医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

やはり、「狭心症による入院」というエンドポイントはダメでしょう

2014年03月26日 | 総合
前回、奇妙な発症曲線の臨床研究についてお伝えしました。

先日、日本循環器学会学術集会が開催され、こんなセッションがあったそうです。

(以下m3より引用)
3月21日、東京都内で開催された、第78回日本循環器学会学術集会のプレナリーセッションで、高血圧関連の論文不正問題が相次ぐ中、「循環器診療ガイドラインと日本のEBM~信頼を取り戻すために~」をテーマに議論された。

今回のディオバン問題に関連して発言したのは、滋賀医科大学公衆衛生学教授の上島弘嗣氏。Kyoto Heart StudyやJikei Heart Study(JHS)などで用いられたProbe法に言及、これらの論文の共著者でもあるスウェーデンの医師、ビヨン・ダーロフ氏が「Probe法について、メリットを強調するなど、誤った見解を広めたのではないか」と問題視。

例えば、Probe法では、RCTとは異なり、あらかじめ投与する薬剤が分かるため、医師と患者の協力が得られやすいものの、症例を分析する委員会への報告内容に「情報バイアス」がかかりやすいなどの指摘がある。

特に、狭心症や心不全による「入院」というソフトエンドポイントを用いた場合、医師の主観で判定が揺らぎかねないとした。上島氏は、2006年の国際高血圧学会でJHSが発表された時点で、自身が「(ディオバン投与群が)非致死性のイベントのみ有効である点は、二重盲検でないことによる情報のバイアスの可能性がある」と指摘していたことも紹介。

今後、日本で臨床研究を進めるには、臨床医だけで実施するには限界があり、生物統計や疫学の専門家と連携するほか、臨床研究や研究者の支援を行う組織として、ARO(Academic Clinical Research Organization)を整備する必要性も、複数の演者が指摘した。
(以上m3より引用)


私が、奇妙な発症曲線の臨床研究で書いたことと同じことが議論されています。

やはり誰でも感じることは同じですね。

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奇妙な発症曲線の臨床研究

2014年03月13日 | 循環器
前回、武田薬品のブロプレスの広告が不適切であった論文の原本をお伝えしました。その中で、経過の途中で疾患の発症率が変化してくる「奇妙な」発症曲線のことに言及しました。

私が、もう一つ「奇妙」だと感じている発症曲線が示されている臨床研究がありますので、今回はそれをご紹介したいと思います。

Principal results of the Japanese trial to assess optimal systolic blood pressure in elderly hypertensive patients (JATOS).
Hypertens Res. 2008 Dec;31(12):2115-27.

(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

これは、製薬会社が関与している研究ではないです。65歳以上の高齢者はどれぐらい血圧を下げるのが必要十分であるかを調べた研究です。

1994年からランデルという商品名でゼリア新薬工業,2005年から塩野義製薬より発売されている薬をベースに内服して、血圧が140~160mmHgを目指す患者と、140mmHg以下を目指すように別の薬を併用する患者、両群で4400人が2年間の予後が調査されました。

結果的に、140~160mmHgを目指した群は平均146nnHg、140mmHg以下を目指した群は平均136mmHgになりました。

調査する疾患(エンドポイントといいます)は、今回の論点には非常に重要ですので、具体的に全て記載いたします。

脳出血
脳梗塞
一過性脳虚血発作
心筋梗塞(以前発症した心筋梗塞を調べても意味はないので、急性心筋梗塞と推測できます)
入院が必要な狭心症
心不全
突然死
解離性大動脈瘤
閉塞性動脈硬化症
腎機能の指標が2倍に悪くなり1.5 mg/dl以上になった

あれ~1つだけ変だなぁ、と思いませんか?それは、「入院が必要な狭心症」って、誰が決めるのだろうということです。狭心症の定義はあいまいで、最近運動や運動しなくても胸が締め付けられると患者が訴えても、それではどれぐらいの運動の強度なのか、入院が必要なのかは医者が決める非常に主観的なものです。

閉塞性動脈硬化症の定義もあいまいです。足の動脈が細くなりある程度の距離を歩くと足が痛くなるのですが、それではどれぐらい歩くと痛くなるのを閉塞性動脈硬化症と診断するのかは医者が決める非常に主観的なものです。

そこで上の図ですが、研究期間の半分たった頃から急に、140mmHg以下をめざしている群の発症率が低下しています。研究期間の半分たった頃というのは研究結果の中間の結果が発表(本当は発表するのは間違いです。本件のような事が起きてしまうからです)されずとも、漏れてしまった可能性が否定できません。そもそもある疾患の発症率は、研究の条件が変わらない限り変わるはずがありません。

65歳以上の高齢者の場合でも、血圧は140~160mmHgより140mmHg以下が予後が良いと先入観を持っている医者が、漏れ聞いた中間結果から、「そんな結果はおかしい」と感じ、140~160mmHg群で「入院が必要な狭心症」や「閉塞性動脈硬化症」の診断数を無意識(私は意図的でないことを祈っています)に減らしてしまったと考えるのが一番説得力があります。ある疾患の発症率は、研究の条件が変わらない限り変わらないのです。

その後、140~160mmHgより140mmHg以下が予後が良いと先入観を持っている医者も我に返ったのか、両群の発症は同等までになっています。

この臨床研究の結果は、この4月から改正される高血圧治療ガイドラインに反映され、「後期高齢者ではまず<150/90mmHgを目指し,忍容性があれば<140/90mmHgを目指す」と変更されます。後期高齢者は140~150mmHgであっても予後が変わることがないと判明したからです。

それでは今後どうしたらよいか?「入院が必要な狭心症」などという医者が決めるのに非常に主観的な項目を臨床研究の調査対象に入れないことではないでしょうか。たとえ、医者が公明正大に研究をしようとしているのであっても、「李下に冠を正さず」、エチケットとしてこういう項目を臨床研究入れてはなりません。私はこういう項目が入った臨床研究の結果を見る度に、いつも懐疑的になっています。

疑われるような方法でデータが出て(真実性)、万が一、国民に不利益になるのであれば(間違った方向に導かれる)(公共性)(公益性)それは改善していただかなくてはいけません。

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『危機に瀕する日本』第1巻: 文化略奪と歴史歪曲に関する一考察
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