機能が調査されました。

解析の結果、喘息発作の回数と呼吸機能ともに、早期一過型では6歳児の状態からその後に悪化することはなく、持続型では6歳児の状態が16歳になっても悪いままで、晩期発症型は6歳児には呼吸機能はよかったわけですからその後喘息を発症しても状態は悪くない事がわかりました。

また、「持続型」と「晩期発症型」の6歳時のアトピー性皮膚炎の罹患率は高く、16歳時まで持続しやすいことと、喘息がない小児と比較して11歳時の血清IgEが高いことが判明しました。

つまり、6歳時に喘息であったかなかったかに関係なく、6歳時の状態がその後の10年間の喘息の状態を規定しているということです。


今は何位かな?


ブログランキング

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする