医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

いつまで休職するべきか、ノロウイルスによる感染性胃腸炎

2014年02月21日 | 感染症
以前、飲酒運転に関して、運転者側が自分で呼気のアルコール濃度を測定できるようになると、これまでの考えをガラリと変えなくてはならないある種のパラダイムシフトが起こることをお伝えしました。

最近、各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになり、私はある種のパラダイムシフトが起きていると感じています(平成24年4月から保険適応になりました。ごく最近のことなのです)。これは、インフルエンザの場合は飛沫感染で5日間ぐらいで他人への感染性がなくなるので起こりえなかった事態です。

ノロウイルスに関してはネットで検索すれば情報はたくさん得られますので、ここでは書きませんが、まず、今回の記事に関連していることだけを、復習してみます。

感染者のノロウイルスは糞便中に多く存在しますので、ノロウイルス感染症の検査は肛門に綿棒のようなものを入れて検体を採取するか直接便から検体を採取することで行われます。費用が保険適応になるのは次に該当する場合です。

1、3歳未満
2、65歳以上
3、抗ガン剤や免疫抑制剤を内服している患者
4、ガン患者
5、臓器移植後の患者


いずれも、ノロウイルス感染症が重症化しやすい患者が想定されています。これは正しい考え方だと思います。これ以外で検査を希望すると(ほとんどが職場の事情です)自費になるのですが、以下のサイトにあるように一番安いELISA法で2,100円です。これに初診料などが加算されて5,000円前後になるのだと思います。(このサイトは少し古いので検査に数日かかると記載されています)
http://www.shokukanken.com/kensa/1&fm=price

しかし、症状の治療も同時に行うとなると、検査が自費の場合は、日本では混合診療は認められていないので、治療費も自費になってしまいます。ノロウイルス感染と判明しても特効薬はなく治療法に変化は生じないですから、結局、検査が保険適応にならない患者は検査しないことが多いです(そうすると厚生労働省が発表している感染者の統計って、意味があるの?という疑問も生じます)。

さて、ノロウイルスによる感染性胃腸炎では症状消失後2~3日で復職するのが一般的ですが、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くし、乾燥した便のほんの一部でも空気中に舞い上がると感染源となるウイルスを含みますので、保育士や食品関係の仕事をなさっている方が「どれだけ休職するべきか」は非常に難しい問題です。以下のように「国立感染症研究所」も、「厚生労働省」も明確な言及をあえて避けています。なぜなら、患者の給与をも左右するかもしれないからです。
http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

そこで、新型インフルエンザに関して、給与について示された厚生労働省のサイトがあるので参考にしてみます。

(以下、厚生労働省のサイトから引用)
感染拡大防止の観点からは、感染又は感染の疑いがある場合には、保健所の要請等に従い外出を自粛することその他感染拡大防止に努めることが重要ですが、その際、欠勤中の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。
なお、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条
「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、使用者は休業期間中労働者に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。(※以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型インフルエンザの流行状況等に応じて保健所の要請等が変更される可能性がありますのでご留意ください。)

(1)労働者が新型インフルエンザに感染したため休業させる場合

新型インフルエンザに感染しており、医師等による指導により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。医師による指導等の範囲を超えて(外出自粛期間経過後など)休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。

(2)労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

新型インフルエンザかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱えば足りるものであり、病気休暇制度を活用すること等が考えられます。

一方、例えば熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。
(以上、厚生労働省のサイトから引用)

先日、私の外来に保育士が受診されました。症状は頻回の下痢と嘔吐で、家族が通う学校にノロウイルス感染症の生徒がいて、ほとんどの家族が一瞬にして同じ症状になったそうですので、自費で検査をするまでもなくノロウイルス感染症は間違いない状況でした。

私は患者から尋ねられました。「いつまで仕事を休まないといけないですか?」

しかし、上の厚生労働省の記載にあるように、私が「ノロウイルス感染症は、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くので、保育士のお仕事なら数週間、いや最低でも1週間休んだ方がいいですよ」などと言ってしまうと、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではなく、「医師等による指導により労働者が休業する場合」になってしまい、この保育士の給与が保証されなくなってしまいます。職場の利益のためにする行為が患者の不利益になってしまうのです。

各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになった。

特に保育士や食品関係の業種は、休職中の給与について労使間で十分に話し合って早急にルールを決める必要がある。


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インフル予防接種は一般の高齢者には有用性が低い、小児の接種は有用

2014年02月19日 | 感染症
以前、以下のような新聞記事がありましたので、それについてお伝えします。

かつて小学校などで行っていたインフルエンザワクチンの集団接種が、高齢者の死亡を半分以下に抑える効果があったとする分析が、米科学誌プロスワンに掲載された。著者らは日米両国の1978~2006年の人口統計を基に、インフルエンザによるとみられる死者の数を分析。日本の65歳以上の死者は、小学校などでの集団接種が行われていた94年まで10万人あたり6・8人だったが、95年以降は同14・5人に倍増した。小学生などの集団接種がない米国では、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも同16~18人でほとんど変化がなかった。集団接種による社会全体への感染予防効果が高齢者の感染を抑えたとみられる。結果として、小学校などで行っていた集団接種が65歳以上の死亡率を減少させ、年間約1000人の死亡を抑えていたと、著者らは推定している。
(読売新聞より引用)

そこで、論文の原版を読んでみました。

Influenza-Related Mortality Trends in Japanese and American Seniors: Evidence for the Indirect Mortality Benefits of Vaccinating Schoolchildren
PLoS ONE 6(11): e26282. doi:10.1371/journal.pone.0026282


PLoS ONEは掲載料を著者が支払い、掲載コストを負担する代わりに読者は無料で閲覧できる科学雑誌です。「真に意味のある論文は雑誌の序列は問わず、他の研究者に必要とされる」という理念のもとに、インパクトファクター度外視で運用されている雑誌です。というか、論文審査における却下率を下げて(全投稿論文の70%近くを受理する)運営コストを下げる目的もあると思います。自力で掲載できるので、最近は著者が話題作りをしたい場合にもよく選ばれます。

上の図の棒グラフはインフルエンザワクチンの接種数、青色の折れ線グラフは高齢者のインフルエンザによる死亡率です。日本で1994年に小学校などで行っていた集団接種が終わってから高齢者のインフルエンザによる死亡率が増え、その後任意で小児の接種が増えてきたら、高齢者の死亡率は減ってきたというものです。

一方、集団接種がないアメリカでは、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも高齢者のインフルエンザにようる死亡率はほとんど変化がありませんでした。

つまり、高齢者のインフルエンザによる死亡率は、高齢者のワクチン接種率よりも、子供のワクチン接種率に関係が深かった、ということです。

以前、意外に効いていなかったインフルエンザワクチンについてお伝えしました。
高齢者ではワクチン非接種者でもインフルエンザの発症率は高くなく、ワクチンを接種しても効果はなかったというものです。

この2つの結果を総合して考えると、一般の高齢者にはインフルエンザワクチンは必要ないのではないかと思えます。もちろん慢性呼吸器疾患などのリスクを持った高齢者には必要でしょうが、少なくとも、この2つの結果からは、助成金を交付して「一般の」高齢者のインフルエンザワクチンを推奨する有用性はないようです。

なぜ、こういうデータがあるのに、一般の高齢者への接種が助成金で行われているのか、政治家の票集めのためでなければよいのですが・・・

それともまた、ワクチンを生産している製薬会社との「あれ」ですか?

