( 7月12日 )
香田大尉の声が聽こえた。
「 大蔵ッ、わかるか ッ・・・・・・」
「 わかるぞッ、
貴様らの蒔いた種は決して枯れることはない、
必ず芽をふくから安心しろッ 」
私もたまりかねて大きな聲を上げた。
「 後をたのむぞッ 」
「 ヨーシ引き受けた。
安心してあとをふり返らず、
まっすぐ前を向いて笑って死んでゆけッ 」
・・・長恨のわかれ 貴様らのまいた種は実るぞ!
( 7月13日 翌日)、
私はさっそく豫審官に呼び出されて。
「 君、後事を托されたそうだな 」
「 ハイ、托されました・・・・」
豫審官は兩眼に涙を浮かべてきいていた。
この後事を托されたということが、
私の刑期に大きな影響を与えたことがあとでわかった。
・・・大蔵栄一 二 ・二六事件の挽歌
反駁 3
後事を託された人達
目次
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・ 反駁 ・西園寺公望襲撃 (中止) 鈴木五郎 井上辰雄 塩田淑夫
・ 反駁 ・ 菅波三郎 「 昭和皇政維新法案は澁川が書いたのです 」
・ 反駁 ・大蔵榮一 「 昭和維新トハ大和魂 、即チ魂ノ革正ヲヤルコトデアル 」
・ 反駁 ・青森聯隊 「 師團は我々と共に行動する體制にあり 」
・ 反駁 ・末松太平へ西田税からの傳言 『 出る工夫をせよ 』