あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

西田税 『 士林荘』

2017年08月05日 12時23分17秒 | 西田税

士林莊
昭和二年
二月十五日、
私は未決監から出所致しまして、代々木山谷に

1、人類を正導すべき則天日本の建設
2、白人種の隷従より全有色人種の解放
3、国家生存権の国際的主張
 等の綱領を掲げて士林莊の看板を掲げる


西田税
天劔党事件 
天劔党規約
天劔党中央本部
目次
一、諸友同志ニ告グ
   ――附 消息誌 「 天劔 」 発刊
一、天劔党大綱
一、天劔党戦闘指導綱領
第一章 総則
第二章 統制、連絡
第三章 戦闘
第一節 要則
第二節 戦闘指導細則
同志録
一、本部    士林荘
 士林荘ハ同人組織ヲ以テシ主トシテ在京同志中ノ有士ヲ以テ結束ス
 同人氏名ハ後号ニ発表スヘシ
東京市外代々木山谷一四四 代表 西田税

・・・ 天劔党事件 (2) 天劔党規約 
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『 雄叫 』 第一號  士林荘本部  ( 昭和三年 十月 )
雄叫
宣言
今や日本國民は對内的にも對外的にも、奴隷解放を戰はざるべからざるの秋を迎へた。
實に見渡す限り、全世界を荒椋し全人類を支配するものは
人間生存の理趣と 其の躍進的且歴史の無視否認以外の何物があるか。
過去若くは未來を現在に須いんとする錯誤と人間ならぬ物慾僞理とは普く世界を横行して、
今の時に値せざる人間と其の世界とを造り出して居る。
然して今日、人類が嘗めつゝある慘苦と惱悶とを最も深刻に體験しつゝあるものは吾が日本だ。
日本を包んで外より之れを絞らんとするものは、老獪なる英米的資本主義、
狂妄なる露國的共産主義の双頭の毒蛇である。
日本を内より崩壊せんと企つるは、是等の模倣直譯やくと反動的錯誤とである。
然も日本は國際的に、白人専制の世界に於て呪はれたる特殊部屬たり同時に首たる無産階級だ。
---此の世界的苦悶のどん底にある吾等こそ、
選ばれたる人類最後の戰士として開放戰を戰はざるべからざる運命の兒であるのだ。
吾等は天の道法に則り、人間生活の理趣に基き、
物慾僞理錯誤の憎むべき臣妾奴隷及び其等の荒椋によりて
人間的一切を抑奪されたる痛ましき多數の人々を匡救すべく、
遂に人間奪還の聖戰を戰はざるを得ぬ。
然して現代人類の是くの如き悲命亡運を轉回すべき最後の戰場は、選ばれたる戰士吾等が立てる日本だ。
吾等の誓願は此の日本に於ける現狀打開---奴隷解放戰の遂行克服なると共に、
再建したる日本を旋風的中心とする世界革命戰の遂行にある。
玆に 『 日本 』 を透して普く世界に宣言要求する。
---人間生存の理趣を殘賊する一切の錯誤と物慾と僞理と去れ。
正義の太陽輝く 『 光の國 』 現はれよ。
頭なき政治家の齷齪、脚なき思想家の喧懆、理なき資本家の横暴、
誠なき社會運動家の跋扈ばっこ、道なき藝術家の獣行に超出して、
吾等は吾等に適はしき國民の日本、吾等の日本に適はしき世界を實現すべく、
普く戰士を全國に求む。
士林莊同人

綱領
人類ヲ正導スベキ則天日本ノ建設
一切ノ奴隷的思想ト其レヲ根基トスル組織、運動ノ拒絶
國民理想ノ闡明ト其ノ信仰的情熱ノ激成
國民人權ノ確立ヲ以テ國民國家ノ完成
人生ノ理趣ニ基ク社會ノ實現
經濟ノ國家的統制ニヨル國民生活ノ安定向上
道義的對外策ノ遂行ト其ノ爲メニ軍備ノ躍進的充實
白人種ノ隷從ヨリ全有色人種ノ解放
國家生存權ノ國際的主張
日本文明ノ世界的宣揚

