医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

リーマンショックで思う、そしてSave the children

2009年12月31日 | 雑感
Save the children

昨年たいへん好評であったことや、私自身の希望もあって、もう一度昨年の記事をお伝えします。

(昨年の記事より)
先日、一人の外来患者が紹介されてきた。日本の医学研究の分野でもトップクラスの医学部附属病院からだった。1年ほど前に心筋梗塞を発症し、心臓の血管3本ともに薬剤溶出性ステントを入れたので、正月休みの帰省期間に急変があってはいけないと、これまでの経過が詳細に記されていた。

その患者は言った。「最初の入院で500万円かかった。その3割である150万円を当分の間立て替えることにも苦労した」と、

「ご、五百万円ですか!」思わず私は声をあげた。

経過を見ると手術の選択の方が賢明のように思えた。治療効果のみならず、手術を選択していたなら再閉塞の可能性に帰省期間もおびえる必要などなかっただろう。日本の医学界を担っていける優秀な主治医も、不本意だったに違いない。

しかし現在のシステムでは、ステントを使う治療は内科の売り上げになり、手術の費用は外科の売り上げになる。以前、国立大学附属病院は独立行政法人になり国からの補助も削減された。そのため医学部附属病院は病院経営という競争にさらされることになった。

国立大学附属病院の独立行政法人化により、日本でトップクラスの医学部附属病院でさえも前述したような患者が増え、日本の優秀な医学研究者は経営という課題のなかで、研究のレベルを落とさざるを得なくなっている。それは世界における日本の研究のレベルの低下を意味する。最先端の治療も医学研究も、採算を度外視しなければ成り立たないものであり、それは先日ノーベル賞を受賞された4人の日本人科学者を見ていても明らかなことである。


そもそも、資本主義における利益追求とはいかなるものなのか?

先日、ワールドビジネスサテライトでキャスターが、アメリカで発生したリーマンショックを回避できたであろう方法について延々と語っていたが、それは間違っていると私は思った。現行の金融システムでは、今年の金融破綻は避けられなかった。生産性の全世界の総計は常に一定かあるいは一定の割合でしか変化しないからだ。

ここで一つの寓話で考えたい。

ある所に自給自足で物々交換して暮らしている100人の村人がいた。そこにどこからともなく一人の男が現れて(これがアメリカ式金融システム:銀行である)「物々交換では不便だろう、私がお金というものを貸してあげるので、試してみなさい」と言って、一人に10万円を貸した。

村人たちは、お金のおかげで生活が便利になりお金を手放せなくなった。そこに前回の男が現れ、「どうですか、便利になったでしょう。でも今回からはただでお金を貸すわけにはいきません。私は皆さんを信用していますから1年間10万円を貸しましょう。でも1年後には11万円返して下さい」と言って去っていった。

村人たちは1万円の利益が必要になったため、商売に工夫をするようになるが、結局、前述したように村全体の生産性は変わらないので、誰かが10万円を12万円にできれば、誰かが10万円を8万円にしてしまうシステムに他ならない。この村全体に流通しているお金は10万円X100人分だけであり、1年後に1,100万円を返却するのは理論的に不可能である。男は最初から無理なことを知っているのだ。

そこに例の男が現れた。「どうも商売が下手な人がいるようですね。もう一年待ってあげるけれど、今度はリスクが高いので12万円返してもらいます。そのかわり12万円返してもらえなければ店の権利をいただきます」と言い去っていった。

こうして村人たちの仕事の目的は、これまでのように人々が必要とする物を提供することから、お金を稼ぐことに変わっていった。

このような目的の変化は、手術を選択しないでステントを使う治療に500万円を費やしてしまった主治医の行為に似てはいないだろうか?

この話には続きがある。利益を追求することを迫られた村人は、ワインに目をつける。「このワインは今は1万円だけれど、1年間ねかせると芳醇度が増し2万円になる。私はワインの専門家だから信用してほしい」とワインを売った。そのワインを買った客は「さらにねかせると4万円で売れる」と言い、他の客に2万円で売り1万円の利益を得た。

しかし、お分かりのように芳醇度が増すというのは村人の期待だけで形成された幻にすぎない。誰かがいつかその事に気がつき、16万円にまで値上がりしたワインは2万円でも売れなくなる。

この話の中で誰が諸悪の根源か?そう、銀行である。村人は利用されているだけである。「あなたを信用するからお金を貸す」、「ワインの値段が上がるのを信用してくれ」といった信用創造は銀行の詐欺行為であることがわかる。現実では紙幣を印刷して増やすという行為があるのでこれほど単純ではないが、この「村」で起こったことを「全世界」に例えてみるとわかりやすい。

現実問題として、全世界という視野からみれば銀行の行っていることは同様の行為である。この瞬間にも世界のどこかで、ある銀行家が「気がつくのが遅いよ」と全世界の人々のことをあざ笑っているかもしれないのである。

皆さんは今、銀行の奴隷となって働いていないでしょうか?

