医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

安定した動脈硬化性心臓病に不必要な風船治療が行われている

2007年09月05日 | 循環器
これまで、「安定狭心症に風船治療・ステント治療を行っても薬物療法だけの場合と成果は同じ」「軽い心筋梗塞は早期に風船・ステント治療をしなくても予後は同じ」

という事をお伝えしましたが、それでも現実には世界中で不必要な風船・ステント治療が行われています。

その理由を科学的に解明するために行われた研究が最近発表されました。
Cardiologists' Use of Percutaneous Coronary Interventions for Stable Coronary Artery Disease.
Arch Intern Med. 2007;167:1604-1609.

(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、カリフォルニアの田舎、都会、その中間の心臓病医からなる3組のグループに、症状の安定した動脈硬化性心臓病患者に風船治療・ステント治療を実施する理由について討論させました。

対象となった医者は、偏りがないように他の医師の推薦あるいは性格調査によって選ばれ、討論とインタビューは米国心臓病学会の指導医によってなされました。そうして選ばれた医師127人に招待状を発送し、最終的に20人が選ばれました。

討論とインタビューの結果、次のような理由が明らかになりました。

(理由その1)
「病状が軽い患者への風船治療・ステント治療は薬物治療と効果は同じという過去の研究の結果を信じないで、血管は全て広がっている方がいいと妄信している」
(これは論外)

(理由その2)
「医者の個人的な経験」
次のような具体例が書かれてあります。
ある医師の友人Jim Fixxは、父が若くして心筋梗塞で亡くなった。彼は友人に「心臓の血管の検査を受けないか」と勧めたが、友人は「俺はマラソンにも完走できるほど元気なんだ。検査なんて必要ないさ」と断った。その友人はその3週間後に心筋梗塞で死亡した。
(大規模試験の結果を、1例の結果で打ち消している感情的な思考です)

(理由その3)
「医者の後悔」
風船治療・ステント治療と薬物療法の効果が同じであっても、患者が亡くなった場合、薬物療法では何もしなかったという後悔が残る。
(しかし、これは両者の効果が同じであるのだから風船治療・ステント治療でも亡くなったと考えるべきです)

(理由その4)
「患者の心配」
細い箇所=悪い→死亡という誤解で患者が、医者になんとかしてほしいと頼み、医者が研究データを示して風船治療・ステント治療を断る事ができない。
(データを示して、ちゃんと説明するべきです)

(理由その5)
「訴訟問題」
これは以前、日本のブレイキングニュースで思うこと
で示したことと同様のことです。

(理由その6)
「エビデンスがどうであれ、目で見て細いところがあれば反射的に広げてしまう医者の習性」
原文では「Oculostenotic Reflex」と書かれてあります。意訳すれば、「狭窄見つけたら、広げたくなる反射」です。
(反射で医療をしてはいけません)

(理由その7)
「医療機材の進歩」
最近は台の上で横になっているだけで、CTで心臓の血管を映し出すことができるようになってきました。簡便に検査できるため、細いところが見つかる患者の数が増え、たとえその場所が血液不足を起こしていないとしても(理由その6)で治療してしまう。あるいは薬物溶解性ステントが再狭窄を減らしたので、将来的な功罪を熟慮せず、とりあえずその場では使ってしまう。

(理由その8)
「病院の利益のため」
(日本の場合、半分ぐらいがこの理由でしょう)
患者の皆さん注意して下さい




これらの結果をまとめると、患者の不安を緩和するなど非医学的および感情的な理由で施術しているケース、あるいは施術が心筋梗塞発症率や死亡率を低下させないことが研究で示されているにもかかわらず、便益があると思い込んで施行しているケースが見受けられることが判明しました。

エビデンスに基づかない風船治療・ステント治療が広く施行されている現状は、医師らの知識と思い込みにばらつきがあることを示している。また、医師の意思決定には非医学的要因がかなり影響していると結論づけられています。

(理由その9)
「業者との癒着」
今日は一日中カテーテル室で物品を出すのを手伝ってくれたから、血液不足の場所ではないけれど、その業者の風船を使って治療する・・立派な「癒着」です。
癒着って立派じゃないか(汗)


こういう調査・研究をみると、さすがアメリカ、「腐っても鯛」ですね。


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なかのひと


金沢大学、国立循環器センターのみなさま、ありがとうございます~感謝、感謝、


コメント (1)
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