嶋津隆文オフィシャルブログ

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ちょっと耳寄りなヒラリーさんと目黒清掃工場の話

2007年11月14日 | Weblog

2008年11月の米国大統領選があとちょうど一年です。民主党の候補者の中でヒラリークリントンが優勢だと報じられています。それだけにネガティブキャンペーンも陰湿となって、いつもながらの“民主国家米国”の裏面の顕在化に辟易させられます。半年前の国立市の選挙での、革新市長陣営から私への同様な陰湿な攻撃と重なり、二重に不快な思いがよぎってくるというものです。

それにしても、ヒラリーさんはなかなかに強いキャラの持ち主といってよいようです。その生の姿を示すエピソードを、実際に東京都庁での仕事で触れた中から披露しておくことも時には許されるでしょうか。それは1993年(平成5年)に東京サミットが開催された時のことです。当時私は国際部の外事課長で、東京都の受け入れ実務の責任者でした。

いうまでもなく世界サミットというようなビッグイベントの時に各首脳が夫人同伴で出席することは慣例です。そして会議が開かれている期間には、マダムメニューがセットされ、夫人たちは歌舞伎やお茶など日本文化に触れるといった行動をとるのが一般的です。

しかし直前に米国大使館から電話があり、ヒラリー夫人が目黒の清掃工場を視察したいと希望してるのでよろしくと連絡が入りました。環境にナーバスな閑静な東京の住宅街のなかで、どうして大きな清掃工場が建ったのか、なぜ地域に受容されたのか、知りたいとのことでした。

独のコール首相夫人、英国のメージャー首相夫人など数人のVIP夫人は、日本の文化を堪能することを期待していたようです。しかし、ヒラリー夫人の強い意向で、全員が清掃工場を訪問することとなったのです。他の人の意向を気遣うことなく自分の選択が貫かれました。今にして思えば「大統領夫人」でなく既に「大統領候補」としての判断があったのかもしれません。

ところで(ソッと教えますが)この視察に関連して事務的には大いに大変だったのです。
ひとつは治安対策です。爆弾テロを警戒し清掃工場へのゴミの新規搬入を2日前から停止させることになったのです。またホワイトハウスのSPが事前に大勢乗り込み、工場内を勝手にチェックし始めました。米国サイドにしてみれば日本側は信用できないというのでしょう。その大国としての傲慢な態度に、当然私たちは不快感を示したものでした。

もうひとつはトイレ問題です。目黒の清掃工場のトイレは洋式ではありません。国賓級の夫人を受け入れながらしゃがみ式では、いかにも具合が悪いのではと頭を悩ませました。やむを得ず、おまる式を臨時設置するとともに、ジュースなどお茶の提供を一切やめたのです。そんなこんな、大騒動であったわけです。

そうした裏方の動きとは別に、近隣の小学校の子供たちの旗と歓呼の声に包まれて登場したヒラリーさんは、実に輝くような華がありました。満面の笑み、明るいゼスチャー。質問の鋭さ。その堂々とした振る舞いに、いやあ、圧倒されたものでした。そして思ったものです。この人と終日過ごす夫君も、それはそれでかなり大変なことではないでしょうかと(笑)。

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