その助成金を小児の福祉に回した方が有用な気がします


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またしても臨床試験でデータ改ざん

2014年02月14日 | 雑感
4年半ほど前に、私は以下の記事を書きました。4年半たってようやくその実態が明らかになってきたようです。
「囚人のジレンマ」=「教授のジレンマ」

5年ぐらい前、私はある製薬会社が各地区のオピニオンリーダー的な医者を集め、各地区でどのように講演してもらいたいかを説明する会に招かれました。講演に使用するスライドまで配られました。全国から100人ぐらい集まっていました。私はこのとき「ハイ!」と手を挙げ、「根拠はどこにあるのですか?根拠がなければ講演できない」と発言しました。会場はシーンとなってしまいました。こんな状況は間違っている、と私はその時思いました。今回告発をした薬学部長も、同様の思いだったに違いありません。

またしても臨床試験でデータ改ざんのニュースです。

(以下、NEWSポストセブンより引用)
日本の医薬業界が、製薬大手「ノバルティスファーマ」の薬に関わるデータ改竄事件で揺れている。同社は、血圧を下げる降圧剤「バルサルタン(商品名・ディオバン)」を販売する際、改竄したデータに基づき、「血圧だけでなく脳卒中、狭心症にも効果がある」として販売した事件だ。
 
 こうした事件が発生する背景には、製薬会社が大学医学部の教授を“籠絡”すれば、いとも簡単に現場の医師と患者を騙せ、巨額の利益を得られるという構図がある。今回、現役の国立大学教授が実名で、あまりに生々しい「製薬会社と医学部」の癒着の現場を告発した──。

●レポート/伊藤博敏(ジャーナリスト)
「大学の研究者が製薬会社にとって都合がいいように研究データを改竄し、それを根拠に執筆された不正論文は、この大学にもヤマのようにあります」

 不正の証拠となる写真や論文を示しながら、岡山大学の森山芳則・薬学部長はこう言い切った。

 岡山大の森山氏と榎本秀一・副薬学部長が本誌に告発した内容は、昨春から医薬業界を揺るがせているノバルティス事件が、日本の医学部において氷山の一角でしかないことを示す重大な証言である。

 昨年12月10日、森山氏は岡山大学長宛てに「告発書」を提出した。大学の規則「研究活動に係る不正行為への対応に関する規定第4条」に基づく、公式の内部告発である。内容は、大学執行部を含む医学部の5人の有力教授と准教授、そしてその研究室スタッフの不正行為を暴くものだ。

「発端は、大学院生の博士論文の不正に気づいたことでした。ある教授の研究室で、実際に実験を行なっていないのに、研究論文を提出している院生が数人いた。論文内容を質問しても、ろくに答えられず、あまりに低レベル。おかしいと思い調べると、他人の論文をコピーして繋ぎ合わせただけだった。そして問題は、不正論文の手引きをしたのはその担当教授だったということです。すぐに私たちはその実態を学長に訴えた。

 しかし、学長は、『この件については騒がないでほしい』という。さらには『こんなこと(不正の暴露)をやったら、ウチの大学はたいへんなことになる』とも話しました。そこで、不正が横行する容易ならざる事態に、大学が陥っていることに気づきました」(森山氏)

 森山氏は榎本氏らとともに、岡山大学医学部が発表してきた論文の精査にとりかかった。学生の論文から有名教授の研究発表までその数は200本以上にのぼる。そこで、とんでもない事態になっていることが判明する。榎本氏が続ける。

「この数年の論文を調べただけで、出るわ出るわ……あまりの多さに声を失いました。当たり前のように研究データの改竄が行なわれ、それをもとに論文が作成されていた。学生の論文というレベルではなく、医学部を代表する著名教授の研究室でも、当然のように不正が行なわれていた。不正論文の数は、現在、判明しているものだけで28本にのぼります」
(以上、NEWSポストセブンより引用)

ここは実名が挙げられていて興味深いです。これらの登場人物の行為、私も結構確からしいと感じています。

http://medical-confidential.com/confidential/2013/12/post-637.html

だから私は以前から訴えているのです。「医者は製薬会社とつるんだ商業的な活動を止めるべきだ」と。
それほど効かない薬を高く買わされる。
結局、患者の皆さんのところへ最終的なしわ寄せがいくのです。

