私は以前から、DOAC(direct oral anticoagulant)(ワーファリンより新しい抗凝固薬で値段は10倍)の臨床研究は、医療後進国を意図的に研究に入れて、ワーファリンの結果を意図的に悪くした結果であるということをお伝えしています。
心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)
心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)
心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)
外国の結果を参考にするのではなく、「日本という医療先進国」における両薬剤の比較は、前向きに調査してどうだったのかを結論付けた素晴らしい論文が順天堂大学を中心とするグループから最近発表されましたのでご紹介します。
Trends of anticoagulant use and outcomes of patients with non-valvular atrial fibrillation: Findings from the RAFFINE registry
J Cardiol 2022 Jul;80(1):41-48
2013年から2015年の間に追跡を初めて、非弁膜症性心房細動の3706人が最低3年間から5年間前向きに調査されました。
この研究はどちらの群になるか無作為に割り付けたものではなく、担当医の判断によって治療が決められました。
結果的に、ワーファリンを内服したのが42.5%、DOACを内服したのが44.7%、どちらも内服しなかったのが12.8%でした。どちらも内服しなかった患者は、CHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が0点だった(軽かった)のでしょう。
上の図の左は全ての理由による死亡の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。一見するとワーファリン群の方が死亡が多いように見えますが、これはカプランマイヤー法で単に死亡数を現した単解析のもので、各患者の背景の違いを考慮したものではありません、生存時間解析での多変量解析はCox比例ハザードモデルですから、Cox比例ハザードモデルで示すべきでした。
論文の中に記載されているように、各患者の背景を多変量解析で補正したら両群の差は認められませんでした。原文は以下のごとくです。
The Kaplan–Meier analysis revealed that the incidences of all-cause death, cardiovascular death, and major bleeding were significantly lower in the DOAC group than in the warfarin group. However, there were no differences between the two groups after adjusting for baseline characteristics.
それはどういうことかというと、ワーファリン群の方がCHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が悪く、HAS-BLEDスコアーという出血のリスクを示す指標も悪かったからです。担当医は、やはり背景が悪い患者には意識的なのか結果的なのかワーファリンを処方していたということです。原文ではこんなふうに書かれています。
At baseline, the warfarin group had higher CHADS2 and HAS-BLED scores than the DOAC group, which may have contributed to these findings.
上の図の右は脳梗塞と出血性疾患の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。
やはり両群で差は認められませんでした。
ワーファリンで量を調節するのが不安定な患者だからDOACにした、あるいは患者が納豆を食べたいと言うからDOACにしたというのなら分かりますが、少なくとも以前の臨床研究で参加していた国々よりは「繊細で優秀な日本人医師」(日本の循環器専門医は0.25mg単位で調節しますが、外国では1mg単位、酷い国では2mg単位で増減しています)がワーファリンを上手に調節している日本では、DOACもワーファリンも効果が同じということです。
結論でこんなふうに書かれています。
After adjusting for risk factors, the rates of death, ischemic stroke, SE, and major bleeding did not differ between the warfarin and DOAC groups.
効果が同じなのに値段が10倍のDOACを飲まされていては、患者が納豆を食べたい!と言うのでなければ患者に対して経済的に不利益になりますね。私ならワーファリンを選びます、DOACは、どれだけ効いているか(弱いのか強いのか?)指標がないですからね。
そしてこの素晴らしい論文は、素晴らしい知見も示しています。
担当医がワーファリンもDOACも投与しなくて良いと判断した患者でも、その5年間の予後はワーファリンやDOACを投与された患者の予後と同じです。
これは何を示しているかというと、担当医が投与しなくて良いと判断したその判断は間違っていないということ、CHADS2スコアーが低い患者には、やはり投与しなくていいんだ、と言うことです。
素晴らしい論文です。
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心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)
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J Cardiol 2022 Jul;80(1):41-48
2013年から2015年の間に追跡を初めて、非弁膜症性心房細動の3706人が最低3年間から5年間前向きに調査されました。
この研究はどちらの群になるか無作為に割り付けたものではなく、担当医の判断によって治療が決められました。
結果的に、ワーファリンを内服したのが42.5%、DOACを内服したのが44.7%、どちらも内服しなかったのが12.8%でした。どちらも内服しなかった患者は、CHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が0点だった(軽かった)のでしょう。
上の図の左は全ての理由による死亡の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。一見するとワーファリン群の方が死亡が多いように見えますが、これはカプランマイヤー法で単に死亡数を現した単解析のもので、各患者の背景の違いを考慮したものではありません、生存時間解析での多変量解析はCox比例ハザードモデルですから、Cox比例ハザードモデルで示すべきでした。
論文の中に記載されているように、各患者の背景を多変量解析で補正したら両群の差は認められませんでした。原文は以下のごとくです。
The Kaplan–Meier analysis revealed that the incidences of all-cause death, cardiovascular death, and major bleeding were significantly lower in the DOAC group than in the warfarin group. However, there were no differences between the two groups after adjusting for baseline characteristics.
それはどういうことかというと、ワーファリン群の方がCHADS2スコアーという脳梗塞のリスクを示す指標が悪く、HAS-BLEDスコアーという出血のリスクを示す指標も悪かったからです。担当医は、やはり背景が悪い患者には意識的なのか結果的なのかワーファリンを処方していたということです。原文ではこんなふうに書かれています。
At baseline, the warfarin group had higher CHADS2 and HAS-BLED scores than the DOAC group, which may have contributed to these findings.
上の図の右は脳梗塞と出血性疾患の5年間の比較で、青線がワーファリン、赤線がDOAC、緑線が内服なしです。
やはり両群で差は認められませんでした。
ワーファリンで量を調節するのが不安定な患者だからDOACにした、あるいは患者が納豆を食べたいと言うからDOACにしたというのなら分かりますが、少なくとも以前の臨床研究で参加していた国々よりは「繊細で優秀な日本人医師」(日本の循環器専門医は0.25mg単位で調節しますが、外国では1mg単位、酷い国では2mg単位で増減しています)がワーファリンを上手に調節している日本では、DOACもワーファリンも効果が同じということです。
結論でこんなふうに書かれています。
After adjusting for risk factors, the rates of death, ischemic stroke, SE, and major bleeding did not differ between the warfarin and DOAC groups.
効果が同じなのに値段が10倍のDOACを飲まされていては、患者が納豆を食べたい!と言うのでなければ患者に対して経済的に不利益になりますね。私ならワーファリンを選びます、DOACは、どれだけ効いているか(弱いのか強いのか?)指標がないですからね。
そしてこの素晴らしい論文は、素晴らしい知見も示しています。
担当医がワーファリンもDOACも投与しなくて良いと判断した患者でも、その5年間の予後はワーファリンやDOACを投与された患者の予後と同じです。
これは何を示しているかというと、担当医が投与しなくて良いと判断したその判断は間違っていないということ、CHADS2スコアーが低い患者には、やはり投与しなくていいんだ、と言うことです。
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