主張
人間奪還の戰途に立つ
一、人間の生損は單なるパンのみによりて榮まるゝものでない。
 單なる個人主義でゞもない。と同時に個人の一切を否認する共産主義でゞもない。
人間が他と特異なる点は、一二 『 よりよき生存 』 を希求し 歩一歩之れを實現して行く所にある。
开は 『 よりよからんとする心 』 あるに因る。
然して此の心はパンのみによりて其の自然的生命の保續ほぞくをなす所の他の一般生物に對して
明かに人間の特別者なることを意味するものである。
同時に、不断なる 『 よりよからんとする心 』 が 『 現在に甘んぜざる心 』 なることに於て、
即ち、其の各々の慾救の限りなきことである。
此の心は何物と雖も否認することを得ぬ。
是れ自己本位、個人主義が人間の心に永存する所以の根本である。
然るに、生物の一個である点に於て人間はパンより離るゝ能はざること、
生物としての自然的生命を享有せるが故に他と等しく其の生存の境域資源範囲に限界があり制限があること、
集團生活を榮むこと、等々の幾多の條件は、
『 よりよき生存 』 のために断じて各自の單なる個人的絶對性を其儘に放任するを得なかった。
斯くて、人間生存の組立つるものは、向上的精神生活であり パンの物質生活であり、
個人本位の生活心理であり 社會公共的生活心理であり、
同一の根據に出でゝ複数なる是等の諸相は有限なる生活環境に對して必然相互の間に秩序と統制とを導びき來りて
政治生活を齎もたらして居るのだ。
是の生活諸相の諧調されたる所に、始めて人間の眞實なる生活がある。
二、・・・・略・・・・
三、・・・・略・・・・
四、嗚呼、吾等は人間なるが故に人間生活をなさんことを熱望する。
 日本に生を育まれて居るが故に日本國家に国民としての人間生活をなさんことを祈る。
然るに現狀正に是くの如し。
---今や吾等は、内外共に是の奴隷の鐡鎖を寸斷し禁制の鐡扉を打開すべく、
唯一の解放戰あるのみである。
國民よ起て。
同志は征旗を押立てよ。
國内に蔓はびこる資本主義と共産主義とを軀逐せよ。
人間を奪還して國民日本を建設せよ。
國民日本を旋風的中心として世界革命に前身せよ。
斯くて、吾人は聖戰を戰ふべく 玆に士林莊同人に團結した。
---同志は士林莊に集まれ。 國民は我等を支持せよ。

士林春秋
不戰條約の成立。
正黨の動揺。
米価暴騰。
思想善導案。

日本改造法案大綱
ポケット型普及版近刊  ・・< 註 
著者は吾等が戰ふ聖戰の指導的中心だ。
同時に本書は此の著者によりて指示されたる改造方針であり指導精神である。
經典である。
今や時運の大濤狂瀾沖天の勢をあげんとするの時、
吾等は本書が普く全國に塾讀理解されんことを切望せざるを得ぬ。
少くも同憂同志の人々の懐中不斷に本書の存在せんことを祈るものだ。
玆に熱烈なる同志 田中操氏の幾年血涙の努力に財源を得て、ポケット型縮刷普及版の初版千部を公刊する。
從來の型を一變して縮小したのは携帶に便ならしむる意味だ。
定價を付して有償にしたのは、此の賈上金を以て更に第二版第三版出版の經費に充當せんとするからである。
同志は各地書店と強力し各々其の數部數十部を分澹ぶんたんして思想理解の普及、
同志の糾合養成、行動の便に資せられたい。
廣く賈つて戴きたい。
詳細なる事は、本紙添付の印刷物によつて御承知ありたい。
尚、必要なる事項については左記宛に御照會の上、萬事遺憾なき連絡の下にそれゞ御協力御奔走あらんことを祈る。
士林莊本部

