あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

38 二 ・二六事件北 ・西田裁判記録 ( 一 ) 『 北・西田の検挙~北ノ起訴前の供述 』

2016年10月28日 05時08分34秒 | 暗黒裁判・二・二六事件裁判の研究、記録

一  はじめに
一九九三年二月、
それまで東京地方検察庁の倉庫に眠っていた二 ・二六事件 ( 一九三六年 ) の訴訟記録全六七巻の大部分が、
初めて研究者の閲覧に供されることとなった。
二 ・二六事件の裁判記録は、つい数年前まではその存在すら疑問視され、
あるいは東京空襲で焼失したとか、あるいは敗戦直後当局によって焼却されたなどといわれていた。
この幻の記録の所在が確認され、その閲覧が可能になったのは、
現代史研究家北博昭氏や原秀男弁護士等の努力によるところが大きい。
・・・(1)
北博昭 「 二 ・二六事件正式裁判分書は現存していた 」 中央公論 一九九一年三月号184頁、
原秀男 ・澤地久枝 ・匂坂哲郎編 『 検察秘録 二 ・二六事件 』 ( 以下、「 匂坂資料 」 と略記する ) Ⅳ ( 一九九一年、角川書店 ) 614頁
この記録は、公訴提起事件の記録 ( 公判調書 ・証拠書類 ・判決書等 ) のみならず、
不起訴事件の記録も含んだ膨大なものである。
その中には、憲兵作成の聴取書のようにすでに内容が明らかにされた書類も一部存在するが、
その大部分、とくに公判調書 ・予審調書等は今回初めて日の目を見る公文書であり、
その歴史的価値は計り知れないものがある。
もっとも、死刑執行関係書類、検視調書、考課表などは、閲覧許可対象から除外されている。
・・・(2)
記録の構成とその概要については、北博昭 「 ついに閲覧できた二 ・二六事件裁判記録 」 月刊Asahi 九三年五月号102頁
幸い私も許可を得ることができたので、原記録のマイクロフィルム焼き付けされたコピーを、週一回のペースで閲覧中である。
私の主たる関心事は、軍法会議の手続の実際とその事実認定にあるが、
何分にも大部の記録であるばかりか、記録の謄写が許されないため自らメモしなければならず、作業の能率は上がらない。
しかも予審調書 ・公判調書は毛筆による草書体で書かれているので、通読すら容易ではない。
したがって、記録の全体像の把握と公判手続の解明には相当の時間を要するため、
とりあえず訴訟記録から判明した裁判の状況をとりまとめて紹介し、今後の研究の足掛かりにしたいと考えた。
そして、その手始めとして、
私にとってもっとも関心のある北一輝 ( 本名輝次郎 ) と西田税の裁判記録の概要をまとめたのが、本稿である。
なお、記録の引用は、できる限り原文に忠実に行ったが、適宜濁点と句読点を付した。
また、漢字は新字体に改め、判読不能の個所はその字数だけ□で示した。

獨協法学第38号 ( 1994年 )
研究ノート
二 ・二六事件北 ・西田裁判記録 ( 一 )
松本一郎
目次
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一  はじめに

二  二・二六事件と北・西田の検挙 
  捜査の概要
 1  捜査経過一覧
 2  身柄拘束状況
 3  憲兵の送致事実
  (一)  北関係

  (二)  西田関係
 4  予審請求事実 ・公訴事実
  (一)  予審請求事実
四  北の起訴前の供述
 1  はじめに
 2  検察官聴取書
  (一)  昭和一一年三月九日付第一回聴取書
  (二)  昭和一一年三月一五日付第二回聴取書
 3  警察官聴取書1 
  (一)  はじめに
  (二)  昭和一一年三月一七日付第一回聴取書
  (三)  昭和一一年三月一八日付第二回聴取書

 3  警察官聴取書2
  (四)  昭和一一年三月一九日付第三回聴取書
  (五)  昭和一一年三月二〇日付第四回聴取書
  (六)  昭和一一年三月二一日付第五回聴取書

 4  予審訊問調書
  (一)  はじめに
  (二)  昭和一一年四月一七日付被告人訊問調書 ( 勾留訊問調書 )
  (三)  昭和一一年六月二〇日付被告人第一回訊問調書
  (四)  昭和一一年七月三日付被告人第二回訊問調書
  (五)  昭和一一年七月九日付被告人第三回訊問調書

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 以上第3 8号 )
五  西田の起訴前の供述
1  はじめに
2  警察官聴取書
3  予審訊問書
4  西田の手記
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 以上第3 9号 )
六  公判状況
1  はじめに
2  第一回公判
3  第二回公判
4  第三回公判
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 以上第4 0号 )