医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

自分の、胃ガンのリスクがわかる(その2)

2014年01月29日 | 消化器
前回、自分の胃ガンのリスクを評価するのに、グループBとグループCはさらに細かくリスクが示されているとお伝えしました。今回はその詳細です。

Cancer development based on chronic active gastritis and resulting gastric atrophy as assessed by serum levels of pepsinogen and Helicobacter pylori antibody titer.
Yoshida T, Kato J, Inoue I, et al.
Int J Cancer. 2014 Mar 15;134(6):1445-57
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

ペプシノーゲンⅠが70ng/dl以下かつペプシノーゲンI/II比が3.0以下がペプシノーゲン陽性ですから、ピロリ陽性、かつ、ペプシノーゲンが70ng/dlより多い、かつペプシノーゲンI/II比が3.0より多いのがグループBでした。

ここで感覚的に整理してみましょう。
ペプシノーゲンⅠは多い方がいいのです。
逆にペプシノーゲンIIは少ない方がいいのです。
そうすると、ペプシノーゲンI/II比は多い方がいいのです。


そのグループBは、
ペプシノーゲンI/II比が3.0より多いけれど、ペプシノーゲンⅠが70ng/dl以下しかないアルファα群、ペプシノーゲンI/II比が3.0より多く、ペプシノーゲンが70ng/dlより多いベータβ群、ペプシノーゲンIが70ng/dlより多いけれど、ペプシノーゲンI/II比が3.0以下しかないガンマγ群に分けられました。

その結果が上の図のaです。ガンマγ群が一番胃ガンの発症率が高いです。16年間で約2.6%です。

グループBは、ペプシノーゲンII(高いとダメ)が30以上か(II-30)、30未満か(II-0)で分けられました。図bを見るとII-30群が胃ガンの発症率が高いです。

グループBは、ピロリの抗体の値でも分けられました。500より高いhigh-titer群と500未満のlow-titer群です。図cを見るとhigh-titer群が胃ガンの発症率が高いです。

グループCは、ピロリ陽性、かつ、ペプシノーゲンⅠが70ng/dl以下かつペプシノーゲンI/II比が3.0以下ですが、ペプシノーゲンIが70~50がCI-50群、50~30がCI-30群、30~0がCI-0群に分けられました。図dを見るとCI-0群が胃ガンの発症率が高いです。

しかしながら、自分がピロリ陽性なのか、ペプシノーゲンⅠの値やペプシノーゲンIIの値はどれだけなのかがわからないと、こんな記事は意味がないと思われている方が大勢いると思います。

それを測定する方法は、次回1週間後にお伝えします。

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自分の、胃ガンのリスクがわかる

2014年01月27日 | 消化器
前回、ピロリ菌に感染していると、将来的な胃ガンのリスクが上昇することをお伝えしました。それを前回お伝えしたのは、今回お伝えすることと関連があるからです。

今年のある医学雑誌の3月号(まだ3月ではないですが)に、そのリスクを細分化して知ることができる素晴らしい疫学研究の結果が日本から報告されましたのでお伝えしたいと思います。

Cancer development based on chronic active gastritis and resulting gastric atrophy as assessed by serum levels of pepsinogen and Helicobacter pylori antibody titer.
Yoshida T, Kato J, Inoue I, et al.
Int J Cancer. 2014 Mar 15;134(6):1445-57
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)

和歌山県において、1994年から1995年の間に、症状のない健康な男性4,655人(50±5歳)、論文内ではこんな表現です「Participants were essentially asymptomatic and could be considered representative of healthy middle-aged men in the general population.(male employees of a certain workplace)」のピロリ感染の有無と血液中のペプシノーゲンを調べて、その後16年間(平均11年間)に渡って胃ガンの発症率が調査されました。一定の会社に勤めていればその後の検診が容易だから脱落例が少なくなり研究の信頼性が高まるため、調査対象者をそういう「男性」に絞ったのだと推測できます。

以前に報告されている定義を利用して、ペプシノーゲンⅠが70ng/dl以下かつペプシノーゲンI/II比が3.0以下がペプシノーゲン陽性とされ、対象者はつぎの4群に分けられました。

Group A:ピロリ陰性、かつ、ペプシノーゲン陰性
Group B:ピロリ陽性、かつ、ペプシノーゲン陰性
Group C:ピロリ陽性、かつ、ペプシノーゲン陽性
Group D:ピロリ陰性、かつ、ペプシノーゲン陽性

上から段々と悪くなっています。一見、グループCとグループDが逆のように感じますが、グループDはペプシノーゲン陽性状態が悪すぎてピロリさえ生息できないという意味らしいです。

