クリストファー・プリースト、『逆転世界』

 本やさんでプリーストを探したら、二軒梯子してもこの作品しか置いてなかった。お蔭で重厚なSFを読む楽しさと醍醐味を存分に味わい、お腹がいっぱいだ。途中でぐらぐらして頭を抱えてしまったほど。

 『逆転世界』、クリストファー・プリーストを読みました。


 三半規管が苦しくうなりを立てて、今にも故障のけむりを出し始めるのじゃなかろうかというくらい、驚きの眩暈に満ちた世界観に、ただただ圧倒された。 
 この物語は、主人公のヘルワードが〈地球市〉における成人に達した時点から語られ始める。 
 物語の舞台となる〈地球市〉が、かなり特殊な都市であることはすぐに察しがつくものの、なかなかその全体像が見えてこないので大いに戸惑った。だがそれは、ヘルワード自身が成人に至るまで全く知らされていなかったことなので、彼の視点を通して少しずつ明らかにされていく。細部と細部が繋がり合って、驚くべき全体像が徐々に浮かび上がってくるのである。 
 それでまあ要するに、都市は動くのだ。いや、動かされている。しかもSF作品にありがちな、超絶理論と技術とでもって動くのではなく、もっと原初的な方法で牽引されているという設定には、随分と違和感を持ってしまったのだが…。永久的に先へ先へと移っていく〈最適線〉を追いかけて、延々と果てなく移動し続けることを強いられた都市が、〈地球市〉である。 
 当然そこで、そもそも何故その都市は移動し続けなければならないのか…?そして〈最適線〉とは何ぞや…? という疑問が立ちはだかる。都市の外に住む地方人たちの存在もあり、ますます謎は深まる。何ゆえに〈地球市〉だけが…?と。

 過酷な月日に大きく圧し掛かられ、若さを失いだんだん狷介になっていった未来測量員ヘルワード(やるせないんだ、それがまた)。彼が最後に直面させられた、隠されていた真実とは…。

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