医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

最初からの冠動脈CT血管造影は、待ってからの心臓カテーテル検査と効果・費用は同じ

2013年07月02日 | 循環器
横軸は退院までの時間、縦軸は退院率、青線は冠動脈CTを施行した群で、赤線は心臓カテーテル検査を施行した群です。


以前、冠動脈CTの試行は逆に医療費を増やしてしまったことをお伝えしました。CTでは比較的簡易に検査ができるので、急性心筋梗塞を疑う患者の費用も減らすことができるのではないかということで、両方を比較する臨床研究が行われました。

Coronary CT Angiography versus Standard Evaluation in Acute Chest Pain
N Engl J Med 2012; 367:299
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

米国の多施設で2010年から2012年の間に、胸痛があって救急部を受診したけれど、その場の心電図と血液検査に異常を認めない1000人が前向き調査の対象となりました。最初に冠動脈CTを施行して異常があれば心臓カテーテル検査を施行する群と心電図や血液検査に異常が出てくる時間を待って、異常が出てくれば心臓カテーテル検査を施行する通常治療群にランダムに分けた結果、最初に冠動脈CTを行った群は501人、通常治療群は499人、でした。

これらの患者で、その後の入院時間、費用が調べられました。もちろん、本当に急性心筋梗塞であった場合は、治療の費用も含められました。

結果は、冠動脈CTを施行した群の方が、平均入院時間は7.6時間短く、救急部より直接退院する率も冠動脈CTを施行した群で47%、心臓カテーテル検査を施行した群で12%と短かったのですが、冠動脈CTを施行した群では、その後の検査数と放射線被曝量が多く、全ての治療費の平均費用は冠動脈CTを施行した群で4289ドル、心通常治療群で4060ドルと差はありませんでした。

検査後28日間の合併症率や、検出できなかった急性心筋梗塞の率は両群で差がありませんでした。

アメリカの場合、日本と異なり、心臓カテーテル検査を行う客観的な根拠(心臓シンチグラムなどの負荷検査や心エコーなど)なしに心臓カテーテル検査を行うと、保険会社が医療費を償還してくれない場合がほとんどですから、この臨床研究は、血液検査に異常が出てくるのを待たず、その前に冠動脈CTを施行して異常があればそれを根拠に心臓カテーテル治療に移る場合と、心電図や血液検査に異常が出てくる時間を待って、異常があった場合に心臓カテーテル治療を施行する場合を比較する目的と思われます。

両者に差がないなら、こういうケース(胸痛があって救急部を受診したけれど、その場の心電図と血液検査に異常を認めない)の場合、冠動脈CTを行うよりも心電図や血液検査に異常が出てくる時間を待って心臓カテーテル治療を施行した方が良いという結果です。

明確な根拠がなくても保険で心臓カテーテル検査ができる日本では、その病院に循環器医がいれば、最初から心臓カテーテル検査をする方が、被曝量という点からもいいのではないでしょうか。ただし、マンパワーのことを考えると昼間の場合ですけど。

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