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コメントに対する私の反論

2014年02月13日 | 雑感
日本という国は素晴らしい国で、「言論の自由」というのが保証されています。中国ではこうはいきません。

このブログにも貴重なコメントが寄せられています。「言論の自由」です。本来このブログは「誤解や批判を恐れない斜め後ろからみた医療情報」ですから、私は誤解や批判を恐れてはいません。

そこで、今回は最近寄せられたコメントに対する私の反論をまとめてみました。

まずは、「我が家にアクアがやってきた」に対する
「株式会社に関する基本的理解を間違っておいでのようです。
また、社員権という概念を理解なさっておられないようです。
株式会社というシステムは、いかに効率よく利益を追求するか、を目指したものです。
「会社は社員とその家族のもの」という考え方は株式会社にはあてはまりません」

というコメントに対してです。

「会社が社員の家族のもの」であるはずがないというのは誰にでも分かります。ここで書いているのはあくまでも「精神論」のことです。記事全体の要旨をよく把握してみてください。センター試験の現代国語の問題で「本文が言いたい要旨は次のうちどれか?」という問題を解くようにです。「会社は社員とその家族のもの」という言葉は、最近東京都知事選に出馬した田母神氏が以前広島で講演した時に言っていました。この講演は本当に素晴らしいです。もちろん田母神氏も法的に「会社が社員と家族のもの」と思っているわけではありません。田母神氏も間接的にアホリエモンを批判しているのです。あくまでも「精神論」で語っているのです。
↓1分50秒ごろです
【8.6田母神講演会】ヒロシマの平和を疑う!完全版

私は以前、小さな会社は「決算だけ」税理士に頼みなさいという本のレビューをアマゾンで書いていますし、国家試験受験のためのよくわかる会社法 第4版という本も熟読していますから、本当に「会社が従業員の家族のもの」などとは認識していません。あくまでも「精神論」での話です。

そこでふと思うのです。「会社が従業員と家族のもの」と言われて、不都合あるいは不快に思うのは誰なのだということです。通常の従業員なら不快に思うはずもなく、それは「会社は株主のものだ」と精神論から感じている社長か、批判されたアホリエモン本人ではないだろうかと。アホリエモンは出所後、夜な夜なネットをサーフしているそうです。そんなアホリエモン本人のコメントではなかったか、ふとそう思うのです(冗談ですよ。もう「そんなことはない」というコメントはご遠慮下さい)。

さて、次は「自分で胃ガンのリスクが評価できるキット」に対する
「おかしいと思う。CA19-9の陽性尤度比は7前後で、膵癌などの罹患率は10万人あたり20人以下で、このくらいの数値だと確率とオッズ比はほぼ等しいから、陽性的中率は10万人あたり140人程度となる。とても検診目的で使える検査ではないと思われます。」
というコメントに対してです。

このコメンテーターは誤解をしています。「とても検診目的で使える検査ではない」というのはそれが「公費を使い国民全員に対して行われる場合」です。今回は「個人が私費を投じて検査キットを購入」しているのです。陽性尤度比は7前後で十分です。むしろこの検査でひっかかった人が、その精密検査のために健康保険を使えるなら、個人にとって非常に有用です。

次は「武田薬品が日本人に内緒にしていること」に対する
「少し調べれば分かることすらかいてない。無責任」
というコメントに対してです。この記事を不都合あるいは不快に思うのは誰なのか、ということです。そうです、武田薬品の社員にほかなりません。それか薬が売れないと利益が減ると考えている特別な薬剤師です。薬やサプリメントを使用する側からみれば、値段の割に効き目が少ない薬の情報はありがたいはずです。武田薬品の社員の方、よほどこの記事が不都合だったのですね。コメントありがとうございました。