ペプシノーゲンは胃粘膜から分泌される物質のことで、血液中に含まれています。胃のどの辺りで分泌されるかにより、ペプシノーゲンⅠとⅡに分類されます。血液中のペプシノーゲンのⅡに対するⅠの割合を調べると、胃粘膜の萎縮の広がりとその程度、胃液の分泌機能、胃粘膜の炎症の有無が分かるほか、胃がんのスクリーニング検査として有用であることが明らかとなっています。

結果は、上の右の図に示されているように、
グループAで16年間で1%以下、
グループBで約3%、
グループCで約5%
グループDで約16%でした。

これらの結果を見ると、ピロリ陽性の人は、除菌した方がいいですし、胃カメラをしていなくてもピロリ菌の検査が健康保険でできるようにするのが正しい理論だということがおわかりいただけたと思います。このブログは厚生労働省の方にもご覧いただいていると思います。厚生労働省の皆さん、胃カメラをしていなくてもピロリ菌の検査が健康保険でできるようにして下さい。それにペプシノーゲン検査も保健適応にすることが必要です。

自分の胃ガンのリスクを評価できるようになった、素晴らしい研究でした。

グループBとグループCはさらに細かくリスクが求められているのですが、その結果については次回お伝えします。

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ヘリコバクター・ピロリ菌感染による胃ガンのリスク

2014年01月22日 | 消化器
8年ほど前に、ヘリコバクター・ピロリ菌の保菌と胃ガンの発症率についてお伝えしました。

この研究では、約8年間追跡してヘリコバクター・ピロリ保菌者は2.9%が胃ガンを発症しましたが、非保菌者からは胃ガンは発症しませんでした。

私もガン年齢になっていますので、自分は保菌者かどうか調べてみることにしました。

奇妙なことに、ピロリ菌を保菌しているかどうかの検査は胃カメラをして胃潰瘍か十二指腸潰瘍か慢性胃炎と診断されていなければ健康保険が効きません。

検査法は
(1) 血液検査
(2) 便検査
(3) 呼気検査
(4) 胃カメラ時の組織検査
です。

血液検査の場合は自費では800円です。


保菌者と判明した場合も、胃カメラをして胃潰瘍か十二指腸潰瘍か慢性胃炎と診断されていなければ、除菌のための薬に対しても健康保険が効きません。ランサップという薬代6,011円は自費で支払わなければなりません。

私はここであることに気がつきました。

私が「奇妙」と表現したわけは、

NNT(Number Needed to Treat)とは
でお伝えしたように、一人の心筋梗塞や脳梗塞を予防するのに悪玉コレステロール低下薬には3,000万円をかけても健康保険が効く、あるいは「メタボリック症候群撲滅だ!」と盛んにコレステロール値や糖尿病の指標が測定されているのに、保有している人がしていない人と比較して約3%も胃ガンの発症率が上昇するピロリ菌の検査は、胃潰瘍か十二指腸潰瘍か慢性胃炎と診断されていなければ健康保険では補てんしてもらえないことです。

百歩譲って、保菌者の胃ガンの発症率を調査した研究は、症状がある患者を対象としたものであるからという理由は理解できます。しかし、それほど大きな金額ではないのです。

最近、日本人を対象とした以下のような研究が報告されています。
The effect of eradicating helicobacter pylori on the development of gastric cancer in patients with peptic ulcer disease.
Am J Gastroenterol. 2005;100:1037.
この研究では5年間の調査で、ピロリ菌保菌者の胃ガン発症率は3.8%、除菌に成功した者の発症率は1.2%と報告されています。

Helicobacter pylori eradication reduced the incidence of gastric cancer, especially of the intestinal type.
Aliment Pharmacol Ther. 2007;25:805.
この研究では3年間の調査で、ピロリ菌保菌者の胃ガン発症率は1.7%、除菌に成功した者の発症率は0.4%と報告されています。

The effect of Helicobacter pylori eradication on reducing the incidence of gastric cancer.
J Clin Gastroenterol. 2008;42:279.
この研究では3.2年間の調査で、ピロリ菌保菌者の胃ガン発症率は4.3%、除菌に成功した者の発症率は1.5%と報告されています。

つまり、ピロリ菌保菌者は除菌すると胃ガンの発症率が3~5年で約2%ほど低下するのです。2%の改善ということは、50人に一人が有効ということですから、ランサップという薬代6,011円に50を乗して約30万円で1人の胃ガンの発症が予防できることになります。

厚生労働省は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らす薬は1人の予防に3,000万円を費やしてでも健康保険の対象とする一方、胃ガンのリスクを減らす薬は1人の予防に30万円で済むのに、胃カメラを行わなければ健康保険の対象としていません。約8年間追跡してヘリコバクター・ピロリ保菌者は2.9%が胃ガンを発症したけれど、非保菌者からは胃ガンは発症しなかった報告があるのだから、「ヘリコバクター・ピロリ保菌者」はもはや完全に「患者」でしょう。

