マリオ・バルガス=リョサ、『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』

 『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』の感想を少しばかり。

 リョサの推理小説、面白かったー。『緑の家』のリトゥーマが警官になっている。イナゴマメの老木に吊るされて串刺しの若い男の死体が発見され、尊敬する上司のシルバ警部補とともに事件の解明にあたる。が、殺されたパロミノ・モレーロは脱走兵であり、空軍基地内部には事件に関しての緘口令が敷かれているらしく、なかなか情報が集まらない。このまま隠蔽させるまじ、させるもんか…と、権力に向けて反骨心をむくむくと起こすリトゥーマであったが。
 やんちゃでも心根の直ぐなリトゥーマと、有能なシルバ警部補の名コンビぶりが楽しかった。しかもこの警部補、自分の母親ほどに年上の人妻ドニャ・アドリアナに首ったけで、いわゆる“タイヤの腰”(つまりデブ)をした彼女に飽きもせずしつこく言い寄り続けているところが可笑しいったら…。

 真相もさることながら、事件の謎を解くのに要となる人物でマンドゥロー大佐の娘である、アリシアのことが気になった。複雑なのか孤独なのか捻くれているのか、ただ愚かなのか。神秘的というにはいささか魅力が足りないようにも思えたのだけれど、あやうくて妙にひっかかる女性だった。
 あと、リトゥーマがパロミノ・モレーロ苦しい恋のことを知って、自分には本当の愛がわからない…と思うところが何だか好ましかったな。でも何だかんだ言って実は、女傑ドニャ・アドリアナにぜーんぶ持って行かれたようか気がしないでもない。本当いい女だった。
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