さて、いかがですか。私の反論を読まれた後で、「読者のコメント」と「私の反論」のどちらが確からしかったでしょうか。

私はネットでの討論歴10年以上で、ネットでの匿名性・相手が見えない議論の危うさを何度も経験しています。ネットでの討論は往復1回ぐらいにしておいた方が良さそうですね。

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トレリーフの薬価が高すぎる(パーキンソン病治療薬、大日本住友製薬)

2014年02月06日 | 神経
2009年1月にパーキンソン病治療薬のゾニサミド(商品名:トレリーフ錠25mg)が製造承認を取得しました。パーキンソン病のうち、レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合が適応であり、ゾニサミドを処方する際にはレボドパ含有製剤と併用することが定められています。

ゾニサミド自体は、商品名:エクセグラン錠100mgとして1989年6月からてんかんの治療に使用されていました。このゾニサミドがパーキンソン病治療に応用されるようになったのは、けいれん発作を偶然に起こしたパーキンソン病患者にゾニサミドを投与したところ、けいれんが抑制されるだけでなく、パーキンソン病症状の著明な改善が見られたというエピソードがきっかけになっています。

ただしゾニサミドは、てんかん治療で使用する場合とパーキンソン病治療に使用する場合で、用量が異なります。具体的には、パーキンソン病治療には1日1回25mgで使用するのに対し、てんかん治療では「通常、成人は最初1日100~200mgを1~3回に分割経口投与する。以後1~2週ごとに増量して通常1日量200~400mgまで漸増し、1~3回に分割経口投与する」となっています。

ここまでは何も問題はないのですが、問題はその薬価です。
1989年からてんかんの治療で使用されていたエクセグラン錠は現在100mgで33円。20%の散剤は1g(200mg)で62円です。それに対して、全く同じ成分でも、パーキンソン病の治療に使用するため名前が変わったトレリーフ錠は25mgで1084円です。全く同じ成分なのに、名前を変えるだけでなぜこんなに高い値段で承認されたのでしょうか?

それでは、てんかんの治療エクセグランの散剤を1日0.2g(12円)ぐらいで内服すればいいのではないでしょうか?

先日、以下のような記事がありました。
(以下、日本経済新聞より引用)
政府は薬や医療機器の公的保険への適用を厳しくする新基準を作る方針を固めた。効果に比べ過大な費用がかかるものは適用しない。2016年度をめどに一部で導入する。公的医療費の増加を抑え、制度を支える国民負担を和らげる。適用外となる高額の先進医療は、一部費用を公的保険で補う仕組みを拡充し、希望者は利用できるようにする。厚生労働省が新基準の「費用対効果評価」の設計を始め、年内に対象分野や審査基準をまとめる。来春から製薬企業から関連データを集める。先行導入の候補は高額の抗がん剤や生活習慣病の薬、心臓ペースメーカーなどだ。

将来は全面導入を検討する。新薬は有効性や安全性を確認する薬事承認審査にかかる。現在は承認された薬は、ほぼ全て公的保険が適用されている。全ての薬を誰でも使えるようにするのが皆保険の理念のためだ。結果的に高額なわりに効果が低い薬も大量に公的保険に適用されている。保険適用だと少ない負担で高額の薬を使えるため患者はコスト意識が薄れやすい。

英国では費用に対する延命効果や生活の質の改善などを指標化し、基準を下回れば保険適用を見送っている。抗がん剤の場合、薬代が3万ポンド(約500万円)以内で1年間普通に暮らせなければ保険適用されにくい。日本では保険がきく抗がん剤「アバスチン」などは英国では適用が見送られている。新基準は英国などを参考に設計する。新薬にかかる費用に対し(1)どれぐらい延命効果があるのか(2)既存の薬などと比べて治療効果が高いのか(3)生活の質はどれだけ改善するのか――などだ。政府の専門組織が審査する。

