医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

禁煙の広がりとともに肺ガンは減少している

2011年09月28日 | 
最近テレビで(フジテレビではないです)、武田邦彦という人が「喫煙は肺ガンのリスクでない!その証拠に喫煙者は減ったのに肺ガンは減っていない!」と言っていたので、本当かなぁと思い調べてみました。

ちょうど今月米国のCenters for Disease Control and Prevention (CDC)という公的機関が発表したデータがありました。

State-specific trends in lung cancer incidence and smoking --- United States, 1999--2008

左の図は10万人あたりの肺ガンの発症数の推移です。これをみるとこの10年間に女性は微増している地方があるけれど、全体としてはこの10年で肺ガンの発症率は15%ぐらい減少しています。

そもそも喫煙と肺ガン発症の関連は、明日から1年間喫煙するから再来年には肺ガンになるとか、今日から禁煙するからもう肺ガンを発症することはない、という関連ではなく、長年にわたる喫煙の悪影響が肺ガン発症と関連するのですから、最近の喫煙率が減っても肺ガンの発症が減らないからといって、両者は関係ないとは言えないです。

厳密には、こういう1つの因子対1つの因子の比較から結論づけてはいけないのですが、証拠は他にもたくさんありますから、今回はこれぐらいでご容赦願います。

武田邦彦という人、以前、「地球温暖化は二酸化炭素のせいではない!」と言っていた頃は、「この人、なかなかするどいなぁ」と思って見ていたのですが、最近は何か話題作りや売名行為に走りパッとしません。

原発事故による被ばくの件でも、「年間5ミリシーベルトでも労働災害と認められる例があるのですよ。5ミリシーベルトといえばレントゲン写真800枚分ですよ!」と、年間5ミリシーベルトの被ばくはとても危険で福島県の作物など到底食べられないという旨の発言をしていました。

しかし、5ミリシーベルトの被ばくで発ガン率が上昇するというデータはどこにもありません。

医学(科学)では証明できないことは、「そうだ」と言ってはいけないというのが基本で、国の救済では「そうだ」と証明できないことでも、怪しければ救済しようとするから、国が5ミリシーベルトの被ばく者を労災と認めたからといって、それが医学的に5ミリシーベルトはガンを発生させることにはなりませんね。

それに「5ミリシーベルトといえばレントゲン写真800枚分ですよ!」というのも、この人本当に科学している人なのかと思えるような発言です。

「このクリスマスケーキは厚さが5cmあって、画用紙800枚分にも相当する」という場合、①クリスマスケーキが厚い、②そもそも画用紙が薄い ①でも②でもどちらの可能性もあります。それを①と決めつけているわけです。この例ではどちらかというと②でしょう。レントゲン写真の例も、レントゲン写真1枚の被ばくが非常に少ないにすぎません。

この人、頭が切れると思っていたのにガッカリです。


なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウジテレビ発狂中(その3)

2011年09月17日 | 雑感
またしてもウジテレビの卑劣な行為が明らかになりました。

番組の中で恣意的に日本をバカにする表示を入れたのです


以前、ウジテレビの発狂をお伝えしました。

http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/e7af646833c9eea3c39b61f230a9a52e

そういえば、これに対して
「今までフジを見ておいていきなりワーワーゆうのはおかしい
結局テレビに出演もしてないし、出演者とかの気も知らないのに勝手なことを言い過ぎ
フジだってどこだって頑張ってる人は頑張ってる。考えがあさはか過ぎます」

というコメントがありましたが、ネットではウジテレビの社員が一般人を装ってこのようにコメントすることは容易です。こうコメントしたのはおそらくウジテレビの関係者でしょう。

私は10年以上前からネットで私見を書いていますが、ネットはそういうことが当たり前の世界です。

例えば以前
「中国が開発した次世代ステルス戦闘機「殲(せん)20」には、墜落して流出した米空軍のステルス攻撃機の機密技術が使われている」ことに関して書いたところ、

「ひろき」と名乗る者から「そのステルス戦闘機を出来てしまう魔法的な破片は日本にも一枚位欲しいものですね」と皮肉ったコメントがありました。

このように文法が怪しい文章を、日本人の大人なら決して書きません。
皆さんもお気づきのように、おそらく中国人が日本人を装いコメントしたのでしょう。中国人が「ひろき」という、いかにも日本人っぽい名前でコメントを投稿してくるのです。

