あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

磯部淺一 ・ 獄中手記

2017年07月21日 12時36分14秒 | 磯部淺一 ・ 獄中手記

死刑の判決うけた七月五日から
同志十七名一棟の拘禁舎に集められた
刑の執行前十一日迄は吾々は大内山の御光を願った
そして必ず正義が勝つ
吾々をムザムザ殺すと云ふ様な事は 或は ないだらふと 信じようとつとめた
そして毎日猛烈な祈りをした、誰も彼も死ぬものか、

死んでたまるものか、
殺されてたまるものか
千発玉を受けても断じて死なぬ
等々と激烈な言葉によつてヒシヒシとせまる死魔に対抗した、
刑の執行迄の数日間はそれはそれは血をしぼる様な苦しいフンイキであつた
國の為どうしても吾々の正義を貫かねばならぬ
吾々が殺されると云ふことは
吾々の正義が殺されると云ふことだと
皆な沖天の憤激を以て神をシカリ 仏をうらんだのであつた


磯部淺一 
獄中手記

目次

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・ 
獄中手記 (1) 「 義軍の義挙と認めたるや 」 
・ 獄中手記 (2) 「 軍は自ら墓穴を掘れり 」 
・ 
獄中手記 (3) 磯部菱誌 七月廿五日 「 天皇陛下は青年将校を殺せと仰せられたりや 」 

・ 
獄中手記 (一) 「 一切合財の責任を北、西田になすりつけたのであります 」 
・ 獄中手記 (二) ・ 北、西田両氏を助けてあげて下さい 
・ 獄中手記 (三) の一 ・ 北、西田両氏の思想 
・ 獄中手記 (三) の二 ・ 北、西田両氏の功績 
・ 獄中手記 (三) の三 ・ 北、西田両氏と青年将校との関係 
・ 獄中手記 (三) の四 ・ 尊皇討奸事件 (二・二六) と 北、西田両氏との関係 
・ 獄中手記 (三) の五 ・ 大臣告示、戒厳命令と北、西田氏 
・ 獄中手記 (三) の六 ・ 結言 「 軍は既定の方針によつて殺す 」

北、西田両氏を助けてあげて下さい
決してアキラメてはなりません、
私は、神仏冥々の加護が北、西田両氏の上に
としてかかってゐることを確信して居ります。
両氏を見殺しにする様な日本國でも神々でもないと信ずるのです。
この確信のもとに、いささかの意見を陳べます。
これを参考として、
皆様の御交際方面の國士有士を總動員して、
御活動の上、両氏を御助け下さることを祈ります。


河野司編 二・二六事件獄中手記遺書 / 二・二六事件 (別巻) から


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