基準に届かなかった新薬は原則、公的保険を適用しない。いったん保険適用した後2~3年後に改めて審査し、見込みを下回れば保険から外す案もある。一方、費用対効果に基づき薬の保険適用を厳しくすると、製薬企業の新薬開発意欲は弱まる恐れもある。創薬意欲をそがないために、保険適用外となった場合でも、先進的な薬や医療機器は費用の一部を公的保険で賄う「混合診療」の拡充で対応することを検討する。現在、混合診療は原則禁止で、公的保険に適用するまでの暫定措置という位置づけで例外的に認められているだけだ。

公的保険から外れた薬の多くは患者が全額負担するしかない。混合診療を拡充し、公的保険を外れた薬を使いたい患者の選択肢を広げる。医療給付費は毎年1兆円のペースで増えている。保険適用を厳しくすると「所得によって医療サービスに格差が生まれる」と反発が出る可能性はある。ただ、現状のままでは、企業や個人が負担する保険料の引き上げや税負担増に拍車がかかる。平等に保険でカバーする医療と、患者が自ら自己負担で選択する医療の最適なバランスを考える必要がある。
(以上、日本経済新聞より引用)

「費用対効果」、私がこのブログで以前から訴えてきた当たり前の事です。むしろ厚生労働省のアクションが遅すぎます。

それなのに、同じ成分で、エクセグラン錠は100mgで33円、トレリーフ錠は25mgで1084円?厚生労働省は国民をバカにして製薬会社の肩を持つのは止めていただきたいものです。それともまた天下りの件ですか?

「現状のままでは、企業や個人が負担する保険料の引き上げや税負担増に拍車がかかる。」
同じ成分に別の効果があるとわかったのだからその値段で売り出せばいいじゃないですか。
これ以上 薬代を上げないで下さい。


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自分で胃ガンのリスクが評価できるキット

2014年02月03日 | 消化器
前回、自分の胃ガンのリスクが、ピロリ菌感染の有無と、ペプシノーゲンⅠとペプシノーゲンIIの値で評価できることをお伝えしました。

ところが、ピロリ菌感染の有無は胃カメラをして胃潰瘍か十二指腸潰瘍か慢性胃炎と診断されなければ検査することができませんし、ペプシノーゲンⅠとペプシノーゲンIIも保険適応ではありません。症状がなければ、病院に行って自費で検査することになります。

最近、画期的な商品が発売されました。値段は8,300円で、病院で自費で検査する場合と同じぐらいの値段で、アマゾンなどで手に入れることができます。病院に行かなくても検査ができるのですから素晴らしいです。

DEMECAL(デメカル)胃がんリスクチェックABC分類

まず、レビュアーとして私が試してみました。Amazonに同様のレビューも提出しておきました。

糖尿病の患者が自宅で血糖を検査する時に使用する、パシッと一瞬だけ針が1mmほど皮膚に刺さる採血方法と同様の採血方法で、小豆大ほどの血液を採取します。小豆大ほどの血液が必要ですので、それより少なければ指を先端側に絞るようにして血液を出します。この段階ではほとんど痛みはないです。

絞り出した血液を先端にスポンジのようなものが付いた専用の器具で吸い取ります。血液がスポンジ一杯にならなければもう一度指を絞り血液を集めます。

それを、おそらく血清分離薬(血液の赤い成分と透明な成分を分け、透明な成分ごと血液が固まることがないようにします。血中フィブリノゲンを吸着除去して脱フィブリノゲン血漿(血清)になるのだと思います)が入った容器に接続し、ボタンを押します。そうすると血液を含んだスポンジが容器の中に入ります。容器を50~60回細かく振って血清分離液をなじませます。

この容器に最終的なフタをして、専用のケースに入れ、検査会社に郵送するのです。結果はメールと郵送で知らされます。私の場合、郵送して72時間で結果のメールが届きました。素晴らしいキットです。自宅で採血し検査が可能なだけの血液量を凝固させることなく郵送させる技術は、もちろん特許申請してあるそうです。無断で中国がマネをしそうですので、会社の皆さん、気をつけてください。

