最近でもっとも強烈な薮漕ぎ登山だった昨年10月のエガミ山
「薮山」とは、一般的には登山道がない山をいう。北海道でも登山道のある山は、250山ほどであろう。自分の記録をみても、670山以上登っているので、400山以上はその薮山を登っているはずである。しかし、それらのピークに立つための楽な方法は、薮を漕がなくても済む積雪期の登山である。ここでは、その積雪期を除く、いわゆる薮漕ぎ登山に限定して述べてみたい。
自分の記録でも、正確に数えていないが、登山道のない山の1/3は薮漕ぎで登頂しているはずである。拙HPの「山域別目次」 「五十音別目次」の茶色の文字で書いてあるのが、登山道のない山で、山名の後ろに(薮)と記入しているのがそれである。ちなみに、(雪)と書いているのは、積雪期の記録である。
1、薮山とはどんな山か
これまでの経験からすると、「道がない=藪がある」というわけではなく、たまには、道はないけど薮のない山もある。一括りに「薮」といっても、植生によってさまざまである。単なる草付き斜面から、一番多い笹薮や灌木帯、さらに、もっとも厄介なのは、背丈を超えるようなネマガリダケとハイマツ帯である。それも、密度の濃さによってはさらに厳しさが増す。
概して積雪の多い日本海側はネマガリダケが多く、大雪山系や日高山系ではハイマツが多い。日高山系でも、南の方の海岸近くの山は膝丈より低いミヤコザサに覆われた楽な所もある。また、北向き斜面や尾根の方が薮が薄いことが多い。
これまでの経験からすると、最初から薮に突入する場合もあるが、多くは、車で入れるところまで入って、林道や踏み跡を利用してできるだけ頂上に近づき、そのあと薮に突入する場合が多い。そのほかに、薮を漕がないで済む沢登りで源頭近くまで登り、そのあと薮を漕ぐ場合も多い。この場合、難しい沢登りにはそれなりの技術が必要である。
また、薮山だと思っても、国有林境界管理歩道の刈分け道や送電線の管理歩道などがあって助かる。これについては、情報収集によって、予めそれらを利用しての登山も多い。
2、薮山の能力と技術
薮山に一番要求されるのは、技術以前に気力と体力である。最後は根性と言っても過言ではない。
薮山に必要な技術としては、ルートファンディング能力(ルート探し)であろう。地形や植生を読みながら安全で登りやすいルートを探しながら歩くことが望まれる。
自分も、以前は地形図と磁石で歩いたが、今は、ハンディGPSが最高の武器である。
3、薮山のアイテム
今は、方位磁石もついた地形図内臓のGPSが最高の武器である。地形図上に現在地が表示され、進んできたトラックログが残るのが心強い。迷った場合や、同じコースを戻る場合は、そのトラックログを辿って歩けばよい。
しかし、2万5千の地図は絶対必要である。自分の場合は、国土地理院のweb地図を必要部分だけ切り取って、プリントアウトして、A4版の透明袋に入れて持参している。GPS画面に表示されるのは狭い範囲だし、広範囲の地形を読むためにも絶対必要である。
また、使うことは少なくなったが、GPSの故障に備えて、方位磁石も持参している。
激藪の中で、頂上を示す三角点を見つけたときには最高の喜びである。(三角点の周りを刈払っての撮影)
4、服装
薮山の場合、薮を掻き分けて歩くので、長袖、長ズボンは必須である。それも、汚れるし、裂けたりもするので、着古したシャツやズボン、安い作業ズボンやジャージーで十分である。
靴は、自分の場合は、圧倒的にスパイク長靴である。滑らないことが一番の強みである。あとは小沢の渡渉や濡れた薮には強みを発揮する。
濡れた薮(雨上がりや露)を漕ぐときには、ゴアテックスはすぐに劣化するので、使い古したゴアテックスの雨具を薮漕ぎ専用に使っている。
手袋は、軍手よりは濡れないで、木の枝などを掴んでも滑り止めの付いた薄いゴム手袋が有効である。登山ポールは邪魔になるので、使うことはない。目の保護のために、透明のサングラスもお勧めである。
特にネマガリダケを漕ぐときは、黒カビでドロドロになるので、リュックも古いものを薮山専用にすることが望ましい。
5、藪山の基本は尾根歩き
尾根は狙った頂上へ繋がっているし、地形が読みやすい。また、細い尾根は藪が薄いことが多い。
特にネマガリダケの場合は、斜面では下に向いて傾いて生えているので、尾根の方が歩きやすい。また、背丈を超える薮の場合は先が見えないので、尾根の方が足元の地形を見ながら高い方へ登って行けば良いので、迷うことはない。
それも、安全そうな尾根を選ぶ・・・とんでもない傾斜の尾根やゲジゲジマークに囲まれた尾根は敬遠する。特に尾根の途中で崖マークが出てくる場合、突破できずに撤退の危険性もある。
6、鹿道や踏み跡の利用
尾根の上には、鹿道や人の通った微かな踏み跡があることが多い。それらを上手く見極めて、利用すれば楽である。ただし、自分が進みたい方向へ続いているとは限らないので、常に読図が大切である。
また、微かな踏み跡を見極めるコツも、藪山を多く歩いているといつの間にか一般登山者よりもルートを見分ける力が付いてくるのは確実である。
7、下山が最大の難関
薮山の場合は、登りは高い方へ向かって登れば良いし、尾根はすべて収束するので、迷うことはほとんどない。迷うのは圧倒的に下りである。特に見通しのきかない幅広の尾根は、下る方向を間違ったり、尾根の分岐で別の尾根を下ってしまうことが多い。自分もGPSのトラックログに助けられたことが多い。
下山で迷ったら、よく言われるようにここまでは正しいルートだと確信できるところまで戻ることが重要だ。
そのためにも、自分の場合はGPSがあるのでしないが、登りで目印を付けていくのが非常に有効な手段である。ピンクテープも良いが、北海道の名前のある山全山踏破した故Ko玉さんは、木の枝や笹を折り曲げながら登ることが多かった。
最後に
今までの経験から学んだことを簡単にまとめてみた。まだまだ書き足りないことは多いし、異論があるかもしれないが、多少でも参考になれば幸いである。くれぐれも自分のレベルにあわせて無理のない藪山に挑戦していただきたい。
なお、異論や付け足したいこと、問い合わせたい等があったら、遠慮なくコメントやメールをいただければ幸いである。
薮でも、胸より低い場合は、密度が濃くても歩きやすいし、下りは登りよりずっと楽だ。
(故Ko玉さんの在りし日の後ろ姿)