医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心臓の血管内の血圧が測れる(FFR)ワイヤーは有用でなかった研究

2017年05月08日 | 循環器
昨年の米国の学会で発表された結果ですが、研究者たちの名前で検索してもその論文が出てこないので、ここでお伝えします。

Functional Testing Underlying Revascularization: The FUTURE trial
Rioufol G, Mewton N, Rabilloud M, et al.


上の図の左のように、最近心臓の血管に入れてその中の圧力を測定することができるワイヤーが開発されました。日常の診療でも使用できるようになりましたが、値段は13万円以上と高いです。

心臓の血管に狭いところがあるとその部分より先の方の圧力は下がります。当然のことながら狭い程度(狭窄度といいます)がきついほどその先の圧力は低下します。このワイヤーを使用した場合のその狭窄部位を治療した方がよい目安は奥の圧力が手前の圧力の80%以下であった場合とされています。

その評価方法で本当に患者の将来的な予後が評価できるか、を検証しようとした臨床研究です。

左冠動脈前下行枝の狭さが半分以上で多枝病変の安定狭心症で、1,728人の患者が研究の対象となる予定でした。1つの群はこのワイヤー(functional flow reserve ワイヤー:FFRワイヤー)を使用して、狭い所の奥の圧力が手前の圧力の80%以下であった場合ステンと治療や風船治療を行う群です。

もう1つの群では、狭さが半分以上で(通常は4分の1以下まで細くなると狭心症などの心臓の筋肉の血液不足の症状が出るとされています)「人間の目」でみて判断してステンと治療や風船治療が行われました。心筋シンチグラムなどの非侵襲的な検査はこの群には可能とされました。

結果ですが、真ん中の図のように、FFRワイヤーを使用して判断した群の方が、全ての死因による死亡が増えてしまったので、936人が研究に参加している時点で倫理委員会からこの研究への新たな患者の参加を中止するように勧告を受けました。

そして最後まで(1年後まで)経過を追われたのが797人でした。その結果上の図の右にあるように、「死亡、脳卒中、心筋梗塞、治療の再試行」は両群で同じでした。

結果が同じなら、このワイヤーを高いお金を出して使用しなくても、心筋シンチグラムや「人間の目」でみて判断して治療方針を決めれば良いということです。


このワイヤーは業者が儲かるため、数社の業者が参入して、「科学的理由」ではなく「商業的理由」で学会などで取り上げられることも多くなってきて、医者もそれらの業者の広告塔として巻き込まれています。

この研究結果を踏まえて、もう一度、考え直した方が良いと思います。

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コメント (1)
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