これは明らかに製薬会社の厚生労働省に対するロビー活動の差と考えられます。ピロリ菌を除菌する薬は相対的に薬価が安く、もうけにならないのです。逆に言えば、悪玉コレステロール低下薬の会社は、このように芸能人を次々に投入して国民をあざむいて儲けようと必死です。「物を売りたかったら、まず不安感を煽れ」と言われます(このままで老後の生活費は大丈夫ですか?あなたの抜け毛大丈夫ですか?目尻のしわが気になりませんか?などこの手の商法は巷にあふれています)。、このサイトって凄く不安感を煽っているでしょう。

このブログは厚生労働省の方にもご覧いただいていると思います。そんなロビー活動に騙されないで、内視鏡検査なしでもピロリ菌検査、ピロリ菌除菌にも健康保険が効くようにして下さい。健康保険は予防には適応されないという考え方は理解できますが、それなら悪玉コレステロールが高いのは「疾患」で(心筋梗塞を発症するのはその中のごく一部です)、ピロリ菌の保菌は「疾患」でない理由が説明がつきません。

まとめ
一般の「悪玉コレステロールが高い人」→心筋梗塞の発症率は6年間で2.7%→「悪玉コレステロールが高い人」は疾患と見なされる→1人の発症予防に3,000万円必要→悪玉コレステロールを改善させるのに健康保険が効く

一般の「ピロリ保菌者」→胃ガンの発症率は5~8年間で平均3%→「ピロリ保菌者」は疾患とみなされない→1人の発症予防に30万円でよい→しかし胃潰瘍か十二指腸潰瘍か慢性胃炎でないと保菌を改善させるのに健康保険が効かない


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自分の、胃ガンのリスクがわかる
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アリセプトの効果 アルツハイマー病の臨床研究問題

2014年01月11日 | 神経
アルツハイマー病の臨床研究に問題があることが明るみになりました。ご存じのように最近ノバルティスファーマ社が行った臨床研究がインチキであったことが明らかになった直後なので、昔ならこのまま内緒にしていたのかもしれませんが、筑波大学の教授が問題を指摘して、東京大学の主任責任者が「条件に合わないという患者については代表としての責任で例外として承認したはずで大きな問題ではないと考えている」とコメントしました。せっかく自分の名声が上がると思っていたのに、最悪の場合、自分がクビになってしまうと思い、公表したのでしょう。また東京大学ですか、トホホですね。

そもそも、認知症の薬って本当に効くのでしょうか?そこで認知症治療薬の1つであるアリセプトの効果を調べた臨床研究の論文をご紹介いたします。

Vitamin E and Donepezil for the Treatment of Mild Cognitive Impairment
N Engl J Med 2005;352:2379
↑(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)
↑医学の分野で最も信頼性が高い医学雑誌に掲載されている研究成果です。

この調査では、軽度のアルツハイマー型認知症の患者が偽薬投与群259名と アリセプト10mg/日投与群253名に割り付けられ、3年間の認知症の程度が評価されました。

結果は、左図のように、偽薬群、アリセプト投与群でアルツハイマー型認知症の進行は3年後で差はありませんでした。

アリセプトの副作用は、承認時、及び市販後調査では発現頻度1%以上のものは、悪心(2.66%)、食欲不振(1.94%)、嘔吐(1.42%)、下痢(1.31%)と報告されていますが、この調査では下痢16.7%、嘔気8.4%、悪夢6.8%、嘔吐6.0%、関節痛5.2%と頻度が高くなりました。

つまり、アリセプトは軽度のアルツハイマー型認知症にはほとんど効果がなく、副作用はかなりの頻度で出現するということです。

既にお気づきかと思いますが、悪玉コレステロール低下薬、禁煙補助薬、認知症治療薬など、ファイザー社はほんの一部の患者にしか効果がない薬を、ほとんどの人に効果があるように見せかけて販売するのが、常套手段のようです。

アリセプトの10 mgは1錠636円、1か月約1万9千円かかります。藁にもすがりたい患者たちを獲物にして、またしてもここで製薬会社はボロもうけですね。

一方、動脈硬化が原因の認知症に対する効果は、次の論文で報告されています。
Efficacy and Tolerability of Donepezil in Vascular Dementia
Positive Results of a 24-Week, Multicenter, International, Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial
Stroke. 2003;34:2323-2332
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

この調査では、動脈硬化が原因の認知症の患者が偽薬投与群199名と アリセプト5mg/日投与群197名、アリセプト10mg/日投与群206名に割り付けられ、2年間の認知症の程度が評価されました。

結果は、右図のように、偽薬群、アリセプト投与群を比較すると、動脈硬化が原因の認知症の2年後の進行は投与群で進行が抑えられていました。

認知症は長谷川式スケールで評価できます。

軽度の痴呆症を鑑別する場合は、かなひろいテストが有用です。

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