さて、今回はウジテレビの連中からどういうコメントがなされるのでしょう、楽しみですね。


そんなに日本が嫌いなら、日本から出て行けと思われた方、こちらもぽちっと

「ブログランキング」に参加しています
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鉢呂吉雄 経済産業相が辞任 「死の町」「放射能」発言で引責

2011年09月10日 | 雑感
鉢呂吉雄 経済産業相は10日夜、東京電力福島第1原発事故の現場周辺を「死の町」と表現し、「放射能をうつしてやる」などと記者に発言した問題で、野田佳彦首相に対し、辞表を提出した。首相は辞表を受理した。鉢呂氏は10日午後には、記者団に対し辞任を否定していた。しかし続投すれば国会運営が行き詰まるのは確実で、辞任は避けられない情勢となっていた。首相は10日午後、視察先の岩手県陸前高田市内で記者団に「報道と(鉢呂氏)本人でおっしゃることに違いがあり、(会談で)しっかり説明をいただきたい」と述べた。鉢呂氏は10日昼過ぎ、「うつす」発言について都内で記者団に「言葉は正確に把握していないが国民に迷惑をかけ、不信の念を与えたのならおわび申し上げたい」と陳謝。そのうえで「全力を挙げて汚染の除去、事故の早期収束に向けて頑張りたい」と語った。 その後、視察先の神奈川県相模原市内でも「経産省でリーダーシップをとっていきたい」と述べ、重ねて続投の意欲を示した。
(産経新聞より引用)

普通の社会人ならどんな会話であれ、「こう言ったら相手が不快に思うだろうなぁ」と留意しながら会話するはず。こんな調子では、これまでさんざん他人を傷つけてきたのだろう。この人、学生の時、国語の成績が悪かったか、あるいは頭そのものが本当に悪いのではないか。こんな頭の悪い人が閣僚をしていていいのだろうか。

大丈夫か民主党

鉢呂吉雄 略歴
昭和41年 4月 北海道大学入学
昭和46年 3月 北海道大学農学部卒業
昭和46年 12月 今金町農業協同組合の職員として採用となる
昭和63年 5月 今金町農業協同組合参事となる
平成2年 2月 第39回衆議院議員総選挙(北海道3区)で初当選する

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

被ばくした親から産まれる子供のガン発症率は上昇しない

2011年09月07日 | 
テレビでは、福島の子どもたちに「私たちの子供はガンにならないの?」などとコメントさせ、根拠もなく不安を煽っていますが、「それは大丈夫だ」という根拠を1つ紹介したいと思います。

Malignant Tumors during the First 2 Decades of Life in the Offspring of Atomic Bomb Survivors
Am. J. Hum. Genet. 1990; 46:1041.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究は広島と長崎で被爆した大人がその後出産した子供のガンの発症率を20年間にわたり調査したものです。被曝量は被爆者の状況によりDS86という計算式で推測されました。そして、被爆していない大人の場合と比較されました。

上の図はこの論文に掲載されているものです。スマートフォンでご覧になっている方には見にくくて申し訳ないですが、そういう方はPCで見直してください。

一番上にあるのは被曝量で、.01-.09 Svは0.01シーベルトから0.09シーベルトということですから、10~90ミリシーベルトということです。それだけ被爆した親から産まれた子供が広島と長崎の合計で10,642人調査されたという意味です。

1.00-2.49 Svすなわち1000ミリシーベルトから2490ミリシーベルト被爆した親が2295人いたりして、福島原発事故での被ばく量とは桁違いに高いです。子供を産んだ後は死亡しているのかもしれません。

下の図は、いろいろなガンの発症数ですが、一番下が合計です。親の被曝量がたとえ1000ミリシーベルトから2490ミリシーベルトであっても、発症数を親の人数で割った発症割合は変わらないという結論の論文です。

子供の被ばくとガンの発症率を調べるには、チェルノブイリか長崎か広島しかなく限定的ですが、福島原発事故程度の被ばくが子供のガンの発症にほとんど影響を与えないという論文は、その他にもたくさんあります。今後折を見てご紹介したいと思います。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バイパス治療はうつ病を増やすが認知症は増やさない