検体を郵送するのですから、原則として屋外のポストではなく郵便局のポストに投函するように注意書きがあります。病院では採取した血液は冷蔵庫で保存しますから、真夏の30度以上の気温では郵送は難しいと思われますので、今の季節がチャンスです。私は、この前の夏に腫瘍マーカーキットを使用しましたが、郵便局のポストに投函したのですが、「測定不能でした」と、もう一度同じキットが送られてきました。やはり、真夏は検体の輸送には厳しい季節だと思います。

結果は、というと、
ペプシノーゲンⅠ 57.8 ng/ml
ペプシノーゲンII 7.6 ng/ml
I/II比 7.6
ピロリ菌 0.0 U/ml(陰性)
でした。
前々回お伝えした胃ガンのリスク評価の論文では、グループAで16年間のリスクは1%以下です。

私の妻も検査しました。結果は
ペプシノーゲンⅠ 126.2 ng/ml
ペプシノーゲンII 32.3 ng/ml
I/II比 3.9
ピロリ菌 105.1 U/ml(陽性)
でした。
前々回お伝えした胃ガンのリスク評価の論文では、グループBで16年間のリスクは3%です。
グループBですから、細分化したリスク評価ができます。
前回お伝えしたように、ペプシノーゲンI/II比が3.0より多く、ペプシノーゲンIが70ng/dlより多いベータβ群です。
ペプシノーゲンIIが30ng/dl以上で、良くないII-30群です。
ピロリの抗体は500未満のlow-titer群です。
リスクは上からそれぞれ、16年間で0.8%、2.3%、1.5%です。総合すると、このままで行けば16年間の胃ガンのリスクは0.8%~3.0%というところです。

妻は早速、病院でピロリ菌除菌用の内服薬を購入してきました。健康保険がききましたが(この辺はビミョーなので、あまりつっこまないようにします)、それは、胃カメラをしたのかしていないのか、本人の「自白」に頼るわけにもいかず、この段階の医療機関や公的機関では知るすべがないからだと推測されます。

内訳は
初診料 2,700円
処方箋料 680円
病床数200床未満の医療機関が月に2回加算できる 180円
薬局で
調剤技術料 1,040円
薬剤管理料  410円
薬代(ランサップ) 6,020円
医療機関と薬局の合計 11,030円 の3割 3,310円です。

私はこの会社の回し者ではないですが、この商品、かなりのお勧め商品だと思います。腫瘍マーカーセットや、生活習慣病セットなど他にもいろいろあります。採血に慣れてしまうとやみつきになってしまうぐらいです。

≪デメカル血液検査キット≫「男性用ガン総合」セルフチェック
女性用がん総合検査リスクチェック
血液検査キット「DEMECAL」 生活習慣病・糖尿病セルフチェック

腫瘍マーカーセットは男性用が大腸ガンなどのCEA、肝ガンなどのAFP、前立腺ガンのPSAです。肝ガンのリスクは特定の状況の人だけが負いますので、それほど必要ないかなぁ~と感じますし、前立腺ガンは私の年齢にはまだ早いです。ただし、腫瘍マーカーは正常でも完全にガンを否定できませんので、日頃の健康診断は欠かさない方がいいです。

女性用は大腸ガンなどのCEA、卵巣ガンなどのCA125,膵ガンなどのCA19-9です。ちなみにわたしの妻はCA19-9がひっかかって病院で精密検査をしましたが、大丈夫でした。こういう場合の精密検査は健康保険でできます。本来は無症状で精密検査に健康保険を適応できないのが、健康保険で精密検査をしてもらえるようになるのです。何か別の異常も見つけてもらえる可能性もあります。私はひっかかりませんでしたが、やはり男性用にもAFPの代わりにCA19-9を入れてもらいたいところです。

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