誰かが得をしたから誰かが損をした。しかし全世界からみれば日本はまだましなのかもしれない。

そんなわけで(どんなわけかよくわからないが)、私はこの1年間を深く反省し、おせち料理の購入に充てていた1万円をSave the childrenに寄付をして、私の子どもたちにも1,000円ずつ寄付をさせた。3,000円で40人の子どもの食事がまかなえるそうだ。
(昨年の記事より)


今年は、この写真の子の眼差しに涙し、おせち料理の購入を完全に止め、3万円をSave the childrenに寄付しました。私の愛する子供たちへのお守りにもなると思って・・・
そして、子どもたちも千円ずつ寄付をしました。
(このブログの意図に反して、完全に不合理な考え方ですね。申し訳ありません)。

それでは皆様、よいお年を!
Save the children

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うさぎはカメに追いつけない?サーモグラフィーの効果

2009年12月21日 | インフルエンザ
                横軸は時間の経過、縦軸は罹患者数、縦の点線はワクチンが導入された時期、実線はサーモグラフィーなし、点線はサーモグラフィーあり


最近、新型インフルエンザワクチンを接種したけれど、新型インフルエンザに罹患してしまう医療従事者(30歳代)が相次いでいます。ワクチンを接種したから症状が軽いかというと、そうでもなさそうなのです。多くの医療従事者の感触では、新型インフルエンザワクチンの有効率は50%です。大規模な調査の結果が待たれます。

以前、サーモグラフィーの効果が疑問だという記事をご紹介しました。これまで、サーモグラフィーの効果の試算がないようなので、自分で試算してみました。
こういうコンピューターシミュレーションはLab Viewを使うとコンピューター・プログラミングの専門家でなくても可能となります。


その前に各種のパラメーターを仮定します。
まず、平成21年5月8日に日本人で初めての患者が報告され、5月下旬には神戸を中心に約100名の患者が報告されました。厚生労働省の報告によると12月18日までの患者の累計は1,546万人です。患者数の算出は週単位で行われますから、28週間で100→1,546万という初期値と結果を現実と同じになるようパラメーターを設定することを前提とします。

厚生労働省 新型インフルエンザに関する報道発表資料


飛行機や船舶による入国者を1週間で14万人と仮定します。その中の新型インフルエンザ患者数は、海外での罹患割合を14万人に乗じることとします。

ここで、新型インフルエンザは以前お伝えしたように、3分の2が20歳以下ですから、学校もあるのに平日に飛行機や船舶により入国する者にはその割合は非常に低いのではないかという事に気がつきます。

サーモグラフィーというのは発熱や発熱に伴う症状がありながら、それを認識せず入国する人、及び認識して入国する人をスクリーニングするシステムです。インフルエンザに罹患した患者が他人に感染を広げる経過を、潜伏期間の3日間を含め8日間として、発熱期は3日間とします。

ここでもわかる事は、発熱している者や発熱後解熱した者は自分が罹患していることを知っているわけですから、自ら他人との接触を避けるでしょうし、他人もその人との接触を避けるということです。感染拡大防止に重要なことは、潜伏期の人がそうとは知らずに他人と濃厚接触することを減らすことであり、発熱している者を見つけ出すことではないということです。その点、学級閉鎖などの措置は、感染拡大防止に非常に有効であると、このシミュレーションをしていて実感しました。極端な話、国民全員を外出禁止にすると、このパラメーターの数値はゼロになり、これで感染拡大は収束します。

さて、潜伏期の人がそうとは知らずに濃厚接触してしまう人の数を1週間で10名として、その中で発症する人をその半分とします。インフルエンザの全経過8日と1週間7日はほぼ同じと考え、その補正は行わないこととします。

インフルエンザに罹患してしまうと、インフルエンザの患者に接触してももう罹患しませんから、インフルエンザに罹患した数を前週の罹患者数として、罹患者数+(ワクチン接種者xワクチンの有効率(70%と仮定します))/日本の人口を、罹患者が接触した10名の半分に乗します。ワクチン接種者数は12月18日までに1,020万人と報告されていますが、10月下旬から12月下旬までの2か月にリニアに増えたと仮定します。

このようにして求めた、罹患者数を図に示しました。Lab Viewではループ機能が簡単に設定できますから、同じ演算を繰り返し行わせることが可能です。

シミュレーションの過程で気がつくことは、サーモグラフィーが発熱患者をスクリーニングする数を変化させても、罹患者数はほとんど変化せず、罹患者数の変化は、各種のパラメーターの中でも、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数に大きく依存しているということです。

さて、皆さんはうさぎとカメの話をダシにして「うさぎがカメを追いかけるとき、うさぎが今カメのいる場所まで走ったら、その間にカメも少し進む。そして、さらにカメのいる場所までうさぎが走っても、またその間にカメはちょっとだけ進んでいるはず。以降これの繰り返しだから、いつまでたってもうさぎはカメには追いつけない」という話を聞いたことがあると思います。