2011年09月06日 | 神経
前回、心臓の血管3本ともに狭窄がありSYNTAXスコアーという重症度を評価するスコアーが33以上の重症の場合は、ステント治療は心臓バイパス手術と比較して3年間の死亡・心筋梗塞・脳梗塞が多いことをお伝えしました。

今回は、治療後うつ病認知症はどうかという研究です。
Dementia and Depression with Ischemic Heart Disease: A Population-Based Longitudinal Study Comparing Interventional Approaches to Medical Management.
PLoS One. 2011 ;6:e17457
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

今年発表されたばかりの比較的調査人数の多い研究です。

カナダにおいて1998年から2003年の間に動脈硬化性心臓疾患であった37,186人を調査した結果、薬物治療だけを受けていた人35,237人、ステント治療を受けた人711人、バイパス手術を受けた人1,238人が2006年まで調査されました。

調査する途中で何らかの理由で調査が継続できなきなった人を除くと、最終的に調査できたのはそれぞれ34,508人、629人、1,124人で、治療後の認知症、うつ病の発症率が調べられました。

結果は上の図のように、薬物治療のみ(IHD Medical)に比べてステント治療(PCI)は1.26倍、バイパス手術(CABG)は1.32倍うつ病(Depression)を増やしました。ステント治療とバイパス手術の比較では差はありませんでした。

認知症(Dementia)は、薬物治療のみに比べてステント治療は0.65倍に減らしました。しかし、バイパス手術は0.90倍と、統計解析上減らしているとは認められませんでした。ステント治療とバイパス手術の比較では差はありませんでした。

なぜステント治療やバイパス手術ははうつ病を増やし、ステント治療は認知症を減らすか、その理由は今後の研究を待たなければならないと書かれてあります。

私が考えるこの研究の限界は、もちろん無作為割り付けがなされていないこともそうですが、多変量解析がなされていないということです。バイパス手術群ではステント治療群と比べて男性が多く、糖尿病と高血圧が少ないなど、両群の条件がそろっていません。これらの因子をバイパス手術なのかステント治療なのかという因子に加えて多変量解析する必要があります。

この研究の背景(研究が行われた地域、国、医療レベルなど)においては、男性は認知症になりやすく(例えばの話です)、バイパス手術群では男性が多いので、それが結果となって現れたという交絡因子が否定できないからです。

前向きで、無作為割り付けで、多変量解析で分析する研究が待たれます。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心臓バイパス手術 vs ステント治療 CREDO-Kyoto

2011年09月01日 | 循環器
学会で発表するためにパリに来ています。上の図は今回の学会で発表された結果です。

赤線はバイパス手術、青線は薬剤溶出性ステント治療です。図は重症度を評価するSYNTAXスコアーが33以上という重症の場合の3年間の死亡、心筋梗塞、脳梗塞の発症率を表しています。薬剤溶出性ステント治療の方が死亡、心筋梗塞、脳梗塞が多いです。


心臓の血管が狭くなった状態を治療するのにバイパス手術とカテーテル治療がありますが、カテーテル治療には次の3つの段階がありました。

第1時代、先端に風船がついたカテーテルを使用して狭いところを広げる風船治療(1980年代)
第2時代 、ステントという金属を狭いところで広げて留置しておくステント治療(1990年代)
第3時代 、再び狭くならないようにする薬剤を塗ったステントを留置する薬剤溶出性ステント治療(2000年代~)

1の時代には、心臓の血管3本ともに狭窄がある場合、風船治療とバイパス手術のどちらが患者の予後が良いかということに関して風船治療はバイパス治療ほど成績が良くありませんでした。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は2に突入しており、風船治療をしている医者たちは「今やステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらずステント治療を続けていました。その後、やはりステント治療はバイパス治療ほど成績は良くないことが研究結果から分かりました。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は3に突入しており、この時もステント治療している医者たちは「今や薬剤溶出性ステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらず薬剤溶出性ステント治療を続けていました。

さて、今回の学会では日本において薬剤溶出性ステント治療とバイパス手術のどちらが患者の予後が良いかという、これまで繰り広げられていた論争に終止符を打つ画期的な結果が発表されました。

