医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

総論 vs 各論では議論ができない

2009年08月16日 | 雑感
今日はひめゆりの塔(ひめゆり平和祈念資料館)を訪れ、平和への祈りを捧げてきました。

昨日は終戦記念日でした。
毎年この時期には多くの水掛け論が起きます。

核武装の是非を議論するのに、「日本がアメリカよりも先に核を持っていたなら、広島や長崎のようなことは起きなかった」というのは総論(残念ながら結果論でもあります)ですし、「私の祖母は原爆投下による被爆でひどい目にあった」というのは各論です。少し考えればわかるのですが、総論と各論はどうしても水掛け論になってしまうのです。双方とも平和を祈念する気持ちは同じにもかかわらずです。

さて、裁判官が医者に慎重な診察を要求した例の割りばし事故訴訟のあと、私が外来患者に施行するCTの件数は不本意にも増加しました。以前、以下のように1回のCTスキャンが1,000~500分の1で肺ガンや乳ガンやその他のガンを誘発することをお伝えしたにもかかわらずです。

CTスキャンの急激な増加はガンの増加をもたらす可能性
心臓の血管に対するCT検査のX線被ばくによるガンの発生率


しかし、子どもには上記のリスクよりも多いだろうと推測される(推測されるというのは、そもそも子どもにCTスキャンをしてどれくらいガンのリスクが増えたかなどという医学研究がないからです)ガンのリスクがあるCTスキャンを施行することが、CTスキャンを施行しても命は救えなかった状況の中で、慎重な診察なのかそうでないかは誰にもわからないのです。

すさまじく進歩している医学のことですから、将来、発見されたガンがCTスキャンなどの放射線画像診断が原因で発生したかそうでないか鑑別できるようになったとします。そうなれば、益々事態は複雑になります。

「CTスキャンの急激な増加はガンの増加をもたらす可能性」の中では「腹痛や慢性的な頭痛で救急治療室を受診したら、医師の診察を受ける前にほぼ間違いなくCTスキャンを受けることになる」現実に警鐘を鳴らしつつも、「症状がある患者にとって、CTスキャンが素晴らしい診断ツールであることは間違いない」ことであり「われわれが推進していることは、CTの使用を本当に必要な状況に制限することであると結論づけられています。

しかし「本当に必要な状況」を誰がどのようにして判断するのでしょうか。今後も水掛け論が続きます。


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