医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

DOAC(新しい直接抗凝固薬)の5年予後はワーファリンと同じ

2022年09月21日 | 循環器
私は以前から、DOAC(direct oral anticoagulant)(ワーファリンより新しい抗凝固薬で値段は10倍)の臨床研究は、医療後進国を意図的に研究に入れて、ワーファリンの結果を意図的に悪くした結果であるということをお伝えしています。

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)

外国の結果を参考にするのではなく、「日本という医療先進国」における両薬剤の比較は、前向きに調査してどうだったのかを結論付けた素晴らしい論文が順天堂大学を中心とするグループから最近発表されましたのでご紹介します。

Trends of anticoagulant use and outcomes of patients with non-valvular atrial fibrillation: Findings from the RAFFINE registry
J Cardiol 2022 Jul;80(1):41-48


2013年から2015年の間に追跡を初めて、非弁膜症性心房細動の3706人が最低3年間から5年間前向きに調査されました。

この研究はどちらの群になるか無作為に割り付けたものではなく、担当医の判断によって治療が決められました。

結果的に、ワーファリンを内服したのが42.5%、DOACを内服したのが44.7%、どちらも内服しなかったのが12.8%でした。どちらも内服しなかった患者は、CHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が0点だった(軽かった)のでしょう。

上の図の左は全ての理由による死亡の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。一見するとワーファリン群の方が死亡が多いように見えますが、これはカプランマイヤー法で単に死亡数を現した単解析のもので、各患者の背景の違いを考慮したものではありません、生存時間解析での多変量解析はCox比例ハザードモデルですから、Cox比例ハザードモデルで示すべきでした。

論文の中に記載されているように、各患者の背景を多変量解析で補正したら両群の差は認められませんでした。原文は以下のごとくです。
The Kaplan–Meier analysis revealed that the incidences of all-cause death, cardiovascular death, and major bleeding were significantly lower in the DOAC group than in the warfarin group. However, there were no differences between the two groups after adjusting for baseline characteristics.

それはどういうことかというと、ワーファリン群の方がCHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が悪く、HAS-BLEDスコアーという出血のリスクを示す指標も悪かったからです。担当医は、やはり背景が悪い患者には意識的なのか結果的なのかワーファリンを処方していたということです。原文ではこんなふうに書かれています。
At baseline, the warfarin group had higher CHADS2 and HAS-BLED scores than the DOAC group, which may have contributed to these findings.

上の図の右は脳梗塞と出血性疾患の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。
やはり両群で差は認められませんでした。

ワーファリンで量を調節するのが不安定な患者だからDOACにした、あるいは患者が納豆を食べたいと言うからDOACにしたというのなら分かりますが、少なくとも以前の臨床研究で参加していた国々よりは「繊細で優秀な日本人医師」(日本の循環器専門医は0.25mg単位で調節しますが、外国では1mg単位、酷い国では2mg単位で増減しています)がワーファリンを上手に調節している日本では、DOACもワーファリンも効果が同じということです。

結論でこんなふうに書かれています。
After adjusting for risk factors, the rates of death, ischemic stroke, SE, and major bleeding did not differ between the warfarin and DOAC groups.

効果が同じなのに値段が10倍のDOACを飲まされていては、患者が納豆を食べたい!と言うのでなければ患者に対して経済的に不利益になりますね。私ならワーファリンを選びます、DOACは、どれだけ効いているか(弱いのか強いのか?)指標がないですからね。

そしてこの素晴らしい論文は、素晴らしい知見も示しています。

担当医がワーファリンもDOACも投与しなくて良いと判断した患者でも、その5年間の予後はワーファリンやDOACを投与された患者の予後と同じです。

これは何を示しているかというと、担当医が投与しなくて良いと判断したその判断は間違っていないということ、CHADS2スコアーが低い患者には、やはり投与しなくていいんだ、と言うことです。

素晴らしい論文です。

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殺人犯の精神性・境遇

2022年09月13日 | 雑感
私の趣味の1つに読書があります。
だいたい1週間に1冊のペースで年間50冊ほどを読みます。興味の湧いたテーマがあるとそのテーマに関する書籍を集中的に10冊以上読むこともあります。「殺人犯の精神性・境遇」に関しては30冊ほど読みました。

2022年8月20日、東京・渋谷区の路上で親子2人が刃物で襲われ大けがをした事件で、殺人未遂の疑いで逮捕された埼玉県在住の女子中学生が調べに対し「家族を殺そうと思い、その前に人が本当に死ぬのか試したかった」などと供述していました。家庭内で目立ったトラブルなどは確認されていないそうです。

まだ情報が少なく、予断を挟むことは禁物ですが、以前「心に狂いが生じるとき」を読んだ私としては、彼女は統合失調症を発症したのだと思います。


ちょうど最近では、「判例タイムズ2022年5月号」の14ページに「責任能力判断の実践的検討」に論文が掲載されています。19ページには「典型的な統合失調症では、意味不明で支離滅裂であることが本質であるが、他方、うつ病、認知症、知的障害者はそれとは違う。反社会的パーソナリティー障害も病気だとすれ評価すれば、それを精細の対象とすべきだとすれば、反社会的パーソナリティー障害を割り切れる能力の定義が必要なはずだ」と結論づけています。


