医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

新型コロナとインフルの合併症の違いの論文

2020年12月30日 | 感染症
街頭のインタビューで「コロナもインフルエンザと同じでしょ」と発言する若者もいる中で、新型コロナとインフルエンザの合併症を比較した興味深い論文が発表されましたのでご紹介します。

Comparison of the characteristics, morbidity, and mortality of COVID-19 and seasonal influenza: a nationwide, population-based retrospective cohort study.
Lancet Respir Med. 2020 Dec 17:S2213-2600(20)30527-0. doi: 10.1016/S2213-2600(20)30527-0.


(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この調査はフランスで行われました。新型コロナに感染して入院した患者89,530人と、昨シーズンにインフルエンザに感染して入院した患者45,819人が比較されました。

年齢の中央値は68歳と71歳でほとんど変わらないですが、インフルエンザで入院するのは子どもと高齢者が多く、18歳未満と81歳以上で53%を占めました。一方、新型コロナで入院する患者は中高年が多く、51歳以上が77%でした。

上の図で違いが顕著なところには赤線を施しましたが、入院前の状態として新型コロナではインフルエンザに比べて「高血圧症」「糖尿病」「過体重」「肥満」といった生活習慣病(動脈硬化のリスク)の状態が多かったのが特徴です。相撲界で新型コロナが怖いから引退したいという力士が現れるのも頷ける話です。

日本の芸能人がコロナ感染が原因で死亡している理由の1つである「喫煙」に関しては検討されていませんが、フランスには「喫煙者」はもはや少ないのでしょう。私の英会話の先生はフランス人で、今回のコロナ禍で帰国しましたが、その後そのご両親がご無事であることをお祈りしています。

その反対に「心不全」はインフルエンザで入院する患者に多かったです。不思議なことに「慢性呼吸器疾患」もンフルエンザで入院する患者に多かったです。

入院した後の合併症ですが、「急性呼吸不全」「肺血栓塞栓症」「全身性血栓塞栓症」「人工呼吸器装着」「集中治療室の入室」は新型コロナで圧倒的に多かったです。
入院した場合の院内死亡率はインフルエンザが5.8%であるのに対して、新型コロナでは16.9%で、これも新型コロナが圧倒的に多かったです。

ただ、この調査はフランスで行われたものですから、発症率がフランスに比べて圧倒的に少ない日本にそのまま当てはめることはできないという調査の限界はあると思います。

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