医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

慇懃無礼(いんぎんぶれい)

2006年07月31日 | 雑感
留学から帰国し、日本で診療を始めて1カ月がたちましたが、留学以前と変わってきた状況にとまどう事もあります。その中の1つに「患者様」という呼び名があります。

医療機関もサービス業であるという意味から、ファミレスの店員さんが客のことを「お客様」と呼ぶように、病院の事務員が患者のことを「患者様」と呼ぶのは納得できます。しかし、医者が「次の患者様お入り下さい」と呼ぶのが時代を先取りしているかのような風潮には疑問を覚えます。

初対面の患者さんならまだしも、過去に入院された時に徹夜で治療をし退院後も外来で担当している患者さんとの間には命を託した者と託された者の信頼関係が築かれています。そんな患者さんをあらためて「患者様」とお呼びするのは、患者さんにとっても水くさいと感じられるのではないかと思うのです。

慇懃無礼(いんぎんぶれい)という言葉があります。辞書によると「表面の態度は丁寧だが、心の中では相手を軽くみている・こと(さま)」ですが、医者にとって「患者様」という言葉はなにかしら慇懃無礼な感じがします。

さらにこの言葉は、医者が患者さんを別の専門医に紹介する時の紹介状にも現れてきます。「この患者様は5年前から糖尿病で・・・」というぐあいです。私は医者同士でも患者さんを患者様と呼ばなければいけないような風潮に違和感を覚えますし、そしてその違和感は、例えば市役所の職員同士で市民を「市民様」と呼ばなければならないと仮定した時に覚える違和感と同様だと思えます。

たしかに「市民」には弱者的な意味がなく、「患者」という言葉には弱者的な意味合いがあるかもしれないので状況が違うかもしれません。しかし、弱者的な意味合いに配慮している努力の証として「様」という言葉を付加して、それで解決したと解釈してしまうのも一種の思考停止だと思うのです。

このブログでは一貫して「医師」という言葉を使わずに「医者」という言葉を使ってきました。これは「医師」という言葉が「医療という技術を修めた者」として患者さんとの関係を含蓄していない言葉であるのに対して、「医者」という言葉は「医者」と「患者」、つまり医療を行う者とそれを受ける者という平等の関係を含んでいると感じているからです。

私は、患者に「様」を付けることよりも「医者」と「患者」の信頼関係こそが大切であり、信頼関係があれば「様」はいらないと思うのです。

みなさんはどうお考えでしょうか。


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医療費の患者自己負担限度額

2006年07月29日 | 総合
来る10月から医療費の患者自己負担限度額が改正されます。自己負担限度額とは、各月ごとの医療費の自己負担に限度を定めているもので、患者がその額以上の医療費を各医療機関に支払った場合に、限度額を超える分があとで戻ってくるという額のことです。

これまでは、
上位所得者139,800円+医療費×1%
一般72,300円+医療費×1%
低所得者35,400円
高額長期疾病患者(慢性腎不全による透析、エイズ、血友病)10,000円
でした。

ところで、上位所得者というのはどれくらいの収入がある人を示しているのか興味がありませんか。それはずばり、

月収53万円以上の人

です。年収や納税証明書で証明される課税対象額などから算出されるわけではありません。

これが今年の10月からは
上位所得者150,000円+医療費×1%
一般80,100円+医療費×1%
低所得者35,400円
高額長期疾病患者(慢性腎不全による透析、エイズ、血友病)の上位所得者20,000円
高額長期疾病患者(慢性腎不全による透析、エイズ、血友病)の上位所得者以外10,000円
というように改正されます。

このように、医療費の無駄使いをどこかで抑制しないと、私たちが医療費に対して支払う負担額はどんどん増えていくのです。なんとかしなければいけません。

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超音波検査の値段

2006年07月25日 | 総合
健康診断で発見されるレベルの肝機能異常のうち、比較的多い原因は、脂肪やカロリーの摂りすぎによる脂肪肝です。健康診断の二次検査のために病院に行くと次に行われるのは腹部の超音波検査だと思います。

超音波検査は、体のどの部分であっても侵襲(痛みや身体的負担)が少ないために盛んに行われています。今回は超音波検査の値段についてお伝えします。

超音波検査の値段は方法や施行する場所によって異なっています。一番多く行われるのは腹部の検査で、この検査では肝臓、胆嚢、脾臓、膵臓、腸、膀胱など多くの臓器が対象になります。