実際は、うさぎはカメに追いつけるのですが、追いつけないように感じさせているのは、距離を無限に区切ることによって、時間が進む考え方を妨げていることが要因です。追いつくぎりぎりまでの時間までで関数を収束させているので、これではいつまでたってもうさぎはカメに追いつけないのは当然です。

サーモグラフィーの効果への期待も同様です。サーモグラフィーを使えば、使わない場合よりも罹患者数は少ないはずと考えがちなのですが、それはごく限られた時間のみに有効なのであり、他のパラメーターの方が大きなウエイトを占めていることを考慮しないで考えているのです。

感染拡大に関連のある重要なパラメーターは
(1)、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数
(2)、ワクチン接種者数
(3)、既に感染した人の数
でした。

最近新規感染者が減りつつあるのは、すでに感染した人の数が増えてきたことも要因であることは、非常に皮肉なことですね。私はコンピューター言語の専門家ではないので、このシミュレーションは不備だらけだと思いますが、コンピューター言語の専門でもなくても2週間講習に参加すればLab Viewを扱えるようになりますから、私でもシミュレーションのまねごとができたのです。労力を惜しまずにちゃんとやって下さいね、厚労省の皆さん!

そして、やはりサーモグラフィー代4億5千万円の税金を国民に返して下さいね。

厚労省と新型インフルエンザ (講談社現代新書)



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水でのうがいは風邪を予防する、イソジンでは効果なし

2009年12月13日 | 感染症
今週末にかけて寒くなるようです。うがいの季節になってきました。以前の記事に加筆してもう一度ご紹介します。

Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial.
Am J Prev Med 2005;29:302.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)


研究の対象は18歳から65歳の387人で、2002年から2003年にかけての冬に行われました。

うがいをしない群、1日3回以上水でうがいする群、1日3回以上イソジンでうがいする群にランダムに分けられ2ヶ月の風邪の罹患について調査されました。

1ヶ月間の風邪の罹患率は、上の図にあるように(図では2か月間追跡しています)、うがいをしない群では26%、水でうがいする群では17%、イソジンでうがいする群では24%で、水でうがいする群では風邪の罹患率は減少しましたが、イソジンでうがいする群では減少しませんでした。

多変量解析を用いて年齢などで補正した結果、水でうがいすることは風邪の罹患率を40%減少させることが明らかになりましたが、イソジンでうがいしても風邪の罹患率を減少させることはできませんでした。

また、男性と女性で風邪の罹患率に違いは認められませんでしたが、労働者の風邪の罹患率は19%で、非労働者の28%に比べて低値でした。

著者らは、イソジンでのうがいが風邪の罹患率を低下させない理由の1つに、イソジンの殺菌作用が正常な(白血球などの)叢(そうflora)にダメージを与えることを挙げています。

1日3回うがいをするのに使用する水の値段は1円にもならないと思われますが、水でうがいするだけで、医療費の節約になるのは素晴らしいことです。

Am J Prev Medのインパクトファクターって3もあるんですね。素晴らしい研究でした。

そういえば、こういう結果の影響もあってか、明治製菓のこの製品、最近はテレビコマーシャルも見られなくなりましたね。
ここにある「インフルエンザとうがい」という「おすすめムービー」って、前半までは正しいけれど、後半ではイソジンでのうがいを勧めています。これは誤りです。

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謎のサーモグラフィー

2009年12月06日 | インフルエンザ
                               プラハはむちゃくちゃ寒い~~

ところで最近、新型インフルエンザに罹患した子供の親から、いつまで学校を休まなければいけないか尋ねられることが多くなってきました。

「通常は解熱した後の2日間も他人に感染させる可能性があるので、学校は休まなければいけません。発熱がなくても他人に感染する時期があるのです」

このように説明していると、ふと思い出すことがあります。

それは以前、新型インフルエンザが流行の兆しをみせていた頃に、厚生労働省が一台300万円もするサーモグラフィーを150台(合計4億5千万円!)も新規購入して、各空港で使用していたことです。

発熱がなくても他人に感染する時期があるのだから、サーモグラフィーなんてなんの意味もありません。

厚生労働省の官僚は本当にアホです。これは断言できます。アホ官僚さん、4億5千万円の税金を国民に返して下さい。お願いします。

私は当時、成田空港の検疫を通ることがあり、健康状態を調査するアンケート用紙に、「こんな馬鹿げたことはやめて下さい」と書き、係官に渡すときにも、上司に必ず伝えて下さいと念を押しておきました。その係官は、「わかってはいるのですけど・・・お伝えしておきます」と言っていました。現場の係官の方がよほど頭がいいです。

こんな官僚どもに日本国民の健康が任せられるのか、本当に心配です。
このブログ、財務省の方にはよくご覧いただいているようですが(ありがとうございます)、厚労省の官僚の皆さんにもご覧いただきたいものです


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