本が好き!な、りなっこのダイアリーです。週末は旦那と食べ歩き。そちらの報告も。
本読みの日々つらつら
竹内真さん、『カレーライフ』
『カレーライフ』、竹内真を読みました。
“あるがままの自分でいい。美味けりゃいいじゃないかという意見のワタルも、プロとして出すならスパイスには精通しておけというサトルも、多分どっちも正しのだ。さまざまな要素をすべてのも込む包容力こそがカレーの素晴らしさなのだし、僕自身のだらしなさや未熟さもそこで許される気がしたのである。” 534頁
やー、面白かったです。タイトルのストレートさもさることながら、黄色一色のデザインというわかり易さにも惹かれた一冊です。内容の方も真っ直ぐで、清々しい気持ちになりました。
物語の主人公ケンスケは、そもそもは父親の勘違いといういい加減なきっかけから、生前祖父が営んでいた洋食屋のお店を、カレーライス店という形で引き継ぐことになったのでした。成り行き上とは言え、カレーライスには祖父の思い出ともあいまって思い入れのあるケンスケは、四人のいとこたちとの約束を思い出します。「みんなでカレー屋をやろう」、という幼い日の約束を。
開店にたどり着くまでの話だけでこの長さ! …なのですが、わいわいと賑やかな空気が流れているのがとても楽しくて、ストーリーも小気味よく転がって行くので長すぎるとは感じませんでした。
記憶の中の“じいちゃんのカレー”の味を再現するべく試行錯誤を重ねるうちに、浮かび上がってくる祖父の過去にひそむ謎の部分。カレーの味の探求が、いつしか彼らのルーツにまで繋がっていく仕掛けが巧みです。どんな食材でも受け止めて、より深みを増しながらまとめ上げるカレーそのものみたいな小説でした。
色んな要素がほうり込まれていて、ややもすれば“ごった煮”になりそうなところを、まさにカレーのスパイスがちゃんと収斂させていく…。
全ての章のタイトルに“カレー”が付いていて、目次を見ているだけで楽しくなります。「おでんカレー・キャンプ風」とか「おみやげカレー・バーモント風」といった具合。
解説が安西水丸さんなので、適材適所に思わず笑ってしまいました。
(2007.6.19)
« 皆川博子さん... | 多和田葉子さ... » |
食べてみたいカレーが出てくると思いますよ~。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。