嶋津隆文オフィシャルブログ

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“何だ、近頃の若い連中ときたら・・”

2008年05月09日 | Weblog

連休明けのキャンパスは、入学仕立てと違い学生どうしも親しくなったのでしょう、楽しそうな会話があちこちから聞こえてきます。私自身も本格的に教壇に立って一か月がたちました。しかし長いこと接することのなかった二十歳前後の若者の生態に、この間、驚かされることしきりです。今日は閑話休題で、その幾つかを掲げておきましょう。

「朝日新聞は左派系、産経新聞は右派系、読売新聞は・・」と説明していて、ハッと思ったのです。そして学生に聞いたらその予感通りでした。クラスの20人のうち、新聞を読んでいるといったのが2人だけであり、残りの学生は新聞名もほとんど知らないのです。みなニュースなどはインターネットからなのです。

「日本の地方自治行政は明治以降に県と市町村とになり、江戸の頃は藩体制でした。NHKの『篤姫』薩摩藩は、ほら宮崎あおいが主役の・・」と解説していて、これまたオヤッと思ったのです。案の定、その学生の全員が日曜の大河ドラマなどみていなかったのです。話しが続くはずもありません。

「嶋津先生は女優の誰が好きなんですか?教えて下さい」との雑談で、「そりゃ、韓国のソン・イエジンだよ、ほら『夏のかおり』のくりくりした・・」とウケを狙って答えて、またまたドキッとしてしまいました。そうなのです。知らないのです、韓流ドラマなどは。あげて中年のおばさんの関心対象だったのです。

ほとんど共通項などないというものです。こんな状態ではむしろ、外国人の学生と話をする方が楽かもしれません。日本人で、同じ言語を語っているだけに、同じ理解をもつだろうという期待をもってしまいます。外国人であれば、始めから共通項がないものとして、前提から順追って説明することになるからです。混乱せずに済むというものです。

加えて驚くのは、講義中の私語。注意すると何の反抗もなくすっと静かになるのです。しかししばらくすると又始まるのです。「先生、トイレ!」と突然退席したりする学生もいます。まことに不思議な人間たちを見せられているような感があります。これらの生活の基本ルールを欠落した諸行動には、どこの大学も頭を悩ませているようですが。

果たして、思わず古典的な言葉が口について出てくるというものです。「何だ常識がない、近頃の若い連中ときたら・・」(笑)。しかしかといって、無気力かといえばそうでもなく、実に積極的に接してくる学生も少なくないのです。私の戸惑いはもう暫く続きそうです。

先に早稲田大学の田勢康弘教授(テレビコメンテーター)と会った時、学期末の試験には毎回「母への便り」を書かせて家族に送り、試験に代えていると言っていました(3月25日ブログ参照)。東大の非常勤の時もそうしていたといいます。たしかに妙案かと納得し始めています。最近の親子関係というものが見えてくる。学生の日常生活と将来への期待が分かる。何よりも、基礎学力のない若者にも書き易いテーマとなる。手紙をもらった親も喜ぶ。

しかし、とやはり思うのです。しかしどこか違ってはいないだろうかと思うのです。「失われた10年」とバブル期以降の混迷をもった90年代を称します。その弁でいえば、「失われた50年」というべきかもしれません。社会ルールをなおざりにし、学力重視を軽んじ、自由さだけが強調されてきた日本の戦後。その半世紀のことが、改めて取り返しがつかないような気がしてくるのです。

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