サッカーのベスト8前に敗退したサムライジャパンのショックを癒す狙いもあって、一度はじっくり見てみたかった日野の多摩平団地に足を運びました。
ここは、今はパリに住む芥川賞作家の辻仁成が、幼い頃に育った団地。何気なく読んでいた彼の著『84歳の母さんがぼくに教えてくれた大事なこと』に、こんなくだりがあったことがきっかけです。
ある時、彼はこの団地から、沈みかけていた夕陽が、西の空を赤く染めるのを見て立ち竦む。探しに来た母親の言葉に包まれながら、世界をもっと知りたいと思った。そして、これまでに数えきれないほどの、様々な世界を発見する。それゆえ、「そのはじまりがあの日野市に沈む夕陽であり、日野市の夜空に輝く星たちであった」というのです。
多摩平団地は日本で最初のマンモス団地であり、昭和30年代初め当時の募集パンフレットには「富士の見えるニュータウン、40万坪の緑の街」と謳われました。それから60年余。
大半の建物は建て替わりました。しかし今歩いてみる町並みにはどこか違和感があるのです。
計画街区のはずが半世紀で雑然とした町になっている現実。今後全国の住宅団地の建て替えが始まろうとしているこの時代なのに、URのアイディアに限界があるのかと暗然としてしまったのです。
整然としたパリの町に住む辻仁成。かつて感動的な夕日を見せたこの故郷の団地の変貌を、果たして今どう表現することでしょう。
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