5月14日

 金井美恵子『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』を再読した。
 
 素晴らしかった。遠い日々の記憶が弛んで寄り集まり、褪色したモザイク模様になる。茫洋とした時間の流れから掬い上げられる、鮮やかなイメージと繰り返すその語り直しに、ふと眩暈する読み心地だった。
 とりわけ、何度も出てくる “まゆみの生垣” をめぐらし曲がりくねった狭い道の描写は、時間を行き来してとめどない語り口そのものとも重なる。

 “それとも、いつかこの今の瞬間、今こうして見ている月と、この道と、風と、こうして今わたしの感じているすべての感覚を思い出すことがあるだろうか。”
 
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