医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

新型インフルエンザの死亡率は日本では14万分の1

2009年11月29日 | インフルエンザ
厚生労働省は27日、7月以降のインフルエンザ患者数が1000万人を超え、今月22日までに1075万人に達するとの推計結果を発表した。16~22日の1週間に全国約5000カ所の定点医療機関を受診した患者数は、1施設当たり今シーズン最多の38・89。昨冬の季節性インフルエンザのピーク(今年1月19~25日)だった37・45を上回り、地方都市を中心に流行がさらに拡大している。

厚労省によると、1週間の推計患者数は10月後半から100万人を超え、16~22日は173万人。前週より10歳未満が20万人増えており、厚労省は「感染者の低年齢化が進んでいる」とみている。7月以降の累計では、5~9歳の285万人、10~14歳の309万人が受診した一方、60歳以上の患者は10万人にとどまる。検出されたウイルスのほとんどが新型で、季節性は流行のきざしがない。
(毎日新聞より引用)

合計が1,000万人、5~14歳は約600万人、60歳以上は10万人。中高年の罹患率は数%です。それと、やはり季節性インフルエンザと新型インフルエンザの免疫には共通性があるのでは?

↓厚生労働省からの医療従事者向けの情報です。
新型インフルエンザの死亡率は日本では14万分の1

↓何度も言うようだけど、交通事故で死ぬ確率の方が高いのだから、焦ってワクチンの接種に行く途中で、交通事故に遭って死にますよ
新型インフルエンザ:ワクチン接種、予約電話が殺到 県、冷静な対応呼びかけ 


5~14歳は半数感染か=新型インフル、高齢者は1%未満
新型インフルエンザに感染した人の割合が、5~14歳では約50%に上る計算になることが、国立感染症研究所(感染研)が算定した推計患者数などから分かった。厚生労働省は「学校で集団生活を送る年代で、感染機会が多いためではないか」としている。感染率は0~4歳で17.6%、15~19歳も27.6%と高いが、20~40代では2~5%台。50代以上は1%に満たない。全年代では8.4%。
(時事通信より引用)
↑厚生労働省はまだこんなアホなコメントをしています。そうなら、季節性インフルエンザでも同じ傾向が出るはずなのに、季節性インフルエンザにはそんな傾向はないでしょ!厚生労働省って、やっぱり頭悪いんじゃないの?

↓厚生労働省の官僚って、こんなに頭が悪いのだから、長妻厚生労働相の気持ちがよくわかります。
厳しくなった厚労相、省内は緊張・反発も

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アーチスト(心不全・高血圧症治療薬)は2.5mgでも10mgでも効果は同じ

2009年11月18日 | 循環器
米国心臓病学会は3日目を迎えました。

かなり以前に、ベータブロッカーと呼ばれる心不全・高血圧症治療薬が死亡率を減少させることをお伝えしました。
↓参考になさって下さい。
ベータブロッカーの内服は虚血性心不全の予後を改善する

米国心臓病学会議のブレイキング・ニュース、その2をお伝えします。

アーチストと呼ばれる薬剤は心不全に有効なのですが、どれくらいの量が日本人に適度なのかが、これまでわかっていませんでした。むしろ10mgぐらいまでは、できるだけ多い方がいいという意見もありました。

この研究では、心臓の機能が正常の半分以下に低下した日本人を、アーチストを1日2.5mg内服してもらう群と、5mg内服してもらう群、10mg内服してもらう群に分け、その後1年間の心不全の改善度が調査されました。

その結果、どの群でも心不全の改善度は同じでした。つまり、アーチストを心不全の治療に用いるなら1日に10mg内服しなくても2.5mgでいいということです。しかし、2.5mgの群では、5mgの群や10mgの群に比較して、心不全の改善度は同じですが、動悸などの訴えが多かったので、症状がある患者には5mgがちょうどいいのかもしれません。

アーチストを発売している製薬会社の人たちはがっかりしたことでしょう。
ちなみに、アーチストの1.25mgは1錠19円、2.5mgは32円、10mgは82円です。この薬価と比べると、昨日お伝えしたゼチーアがいかに高価かがおわかりになると思います。



さて、もうそろそろ帰り支度をしなければいけません。日本での仕事が溜まっていて、4日目は出席せずに帰国します。今は午前0時、明日は4時起きです。

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コメント (3)
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悪玉コレステロール低下剤ゼチーアは効果なし

2009年11月17日 | 循環器
以前、大きな学会にはブレイキング・ニュースというセッションがあって、重要な研究結果が世界初で発信されることをお伝えしました。


今日は、そのブレイキング・ニュースで、以前お伝えしたゼチーアを、スタチンという悪玉コレステロール低下剤に加えることで効果があるかという研究結果が発表されました。

対象は208人で、スタチンにゼチーアを加える群と、ナイアシンという善玉コレステロールを上げる薬剤を加える群に分けられました。

結果は今日付け(アメリカ時間)のNew England journal of Medicineに発表されていますが、心筋梗塞などの発症率と関係がある頸動脈の厚みの変化からみて、ゼチーアは全く効果がありませんでした。

↓詳しくはこちらを
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0907569?resourcetype=HWCIT

ゼチーアの会社から利益供与がある教授は、「頸動脈の厚みが改善しなかったぐらいで、臨床的効果がないといえるのか」と、これまで多くの研究で頸動脈の厚みは心筋梗塞などの発症率と関係があると明らかになっていることを無視して、コメントをしていました。こういう教授は、頸動脈の厚みに効果があった場合には、ゼチーアは臨床的に効果があるとコメントしたはずです。全くアホなコメントです。こんなコメントをされて、発表者のTaylor医師はムッとしていました。

発表後、2,000人ぐらいの聴衆の3分の1ぐらいの人が一斉に立ち上がり、会場を後にしました。この発表を目当てに聞いている人たちと株屋さんの人たちです。ゼチーアを販売しているバイエルとシェリング・プラウの株は売りです。

明日のニューヨーク相場では、これらの株は下がります。

ゼチーアは1粒240円のラムネです

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「囚人のジレンマ」=「教授のジレンマ」

2009年11月16日 | 雑感
米国心臓病学会での発表のためにフロリダ州に来ています。アメリカでも相変わらず製薬会社が出資する自分勝手な研究が進んでいます。そういう会場には新聞記者や株屋さんも来ていて、結果が発表されると、一目散に会場を後にして会社に電話をかけています。さて、この製薬会社の株は買いかな?売りかな?

皆さんは「囚人のジレンマ」という言葉を聞いたことがありますか?経済学を勉強したことのある人には聞き慣れた言葉だと思います。

「囚人のジレンマ」とは、個々にとって最良の選択が、全体にとって最良の選択とはならない状況のことです。

ある事件の容疑者として共謀したAとBが逮捕され、別々の部屋で検事の取り調べを受けています。

「自白しろ。おまえが自白してあいつが自白しなかったら、おまえが捜査に協力したのだから、おまえは釈放、あいつは懲役8年だ。おまえが黙秘してあいつが自白したら、その逆。二人とも黙秘をしたら、別の微罪で二人とも懲役2年。ただし、二人とも自白したら、反省しているものとして懲役8年を減じて懲役4年だ。」

さて、この容疑者AとBはどうすればいいか、というジレンマです。

まずAの立場で考えると、Bが黙秘する場合、自分が自白すれば釈放、自分が黙秘すれば懲役2年ですから、自白を選ぶ方が有利です。Bが自白する場合、自分が自白すれば懲役4年、自分が黙秘すれば懲役8年ですから、自白を選ぶ方が有利です。

Bの立場でも状況は同じですから、Bも自白を選びます。そうすると結局二人とも自白して懲役4年です。

しかし、最初の合理性で推論するのではでなく、さらに踏み込んで合理的に考え、二人とも黙秘を選んでいれば懲役2年で済んだのです。

以前、研究会って、誰のためをお伝えしましたが、このような囚人のジレンマを、学術的根拠もあいまいなのに製薬会社の都合のいい事だけをいいその会社の広告塔になっている教授たちに当てはめてみます。

「うちの製薬会社の薬に関して良い点だけを講演して下さい」と依頼され、

A教授が製薬会社に言われるままに講演し、他の大学のB教授が「悪い点を無視して講演はできない」と講演を断る場合、製薬会社は「今後全ての講演をお任せします。これまでB教授に依頼していた講演も全てA教授にシフトさせます」とA教授の講演料や(みせかけの)名声はアップします。

その逆の場合は、A教授の講演はB教授にシフトしてしまいます。二人とも講演を引き受ければ、これまでどおり二人に均等に講演が依頼されます。二人とも「悪い点を無視して講演はできない」と断る場合、その製薬会社からの講演の依頼は二人とも減ります。

囚人のジレンマのごとく、この状況ではどちらの教授も講演を引き受けるでしょう。でもその内容のねつ造性は私のような者に見破られ、結局真の名声は得られないままです。また、間違った情報が流されることで、社会的にも損失があります。

ここで、全ての教授が講演を断ったらどうか。製薬会社は「都合のいい事だけを講演する」内容では講演を引き受ける相手がいないため、「悪い点を無視して講演はしない」という依頼に変更せざるを得ないでしょう。つまり相手の教授(製薬会社に対しても)に対する「しっぺ返し戦略」です。「しっぺ返し戦略」とは、最初は「協調」し、以降は、前回相手の出した手をそのまま出す戦略です。

講演の機会は何度もあるので、これは「繰り返し型の囚人のジレンマ」なのです。

日本全国の教授や講師に言いたいです、一度一斉に製薬会社からの講演を断ってはどうかと。個々にとって最良の選択が、全体にとって最良の選択とはならないのですよ。

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文部科学省 科学研究費

2009年11月07日 | 総合
                          (東洋経済より引用)


科学研究費補助金の申請の季節がやってきました。科学研究費補助金(科研費)は文部科学省から業務が移管された日本学術振興会が取り仕切る、日本の研究を推進させるための公的研究助成金です。

科研費は競争的に配分される資金で、研究の規模により金額が細分化され、先進性、独創性、将来性が競われます。例えば基盤研究(S)は5000万円以上~2億円程度まで、基盤研究(A)は2000万円以上~5000万円、基盤研究(B)は500万円以上~2000万円、基盤研究(C)は500万円以下で、当然金額が高いほど競争率は高くなります。採択率は以前は(C)で30%、(B)で15%ぐらいでしたが、最近は(C)で25%、(B)で25%ぐらいと(B)にシフトしています。

審査は日本学術振興会の委嘱を受けた科学研究費委員会の専門委員(審査委員)で、ほとんどが大学教授や研究所所長といった研究のエキスパートによりなされます。

申請用紙は十数ページからなり、研究の背景から遂行方法、目標が達成できた場合の有用性、申請者の業績など、かなり細かいことが審査されます。最初から申請用紙を完成させようとすると最低でも数十時間必要としますが、これは「ひやかし」の申請を予防するための措置とも考えられます。横線一本足りなくてもしっかりチェックされますし、求められる記載事項が毎年微妙に変わるので、前年度採択されなかった書類をそのままコピー&ペーストすることもできません。

このへんは「研究内容」が審査されるというより、「情熱」が審査されている点でもあります。

今年の変更点は
(1)、「研究目的」、「研究計画・方法」欄に「概要」を記入する必要があります。

(2)、「研究業績」で研究代表者には二重下線、研究分担者には一重下線、連携研究者には点線を施す必要があります。これは「新学術領域研究」で昨年度から採用されていた記載法です。

(3)、「研究費のエフォート」に本人が受け入れ自ら使用する経費を記入する必要があります。

です。

申請する皆さんは注意が必要です。でも、文部科学省の官僚の皆さん、アホみたいに毎年意味のない申請要項の変更をして楽しいですか?政権も変わったことだし、もうそろそろこんなこと止めませんか?

私もこの時期になると、論文執筆に費やす時間をこちらの申請作業にシフトせざるをえなくなります。

このような科学研究費ですが、世界を舞台にして日本の科学の推進に欠かせないものです。しかしながら、日本の大学の資金力はまだまだ世界、特にアメリカに太刀打ちできるものではありません。東京大学の資金力が年間130億円なのに対して、ハーバード大学の資金力はなんと年間3兆円、スタンフォード大学は1兆5000億円です。この中には私的な寄付金も含まれていますが、上の図に示されたように日本の科学研究費に匹敵する公的資金もアメリカに比べると全く比べものになりません。

さらに、東洋経済の10月13日号に書かれていますが、日本の場合研究費の配分がいかにも東京大学や京都大学に偏っています。優れた研究とは確率の問題であり、一定のレベルの研究者の数と、そこの配分される資金が多ければ多いほど、優れた研究成果を数多く生み出せるのに、日本の場合、上位大学に研究費が集まりすぎて10位以下の大学の研究費が少なすぎます。東洋経済の記事の中でも、研究強化という意味では10位以下の大学に配分した方が効率的と結論付けられています。

私も同感です。日本の場合、科学研究費の採用を審査する審査員の数はアメリカの100分の一であり、しかも東京大学、京都大学出身者が審査員の多くを占め、平等とは言っても審査結果が偏るのは避けられません。先日、基盤研究(S)で1億円を獲得した教授に、他大学の教授が「大型研究費を獲得する秘訣」を尋ねていましたが、その質問を横で聞いていて、私は「それは審査員や要職に就く者に、母校を同じくする先輩や後輩を多く持つこと」だとひそかに答えていました。

競争的資金を得て一段と強くなる「旧帝大」、その反面、ジリ貧の地方国立大学、国の試算をみる限り、淘汰のシナリオはすでに決まっているのかもしれません。

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