医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

認知症治療薬メマリーへの疑念

2024年07月14日 | 神経
上の図は、2024年7月6日号の東洋経済、
不安につけ込む医療情報の罠の56ページからの引用です。皆さんも購入して読んでみて下さい。


前回、「認知症治療薬メマリーの問題点」で、認知症治療薬メマリーは、6ヶ月間でSevere Impairment Battery(SIB)とよばれる評価方法の日常生活の全ての認知能力の中で、青色を青色と言えなくなるのを予防し、赤色を赤色と言えなくなるのを予防すれば、4点低下しなかったということになるのが、日常生活で本当に有用な薬といえるのか?ということをお伝えしました。

Efficacy and safety of memantine in patients with moderate-to-severe Alzheimer's disease: results of a pooled analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled trials in Japan
Expert Opin Pharmacother 2014 May;15(7):913-25.


無料でダウンロードできますので、皆さんもダウンロードしてみて下さい。

この論文の著者が、上記の図にある6行目の人です。メマリーの発売元、第一三共株式会社から3005万円を受け取っています。

企業側にも責任があると思います。特定の人物に特定の薬の、主に講演料として3005万円支払って、これは宣伝や利益誘導とは関係ないといっても、それは「武士道」でいう「卑怯」というものです。

私の愛読書、「武士道」の39ページ、第三章「義」に、
「武士にとりて卑劣なる行動、曲がりたる振舞いほど忌むべきものはない」と書かれています。

以前は「ワセダクロニクル」と呼ばれ、今は「Tansa」と名称を変更した探査報道機関に、実はこんな報道がありました。

香川大教授、認知症薬の製薬6社から年間1900万円超の副収入(7)

第一三共の認知症薬を「ごまかし」評価、香川大教授が論文で(8)

これでは、6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのか?という疑念をもたれてしまいますね。

循環器分野での臨床研究で、エンドポイントを「入院」とするのは担当者の判断でどうにでもなってしまうので、勧められていないのですが、赤色を「赤色」と言える時の1点って、評価担当者の判断でどうにでもできてしまうし、その「言語」分野の評価のみで、差があるというのも、私は怪しく感じてしまいます。

私は、これらの理由でこの薬を患者に処方していません。

私は「Tansa」を応援しています。


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認知症治療薬 メマリー の問題点

2024年07月03日 | 神経
私の愛読書「聖書」の「詩編」の第一章にはこのように書かれています。
これはなんとカトリックとプロテスタントの「共同訳」で、31年ぶりにゼロから翻訳された最新版です。

聖書 聖書協会共同訳 旧約聖書続編付き 引照・注付き 中型 SIO43DC
ここの820ページです

幸いな者
悪しき者のはかりごとに歩まず
罪人の道に立たず
嘲る者の座に着かない人

悪しき者は違う
風が吹き払うもみ殻のよう
悪しき者は裁きに
罪人は正しき者の集いに耐えられない


前回、認知症に対するメマリーと呼ばれる薬を評価した臨床研究で使用されたSIB-Jと呼ばれる指標で、メマリーを内服すると6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのかということをお伝えしました。

Efficacy and safety of memantine in patients with moderate-to-severe Alzheimer's disease: results of a pooled analysis of two randomized, double-blind, placebo-controlled trials in Japan
Expert Opin Pharmacother 2014 May;15(7):913-25.


無料でダウンロードできますので、皆さんもダウンロードしてみて下さい。

上の図がこの論文の図です。

これを見ると、前回お伝えしたSIB-Jと呼ばれる指標で主に差があるのは「言語」の2点だけです。赤色を「赤色」と言えたら2点らしいですが、それでは1点ってどういう状態?と思いませんか。
その他の能力は、多くても0.5点しか差がついていません。

循環器分野での臨床研究で、エンドポイントを「入院」とするのは担当者の判断でどうにでもなってしまうので、勧められていないのですが、赤色を「赤色」と言える時の1点って、評価担当者の判断でどうにでもできてしまうし、その「言語」分野の評価でのみ、ある程度の差があるというのも、私は怪しく感じてしまいます。

以前は「ワセダクロニクル」と呼ばれ、今は「Tansa」と名称を変更した探査報道機関に、実はこんな報道がありました。

香川大教授、認知症薬の製薬6社から年間1900万円超の副収入(7)

第一三共の認知症薬を「ごまかし」評価、香川大教授が論文で(8)

これでは、6ヶ月間で4点低下しなかったというのが、本当に有用といえるのか?という疑念をもたれてしまいますね。

私は、これらの理由でこの薬を患者に処方していません。

この薬も大丈夫かなぁと思います。
lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン|医師向け医療ニュースはケアネット (carenet.com)


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認知症の臨床研究の評価方法

2024年07月01日 | 神経
皆さんもよくご存じのパスカルの「パンセ」の250ページ、断章347にこんな一節があります。

「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。これをおしつぶすのに宇宙全体が武装する必要はない。一つの蒸気、一つの水滴もこれを殺すのに十分である。しかし宇宙がこれをおしつぶすとしても、そのとき人間は、人間を殺すこのものよりも、崇高であろう。なぜなら人間は、自分の死ぬことを、それから宇宙の自分よりずっとたちまさっていることを知っているからである。宇宙はなにも知らない。だから我々のあらゆる尊厳は考えるということにある。我々が立ち上がらなければならないのはそこからであって、われわれの満たすことのできない空間や時間からではない。だからよく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。」

上の図はメマリーと呼ばれる認知症に対する薬を評価した臨床研究で使用されたSIB-Jと呼ばれる指標です。メマリーを内服すると6ヶ月間で4点低下しなかったというものです。

この評価指標で4点低下しなかったって、本当に有用でしょうか?。


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