その反面、山上容疑者は違います。現在、精神鑑定が行われていますが、綿密な計画により犯行を行っていることから責任能力はあると思います。私は山上容疑者はPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと思っています。

山上容疑者の生い立ちは以下のようにまとめることができます。

「幼くして父親を亡くし、母親は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に入信し、多額の献金で自己破産。山上容疑者は経済的理由で大学進学も断念し、3年間の海上自衛隊勤務を経て、アルバイトや派遣社員を転々としてきた」

私は山上容疑者の境遇を思うと胸が張り裂けそうになります。気がついてみたら自分の親は「あれ」で、自分の運命は「これ」だというのは大変過酷な状況です。

山上容疑者は、
「殺ったのはおまえだ」に掲載されている池田小学校児童殺傷事件の犯人、宅間守と同じ境遇です。

例えば、宅間守死刑囚の境遇をまとめると

「宅間守死刑囚は母親が精神的におかしくなってから、父親が面倒をみていたが、父親も仕事を辞めて貧困生活に突き落とされた。父親は息子のことを生まれてこなくてもよかった子供だと断言していた。先祖は旧薩摩藩の下級武士だが、宅間の父は小学校で学歴を終えて6人の家族を養っていた。貧困のため水道も止められていた。もう楽になろうと心中未遂を起こしていた。守自身も病院の屋上から飛び降り腰椎損傷など重傷を負っていた。守が人を刺し終えた時の最後の言葉は「あーしんど」であった。」

「日本の殺人」を読むと、日本では1年間に約100人が殺されているそうですが、その半分の50人は家族、すなわち親殺しや子供殺しで、残りの25人が知人殺し、その残りの25人が、見ず知らずの人を殺した殺人犯です。


今回は、「殺人犯の精神性・境遇」というのは見ず知らずの人を殺した殺人犯に限定したいと思います。

私は今回、以前読んだ「殺人犯の精神性・境遇」の本を本棚から引っ張り出してきました。

それは以下の本です。

「光市母子殺害事件」
「なぜ君は絶望と闘えたのか」
「秋葉原事件 加藤智大の奇跡」
「43回の殺意」
「心にナイフをしのばせて」
「でっちあげ」
「凶悪」
「殺戮者は二度わらう」
「黒い報告書」
「その時殺しの手が動く」
「殺人者はそこにいる」
「悪魔が殺せとささやいた」
「死刑でいいです」
「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」
「子どもの貧困連鎖」
「少年リンチ殺人」
「少年A 14歳の肖像」
「新潟少女監禁事件」
「桶川ストーカー殺人事件」
「消された一家」
「累犯障害者」
「津川三十人殺し」
「そして殺人者は野に放たれる」
「殺人者はいかに誕生したか」
「死刑のための殺人」
「死刑 究極の罰の真実」
「絞首刑」
「19歳」
「私が出会った殺人者たち」
「未解決事件71」


これらを読んでみると、驚くべきことに「殺人犯に共通」しているのは、私の言葉でまとめますと、

(1)「社会通念から逸脱した父親か母親、またはその両方」
(2)「貧困」
(3)「家庭崩壊」
そして、補足的に(4)「自殺未遂の既往」です。

(1)安倍さんは、「桜を見る会」などで、恵まれない人たちから「妬みを買う」ことばかりしていないで、もっとこういう人たちに目を向けるべきではなかったですか?

(2) 安倍さんは、85歳の大動脈弁狭窄症の寿命を数年延ばすのに、外国企業と日本の医師のロビー活動で一人500万円以上費やしている、その500万円を、お金がなくて進学できなかった山上容疑者のような学生に費やす法改正に尽力すべきではなかったですか?

(3) 安倍さんは、社会通念から逸脱した両親から子供を守るべく、児童相談所の機能の拡張に尽力すべきではなかったですか?

(4) 安倍さんは、一度自殺未遂した子供達を重点的にサポートする費用を増やすことに尽力すべきではなかったですか?


そして昭恵さん、旦那が亡くなったのにまだSNSをやっていますね。これを機会に止めたらどうですか?私は彼女は「演技性パーソナリティー障害」だと診断しています。

首相の妻だった昭恵氏さん、森友学園の小学校の名誉校長に就任していたことは広く知られていますが、森友問題で半分「自己愛性パーソナリティー障害」の安倍さんが、国会で追及され、プライドを傷つけられたと思った安倍さんが、「森友問題で妻が関与していたら私は辞めますよ」と発言し、官僚があたふたとしたのが事の起こりである問題。

あ~ぁ、と思える事案で、私は涙が出ます。山上容疑者のことを思うと、国葬も止めて欲しいと思います。

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