医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

果物・野菜ジュースがアルツハイマー病を抑制する

2007年02月23日 | 神経
Fruit and vegetable juices and Alzheimer's disease: the Kame Project.
American Journal of Medicine. 2006;119:751.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

病棟医長を仰せつかってしまい、超多忙な毎日の中、なかなか更新できずごぶさたしています。

1992年から1994年に登録された日系米国人1,836人(平均71歳)を対象としてフルーツジュースや野菜ジュースがアルツハイマー病を予防することができるかが調査されました。

対象者はトレーニングされたインタビュアーによって、日頃摂取している食べ物、総カロリー数、日常の運動量、教育レベル、喫煙の有無、紅茶・緑茶の摂取量が調べられ、ビタミンC、E、βカロチン、飲酒量が換算されました。

平均6.3年の調査期間の間に81人がアルツハイマー病と診断されました。

日常の運動量、教育レベル、喫煙の有無、紅茶・緑茶の摂取量で補正された結果、フルーツジュースや野菜ジュースを週3杯以上飲んでいる群で、週に1杯以下飲んでいる群に比較して、アルツハイマー病の発症率はなんと0.24倍に抑えられていました。また、フルーツジュースや野菜ジュースを週2~1杯以上飲んでいる群で、週に1杯以下飲んでいる群に比較して、アルツハイマー病の発症率は0.84倍に抑えられていました。

サプリメントから摂るビタミンC、E、βカロチンの摂取量はアルツハイマー病の発症率と関連が認められませんでした。同時に日常の運動量、教育レベル、喫煙の有無、紅茶・緑茶の摂取量も関連が認められませんでした。

皆さん、アルツハイマー病の予防にフルーツジュースや野菜ジュースを飲みましょうとということで、さすがに週3杯以上も飲めませんが、確かコーヒーも健康に良かったので、ビタミンのサプリメントをコンビニで買うぐらいなら自動販売機で、フルーツジュース、野菜ジュース、コーヒーを買いましょうということです。
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動脈硬化の指標になるのは善玉コレステロール

2007年02月11日 | 生活習慣病
High apolipoprotein B, low apolipoprotein A-I, and improvement in the prediction of fatal myocardial infarction (AMORIS study) A prospective study
Lancet. 2001;358:2026.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

前回、日本動脈硬化学会は動脈硬化の進行に影響を与えるコレステロール値の判断基準を変更したことをお伝えしました。善玉コレステロールと悪玉コレステロールを分けて考える必要があることはかなり以前から気づかれていたのですが、それを証明する2001年発表の論文をご紹介したいと思います。

図は上から総コレステロール、悪玉コレステロールであるLDLコレステロール、善玉コレステロールであるHDLコレステロールの値によって致死性の心筋梗塞がどれくらい増えるかをしめしたものです。

一番よい状態を1とした場合、各値が増えるあるいは減ることによってどれくらいの危険が生じるかを示しています。

図の横軸はモルで示されていますが、コレステロールの1モルは約38mg/dlですから、38を乗すれば健康診断などで示されるmg/dlという単位に変換できます。

例えば一番上の表の総コレステロールが4.49モルすなわち170mg/dlである場合の心筋梗塞を発症する危険率を1とすれば7.40モルすなわち281 mg/dlである場合の心筋梗塞を発症する危険率は男性で1.8倍ぐらいになることを表しています。

一方、表の一番下、善玉コレステロールが増えれば危険率は0.3倍にまで減少しています。

つまり、これらの表の傾きが一番急なものが、その物質の値が変化したときに心筋梗塞を発症する危険率に一番影響を与えていると判断できます。それは一番下の表で示されている善玉コレステロールの量です。

善玉コレステロールすなわちHDLコレステロールの値の変化が心筋梗塞を発症する危険率に一番影響を与えているのです。

くどいようですが、この結果は2001年に公表されています。あくまでも「総コレステロール」を指標にして必要量以上の投薬が行われた方が製薬会社にとって利益になるため、あえてこれまで表沙汰にされてこなかっただけなのです。


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動脈硬化学会、コレステロール判断基準変更へ

2007年02月04日 | 生活習慣病
日本動脈硬化学会は、心筋梗塞など動脈硬化性疾患の予防や治療の指標から従来の「総コレステロール」をはずし、代わりに「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールなどを判断基準とする新しい診療ガイドラインを策定した。ガイドラインに拘束力はないが、多くの医療現場は対応が迫られそうだ。3日、福岡市で開かれた同学会理事会で承認された。

狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を招く「高脂血症」の診断基準には、一般的に総コレステロールが使われている。同学会が02年に策定したガイドラインでも、血液1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「高コレステロール血症」とし、心筋梗塞などを防ぐには220ミリグラム未満に抑えるよう求めてきた。

しかし、「高コレステロール」の中でも、「善玉」のHDLコレステロールが多い場合にはLDLコレステロールは通常より低く、動脈硬化につながりにくい。日本人はこうしたケースが多く、総コレステロールを基準にすると、必要量以上の投薬が行われるなどの問題が分かってきた。このため、5年ぶりの改定では「誤解の元」となる総コレステロールを基準から外し、高コレステロール血症は「LDLコレステロール140ミリグラム以上」とした。

これまでも、総コレステロール値は心筋梗塞を発症する危険性とは無関係、総コレステロール値が高めの方が長生きするなど、従来の基準に疑問を唱える意見があった。一方で、便利な指標として総コレステロール値を基準に診療する医師は少なくなく、生活習慣病予防では重要な指標となってきた。

策定の中心となった同学会動脈硬化診療・疫学委員長の寺本民生・帝京大教授(代謝学)は「日本人のデータに基づき、科学的見地から見直しを行った。総コレステロールを基準としてきた他の学会にも呼びかけ、基準の統一を図っていきたい」と話している。
(毎日新聞より引用)

「総コレステロールを基準にすると、必要量以上の投薬が行われるなどの問題が分かってきた」
製薬会社はこんな事をかなり以前から知っていました。必要量以上の投薬が行われた方が製薬会社にとって利益になるため、あえて表沙汰にしてこなかっただけです。

図は高血圧症、糖尿病、喫煙がない55歳未満の男性が今後6年間に心筋梗塞や狭心症を発症するリスクを示したものです。数字は1,000人あたりの発症人数を表しています。日本人のデータです。

ご覧のように、悪玉のコレステロールであるLDLコレステロールが200mg/dlであっても、善玉のコレステロールであるHDLコレステロールが70mg/dlあれば、リスクは1,000分の9であり、悪玉のコレステロールが120mg/dlしかなくても善玉のコレステロールが30mg/dlしかなければリスクは1,000分の9と同じです。

つまり、心筋梗塞や狭心症発症のリスクを評価するのには、総コレステロールなどという悪玉も善玉も一緒になった指標では意味がなく、善玉と悪玉を分けて考える必要があるのです。



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