5月17日

 空木春宵『感傷ファンタスマゴリィ』を読んだ。
 
 とてもよかった。
 まず耽美で残酷かつ甘苦い毒滴る作風が好みで堪らないのだが、人の嗜虐性や暴力、どす黒い憎悪(例えば人々を“魔女狩り”へと駆り立てるものの正体)をきっちりと描く筆致にも痺れる。

 表題作では “幽霊とは思考の産物” という件からの、己が己であることの確かさがぐらぐら揺るがされ、自己確立の脆さを突き付けられる展開が頗る響いた。
 「4W」はシスターフッドの物語としても読めるしそこが好きでもあり、「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」で見据えているものは性別に関係なく誰もが考え続けるべきことなのだろう…とも思う。


 “だが、少女であったことならある。どうしようもない生き辛さを抱え、間違った世界に生まれてきてしまったと感じる、よるべない孤独な少女であったことは。” 「さよならも言えない」

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