医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

風邪は若い人ほど罹りやすい

2012年01月30日 | 感染症
1か月で診た患者400人、学会発表2回、論文提出3編と、多忙にしていたら5年ぶりに風邪に罹ってしまいました(発熱37.5℃)
5年ぶりって・・、けっこう歳です。その理由は?というわけで、、

風邪に関してはその名も「風邪」と題した有名なレビューがありますので、お伝えしたいと思います。

The common cold.
Lancet. 2003;361:51.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

上の図にあるように、一人が一冬に風邪にかかる回数は
1歳以下では平均6回
1歳~2歳では5.7回
3歳~4歳では4.7回
5歳~9歳では3.5回
10歳~14歳では2.9回
15歳~19歳では2.6回
20歳~24歳では2.9回
25歳~29歳では2.8回
30歳~39歳では2.5回
40歳~49歳では1.9回
50歳~59歳では1.8回
60歳以上では1.6回です。
生後早い時期はもちろんですが、20歳~24歳でピークをむかえて、その後は減少しています。高齢になるほど過去の免疫が蓄積されていくので、罹りにくくなっていることがわかります。
これは以前お伝えしたインフルエンザと同じ傾向です。

原因となるウイルスはそれほど多いわけではなく、この論文の中では頻度の高い順にその特徴が示されています。

ライノウイルス(30~50%)、普通感冒
コロナウイルス(10~15%)、普通感冒
インフルエンザウイルス(5~15%)、高リスク群の肺炎
RSウイルス(5%)、小児の肺炎と細気管支炎
パラインフルエンザウイルス(5%)、小児クループと下気道疾患
アデノウイルス(5%)、普通感冒と咽頭炎
エンテロウイルス(5%)、急性発熱と咽頭炎

病院で処方される総合感冒薬の代表的なものにはPL顆粒という薬があって、プラセボ二重盲検試験では鼻汁、鼻閉、咽頭痛、頭痛に対するNNT(患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数。つまり何人に一人がその薬の恩恵を受けるかという指標です)はそれぞれ5.5人、2.5人、5.6人、5.3人です。意外に効いていないようです。

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インフルワクチン有効性の証拠は不十分

2012年01月13日 | 感染症
先日、インフルエンザワクチンは効くことは効いてはいるのだけれど、意外に不十分であることをお伝えしました。

今月、どれぐらい不十分なのかという研究結果がランセットに発表されましたのでお伝えします。

Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and meta-analysis
Lancet Infect Dis. 201212:36.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

インフルエンザワクチンの有効性を調べたこれまでの研究の中で、精度が高いRT-PCR法かウイルス培養でインフルエンザだと確認している信頼性の高い31件の研究が総合的に解析されました。

12シーズンに渡る解析の結果、米国において7歳以下で弱毒性ワクチンを受けた小児ではインフルエンザの予防効果は83%と高かったのですが、米国で90%を占める不活化ワクチンを受けた健康成人全体では予防効果は59%と不十分でした。予防効果が証明されない研究もありました。

上の図のAは18歳~64歳の不活化ワクチンの調査結果です。左の方の数字を見ると、一番上の研究ではインフルエンザの罹患が接種522人のうち10人、非接種206人のうち16人ということがわかります。右の棒グラフは有効率が65%ぐらいであることを示しています。

上から2つめ、3つめ、6つめの研究では棒グラフが中心の縦の点線を挟んでいますから、インフルエンザワクチンの有効性は証明されていない事を示しています。一番下は総数です。

上の図のBは7歳以下の弱毒化ワクチンの調査結果です。Bの一番上の研究を見ると、インフルエンザの罹患は接種1070人のうち14人、非接種532人のうち94人と接種がかなり有効であることがわかります。ただしこれは、日本では使用されていない弱毒性ワクチンの場合です。

この論文の著者らは、「現在のワクチンより交叉防御効果が高く迅速に製造できるワクチンの開発が急務である。そのようなワクチンが開発されるまでは、現状では最善である現行のワクチンを使用する以外にない」と結論付けています。

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