嶋津隆文オフィシャルブログ

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訪れてみるとそこは「新思潮」メンバーの拠点宅

2012年03月09日 | Weblog

写真:「小山内薫らが刊行した「新思潮」創刊号(明治40年)」

“犬も歩けば棒にあたる”と言われますが、一昨日執筆作業のヒアリングで尋ねた練馬区羽沢2丁目でのこと、まさにワクワクするような事柄に出くわしました。

訪問先は、元東大にも勤務していた山本一郎歯科医師の自宅です。そこでの世間話の中で、ふいにこんな話が出たのです。

「この家は、以前新聞社に勤務していた義兄の住んでいたところ。文学に関心のあった彼は東大時代に「新思潮」のグループに入り、ここがそのメンバーの拠点となっていたのです。三浦朱門や吉行淳之助、和辻哲郎なんかが出入りしてたんですよ」。

その言葉に、思わず天井を見上げ、回りの書棚にも食い入るように目が行ってしましました。
いうまでもなく「新思潮」は明治40年に小山内薫が創刊した文芸雑誌で、その後東大系の同人誌として著名な作家を輩出することとなります。大正期には菊池寛、芥川龍之介、久米正雄らを、戦後でも阿川弘之、有吉佐和子、梶山季之などを出す等、キラ星のごとき人材が集まった文芸運動なのです。

その拠点の一つがこの居宅であると言うのですから、それはもうワクワクしない訳はありません。
しかしそれにしても、かつて文学や作家は時代を領導した感がありました。振り返って昨今の世相を見るに、文学の注目は芥川賞というイベント位となってしまいました。小説のリアリティが現実のそれより貧弱になってしまったからか、それとも人々からゆとりが消えてしまったからなのか。いずれにせよ一抹の寂しさが湧くのは否めません。

 


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