嶋津隆文オフィシャルブログ

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面白うてやがて悲しき団塊世代「生涯学習」考

2008年12月07日 | Weblog

吉田松陰が開き維新の傑物が学んだ松下村塾 本人撮影

私がシリーズで執筆している、月刊「地方財務」(ぎょうせい)の、「もうひとつの団塊世代論」⑥より転載(12月号)したものです。気楽にお読み下さい。

面白うてやがて悲しき団塊世代「生涯学習」考

秋は読書の季節である。今年の秋も住民相手の地方自治体の教養講座があちこちで開催された。とくに最近は地元大学と一緒になってこうしたプログラムを企画するところが多い。高齢者の余暇対策でもあり、生涯学習の気運をたかめ地域の活性化を図るためだともいう。現にわが松蔭大学でも厚木市と一緒になり、市民教養講座を開いて多くの市民の参加をえているところである。その実績から垣間見ると、最近の年配層の様々な動向が把えられて興味深い。

受講者アンケートが示すもの

昨年の平成19年、厚木市との市民講座(毎週土曜、6回)では131人の参加があった。アンケートを実施してみると、回答者78人から幾つかの動向が浮かび上がってきた。例えば以下のようなものである。

1)まず参加層ではほとんどが高齢者であった。
20代(0) 30代(1) 40代(2) 50代(10) 60代(36) 70代(27) 80代(1)

2)参加理由は圧倒的に知的向上心である(複数回答)。
生活上の知識習得(26) 職業上の知識習得(2) 学ぶは楽しいから(53) 教養を身につける(26) 大学の校舎に行ってみたい(6) 受講生と交流したい(2) その他(3)

3)男女比率は2:1で、男性が女性よりも倍近く多かった。
男(51)  女(25)

4)参加者名簿の作成を訪ねると大半は不要と答えた。
必要(16) いらない(51)

垣間見える団塊世代の意向

このアンケート結果をふまえてもう少し年配層、わけても団塊世代の動きを考えてみる。すると次のようなことがいえるようだ。

第一は、何といっても驚くのは60代、70代層の行動力である。とくに60歳前後の団塊世代が参加者の半数近くを占めていることから、この世代の積極性や若さは十分知れるというものである。

第二に気づくのは、知性至上主義というべき年配層の強い知的好奇心である。ほとんどの人が実利的な知識でなく教養的な向上心で参加していることがわかる。

第三は男の参加数が女より多いことの意味である。これはこの世代の男達の一つのダンディズムのようなものだろう。「近所」のサークルに抵抗なく参加できる女性と異なり、「大学」といったステータスもどきへの衒いが依然として男にはあるらしい。

第四に分かるのは、群れ回避(他人と関わらない)傾向である。高齢者、わけても団塊の世代は量的にこそ多いが、ヘンに群れようとはしないことだ。受講生の一人として席には着くが、相互に会話はしない。他の受講生と交流していきたいと考えた人はわずか2人である。ネットワークづくりの基礎となる名簿づくりに前向きであった人も、わずか2割の16人なのである。

いつまでも罪つくりな団塊世代

こうアンケート結果を見ながら振り返ってみると、やはり行政に忠告しておきたいことが出てくるというものだ。それは年配層に対し、地域参加を誘導するステップとして教養講座を使うとしたら、道を間違えてしまうということである。とくに団塊世代の、学生時代のような集団行動幻想に期待をかけるのはよした方が良い。彼らは地域にさほど興味を持たず、また団体行動も好まないのである。ちなみに団塊世代に期待をかけながら裏切られた、最近のミゼラブルな話を1、2紹介しておこう。一つは朝日カルチャーセンターである。昨年、団塊世代の大量受講者の流入を期待し、その世代向けの講座を設定した。しかし全く集まりが悪かったのだ。団塊というレッテルで一塊りにされることに抵抗感があったからとセンターでは分析する。もう一つはシルバー人材センターでの話である。ここでも、退職後で流れてくるだろう団塊世代の、受け入れ枠の拡大を図ったのだ。すなわち75歳での定年制を設け、60歳前後の層の参入を期待したのである。しかし団塊世代はほとんど来なかったというのである。

ことほど左様に団塊世代は青年時代と異なって簡単には誘いに乗らず、共同意識も低く、とりとめのないままにバラバラと散在している。団塊世代の大量退職で地殻変動が起きるなどといった「2007年問題」騒動を作りながら、結局は拍子抜けの展開しか示さない。いつまでも罪つくりな世代なのである。

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