心臓の血管3本ともに狭窄がある2812人を調査しSYNTAXスコアーという重症度を評価するスコアーを用いて患者を分けた場合、SYNTAXスコアーが33未満という軽症~中等度の場合は、バイパス手術と薬剤溶出性ステント治療の成果は同じでしたが、33以上という重症の患者の場合は、明らかにバイパス手術の方が成果があったという結果です。

これまで同様の研究は欧米で行われて、2009年9月にNew England Journal of Medicineで公表されていました。結果は総合してみると,主要心脳血管イベントの発生はバイパス手術群のほうが有意に良好で、この傾向は病変が複雑になるほど強く、複雑病変ではバイパス手術が適しているという結果でした。

しかし、ステント治療している日本の医者たちは、「日本の医者は欧米の医者よりも手先が器用で、ステント治療が上手だから、この結果は日本には当てはまらない」と主張を続けていました。

今回の学会での発表はその主張を覆すものでした。

ここで、ある例えを紹介させてください。
8月15日 中国は「わが国の高速鉄道には知的財産権を主張できる技術は存在しない」と認めましたが、あの中国鉄道事故を時系列でまとめてみました。

6月30日 北京と上海を結ぶ路線が開通。これに先立ち、川崎重工の技術をベースに鉄道開発を手掛けた現地企業「中国南車」は、米国をはじめ世界各国で新車両を「中国の独自開発」と特許を出願した。

7月7日 鉄道省報道官の王勇平氏がすべて「独自の技術」だと明言。日本の将来の高速鉄道建設計画に向けて「日本に技術を提供したい」とまで言い放った。

7月15日 王報道官は、故障の多い中国高速鉄道に批判が高まっていることに対して、「日本の新幹線だって頻繁に故障する」として、延伸開業した日本の東北新幹線が初日から故障し、1カ月後にもシステム故障などで大きな遅延が発生したことを例示。「中国人は問題を自己解決できる。他人は自身のことをしっかりやってから物を言っていただきたい」と断じた。

7月23日 高速鉄道事故発生

8月15日 人民日報は、中国で可能なのは塗装や座席の取り換えぐらいで、特許出願どころか外国製の安全制御システムの操作すらできない実態を明らかにし、「わが国の高速鉄道には知的財産権を主張できる技術は存在しない」と認めた。

ここで、注目すべきは、中国はやっとウソを認めた(評価できる)ということより、①7月7日の王報道官の発言は全くのウソであった、②7月7日以外の過去の発言も信用できない、③今後も王報道官の発言は信用できないということではないでしょうか。

さて、バイパス手術とステント治療の話に戻ります。当時、「今や薬剤溶出性ステント治療の時代なのだから、バイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し間違った治療を続けていた医者たちの罪は計り知れないということです。

こういう研究結果はあくまでも平均の話である、個々の患者をみた場合、SYNTAXスコアーが33以上の重症の場合でも、ステント治療が勝ることはあると主張する医者もいるでしょう。しかし、ステント治療が勝る患者とそうでない患者をどういうふうに区別するのでしょうか。医者の主観ですか?この研究では、そういう患者の層別化をSYNTAXスコアーという形で行っているのです。それに、心不全の予後の改善にβブロッカーなどを処方し、ワーファリンよりも数パーセント出血性合併症が少ないからプラザキサを処方しているのは、平均から分かった医学研究に従っているわけです。そういうのは研究の結果に従って、バイパス手術とステント治療の研究の時は、平均の結果であり個々のケースで異なると主張するのはダブルスタンダードです。

患者の強い希望や脳梗塞リスクの高い場合などは別として、SYNTAXスコアーが33以上の重症の患者に、これ以上薬剤溶出性ステント治療を続けるとすれば正当な理由が必要です。

それに、患者の強い希望とか言っても、ステント医自身も心の中では「説明のしかた次第」だと思っているはずです。

「説明のしかた次第」・・・・こんなのは医者の間では常識。だからこそ医者は良心を見失ってはいけないのです。

以前、ステント治療をしている医者が「ステント治療はバイパス手術を駆逐する」(駆逐:不適当と思われるものを追い払うこと)という講演をして、心臓血管外科の先生方から失笑をかっていましたが、こういうステント医たちは猛省しなければなりません。

そしてそういうステント医たちが集う学会の信頼性も失墜します。

なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする