医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

肺炎球菌ワクチンは65歳~75歳では効いていない

2015年11月26日 | 感染症
黄色で囲んであるのが、ワクチンの接種が効果があった群です。


以前、「インフルエンザワクチンはあまり効いていない」をお伝えしたところ、「AF冠者」様から、「行政が後押しして高額の負担までしてくれている「肺炎ワクチン」の効果は如何なものでしょうか。自己負担も4,000円を超えるので考えています。」とコメントをいただきましたので調べてみました。ちょうど今月号の日本内科学会雑誌の特集も「内科医に求められる肺炎球菌ワクチン・ストラテジー」でもありますし・・


これまで何度もお伝えしているように、日本では人種も環境も海外とは異なるのですから、ある程度の人数を調べた医学研究があるのなら、欧米人の結果よりも日本人の結果を優先しなければなりません。

調べてみると、日本のランダム大規模研究が2つだけありました。1つめは、
Effectiveness of pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumonia and cost analysis for the elderly who receive seasonal influenza vaccine in Japan
Vaccine. 2010 Oct 8;28(43):7063-9.


65歳以上の786人の日本人を肺炎球菌ワクチンを接種する群と接種しない群にランダムに分けて、その後2年間の肺炎の発症率や死亡率が調べられました。

結果は、上の図にありますように、効果があったのは75歳以上の群の1年目(接種後2年目は両群で差はありませんでした。すなわちワクチンの効果はありませんでした)、慢性の肺疾患の患者の1年目(接種後2年目は両群で差はありませんでした。すなわちワクチンの効果はありませんでした)、自分の足で歩けない人の1年目と2年目でした。研究対象全体や、75歳未満や、慢性の腎臓疾患患者、以前に肺炎に罹患した人などでは肺炎球菌ワクチンの効果はありませんでした。

つまり、現在65歳以上で国から推奨されている肺炎球菌ワクチンですが、65歳~75歳で、ご自分の脚で歩ける人には効果がないということです。そういう方々は75歳になったら接種すればいいし、慢性の肺疾患がある方は65歳からでも接種すれば最初の1年は効果があるということです。


2つめは、
Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial
BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004. doi: 10.1136/bmj.c1004.



1006人の日本人の老人ホーム入居者が肺炎球菌ワクチンを接種する群と接種しない群にランダムに分けて、その後2年間の肺炎の発症率や死亡率が調べられました。

結果は、ワクチン接種群で肺炎球菌による肺炎の発症率は2.8%、非接種群で7.3%で接種した方が肺炎球菌による肺炎の発症は減りました。肺炎の死亡率も、接種群で20.6%、非接種群で25.0%と、接種した方が肺炎による死亡率は減りました。この研究の結果、老人ホームに入居している高齢者は年齢に関係なく、ワクチンを接種したほうがいいです。

さて、老人ホームに入居しておらず自分の脚で歩けて慢性の肺疾患にかかっていない65歳~75歳の方は、肺炎球菌ワクチンを接種しても金の無駄使いということです。なぜ、厚生労働省はこういうデータを国民に伝えず、ただ闇雲に65歳以上になったら必要だと勧めているのでしょうか?


今月号の日本内科学会雑誌の特集「内科医に求められる肺炎球菌ワクチン・ストラテジー」でも、いくら探しても日本人のデータはこの2つからしかありません。「2014年10月からは65歳以上の高齢者(ハイリスク患者は60歳以上)を対象に予防接種法上のB類疾患用ワクチンとしての定期接種がはじまったが、この背景にも関係諸学会からの厚生労働省への要望がある」と書かれています。日本の研究結果からは、それは75歳以上の高齢者(ハイリスク患者は65歳以上)への修正が必要であろうと思います。

今月号で成人に対する肺炎球菌ワクチンの原稿を書いている8人のうち4人が肺炎球菌ワクチンを販売しているファイザーから、2人がMDSから講演料や寄付金をもらったとCOIを(conflict of interest:利害関係)公表しています。

ファイザーやMSDが諸学会へロビー活動をして、諸学会は厚生労働省にそれを要望したということでしょう。効果のない対象者までワクチンの対象になってしまっています。この構造のままでは日本の医療は正しくなりません。


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私はインフルエンザワクチンを接種しない

2015年11月17日 | 感染症
昨年は私の職場の職員はインフルエンザワクチンの接種が強制でした。私は昨年、学会出張で指定日に接種できなかったのですが、学会から帰るとわざわざ電話がかかってきて、前回接種しなかった者のために再度接種の機会を与えるので必ず接種するよう求められました。指定日に接種しなかったことに罪悪感をもたされるほどの言われようでした。

ところが今年、ワクチンの接種を希望するかという書類が来ました。あれ?強制でないの?希望しなかったら接種しなくてもいいの?昨年あれほど強制していたのに?やはりワクチンが効くというエビデンスに限界が生じているのではないの?という感じです。

私の2011年のブログでも、インフルエンザワクチンが有用という論文はそれほどないこともお伝えしています。

意外に効いていなかったインフルエンザワクチン

「インフルエンザワクチンの効果(VE)は65歳以上では9%」

インフルエンザワクチンはあまり効いていないということもお伝えしました。


さて、現在のYahooの上の方、検索ワードを入力するところのすぐ下をご覧下さい。「インフルエンザ対策、ワクチンの2つの効果とは?」とありますね。これをクリックして下の方にスクロールしてください。

インフルエンザワクチンの効果について、「インフルエンザワクチンは、65歳以上の健常な高齢者については 約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があった」と書いてあります。そのすぐ下の「参考:平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」をクリックすると、資料の4ページ目に研究内容が記載されています。

病院、老人保健施設、特別養護老人ホームなどに入院、入所している人が対象です。あれ?「病院に入院している人」が健常な高齢者ですか?「インフルエンザワクチンは、65歳以上の健常な高齢者については 約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があった」という標榜と内容が違います。

そして、あれ~~?平成11年の結果ですか?今は平成27年ですよ。もっと新しいエビデンスはないのですか?それとも最近は効いていないので公表できないのですか?と。

それに、1997/98、1998/99、1999/2000の3シーズンで調査を実施しているのに、結果が示されているのは、「有効性の正確な解析が可能となる条件を満たした1998/99シーズン」だけですが、残りの1997/98、1999/2000は正確でなかったのですか?本当は効果がなかったから載せられないのではないですか?「正確でない」って、研究のデザインは綿密に練られたのではないですか?それでは正確でなくてもいいので結果を教えていただけませんか?。

というように、数々の疑問が湧きませんか?

上の方の右端を見ると、このブログに載せたように「ファイザー」の文字があります。禁煙補助剤の宣伝です。そういえばファイザーもインフルエンザワクチンではないけれど「肺炎球菌ワクチン」を売っていますね。最近テレビの宣伝でも見た方がいると思います。

私のように65歳未満で健康にバリバリ仕事をしている者に、本当にインフルエンザワクチンが必要なのか?怪しいです。日本の資金がなんだかんだと騙されて全部海外に持っていかれている印象です。

この宣伝って、乳児・高齢者以外の健康な者にも、危機感を煽ってワクチンを接種させようとしている印象です。

私は、昨年のように職場から強制されないのであれば、インフルエンザワクチンは接種しません。

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