消息
・・・・略・・・・
一人の同志は少くも卽時新しき五人の同志を作れ。
十人の同志を作れ。
---混乱が加速度を以て信仰する時、吾等同志はそれ以上の加速度を以て増大されて行かねばならぬ。
「 雄叫 」 は聖戰を戰ふべき戰士同人を求めんとする戀文れんぶんである。
全國同志の消息戰況を彼此通ずる書簡である。
單に呈示して足るべき吾徒の理想方針信條の収錄である。
相互鍛錬のための研究論議の書物である。
時に經典である。
吾徒戰闘のための指示書であり訓令文である。
然も此の片々たる印刷紙は、今の時窮苦の中にある吾等有志の血と汗との結晶でゞもある。搉
同志諸君は本紙が負へる使命と有志の微衷とを諒察し 同時に吾徒戰線の壙大進展のために、
本紙の永續と發展とのために、確實に規定の月額經費を負擔して戴きたい。
一と月、ゴールデンバツト一個半の節約を以て足るべき負担に過ぎない。
同人氏名は逐號紙上に掲載するであらう。
參加者はどしゝ本部に御通告ありたい。
尚各地の御近況を通報せられたい。
嗚呼、遂に久しき隱忍自重から蹶起する秋は來た。
無限の希望と無量の感慨を以て玆に第一號 「 雄叫 」 を送る。

全國の同志は即時士林莊同人に團結せよ! 一人の同志は即時少くも五人の同志を作れ!
「 雄叫 」 を支持せよ! バツト一個半を節約して國民運動に参加せよ!

規約
一、士林莊同人ハ目的信條ノ体現貫徹ヲ期ス。
 同人ハ一切ノ艱苦を冒シ肝脳ヲ竭つくして戰フコトヲ誓盟ス。
二、士林莊同人ハ對外責任ヲ負荷スヘキ代表一名ノ外 役員ヲ設ケス。
 各員ハ相互ノ密接ナル連絡ヲ保持シツヽ分ト質に應シテ各々其ノ十全を竭スヘシ。
三、士林莊同人ハ互選ヲ以テ代表一名ヲ置キ 本部トノ直接連絡ニ當ラシムヘシ。
 一地方ニ同人二名以上アル場合ハ互選ヲ以テ代表一名ヲ置キ 本部トノ直接連絡ニ當ラシムヘシ。
附則
一、本部ハ 「 雄叫 」 ヲ頒布ス。同人ハ其經費月額拾銭ヲ納入スルモノトスル。
二、特別ノ計畫、事變等アル場合ハ其都度本部ヨリ告知シ行動ス。
昭和三年九月三十日印刷  ( 以印刷代謄冩 )
昭和三年十月一日發行
東京市外代々木山谷一四四
發行者  士林莊本部
代表  西田税
東京市芝區金杉川口町二四
印刷所  士林莊印刷所

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註  
普及版の刊行に際して
日本改造方案の普及は吾等多年の期望であつたが、何事も思ふにまかせぬことばかりであつた。
斯の版は同志田中操君の努力によりて刊行せらるゝものである。
田中君は一下級船員である。
本書を天下に普及せんと欲するが為めに
同君は五年間僅かなる賃銀を摘んで此度の出版費を提供された。
吾等は、君の深甚なる志願と不断不屈の努力に対して無限の感激敬意を献ぐる者である。
三年前、編集者は著者の意をうけて第三回の公刊頒布をしたことがあるが、
田中君の普及版は其れに同じいものである。
只異なる悦ぶべき点は、六年前公判の時に当局から伏字にせられた改造行程の手段手法の部が、
此度其の大部分を解除されたことである。
この事は別に隠れたる同志増田一悦君の努力によるものである。
併せて玆に感謝の意を表する次第である。
昭和三年十月  
編集者 西田税


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