腹部超音波検査は5,300円で、3割負担ですと会計窓口で支払う金額は1,590円です。

最近のほとんど装置にはパルス・ドプラー法といって血流を検知し流速を測定できる方法が搭載されており、その装置で血流や流速を測定すると2,000円が加算されます。

その他、甲状腺や頚動脈などの頚部や、手足、皮膚などの体表などでは3,500円で、ここでも同様にパルス・ドプラー法を行うと2,000円が加算されます。

超音波検査の利点を最大限生かせるのは心臓超音波検査で、レントゲン撮影などと異なり、動いている状態をリアルタイムで表示でき機能を評価できます。従って値段は少し高く、7,800円で、検査の性質上パルス・ドプラー法は必ず行われますので、実際は2,000円が加算された9,800円です。

さらに経食道超音波検査という方法があり、胃カメラのようにファイバーのようなものを飲み込んで食道から心臓の裏側や大動脈を観察します。特殊な状況では非常に有益な方法です。値段は8,000円で心臓超音波検査と同様にパルス・ドプラー法は必ず行われますので、実際は2,000円が加算された10,000円です。

ちなみに超音波検査ではないですが、心電図は3,200円です。超音波検査をした時は会計窓口で支払う金額が1,500円~3,000円増えると覚えておくといいと思います。

ただし、ここには問題があります。ボロボロの超音波装置で検査しても最新の装置で検査しても値段が同じという事です。それに、例えば頚動脈が狭くなっている状態を調べる頚動脈エコーで、探触子と呼ばれる鉛筆を太くしたような物をちょろっと首に当てても、10分以上かけて入念に検査するのと検査代が同じなのです。

さらに、医療機関が患者さん負担以外の7割分を請求するのは1カ月ごとですから、悪徳開業医の場合は、1カ月ぐらいでは変化しない頚動脈の状態を毎月超音波装置で検査して医療費を稼ぐということも可能です。

肝硬変から肝ガンが出来てくることを早期発見するための3~6カ月ごとの腹部超音波検査は必要ですが、ふつうは開業医レベルでは3カ月ごとに何度も超音波検査しなければならない場合は少ないと思います。



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胸部エックス線検査、40歳未満は医師の判断で5年に1回に省略

2006年07月22日 | 呼吸器
労働安全衛生法に基づいて職場の定期健康診断で年一回義務づけられている胸部エックス線検査について、厚生労働省は21日、40歳未満は医師の判断で5年に1回に省略できるとの案を同省の検討会に示した。

検討会は8月にも結論を出す見通し。同省は研究班を設置して影響を調査したうえで同法施行規則を改正し、早ければ2008年4月から実施したいとしている。

昨年4月施行の改正結核予防法が一般職場でのエックス線検査の義務づけを廃止したため、同法に準拠する労働安全衛生法についても、検討会でエックス線検査の必要性が議論されている。

厚労省の案によると、40歳未満の若い世代では、エックス線検査で結核などの病気を発見できる利点よりも、放射線被曝(ひばく)による発がんの有害性の回避を優先。雇用時の健診でエックス線検査を受けた後は、医師の判断で5年に1回に省略できるとしている
(以上、日本経済新聞より引用)

この記事を、私のブログの以前の記事から整理して考えてみたいと思います。

これまで若い世代でも毎年胸部レントゲン撮影が行われてきたのは30年ほど前までは比較的社会に蔓延し、死亡率も高かった結核を早期に発見するためです。しかし、抗生物質の進歩で結核の蔓延と死亡率は激減しました。従って肺ガンの罹患率が低い若い世代で毎年胸部レントゲン撮影を施行する意義はなくなったのです。

しかし、その理由ですが「放射線被曝(ひばく)による発がんの有害性の回避を優先」とあります。これは間違いです。以前今話題のMDCTの被ばく量は?でお伝えしたように、私たちは宇宙や自然界から毎日被爆しており、日本における自然放射線被曝は年間2.4mSv(ミリシーボルト)であるのに対して、胸部レントゲン撮影1枚の被曝量は0.065 mSv、つまり自然放射線被曝のたった1日分にしか相当しません。たとえ80年間毎年胸部レントゲン撮影を受けたとしても、私たちが日常宇宙や自然界から受けている被曝量の80日分にしか相当せず、それが「発がんの有害性」につながるはずはないのです。それを言えば、1回の施行で5年分の自然放射線被曝に相当するCT撮影などは、よほどの有益性がなければ施行が禁止されるべきとなってしまいます。

従って、「40歳未満では医師の判断で5年に1回に省略できる」理由は、「放射線被曝(ひばく)による発がんの有害性の回避を優先」するためではなく、単に「有益でない」とするべきなのです。こういう記載では胸部レントゲン撮影には相当の発ガン性があると誤解されてしまいます。

一方、40歳以上に対する胸部レントゲン撮影は、健康診断の胸部レントゲン撮影が肺ガンを検出する率でお伝えしたように、特に現行喫煙者では1,000人あたり6.3人の肺ガンを検出することができ有用です。

ただし、胸部レントゲン撮影で肺ガンを見つけることと、それによって生命予後を改善させることができるかは別問題なのです。

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虫垂炎の確定診断の難しさ

2006年07月20日 | 総合
俗に「もうちょう(えん)」といわれる虫垂炎は、虫垂とよばれる大腸の一部が炎症を起こして、腫れ上がったり膿がついたりする病気です。最初はおへその周りや胃のあたりに痛みを感じますが、1日または2日で痛みが右の下腹部(おへその右ななめ下)に移動します。原因は不明ですが、腸の中に存在している細菌が炎症を広げ、これに不規則な生活や過労・暴飲暴食などが重なり引き起こされるケースもよくあります。繊維成分が少なく高蛋白の食事が原因になっている場合もあり、予防のためには暴飲暴食をせず、食物繊維を多く摂取することが必要です。

診断は症状や血液中の白血球の上昇から判断されますが、有効な治療は手術で虫垂を摘出することですから、診断が確定しないとなかなか手術に踏み込めないという医者泣かせの病気でもあります。

さて、そんな虫垂炎の診断には腹部CT撮影が有効という論文があります。ここではその有効性に関するデータのみならず、どれくらいの割合で確定診断に難渋するのかをお伝えします。

The status of appendiceal CT in an urban medical center 5 years after its introduction: experience with 753 patients.
AJR American Journal of Roentgenology. 2005;184:1802-1808.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★☆)

研究対象は、症状から判断して虫垂炎の疑いのあった753人で、668人は手術の前に腹部CT撮影を受け、残りの90人は腹部CT撮影を受けませんでした。腹部CT撮影を受けた中で39%が腹部CT撮影により虫垂炎と診断され手術をうけました。腹部CT撮影を受けなかった90人は虫垂炎の疑いがあったわけですから、全員が手術を受けました。

摘出された虫垂を調べ、実際に手術を必要とするほどの炎症がなかった確率は、腹部CT撮影施行群で3.0%、未施行群で5.6%でした。誤診率(こういうと語弊がありますが、最高の医療技術をもっていても避けられない確率です)は腹部CT撮影施行群で若干少なかったのですが、統計学的な差は認められませんでした。

結論の中で著者らは「5年前、誤診率は20%でありそれが7%になった。さらにこの研究では腹部CT撮影の使用で3%になった」と述べています。

別の観点からこの論文を解釈してみましょう。この研究はハーバード大学マサチューセッツ総合病院という世界で有数な医療先端技術をもつ病院で行われました。世界で有数な医療先端技術をもっていても3%の誤診がある、つまり、最先端の医療機器と細心の注意を払っていても、手術を必要としない軽度の虫垂炎(カタル性虫垂炎)を手術してしまう確率は3%あるということです。

これは、手術しなければいけない虫垂炎を手術しないでおくと腹膜炎などをおこして死亡してしまうこともあるため、確定診断にいたらない場合でも手術をしておいた方が安全であるからで、けっして診断ミスではないのです。

虫垂炎の手術のあとで、実際に手術を必要とするほどの炎症がなかった3%の患者さんに、「実際に手術を必要とするほどの炎症がなかった」と伝えられるかどうかは別の問題として、医者はこれらの背景と情報を手術前に患者さんに伝え、患者さん側も正確に理解できているのであれば、手術後に「実際に手術を必要とするほどの炎症がなかった」と伝えることは決して難しいことではないはずです。

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かぜ治療で小児科開業医らがガイドラインを作成

2006年07月18日 | 総合
小児科開業医が中心の「日本外来小児科学会」のワーキンググループは「かぜ症状(上気道炎)の子供に出す抗生物質を必要最小限にしたい」との考え方で、かぜ症状の治療ガイドラインを作りました。日本では「熱が出た子には抗生物質」と考える医師もいて、抗生物質の乱用が薬の効きにくい細菌(耐性菌)を増やし、治療の難しい髄膜炎や肺炎などの増加につながっているとみられるためです。

全国の小児科医にアンケートし、医師157人から患者3,055人について回答を得た結果では、発熱した子の90%以上に抗生物質を使った医師が39%いました。一方で、1割未満にしか使わなかった医師も10%おり、医師による方針の差も浮かび上がりました。

風邪はほとんどウイルス感染で、細菌感染には効果がある抗生物質も、ウイルス感染には効果がありません。

それでも使う医師は、「症状だけからは細菌感染を否定できない」「細菌感染の予防」などを理由にあげています。「昔は薬価差益が大きく、薬を多く使うほど病院がもうかった」などと指摘する声もあります。

抗生剤を使っても使わなくても肺炎などの合併症が起きる率は変わらず、むしろ使うと副作用で下痢や皮膚の異常などが増える、との海外の研究結果から、かぜ症状の治療ガイドラインでは10日から2週間は抗生物質を使わずに様子を見るべきだとしています。

せきが出る「気管支炎」や、せきや鼻水などの「急性副鼻腔炎」についてもほぼ同様としています。ただし、のどが腫れる「咽頭炎」の場合は、細菌(溶連菌)が原因だと診断した場合に限って、抗生物質を使うとしています。

大人に対する場合も同様です。日本は耐性菌が多く04年に英国の感染症専門誌に発表された欧米やアジアなどの国際共同研究によると、12歳以下の子供から検出された肺炎連鎖球菌にペニシリンが効かない割合は、参加18カ国の平均は25%だったが、日本は51%でした。別の抗生物質「エリスロマイシン」が効かない割合は、平均の37%に対し日本は83%に達しました。

一方で、「乱用防止は賛成だが、この内容はやや極端だ。海外のデータを根拠にしているが、日本の医師は大量の抗生物質を飲み薬として使ってきており、使わないと患者にどう影響するかデータはない。乳児や消耗の激しい子は後から細菌感染する心配もあり、使うべきだ」と反論もあります。

私の意見として一言
「症状だけからは細菌感染を否定できない」「細菌感染の予防」というのは非常に説得力のある意見だと思います。裁判でもそうですが、物事があることを証明することはできますが、物事がないと証明するのは「悪魔の証明」と呼ばれ非常に難しいのです。

そしてこの事象をさらに複雑にしているのは、割りばし事件で裁判長が被告に向けて「医師には専門性にとらわれることなく、患者に適切な治療の機会を提供することが求められている」と異例の付言をした事です。つまり「抗生剤を投与して細菌感染を予防する」ことは「患者に適切な治療の機会を提供する」ことに当てはまるかもしれないという懸念です。さらに、医療訴訟がこれほどまでに増えている現在では、医者として「抗生剤を投与しない場合に患者が死亡した時、訴えられないだろうか」という懸念の芽生えが避けられないからです。

こういう事態を改善するには、患者さん側に、抗生剤を投与しても投与しなくても、死亡は一定の確率で起こりうること、「抗生剤を投与して細菌感染を予防する」ことは「患者に適切な治療の機会を提供する」ことに当てはまらないことを知ってもらうことです。そして医者もそのことを患者さんに根気強く説明することだと思います。その上で「かぜ症状の子供に出す抗生物質を必要最小限にする」ことが必要です。

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メタボリックシンドロームの腹囲は糖尿病患者では動脈硬化性心疾患の予測因子にはならない

2006年07月16日 | 生活習慣病
最近、皆さんもメタボリックシンドロームという言葉をテレビなどのメディアを通して耳にすることが多くなってきたと思います。もともとは1999年に世界保険機構(WHO)により提唱された概念で、動脈硬化に悪影響を及ぼす要素をまとめて1つのシンドロームとしたものです。ここでは、糖尿病という事はすでにそれだけで独立した動脈硬化の危険因子なので、診断基準から除外されています。

メタボリックシンドロームの診断基準は(日本の基準)
ウエストが男性では85cm以上、女性では90cm以上、を満たし

1、収縮期血圧が130mmHg以上、あるいは拡張期血圧が85mmHg以上
2、中性脂肪が150mg/dl以上あるいは、善玉のコレステロールであるHDLコレステロールが40mg/dl以下
3、空腹時血糖110mg/dl以上

3項目のうち2項目を満たすものです。

さて、日本では糖尿病の患者さん2,000以上を対象とした大規模臨床試験Japan Dibetes Complications Study(JDCS)が10年前から開始されており、日本の糖尿病の患者さんのさまざまなデータが集められています。

そこで、それら2,000以上のデータの中で、メタボリックシンドロームの診断基準にあてはまる患者さんと診断基準にあてはまらない患者さんを比較して診断基準に当てはまる方が実際に動脈硬化性の心疾患(心筋梗塞など)の危険が高いのかが調査されました。

その結果、女性では診断基準に当てはまる方が動脈硬化性の心疾患の危険が高かったのですが、男性では両者の差は認められませんでした。つまり男性の糖尿病の患者さんにとってはメタボリックシンドロームの診断基準は無用であるという事がわかりました。

むしろ「中性脂肪が150mg/dl以上」または「HDLコレステロールが40mg/dl以下」という基準を単独で用いる方が動脈硬化性の心疾患の危険を予測する有用な因子になったのです。つまり男性では「ウエストが85cm以上」という診断基準が逆にリスクの予測精度を下げてしまっていたのです。

将来、日本のメタボリックシンドロームの診断基準はかならず改正されると思います。

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コーヒー摂取によってアルコール性肝硬変を防ぐことができる

2006年07月11日 | 消化器
Coffee, cirrhosis, and transaminase enzymes.
Achives of Internal Medicine. 2006;166:1190.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この研究では、健康保険に加入している様々な国の人々の中で、肝疾患がなかったと申告された125,580例から、1978年~1985年の健康診断におけるデータが調査されました。

2001年までに、これらの加入者の中の330例が肝硬変と診断され、そのうち199例はアルコール性肝硬変、131例は非アルコール性肝硬変でした。

コーヒーを1日に1杯未満飲用する人は飲用していない人に比べてアルコール性肝硬変の発症は0.7倍、1~3杯では0.6倍、4杯以上では0.2倍でした。非アルコール性肝硬変のリスクは、1杯未満では1.2倍、1~3杯では1.3倍、4杯以上では0.7倍でした。

カフェインを含む紅茶類の飲用は、アルコール性または非アルコール性肝硬変の発症を減少させなかったために、コーヒーの中に含まれるカフェインが原因となっているとは考えられませんでした。

また、コーヒーを飲用する人では、肝臓の障害時に上昇するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとアラニンアミノトランスフェラーゼが高レベルである人の割合が低いことも明らかになりました。

1日に4杯以上飲用する人における、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ異常高値のリスクは0.5倍であり、アラニンアミノトランスフェラーゼ異常高値に関しては0.6倍でした。

ただしこの研究では、研究を始めたときのコーヒーの飲用に関するデータを調べているので、その後に変化した習慣に関しては考慮されていないこと、肝硬変の程度ではなく肝硬変による入院や死亡を評価項目として使用したことが限界としてあげられています。

コーヒーにはいろいろな有益な作用があるようですが、、今回の結果に関して言えば、アルコール性肝硬変の予防には多量の飲酒を回避または中止することが一番ですから、アルコールの多飲が止められないからといってコーヒーを多飲するのはナンセンスのような気がします。

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軽いタバコでも疾病リスクを軽減できない

2006年07月07日 | 総合
Cessation Among Smokers Who Used "Light" Cigarettes: Results From the 2000 National Health Interview Survey.
Am J Public Health. 2006 Jun 29; (Epub ahead of print)
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究では、2000年に米国で32,374人に対して実施された喫煙に関する調査で、現喫煙者および喫煙歴のある人12,285例を対象として分析されました。

4,414人(37%)の喫煙者が、喫煙に伴う心疾患および肺癌のリスクを低減するために「軽い」タバコ(低タールかつ低ニコチンタバコ)を吸ったと回答しました。「軽い」タバコを喫煙する人の大半は女性、高学歴、白人でした。

また、「軽い」タバコの喫煙歴がまったくない喫煙者の禁煙率が53%であったのに対して、「軽い」タバコの喫煙歴のある喫煙者の禁煙率は37%と有意に低いことがわかりました。、こうした傾向は年齢とともに大きくなり、65歳以上では「軽い」タバコの喫煙歴がまったくない喫煙者の禁煙率がに比べて、疾病リスクを抑えるために「軽い」タバコを吸っていた喫煙者の禁煙率が76%低かったそうです。

「喫煙者は低タール低ニコチン含有タバコを吸うことで疾病リスクの低減を期待しているが、この研究結果では、この行為により禁煙率が有意に低下するため、まったく逆効果であることが示唆されている。さらに、年齢を重ねるほど、禁煙の可能性は一層減少していく」と結論づけています。


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日本もなかなか激しい(雑感その4)

2006年07月05日 | 雑感
帰国前夜、空港近くのホテルに泊まったときに撮影した町並みです。


帰国して間もないのですが、北朝鮮がミサイルを発射したり韓国がEEZを侵犯したりと、日本周辺もなかなか激しいですね。激しいと言えばこんな記事がありました。

医療過誤で22年余り療養生活を送り死亡したAさんの両親が、母校の大学に1,000万円を寄付。大学側は両親に感謝状を贈り、医療過誤に詳しい法律家を育てる研究所を来春、法科大学院に設置すると発表した。大学での会見に出席した父親は「勉強が好きだった息子は無念だったと思う。医療事故に詳しい法律家がたくさん出てきてほしい」と話した。大学側は寄付で基金を創設。法曹実務教育研究センター(仮称)では、弁護士に必要な面接や交渉の技術など実践的な教育や研究を行う。弁護士会と連携し、医療事故などの法律相談にも応じる。死亡したリンパ管腫のため病院で首の手術を受けた後、出血して容体が急変。呼吸困難から意識不明になり、重度の脳障害で寝たきりになった。Aさんと両親は同病院を管理していた国に賠償を求めてに提訴。地裁は病院側が適切な術後管理を怠ったとして、1億円余りの支払いを命じた。自宅に戻り療養していたAさんは昨年末に体調を崩し、意識が戻らないまま今年亡くなった。
(共同通信より引用、一部改変)

両親、御遺族の痛みには心から哀悼の意を表したいのですが、少し疑問なのは、1,000万円が医療事故を予防することを目的に寄付されているのではなく、起きてしまった医療事故をいかに裁くかということを主眼に寄付されていることです。日本もアメリカのようになっていくのでしょうね。私にとっては十分激しい記事でした。


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3年ひと昔(雑感その3)

2006年07月02日 | 雑感
日本に帰ってきました。空港ではチップ制でもないのに職員がきびきびと働き、両替カウンターでは偽札ではないかとお札をかざす人もいません。アメリカにも日本にはない良い点がありますが、10の事象をランダムに取り上げてみると、7つは日本の方がいい事、3つがアメリカの方がいい事という印象を受けます。日本は素晴らしい国です。


ところで、私が留学から帰国して最初にしたかったことの一つに、日本の寿司(アメリカでも寿司は食べられますが、カルフォルニア巻きとかではなくて、という意味です)を心ゆくまで味わうということがありました。早速、近所の回転寿司に行きました。勘定の時、店員さんは皿の数をかぞえるだろうと無意識の先入観を持っていた私は、驚きのあまり言葉がありませんでした。彼は手のひらほどの大きさのセンサーを取り出し、山積みになった皿の上にそのセンサーを軽くかざした一瞬で合計額を提示しました。皿には金額によって区別されたICタグが埋め込まれていたのです。そして合計額は手持ちICタグにコピーされ、カウンターにはそのタグを持って行くのです。その時の私は日本という玉手箱を開けた浦島太郎のようであったでしょう。

3年前、少なくとも私が行った回転寿司でそのようなICタグ入りの皿を見かけたことはありませんし、当然アメリカにはこのような技術が日常に浸透していることはありません。このように最近の日本の科学技術の発展には目を見張るものがあります。昨年1年間のアメリカでの特許取得数上位10社には2位のキャノンを筆頭に松下、日立、東芝、富士通と日本の会社が5社もランクインしています。新聞によりますと、バイオメトリクスの一つとして手のひらの静脈で個人を認識し管理する銀行や図書館が今後日本で急展開するそうです。

こういう事を考えますと、以前は「十年ひと昔」と言っていましたが、最近ではそういう言葉は通用しなくなっていることに気がつきます。今や「三年ひと昔」であり、三年前の発想や概念が今に通じなくなりつつあります。

「以前もそうだったから」という先入観を捨て、常に新しい発想で考える。しかもそれが3年前の事であっても・・・そんな事の重要性を思い知らされた帰国第1日目となりました。日本でも頑張ります。

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