12月20日

 シャーリイ・ジャクスン/渡辺庸子訳『丘の屋敷』を再読した。 
 
 ずっと居場所がなかったエレーナは、報われ満たされることもないそれまでの人生と、冴えない自分への鬱屈から抜け出すことを望んでいた。丘の屋敷の怪異に魅入られていく彼女の姿は、まさにそこに “つけ込まれた” 者のそれなのだろう。
 人としてごく普通の弱さにつけ込む、丘の屋敷の “邪悪” の前には、誰もが無力だった…という救いのなさに戦慄する。そしてシャーリイ・ジャクスンの容赦のなさに感嘆した。

 “わたしはここにいる。わたしはここにいる──彼女は喜びにぐっと目をつぶり、それから取りすました声で博士に言った。”

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